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マスカレードを壊したい
名前変換
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履き慣れない5cmのハイヒール。
重心をどうしたらいいのか解らなくて、ただ立つだけなのに身体が揺らいでしまう。
短い髪にも少し編み込みをして両耳には涙の雫の様な煌めくピアス。
トレンチコートを羽織っているけど、スカート履くなんて久しぶりでスースーするっ。
私はなんだか子供の様にソワソワした胸のむず痒さに落ち着かず、おかしくないか周りへと視線を送った。
どの女性もきらびやかなワンピースに身を包み、スーツ姿の男性にエスコートされて歩いているのを見て胸を撫で下ろした。
良かった……やっぱり可笑しくないみたい。あれ、男性もスーツって事はギアッチョも…。
「おい、名前。」
「ギ、ギアッチョ…。」
考えていた瞬間に投げ掛けられた自身の名前に視線で探せば、珍しく白い衣装では無く黒いシックなフォーマルスーツに身を包むギアッチョに見入ってしまう。だが相変わらずカールした髪に赤縁眼鏡はホッと心を和ませた。
「ふふっ、何だか2人共変な感じだね。」
「ああ?んだよ、似合ってねーって事か!?」
「ち、違う!……似合ってるよ。」
「………チッ。っ、行くぞ!」
いきなり機嫌が悪くなったのか声を荒げるギアッチョに、大勢の人の目線が集中するので私は慌てて素直な感想を述べた。こんな場所で乱暴な言葉遣いは余計に目立つ。
すると目を見開いて耳を赤くするギアッチョは舌打ちをすると、私の手首を掴み大股で歩きだした。
彼なりに照れているのだろう。汗ばむ手にクスッと笑みを漏らして私も急いで追い付こうと足を動かすも、慣れないせいかグニャッと足首が揺らぎバランスを崩す。視界が揺らぎ慌てて何かに捕まろうと手を伸ばした。
「きゃっ!?」
「名前!」
悲鳴と同時と言って良い程に飛んできた声と、身体を支える逞しい腕に眼鏡のレンズから覗く瞳に自分が映りドキッと心臓が動揺した。
「ありがとう…。」
「……今日はよぉ!オレの恋人で居てくれるんだってなぁあ。」
「え!?な、何それ!!」
「ああ"?プロシュートと、そう言う約束なんじゃあねーのかぁ?」
聞いてないよ!確かに良い想い出は作ってやれとは言われたけど!?
予想外の言葉に整理しようと固まっていると私の傾く身体を起こし、ギアッチョは自身の腕をクイッと意味深に動かすので私は思わず首を傾げた。
何の意味だろうとギアッチョへと目を向けると、白かった頬を染めながら焦れているのか軽く此方を睨み付けている。
あ…もしかして。
当たっているか不安もあったが、その腕へと手を絡め身体を寄り添わせた。
すると小さく頷き何も言わずに歩きだした。どうやら正解だった様だ。
ブチャラティも承諾してくれてるし、今日だけなら大丈夫……よね。
周りも腕を組んだ恋人達が多い。逆に離れている方が不自然かも知れない。
私達は入り口へと向かいプロシュートが用意したチケットを掲示して、劇場内へと向かうと音が響くであろう高い天井と貴族が楽しんだ事が解る程にきらびやかな内装に言葉を飲んだ。
「すごい…。」
「すっげぇギラギラしてんな…。」
「……ギアッチョって、ほんとムード無いよね。」
「おい!何でだよ!!」
折角感動していたのに、ギアッチョの変な感想によって一気に冷めきった私は横目で溜め息混じりに呟けば解らないと不満げだ。まあギアッチョらしいと言えば彼らしいのだが。
絶対ブチャラティだったらあんな感想言わないよね。
『だろう?オレも初めて来た時はこの空間に息を飲んだ。絶対名前と見たいと思ったんだ…。』
そう言って微笑んでくれるんだろうな…。
彼の微笑んだ顔を思い出した瞬間、頬が直ぐ様熱を持ち心臓がきゅうっと切なくなった。
ダメダメ!今はギアッチョと居るんだから、ブチャラティの事考えたら申し訳無さすぎるでしょ!?
