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ブルーモーメント。
夕焼けの赤い色から夜の訪れを告げる様に徐々に青へ、そこに黒が少し混じる瞬間のグラデーションの空がとても好きだ。
1日が終る様で寂しいと言う人もいるが、この僅かな瞬間を私は疲れた視界で見ると心から癒される。
その色合いを鏡の様に映す海はナポリの中で美しい光景の1つだ。
だけれど、隣で同じく景色を見ている彼はもっと美しいのかも知れない。
男性に"美しい"と言うのは違う様な気もするが、髪も瞳も沈み行く夕日に染まる彼にはその言葉しか見つからない。
こんな恥ずかしい事、絶対本人には言わないけど…。
「綺麗ね…。夕日をこんなにゆっくり見れたのも久しぶりだわ。」
「来て良かっただろ?自然が作り出す美しさは、その一瞬一瞬が奇跡だ。」
「奇跡…。そっか……またこの景色を見れないものね。……仕事終わりに連れてきてくれて、ありがとう…ブチャラティ。」
ギャングの中で非日常を過ごしているのに、忘れてしまいがちな当たり前を奇跡だと感謝をする彼は素敵だと思う。
きっと女性が彼に惹かれるのは、こういう所も魅力的だからなんだろうな。
この景色を視界に映しながら、私は彼の言葉に改めて素直に見れた事への感謝をした。
するとふっと彼が微笑んだ姿はいつもと違い、どこか纏う雰囲気に悲しさも混じっていて、私は一瞬の表情の違いを見落とさなかった。
「何かあったの?」
「いや……、父親が海で仕事してたんだが、そこで麻薬の取引を目にしちまう訳だ……悪くないオレの父親はそのせいで死にかけた。…もう何年も前なのに、海に来る度に思い出してしまうな。」
初めて自身の過去を語る彼は、夕日が半分隠れる遠い地平線を見つめながら言葉は波の音でかき消されていく。
私はその言葉1つ1つを聞き漏らすまいと耳に神経を集中させ、深くは語らない彼の心中を察した。
ギャングの道を選ぶには、皆それぞれに意味や理由、真の覚悟が必要になる。
私もこの道しか無くて、必死にしがみついてきたもの。彼も彼で辛い経験をしてきたのに、私ったら今まで自分の事ばかり…。
彼に今まで強く当たってしまったりしてきた自身の態度を思い出せば、眉を下げ表情を曇らせた。
何か出来ないだろうか。私は冷たくなった彼の手に自身の手を重ねて、距離を積めると隣でピクッと身体が跳ねた事を感じた。
私よりも高身長な彼の肩に頭を寄せると、そこから熱が込み上げてくる。まるでそこから脈打つみたいだ。
「思い出す度に、隣に私が居るなら平気でしょ?また、見に来ましょうよ……色んな海を見たいもの。」
こちらを向いた彼の表情は一瞬幹部にしては心許ないものだったが、どこか吹っ切れたのか口元を緩めながら目を細めて笑った。
「それは"恋人"として?それとも……"奥さん"としてか?」
「ええ!?」
「隣に居てくれるんだろ?」
「そ、それは例えであって……。ち、近いってば!」
「名前はすぐ話を反らすからな…。オレが嘘を見抜けるって知らないのか?」
「な、何それ……きゃっ!!」
ぐいっと顔を寄せ問い詰められると思わず後退るも、いきなり私の首元へ生温かい熱を感じると飛び上がった。
それが舌だと理解出来たのは舐められた後で、私はみるみる顔が夕焼けに染まり恥ずかしさの余り小さく身体を震わせた。
「ブチャラティッ!」
「オレは汗で嘘を付いているか解るんだ。"例え"ってのは嘘だな。」
「変態!!何その特技!!絶対あってない!」
