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マスカレードを壊したい
名前変換
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「名前ちゃんさぁ、ブチャラティと付き合ったって本当?」
「…………それ以上言ったら4の呪いをかけるわよ。」
「あー、こわっ!!おまえさぁ、それはないんじゃあないのぉ?」
外から帰ってきたミスタが一目散にこちらに大股で向かい、私の隣に腰掛けたと思ったら耳打ちしてきた言葉に直ぐ様睨み付けてやった。
私のあまりにも低い声で呟いた言葉にご機嫌だった顔は、一瞬にして凍り付き猫の様に縮こまってしまった。
ナランチャにミスタ撃退法を教えてもらったけれど、効果覿面ね。
「どうせ、街の人達に聞いたんでしょう?本当に皆さん噂好きよね……。」
「なあんだ、噂かよ!つっまんねえな~。どうりでおかしいと思ったんだよ。」
「なにそれ……どういう事?」
"おかしい"と言うミスタの言葉に引っ掛かり、昨日貰った香ばしくどこか懐かしい店主自慢のビスコッティを噛みながら首を傾げ問いかけた。
ミスタは私の手にしている紙袋からビスコッティをちゃっかり1枚拝借して、音を立て床にポロポロと欠片を溢し頬張りながらブチャラティの部屋を指差した。
「ここだけの話だけどよぉ、ブチャラティの机あんだろぉ。見ちゃったんだよね、オレ。」
「何を?」
「写真だよ、しゃーしーんー!大事に飾ってあんのよ。あれはぜってぇブチャラティにとって、大切な恋人とかなんじゃあねぇのかなぁ。しかもすっげぇ可愛いの!さっすがブチャラティッ。隅に置けないぜ~!」
私は話を聞いた瞬間に頭を鈍器で殴られた時の様に大きな衝撃が走り抜け、目の奥がチカチカと痛んだと同時に色んな思考が真っ白な頭の中を飛び交った。
は、はぁあ?
私の事好きとか言ってるのに、他の女の写真を大事に飾ってるって訳!?
ああ、そういう事……、なんだかんだ言ったってやっぱり私の事からかっているだけなんだわ!
出会った時から今までの彼のアプローチとも取れた行動を、少しでも本気に捉えつつあった私は沸々と水が沸騰する様に怒りが募っていく。
しかしそんな私とは裏腹にミスタは相変わらず横で喋り続けているのだが、怒りのあまり耳に全くと言っていい程に入らず私は紙袋をギュウッと力強く握り締めた。
それからと言うもの、私は彼を避ける様にして生活を送る事にした。
幸運な事に彼自身を指名する任務が重なりアジトにあまり戻る事がなかった為に、事務作業をする私は顔を会わせる事もほとんど無かった。
「名前、ナランチャを見なかった?」
「うーん……見てないかな。食事にでも行ってるんじゃあない?」
「アイツ……あれほどアジトで待てって言っといたのに。」
そんなある日の事、昼間に戻ってきたフーゴは部屋を見渡しながらデスクで書類片手に打ち込み作業をしている私に問い掛けて来た。
私も静かなアジトは仕事がはかどる為、周りが見えていなかったのもあり同じく見渡して姿が見えないと首を振った。
「あ、そうだ。これブチャラティの机の上に置いておいてくれないかな?ぼくはナランチャを探してくるから……、お願いするよ。」
「あ、ちょ、ちょっと!」
フーゴはそう言うなり手にしていた茶封筒を私に手渡せば、急ぎの用事なのか右手を振ってナランチャを探すべく駆け足でアジトを後にしてしまった。
1人誰も居ないアジトに残された私は受け取った茶封筒を見つめ、どうするべきか迷っていた。
写真を見る絶好の機会……でも、盗み見るのも何か気が引ける気がする…。
で、でも、フーゴに用事を頼まれたんだもの!