高鳴る気持ちを押し殺し、ふーっと深く息を吐けば気持ちを切り替える。
座席を確認して腰を下ろせば映画館とは違う柔らかい素材の高級感ある座椅子に、私は思わず背凭れへ身体を預けてリラックスしてしまった。
するとギリギリだったのか、ブーッと言う音と共に照明が徐々に暗くなっていき照らすのは舞台のみとなる。
舞台など何年ぶりだろう。
1度だけ両親に小さな舞台へ連れていって貰った事がある。もう霞んでしまいそうな程の記憶。
しかもギャングになってからこんな機会が訪れるとは思いもしなかった。しかもプライベートだなんて、有り得ない話だ。
「!?」
しかし、舞台だけを見つめていた私だが突然の事に集中力は切れ隣を向くしかなかった。
「ちょ…ギアッチョ…。」
私の手へと伸びた骨張った大きな手が包み込めば、指の間へと長い指を絡めていく。
ぎこちない手付きがかえって恥ずかしさが増し、思わず名前を呼べば視線だけが絡みギアッチョは自身の唇へと人差し指を立てる。
声出すなって………もう、何考えてるのよ!あと1時間も手を繋いだままって事!?
脳内で混乱していると、絡まる指先を擦り合わせたり話せない事を良い事にまるで堪能しているかの様だ。
これがギアッチョでは無かったらひっぱたいている筈だろう。
指先の腹同士を合わせたり、ゆっくりと下がる指先が指の股を擽る。まるで愛撫されているかの様。
普通に手を繋ぐよりも恥ずかしい感覚に、私は途中から舞台の内容など頭に入ってこなかった。
* ** ***
割れんばかりの盛大な拍手が会場を包み込む。
照明が明るさを取り戻せば余韻に浸らないギアッチョは手を繋いだまま立ち上がり、機嫌良さそうに此方を見つめ笑みを浮かべている。
「意外に面白かったな…たまには悪くねぇ。」
「はああ、良かったね…。」
「なんだぁ?その反応の悪さわよぉ。……オレと観るのがそんなに嫌だって言うのかよ。」
「ち、違う!途中でギアッチョが変な触り方するからでしょう!?……ぁ。」
我慢していた為につい声を荒げてしまったが、周りの視線に気付くと直ぐ様口を紡ぐ。
それが余計に恥ずかしくなりギアッチョの手を引いて逃げる様にその場を後にした。
しかしその時だった。
「っ!」
その手を握り返された瞬間に、いきなり後ろに身体を引き寄せられたので思わず声を上げそうになるも唇へと指が添えられれば反射的に口を閉じた。
一体何事かと身体を密着させるギアッチョを見上げると、耳元へと唇が添えられピクッと肩が跳ねる。
「……アイツだ。」
「え?」
「オレ達が追ってた標的だ。」
「!」
私も急いでギアッチョの向ける視線の先へと辿ると、以前ブチャラティのチームへ移動になる前に追っていた標的の男が会場に居たのだ。
be continued
重心をどうしたらいいのか解らなくて、ただ立つだけなのに身体が揺らいでしまう。
短い髪にも少し編み込みをして両耳には涙の雫の様な煌めくピアス。
トレンチコートを羽織っているけど、スカート履くなんて久しぶりでスースーするっ。
私はなんだか子供の様にソワソワした胸のむず痒さに落ち着かず、おかしくないか周りへと視線を送った。
どの女性もきらびやかなワンピースに身を包み、スーツ姿の男性にエスコートされて歩いているのを見て胸を撫で下ろした。
良かった……やっぱり可笑しくないみたい。あれ、男性もスーツって事はギアッチョも…。
「おい、名前。」
「ギ、ギアッチョ…。」
考えていた瞬間に投げ掛けられた自身の名前に視線で探せば、珍しく白い衣装では無く黒いシックなフォーマルスーツに身を包むギアッチョに見入ってしまう。だが相変わらずカールした髪に赤縁眼鏡はホッと心を和ませた。
「ふふっ、何だか2人共変な感じだね。」
「ああ?んだよ、似合ってねーって事か!?」
「ち、違う!……似合ってるよ。」
「………チッ。っ、行くぞ!」
いきなり機嫌が悪くなったのか声を荒げるギアッチョに、大勢の人の目線が集中するので私は慌てて素直な感想を述べた。こんな場所で乱暴な言葉遣いは余計に目立つ。
すると目を見開いて耳を赤くするギアッチョは舌打ちをすると、私の手首を掴み大股で歩きだした。
彼なりに照れているのだろう。汗ばむ手にクスッと笑みを漏らして私も急いで追い付こうと足を動かすも、慣れないせいかグニャッと足首が揺らぎバランスを崩す。視界が揺らぎ慌てて何かに捕まろうと手を伸ばした。
「きゃっ!?」
「名前!」
悲鳴と同時と言って良い程に飛んできた声と、身体を支える逞しい腕に眼鏡のレンズから覗く瞳に自分が映りドキッと心臓が動揺した。
「ありがとう…。」
「……今日はよぉ!オレの恋人で居てくれるんだってなぁあ。」
「え!?な、何それ!!」
「ああ"?プロシュートと、そう言う約束なんじゃあねーのかぁ?」
聞いてないよ!確かに良い想い出は作ってやれとは言われたけど!?