私は理解不能な彼の説明に勢い良く否定をして、舐められた感触が今だ残る首元を押さえて踵を返し離れ様と足を一歩前に出した瞬間だった。
あまりにも冷たい風が吹き抜け目を細め身震いをすると、ネイビー色のパンプスの尖った爪先がパキッと音を立てて氷が纏う。
すると、地面が氷の膜で覆われていき瞬時に顔を上げると目の前に現れた人物に視線を奪われた。
「ぇ………ギアッチョ?」
「名前、オレの後ろに居ろ。」
赤縁メガネの隙間からこちらを睨み付けながら目の前で仁王立ちする元相棒に、私が驚いていると彼が前に割り入り鋭い視線を向ける。
「てっめぇが、ブチャラティかぁあ?」
「…………おまえに名前を言う筋合いは無いが?」
「ああああ!?なめてんのかァ~ッ!?このオレをぉ!!」
「ま、待ってよ!!ギアッチョどうしたの?私に用事があるんでしょ?」
思い通りに行かないギアッチョは今にも周り全てを凍らせてしまいそうで、慌てて彼の腕を掴んで身を乗り出し問い掛ける。
するとチラリとこちらを見ると盛大な舌打ちをして、ズレたメガネを指先で押し戻す。
「名前……明日、空けとけ。」
「え?」
「いいから空けとけって言ってんだよ!」
「名前は明日、オレと約束がある。」
「ちょ、約束なんて…。」
「クッソ!!テメーには聞いてねぇんだよぉブチャラティ!ああ!?付き合ってもねぇのに、付き纏ってんじゃあねぇ!」
「おまえには関係が無い事だと思うが?」
この2人相性最悪だ…!!
一生続くのかと思う程に殺気立ちながら言い争う2人に、呆れつつ私は周りに目をやると人々は避ける様に遠ざかっていく。
このままでは迷惑を掛けてしまうし、もっと酷い状態に陥ってしまいそうだ。
「明日なら空いてるわよ。」
「名前…!」
「私なら平気よ。ね、ギアッチョ明日ゆっくり内容を聞くわ。」
「おう…。」
ギアッチョは私の言葉を聞くなり満足したのか、両ポケットに手を入れたまま頷きそれ以上スタンドは使わず歩き始めた。
ギアッチョの小さくなっていく後ろ姿を見つめながら、私は今だ睨み付けている彼を見上げて溜め息を漏らす。
きっと彼の事だ。心配して庇ってくれたに違いない。
「ブチャラティ、送ってくれるんでしょう?」
「名前、おまえはもっと警戒心を持ってくれ…。」
「ギアッチョは平気よ。ずーっと一緒に相棒だったんだから!……何かトラブルでもあったんじゃない?」
「……それが気にくわないんだよ。」
「でも私が急に抜けたんだから、仕方ないでしょ。貴方のせいでもあるんだし、ギアッチョも大変だと思うよ…。」
「そうじゃあ無い……たくっ、あいつの名前ばかり呼ぶな…。」
「んっ…。」
徐々に苛立っているのか口調が荒げる彼を不思議に思っていると、急に黒髪が頬に触れ柔らかい感触が広がる。
重なった唇は一瞬の事をだったが、時が止まったかと思う程に長く感じ至近距離の彼の瞳に吸い込まれそうだ。
「オレの名前だけ呼んでくれないか、名前。」
「っ…!」
「くそっ……他の男の名前をおまえが呼ぶだけで、どうにかなっちまいそうだ…。」
「知らないわよ……だからってキスしないで。」
「じゃあ嫌だったら抵抗して構わない。」
「ちょっ…。」
そう言いながら私の両頬に手を添えて口付ける彼に、思わずぎゅっと両目を瞑ると暗闇の中でも彼で一杯になった。
そんな事も知らない彼はギアッチョの名前を呼んだ数だけ角度を変えてキスを続ける。
まるで私が抵抗しないのを知っているみたい…。
ドキドキと言う心音を聞きながら、私は彼と過ごす一瞬一瞬も奇跡なんだろうなんて考えてしまった。