これも私の仕事の1つだわっ。
あれ以来写真の事を考えない様にしてきたのだが、やはり気になっていたのは事実だ。
自分に言い聞かせる様にして、茶封筒を抱えて彼の部屋へ足を歩める事にした。
部下を信頼しているからか鍵を閉めていない部屋のノブに手を掛けて、ソッと扉を開けて中へ体を滑り込ませればキチンと片付けられた彼らしい部屋を見渡す。
「あった……。」
緊張感が私の周りを包み込むが、意を決して一歩一歩足を運ぶと静かな部屋にヒールのコツコツとした音が響きゆっくりと机に近付いていく。
机の上にはペン立てと、気付きにくい様にか隅っこの方にはお目当ての木製の写真立てが置かれていた。
ドキドキと胸を高鳴らしながら後ろ向きの写真立てに手を伸ばし、自身でも好奇心と見たくないと言う葛藤が渦巻きつつもゆっくりと正面に向きを変える。
「え…………。」
しかし、木製の写真立てに傷1つ付かない様に大事に入れられていた写真に私は小さく声を漏らしてからは言葉を失ってしまった。
いつ撮ったのだろうか。
そこにはまだギャングに入る前の、金髪の長い髪を下ろした幼さの残る少女の時の"私"が居たのだ。
私は時が止まったかの様に身動きが取れなくなり、写っている今の私とは違う"女の子"の私を懐かしい瞳で見つめていた。
「あどけない顔……。貴方は汚い世界をまだ知らないのね。」
もしも両親が生きていたら、きっとこのまま成長して普通の恋愛をして結婚でもするのかしら……。
なんて叶いもしない夢物語を想像しながら、写真をガラス越しにシンプルなベビーピンク色のネイルがしてある指先で愛おしそうに触れてみる。
すると写真立てを持つ手に背後から一回り大きな手が優しく包み込み、私自身を大きな影が覆ったのに気が付いた。
「名前はオレの宝物を盗みに来たのか?」
「ブチャラティ……。貴方なんで……。」
いつ帰ってきたのだろうか、勝手に部屋に侵入した私に全く怒ってなどおらず優しい瞳でこちらを見下ろす彼が居た。
私はなんだか悲しい映画でも観た後の様な、色んな感情の波に飲み込まれ身動きが取れ無くなってしまい後ろに立つ彼を見上げながら弱々しく呟いた。
「懐かしいだろう?ギャングになってからお互い会う事が出来なかった時に、おまえの家が引き払われると耳にしてな。こっそり忍び込んだのさ。その時に残っていたアルバムから1枚貰ったんだ。」
「そう……敵に襲撃されて逃げる様に私も身を隠してきたから……家に近寄れなかったのよね。」
「そうだと思った……。」
家族との思い出が詰まった宝箱の様な家を思い出し、鼻の奥がつんと切なくなり今にも泣き出しそうな私の目の前に1枚の写真が差し出された。
誰もが見るだけで幸せだとわかる写真。
そこには母と父が幼い1人娘の私を囲み愛しげに抱き締めていて、3人とも笑顔の溢れる様子が写真に納められていたのだ。
「あ…うそ………ブチャラティ、これ……。」
「名前の宝物だろう……渡すのが随分遅くなってすまなかった。」
「ッ……、あ……りがとう。」
私は我慢出来なくなり溢れ出す涙でぐちゃぐちゃな顔で、左右に首を振り彼に感謝の言葉をやっとの事で紡いだ。
久しぶりに流した涙は止まる事を知らず、子供の様に体を震わせ小さくなる私を彼は抱き締め背中を優しく上下に撫でてくれる。
今、この瞬間だけは全てを忘れて心も体も、彼に委ねたい……。
愛しき宝物と思い出を胸に抱えて、今だけはただの女のままで居させてと願った。
be continued
「…………それ以上言ったら4の呪いをかけるわよ。」
「あー、こわっ!!おまえさぁ、それはないんじゃあないのぉ?」
外から帰ってきたミスタが一目散にこちらに大股で向かい、私の隣に腰掛けたと思ったら耳打ちしてきた言葉に直ぐ様睨み付けてやった。
私のあまりにも低い声で呟いた言葉にご機嫌だった顔は、一瞬にして凍り付き猫の様に縮こまってしまった。
ナランチャにミスタ撃退法を教えてもらったけれど、効果覿面ね。
「どうせ、街の人達に聞いたんでしょう?本当に皆さん噂好きよね……。」
「なあんだ、噂かよ!つっまんねえな~。どうりでおかしいと思ったんだよ。」
「なにそれ……どういう事?」
"おかしい"と言うミスタの言葉に引っ掛かり、昨日貰った香ばしくどこか懐かしい店主自慢のビスコッティを噛みながら首を傾げ問いかけた。
ミスタは私の手にしている紙袋からビスコッティをちゃっかり1枚拝借して、音を立て床にポロポロと欠片を溢し頬張りながらブチャラティの部屋を指差した。
「ここだけの話だけどよぉ、ブチャラティの机あんだろぉ。見ちゃったんだよね、オレ。」
「何を?」
「写真だよ、しゃーしーんー!大事に飾ってあんのよ。あれはぜってぇブチャラティにとって、大切な恋人とかなんじゃあねぇのかなぁ。しかもすっげぇ可愛いの!さっすがブチャラティッ。隅に置けないぜ~!」
私は話を聞いた瞬間に頭を鈍器で殴られた時の様に大きな衝撃が走り抜け、目の奥がチカチカと痛んだと同時に色んな思考が真っ白な頭の中を飛び交った。
は、はぁあ?
私の事好きとか言ってるのに、他の女の写真を大事に飾ってるって訳!?
ああ、そういう事……、なんだかんだ言ったってやっぱり私の事からかっているだけなんだわ!
