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giorni felici
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カゴに洗濯物を詰めてベランダに出ると雲一つ無い、コバルトブルーの空が広がる。
こんな良い天気には、洗濯物を干すと気持ちも晴れやかになるものだ。一人暮らしだと洗濯物は少ない方だが、かき集め洗濯を回したのにも理由をもう1つ見つけたからだ。
「あ……来たわ…。」
ゆっくりと物干し竿にタオルを引っかけると、歩道に白地に独特の模様が描かれているスーツの男性が歩く姿を見つけた。
そう。彼がたまにマンションの前を歩く姿を発見してからというもの、頻繁に洗濯をする様になったのだ。
ブローノ・ブチャラティ。
噂しか聞いてはいなかった彼が通り過ぎる度に、胸が高鳴って仕方がない。
寧ろときめかない女性がいるのだろうか?先の尖った靴で優雅に歩く彼はファッションモデルがランナウェイを歩く様に魅力的で、きっと誰もが見入ってしまう。
いったいどんな声で話すの?
どんな趣味があるんだろう。
スイーツは好きかしら。
一度で良いから目が合ってみたい。
彼をベランダから見つめる度に想いだけが募り欲求が増えていくのだが、案の定話しかける事も出来ずほんの少しのきっかけだけを待ち望んでいた。
「これじゃストーカーみたい…。」
虚しさが押し寄せ溜め息混じりに呟いた瞬間、手にしていたレースのハンカチがスルリと指の隙間から滑り落ちた。
「あっ…。」
まるでスローモーションの様にゆっくりと白いハンカチが彼の黒髪を掠めて地面に舞い落ちたと共に、一定のリズムを刻んでいた足がその場で止まった。
どうしよう……!
そう思った時には既に遅かった。何故なら私のハンカチを拾い見上げた彼としっかりと瞳が合ったのだ。別に悪い事をしている訳でもないのにこれからの状況に恐怖すらも私を襲う。そのくらい念願の出来事に目が反らせられず、徐々に頬が紅潮して胸が怖いくらいにバクバクと高鳴るのが解る。
「キミのか?」
2階のベランダに立つ私を見上げながら、ハンカチを持ち訪ねる彼は離れた場所からでも解る程に耳に残る素敵な響きの声だった。
「は、はい!すみません、すぐ取りに行きます!」
「平気だ。オレが行くから、扉の前で待っててくれ。」
私の言葉をやんわりと優しく断れば、当たり前の様に言うと彼は踵を返してマンションの入り口に向かってしまった。
どうしようどうしよう…!
ブチャラティさんと目が合えただけじゃなく、声まで掛けてもらえちゃった!
しかもこれからハンカチを届けてくれるだなんて…。ああ、神様ありがとうございます…!
突然の出来事に逸る心を押さえつつも急いでスカートを翻し室内に戻ると、風で乱れた長い髪を整えながら玄関に向かう。
階段しか無いマンション。端から2つ目の部屋を出て廊下を走ると、向かい側から彼の姿が視界に入り此方に気付くとふっと笑みを浮かべてくれた。
「不用心だな。」
「へ?」
只でさえ初めてまともに顔を合わせたのに、不意打ちの笑みに惚けて見入ってしまい彼の言葉に反応が遅れてしまう。投げ掛けられた言葉の意味が解らず首を傾げて、予想よりも高身長の彼を見上げた。
「女性なんだ、少しの間でも鍵は閉めるべきだぜ?ここはネオポリスなんだ。いくらオレでも用心に越したことはない。」
「あ、貴方はそんな事しません!」
意味を理解して慌てて首を振りながら、全力で否定する私に一瞬驚く彼だったが直ぐにクスッと笑う。笑われてしまえば醜態をさらしてしまった様に思えて急に恥ずかしくなり、魅力的な今日の空の様なコバルトブルーの瞳から目を反らす。
どうしよう。彼と話せるなんて思ってもみなかったから、上手く会話が出てこない。
「だって貴方はこの街を守ってくれる、ブチャラティ…さんでしょう?」
「ああ、知っていたんだな…。」
知っているも何も、ここ数ヶ月前から貴方を見てました…!