予想外の言葉に整理しようと固まっていると私の傾く身体を起こし、ギアッチョは自身の腕をクイッと意味深に動かすので私は思わず首を傾げた。
何の意味だろうとギアッチョへと目を向けると、白かった頬を染めながら焦れているのか軽く此方を睨み付けている。
あ…もしかして。
当たっているか不安もあったが、その腕へと手を絡め身体を寄り添わせた。
すると小さく頷き何も言わずに歩きだした。どうやら正解だった様だ。
ブチャラティも承諾してくれてるし、今日だけなら大丈夫……よね。
周りも腕を組んだ恋人達が多い。逆に離れている方が不自然かも知れない。
私達は入り口へと向かいプロシュートが用意したチケットを掲示して、劇場内へと向かうと音が響くであろう高い天井と貴族が楽しんだ事が解る程にきらびやかな内装に言葉を飲んだ。
「すごい…。」
「すっげぇギラギラしてんな…。」
「……ギアッチョって、ほんとムード無いよね。」
「おい!何でだよ!!」
折角感動していたのに、ギアッチョの変な感想によって一気に冷めきった私は横目で溜め息混じりに呟けば解らないと不満げだ。まあギアッチョらしいと言えば彼らしいのだが。
絶対ブチャラティだったらあんな感想言わないよね。
『だろう?オレも初めて来た時はこの空間に息を飲んだ。絶対名前と見たいと思ったんだ…。』
そう言って微笑んでくれるんだろうな…。
彼の微笑んだ顔を思い出した瞬間、頬が直ぐ様熱を持ち心臓がきゅうっと切なくなった。
ダメダメ!今はギアッチョと居るんだから、ブチャラティの事考えたら申し訳無さすぎるでしょ!?
高鳴る気持ちを押し殺し、ふーっと深く息を吐けば気持ちを切り替える。
座席を確認して腰を下ろせば映画館とは違う柔らかい素材の高級感ある座椅子に、私は思わず背凭れへ身体を預けてリラックスしてしまった。
するとギリギリだったのか、ブーッと言う音と共に照明が徐々に暗くなっていき照らすのは舞台のみとなる。
舞台など何年ぶりだろう。
1度だけ両親に小さな舞台へ連れていって貰った事がある。もう霞んでしまいそうな程の記憶。
しかもギャングになってからこんな機会が訪れるとは思いもしなかった。しかもプライベートだなんて、有り得ない話だ。
「!?」
しかし、舞台だけを見つめていた私だが突然の事に集中力は切れ隣を向くしかなかった。
「ちょ…ギアッチョ…。」
私の手へと伸びた骨張った大きな手が包み込めば、指の間へと長い指を絡めていく。
ぎこちない手付きがかえって恥ずかしさが増し、思わず名前を呼べば視線だけが絡みギアッチョは自身の唇へと人差し指を立てる。
声出すなって………もう、何考えてるのよ!あと1時間も手を繋いだままって事!?
脳内で混乱していると、絡まる指先を擦り合わせたり話せない事を良い事にまるで堪能しているかの様だ。
これがギアッチョでは無かったらひっぱたいている筈だろう。
指先の腹同士を合わせたり、ゆっくりと下がる指先が指の股を擽る。まるで愛撫されているかの様。
普通に手を繋ぐよりも恥ずかしい感覚に、私は途中から舞台の内容など頭に入ってこなかった。
* ** ***
割れんばかりの盛大な拍手が会場を包み込む。
照明が明るさを取り戻せば余韻に浸らないギアッチョは手を繋いだまま立ち上がり、機嫌良さそうに此方を見つめ笑みを浮かべている。
「意外に面白かったな…たまには悪くねぇ。」
「はああ、良かったね…。」
「なんだぁ?その反応の悪さわよぉ。……オレと観るのがそんなに嫌だって言うのかよ。」
「ち、違う!途中でギアッチョが変な触り方するからでしょう!?……ぁ。」
我慢していた為につい声を荒げてしまったが、周りの視線に気付くと直ぐ様口を紡ぐ。
それが余計に恥ずかしくなりギアッチョの手を引いて逃げる様にその場を後にした。
しかしその時だった。
「っ!」
その手を握り返された瞬間に、いきなり後ろに身体を引き寄せられたので思わず声を上げそうになるも唇へと指が添えられれば反射的に口を閉じた。
一体何事かと身体を密着させるギアッチョを見上げると、耳元へと唇が添えられピクッと肩が跳ねる。
「……アイツだ。」
「え?」
「オレ達が追ってた標的だ。」
「!」
私も急いでギアッチョの向ける視線の先へと辿ると、以前ブチャラティのチームへ移動になる前に追っていた標的の男が会場に居たのだ。
be continued