出会った時から今までの彼のアプローチとも取れた行動を、少しでも本気に捉えつつあった私は沸々と水が沸騰する様に怒りが募っていく。
しかしそんな私とは裏腹にミスタは相変わらず横で喋り続けているのだが、怒りのあまり耳に全くと言っていい程に入らず私は紙袋をギュウッと力強く握り締めた。
それからと言うもの、私は彼を避ける様にして生活を送る事にした。
幸運な事に彼自身を指名する任務が重なりアジトにあまり戻る事がなかった為に、事務作業をする私は顔を会わせる事もほとんど無かった。
「名前、ナランチャを見なかった?」
「うーん……見てないかな。食事にでも行ってるんじゃあない?」
「アイツ……あれほどアジトで待てって言っといたのに。」
そんなある日の事、昼間に戻ってきたフーゴは部屋を見渡しながらデスクで書類片手に打ち込み作業をしている私に問い掛けて来た。
私も静かなアジトは仕事がはかどる為、周りが見えていなかったのもあり同じく見渡して姿が見えないと首を振った。
「あ、そうだ。これブチャラティの机の上に置いておいてくれないかな?ぼくはナランチャを探してくるから……、お願いするよ。」
「あ、ちょ、ちょっと!」
フーゴはそう言うなり手にしていた茶封筒を私に手渡せば、急ぎの用事なのか右手を振ってナランチャを探すべく駆け足でアジトを後にしてしまった。
1人誰も居ないアジトに残された私は受け取った茶封筒を見つめ、どうするべきか迷っていた。
写真を見る絶好の機会……でも、盗み見るのも何か気が引ける気がする…。
で、でも、フーゴに用事を頼まれたんだもの!
これも私の仕事の1つだわっ。
あれ以来写真の事を考えない様にしてきたのだが、やはり気になっていたのは事実だ。
自分に言い聞かせる様にして、茶封筒を抱えて彼の部屋へ足を歩める事にした。
部下を信頼しているからか鍵を閉めていない部屋のノブに手を掛けて、ソッと扉を開けて中へ体を滑り込ませればキチンと片付けられた彼らしい部屋を見渡す。
「あった……。」
緊張感が私の周りを包み込むが、意を決して一歩一歩足を運ぶと静かな部屋にヒールのコツコツとした音が響きゆっくりと机に近付いていく。
机の上にはペン立てと、気付きにくい様にか隅っこの方にはお目当ての木製の写真立てが置かれていた。
ドキドキと胸を高鳴らしながら後ろ向きの写真立てに手を伸ばし、自身でも好奇心と見たくないと言う葛藤が渦巻きつつもゆっくりと正面に向きを変える。
「え…………。」
しかし、木製の写真立てに傷1つ付かない様に大事に入れられていた写真に私は小さく声を漏らしてからは言葉を失ってしまった。
いつ撮ったのだろうか。
そこにはまだギャングに入る前の、金髪の長い髪を下ろした幼さの残る少女の時の"私"が居たのだ。
私は時が止まったかの様に身動きが取れなくなり、写っている今の私とは違う"女の子"の私を懐かしい瞳で見つめていた。
「あどけない顔……。貴方は汚い世界をまだ知らないのね。」
もしも両親が生きていたら、きっとこのまま成長して普通の恋愛をして結婚でもするのかしら……。
なんて叶いもしない夢物語を想像しながら、写真をガラス越しにシンプルなベビーピンク色のネイルがしてある指先で愛おしそうに触れてみる。
すると写真立てを持つ手に背後から一回り大きな手が優しく包み込み、私自身を大きな影が覆ったのに気が付いた。
「名前はオレの宝物を盗みに来たのか?」
「ブチャラティ……。貴方なんで……。」
いつ帰ってきたのだろうか、勝手に部屋に侵入した私に全く怒ってなどおらず優しい瞳でこちらを見下ろす彼が居た。
私はなんだか悲しい映画でも観た後の様な、色んな感情の波に飲み込まれ身動きが取れ無くなってしまい後ろに立つ彼を見上げながら弱々しく呟いた。
「懐かしいだろう?ギャングになってからお互い会う事が出来なかった時に、おまえの家が引き払われると耳にしてな。こっそり忍び込んだのさ。その時に残っていたアルバムから1枚貰ったんだ。」
「そう……敵に襲撃されて逃げる様に私も身を隠してきたから……家に近寄れなかったのよね。」
「そうだと思った……。」
家族との思い出が詰まった宝箱の様な家を思い出し、鼻の奥がつんと切なくなり今にも泣き出しそうな私の目の前に1枚の写真が差し出された。
誰もが見るだけで幸せだとわかる写真。
そこには母と父が幼い1人娘の私を囲み愛しげに抱き締めていて、3人とも笑顔の溢れる様子が写真に納められていたのだ。
「あ…うそ………ブチャラティ、これ……。」
「名前の宝物だろう……渡すのが随分遅くなってすまなかった。」
「ッ……、あ……りがとう。」
私は我慢出来なくなり溢れ出す涙でぐちゃぐちゃな顔で、左右に首を振り彼に感謝の言葉をやっとの事で紡いだ。
久しぶりに流した涙は止まる事を知らず、子供の様に体を震わせ小さくなる私を彼は抱き締め背中を優しく上下に撫でてくれる。
今、この瞬間だけは全てを忘れて心も体も、彼に委ねたい……。
愛しき宝物と思い出を胸に抱えて、今だけはただの女のままで居させてと願った。
be continued