内心叫びながら返事をして、私が見ていた事などこれっぽっちも知らない彼を再度チラリと盗み見る。緊張からか掌には汗が滲み気を紛らわす様にスカートの裾をぎゅっと握り締めた。
「キミみたいな可愛いお嬢さんに知っていてもらえて光栄だが、油断は禁物だ。」
そう言いながらハンカチを差し出す手に気付けば受け取ろうとする私の手を、そのままハンカチごと彼の長い指で包まれ握られてしまう。
「オレだってギャングの前に男だからな…。」
「っ…!」
背が高い彼は少し屈めばニヤリと笑うと、絵本の王子の様に手の甲に唇を触れるか触れないかの距離で止める。見上げる私はボッと顔から火が出る程の熱を感じ、言葉にもならない声を上げた。
ほらね。手だけじゃない、また私の心までも彼は簡単に奪っていく。
「冗談だ。こうして無垢なお嬢さんに危険を教えるのも、仕事だからな。すぐ手を出す男は山程いる。」
男性慣れしていないと一目で解る反応を見て安心したのか、また宥める様に優しい声で言う彼は顔を離しハンカチを握らせてくれる。
だが、彼に子供扱いされた様に感じた私は思わず眉を寄せて素直に受け取れなくなってしまった。
「お、お嬢さんじゃないです!私も20歳、貴方と一緒よ。」
「へえ、これは失礼。そうは見えないってぇ事さ。…許してくれるか?」
そんな可愛げの無い私に対しても許しをこう彼は紳士的で、此方の表情を覗き込み確認しつつ頭をソッと撫でくれる。だが、謝りながらもやはり行動では子供扱いしているのだ。
「お礼も予てお茶してくれるなら構わないわ。」
「…すまない。これから用事があってな。」
ああ……どうして可愛げの無い事言っちゃうのかしら。
今まで彼と話した時の事を思い描いていたのだが、実際はこうも上手くいかないものだと思い知らされる。自身の物言いと彼の返事に先程まで浮かれていた気持ちが一気に沈んだが、寧ろここまでの展開に発展した事が凄いことなのだ。
「そう、予定があったのに足を止めてしまってごめんなさい。でも拾ってもらえて助かったわ!」
私は気持ちを振り払う様にとびきりの笑顔を向ければ、彼は少し眉を下げ肩を竦めて首を左右に振り微笑み掛けてくれた。
「しかしそれだとキミに恥をかかせてしまうな。……またの機会に寄らせてもらうとするよ。それじゃあダメかい?」
「本当!?あっ……、構わないわ。」
彼の予想外の言葉が返ってくれば思わずパアッと瞳を輝かせた私だが、途端に自身の行動に恥ずかしくなり照れ笑いを浮かべた。
「良かった…じゃあまたな。次ぎに会える日を楽しみにしているぜ。」
私の返事を聞くなり爽やかな笑みを浮かべてから踵を返すと、コツコツと廊下に軽快な靴音を響かせながら歩き始めた。
私は姿が見えなくなるまでハンカチを握り締めて、夢でも見ているかの様にぼうっと先程までの出来事を思い返していた。
嘘みたい…今まで見てるだけの彼と話までしちゃった。しかも約束まで…!ああ、なんて単純なんだろう。彼に一喜一憂しちゃうなんて…。
私は彼の姿が見えなくなると喜びを押さえられなくなり、徐々ににやける口元をハンカチで隠しながら踵を返し部屋まで駆け出した。
今度は彼の言う通りしっかりと鍵を閉めて…。
be continued
こんな良い天気には、洗濯物を干すと気持ちも晴れやかになるものだ。一人暮らしだと洗濯物は少ない方だが、かき集め洗濯を回したのにも理由をもう1つ見つけたからだ。
「あ……来たわ…。」
ゆっくりと物干し竿にタオルを引っかけると、歩道に白地に独特の模様が描かれているスーツの男性が歩く姿を見つけた。
そう。彼がたまにマンションの前を歩く姿を発見してからというもの、頻繁に洗濯をする様になったのだ。
ブローノ・ブチャラティ。
噂しか聞いてはいなかった彼が通り過ぎる度に、胸が高鳴って仕方がない。
寧ろときめかない女性がいるのだろうか?先の尖った靴で優雅に歩く彼はファッションモデルがランナウェイを歩く様に魅力的で、きっと誰もが見入ってしまう。
いったいどんな声で話すの?
どんな趣味があるんだろう。
スイーツは好きかしら。
一度で良いから目が合ってみたい。
彼をベランダから見つめる度に想いだけが募り欲求が増えていくのだが、案の定話しかける事も出来ずほんの少しのきっかけだけを待ち望んでいた。
「これじゃストーカーみたい…。」
虚しさが押し寄せ溜め息混じりに呟いた瞬間、手にしていたレースのハンカチがスルリと指の隙間から滑り落ちた。
「あっ…。」
まるでスローモーションの様にゆっくりと白いハンカチが彼の黒髪を掠めて地面に舞い落ちたと共に、一定のリズムを刻んでいた足がその場で止まった。
どうしよう……!
そう思った時には既に遅かった。何故なら私のハンカチを拾い見上げた彼としっかりと瞳が合ったのだ。別に悪い事をしている訳でもないのにこれからの状況に恐怖すらも私を襲う。そのくらい念願の出来事に目が反らせられず、徐々に頬が紅潮して胸が怖いくらいにバクバクと高鳴るのが解る。
「キミのか?」
2階のベランダに立つ私を見上げながら、ハンカチを持ち訪ねる彼は離れた場所からでも解る程に耳に残る素敵な響きの声だった。
「は、はい!すみません、すぐ取りに行きます!」
「平気だ。オレが行くから、扉の前で待っててくれ。」
私の言葉をやんわりと優しく断れば、当たり前の様に言うと彼は踵を返してマンションの入り口に向かってしまった。
どうしようどうしよう…!
ブチャラティさんと目が合えただけじゃなく、声まで掛けてもらえちゃった!