be continued
夕焼けの赤い色から夜の訪れを告げる様に徐々に青へ、そこに黒が少し混じる瞬間のグラデーションの空がとても好きだ。
1日が終る様で寂しいと言う人もいるが、この僅かな瞬間を私は疲れた視界で見ると心から癒される。
その色合いを鏡の様に映す海はナポリの中で美しい光景の1つだ。
だけれど、隣で同じく景色を見ている彼はもっと美しいのかも知れない。
男性に"美しい"と言うのは違う様な気もするが、髪も瞳も沈み行く夕日に染まる彼にはその言葉しか見つからない。
こんな恥ずかしい事、絶対本人には言わないけど…。
「綺麗ね…。夕日をこんなにゆっくり見れたのも久しぶりだわ。」
「来て良かっただろ?自然が作り出す美しさは、その一瞬一瞬が奇跡だ。」
「奇跡…。そっか……またこの景色を見れないものね。……仕事終わりに連れてきてくれて、ありがとう…ブチャラティ。」
ギャングの中で非日常を過ごしているのに、忘れてしまいがちな当たり前を奇跡だと感謝をする彼は素敵だと思う。
きっと女性が彼に惹かれるのは、こういう所も魅力的だからなんだろうな。
この景色を視界に映しながら、私は彼の言葉に改めて素直に見れた事への感謝をした。
するとふっと彼が微笑んだ姿はいつもと違い、どこか纏う雰囲気に悲しさも混じっていて、私は一瞬の表情の違いを見落とさなかった。
「何かあったの?」
「いや……、父親が海で仕事してたんだが、そこで麻薬の取引を目にしちまう訳だ……悪くないオレの父親はそのせいで死にかけた。…もう何年も前なのに、海に来る度に思い出してしまうな。」
初めて自身の過去を語る彼は、夕日が半分隠れる遠い地平線を見つめながら言葉は波の音でかき消されていく。
私はその言葉1つ1つを聞き漏らすまいと耳に神経を集中させ、深くは語らない彼の心中を察した。
ギャングの道を選ぶには、皆それぞれに意味や理由、真の覚悟が必要になる。
私もこの道しか無くて、必死にしがみついてきたもの。彼も彼で辛い経験をしてきたのに、私ったら今まで自分の事ばかり…。
彼に今まで強く当たってしまったりしてきた自身の態度を思い出せば、眉を下げ表情を曇らせた。
何か出来ないだろうか。私は冷たくなった彼の手に自身の手を重ねて、距離を積めると隣でピクッと身体が跳ねた事を感じた。
私よりも高身長な彼の肩に頭を寄せると、そこから熱が込み上げてくる。まるでそこから脈打つみたいだ。
「思い出す度に、隣に私が居るなら平気でしょ?また、見に来ましょうよ……色んな海を見たいもの。」
こちらを向いた彼の表情は一瞬幹部にしては心許ないものだったが、どこか吹っ切れたのか口元を緩めながら目を細めて笑った。
「それは"恋人"として?それとも……"奥さん"としてか?」
「ええ!?」
「隣に居てくれるんだろ?」
「そ、それは例えであって……。ち、近いってば!」
「名前はすぐ話を反らすからな…。オレが嘘を見抜けるって知らないのか?」
「な、何それ……きゃっ!!」
ぐいっと顔を寄せ問い詰められると思わず後退るも、いきなり私の首元へ生温かい熱を感じると飛び上がった。
それが舌だと理解出来たのは舐められた後で、私はみるみる顔が夕焼けに染まり恥ずかしさの余り小さく身体を震わせた。
「ブチャラティッ!」
「オレは汗で嘘を付いているか解るんだ。"例え"ってのは嘘だな。」
「変態!!何その特技!!絶対あってない!」
私は理解不能な彼の説明に勢い良く否定をして、舐められた感触が今だ残る首元を押さえて踵を返し離れ様と足を一歩前に出した瞬間だった。
あまりにも冷たい風が吹き抜け目を細め身震いをすると、ネイビー色のパンプスの尖った爪先がパキッと音を立てて氷が纏う。
すると、地面が氷の膜で覆われていき瞬時に顔を上げると目の前に現れた人物に視線を奪われた。
「ぇ………ギアッチョ?」
「名前、オレの後ろに居ろ。」
赤縁メガネの隙間からこちらを睨み付けながら目の前で仁王立ちする元相棒に、私が驚いていると彼が前に割り入り鋭い視線を向ける。
「てっめぇが、ブチャラティかぁあ?」
「…………おまえに名前を言う筋合いは無いが?」
「ああああ!?なめてんのかァ~ッ!?このオレをぉ!!」
「ま、待ってよ!!ギアッチョどうしたの?私に用事があるんでしょ?」
思い通りに行かないギアッチョは今にも周り全てを凍らせてしまいそうで、慌てて彼の腕を掴んで身を乗り出し問い掛ける。
するとチラリとこちらを見ると盛大な舌打ちをして、ズレたメガネを指先で押し戻す。
「名前……明日、空けとけ。」
「え?」
「いいから空けとけって言ってんだよ!」
「名前は明日、オレと約束がある。」
「ちょ、約束なんて…。」
「クッソ!!テメーには聞いてねぇんだよぉブチャラティ!ああ!?付き合ってもねぇのに、付き纏ってんじゃあねぇ!」
「おまえには関係が無い事だと思うが?」
この2人相性最悪だ…!!
一生続くのかと思う程に殺気立ちながら言い争う2人に、呆れつつ私は周りに目をやると人々は避ける様に遠ざかっていく。
このままでは迷惑を掛けてしまうし、もっと酷い状態に陥ってしまいそうだ。
「明日なら空いてるわよ。」
「名前…!」
「私なら平気よ。ね、ギアッチョ明日ゆっくり内容を聞くわ。」
「おう…。」
ギアッチョは私の言葉を聞くなり満足したのか、両ポケットに手を入れたまま頷きそれ以上スタンドは使わず歩き始めた。
ギアッチョの小さくなっていく後ろ姿を見つめながら、私は今だ睨み付けている彼を見上げて溜め息を漏らす。
きっと彼の事だ。心配して庇ってくれたに違いない。
「ブチャラティ、送ってくれるんでしょう?」
「名前、おまえはもっと警戒心を持ってくれ…。」
「ギアッチョは平気よ。ずーっと一緒に相棒だったんだから!……何かトラブルでもあったんじゃない?」
「……それが気にくわないんだよ。」
「でも私が急に抜けたんだから、仕方ないでしょ。貴方のせいでもあるんだし、ギアッチョも大変だと思うよ…。」
「そうじゃあ無い……たくっ、あいつの名前ばかり呼ぶな…。」
「んっ…。」
徐々に苛立っているのか口調が荒げる彼を不思議に思っていると、急に黒髪が頬に触れ柔らかい感触が広がる。
重なった唇は一瞬の事をだったが、時が止まったかと思う程に長く感じ至近距離の彼の瞳に吸い込まれそうだ。
「オレの名前だけ呼んでくれないか、名前。」
「っ…!」
「くそっ……他の男の名前をおまえが呼ぶだけで、どうにかなっちまいそうだ…。」
「知らないわよ……だからってキスしないで。」
「じゃあ嫌だったら抵抗して構わない。」
「ちょっ…。」
そう言いながら私の両頬に手を添えて口付ける彼に、思わずぎゅっと両目を瞑ると暗闇の中でも彼で一杯になった。
そんな事も知らない彼はギアッチョの名前を呼んだ数だけ角度を変えてキスを続ける。
まるで私が抵抗しないのを知っているみたい…。
ドキドキと言う心音を聞きながら、私は彼と過ごす一瞬一瞬も奇跡なんだろうなんて考えてしまった。
be continued