しかもこれからハンカチを届けてくれるだなんて…。ああ、神様ありがとうございます…!
突然の出来事に逸る心を押さえつつも急いでスカートを翻し室内に戻ると、風で乱れた長い髪を整えながら玄関に向かう。
階段しか無いマンション。端から2つ目の部屋を出て廊下を走ると、向かい側から彼の姿が視界に入り此方に気付くとふっと笑みを浮かべてくれた。
「不用心だな。」
「へ?」
只でさえ初めてまともに顔を合わせたのに、不意打ちの笑みに惚けて見入ってしまい彼の言葉に反応が遅れてしまう。投げ掛けられた言葉の意味が解らず首を傾げて、予想よりも高身長の彼を見上げた。
「女性なんだ、少しの間でも鍵は閉めるべきだぜ?ここはネオポリスなんだ。いくらオレでも用心に越したことはない。」
「あ、貴方はそんな事しません!」
意味を理解して慌てて首を振りながら、全力で否定する私に一瞬驚く彼だったが直ぐにクスッと笑う。笑われてしまえば醜態をさらしてしまった様に思えて急に恥ずかしくなり、魅力的な今日の空の様なコバルトブルーの瞳から目を反らす。
どうしよう。彼と話せるなんて思ってもみなかったから、上手く会話が出てこない。
「だって貴方はこの街を守ってくれる、ブチャラティ…さんでしょう?」
「ああ、知っていたんだな…。」
知っているも何も、ここ数ヶ月前から貴方を見てました…!
内心叫びながら返事をして、私が見ていた事などこれっぽっちも知らない彼を再度チラリと盗み見る。緊張からか掌には汗が滲み気を紛らわす様にスカートの裾をぎゅっと握り締めた。
「キミみたいな可愛いお嬢さんに知っていてもらえて光栄だが、油断は禁物だ。」
そう言いながらハンカチを差し出す手に気付けば受け取ろうとする私の手を、そのままハンカチごと彼の長い指で包まれ握られてしまう。
「オレだってギャングの前に男だからな…。」
「っ…!」
背が高い彼は少し屈めばニヤリと笑うと、絵本の王子の様に手の甲に唇を触れるか触れないかの距離で止める。見上げる私はボッと顔から火が出る程の熱を感じ、言葉にもならない声を上げた。
ほらね。手だけじゃない、また私の心までも彼は簡単に奪っていく。
「冗談だ。こうして無垢なお嬢さんに危険を教えるのも、仕事だからな。すぐ手を出す男は山程いる。」
男性慣れしていないと一目で解る反応を見て安心したのか、また宥める様に優しい声で言う彼は顔を離しハンカチを握らせてくれる。
だが、彼に子供扱いされた様に感じた私は思わず眉を寄せて素直に受け取れなくなってしまった。
「お、お嬢さんじゃないです!私も20歳、貴方と一緒よ。」
「へえ、これは失礼。そうは見えないってぇ事さ。…許してくれるか?」
そんな可愛げの無い私に対しても許しをこう彼は紳士的で、此方の表情を覗き込み確認しつつ頭をソッと撫でくれる。だが、謝りながらもやはり行動では子供扱いしているのだ。
「お礼も予てお茶してくれるなら構わないわ。」
「…すまない。これから用事があってな。」
ああ……どうして可愛げの無い事言っちゃうのかしら。
今まで彼と話した時の事を思い描いていたのだが、実際はこうも上手くいかないものだと思い知らされる。自身の物言いと彼の返事に先程まで浮かれていた気持ちが一気に沈んだが、寧ろここまでの展開に発展した事が凄いことなのだ。
「そう、予定があったのに足を止めてしまってごめんなさい。でも拾ってもらえて助かったわ!」
私は気持ちを振り払う様にとびきりの笑顔を向ければ、彼は少し眉を下げ肩を竦めて首を左右に振り微笑み掛けてくれた。
「しかしそれだとキミに恥をかかせてしまうな。……またの機会に寄らせてもらうとするよ。それじゃあダメかい?」
「本当!?あっ……、構わないわ。」
彼の予想外の言葉が返ってくれば思わずパアッと瞳を輝かせた私だが、途端に自身の行動に恥ずかしくなり照れ笑いを浮かべた。
「良かった…じゃあまたな。次ぎに会える日を楽しみにしているぜ。」
私の返事を聞くなり爽やかな笑みを浮かべてから踵を返すと、コツコツと廊下に軽快な靴音を響かせながら歩き始めた。
私は姿が見えなくなるまでハンカチを握り締めて、夢でも見ているかの様にぼうっと先程までの出来事を思い返していた。
嘘みたい…今まで見てるだけの彼と話までしちゃった。しかも約束まで…!ああ、なんて単純なんだろう。彼に一喜一憂しちゃうなんて…。
私は彼の姿が見えなくなると喜びを押さえられなくなり、徐々ににやける口元をハンカチで隠しながら踵を返し部屋まで駆け出した。
今度は彼の言う通りしっかりと鍵を閉めて…。
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