こちらで名前変換を行えます。
シークレットな勉強会
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
血液型で全ての性格が決まる訳じゃない。
心理学では明確な定義は無いが、生きてきた環境や関わってきた人物、また自身に課せられた経験がその人物の性格を作っていくとも言われている。"持って生まれた性格""天性から備わっている性格"も、個性の1つでもあるし、遺伝の影響も少なからず受けているのも事実。
その1つが我々の身体を隅々まで流れる血液から解る。血液型にもそれぞれ統計で出ている性格の特徴が解っているが、これも当てはまる人と当てはまらない人がいるが名前は誰もが口を揃えて言う「典型的なA型」なのだ。
真面目で几帳面な優等生タイプ、責任感が強く完璧主義、綺麗好きで整理整頓が得意、神経質で完璧主義者。マネキンが決められたテーマの服を着てショーウィンドウで完璧なポーズを取って飾られてるみたいなA型の代表が名前なのだ。
毎夜、明日の支度をして再度確認をしてから就寝に着くので忘れ物を今までした事はないし、この方が効率もいいからゆったりとした気持ちで家を出る事が出来るから何故皆がそうしないのか幼少期から思っていた。
「名前、失礼ですが…あの…ソックスの左右の色が違ってませんか?」
「えっ…。ぁ…。」
ジョルノに指摘されて、足を組んだ時に皺1つ無いスーツのパンツから覗く僅かなストッキング素材のソックスの色合いが若干違っている事に気付く。それはよくよく見ないと気付かない程の、薄いブラウンとそれよりももう少し濃いブラウンの違い。普通なら指摘されなく、誰にも気付かれずに家に帰って脱いだ時に漸く気付く程の些細なミス。
しかしジョルノが気付いたのは、そのミスをしたのが名前だったから。普段完璧な人程、余計に目に付いたのだ。
初めてのミスにカアッと耳まで赤くなる私は、組んでいた足を崩してジョルノに小さな声で「ありがとう…助かりました。」と礼を添えた。そんな姿が妙に可愛らしく見えて、ジョルノは普段なら聞かないが踏み出して聞いてみても言いかと唇を開いた。
「…最近なんだか落ち着かないみたいですけど、何かありました?」
「いえ、特に何も。」
しかし踏み入れるなとばかりにバッサリとジョルノの好奇心は切り裂かれてしまった。
やっぱり名前の本音まではまだ難しいか…。
今まで興味が無かった訳ではないが、一応メンバーとしては仲良くなれるならばなっておきたいのがジョルノの本音だ。何故なら一時の時間を共にする学校の同級生とは違い、この護衛チームはぼくがギャングスターになった後も大事な仲間に違いないから。同級生や親以上に時間を共に過ごしてるんですから…彼女ももっと信頼してくれてもいいんですがね。
「…あの、やっぱり聞いていいですか?」
あまりにも唐突な返答に思わず「え…何て言いました?」なんて自分でも間抜けなくらい耳を疑ってしまった。そしたら少し嫌そうに眉を寄せて「ジョルノ…ちゃんと聞いて。……聞きたい事があります」と強めな口調の彼女は何時もより幼く見えた。だって1度拒否したんですよ?聞き返したって仕方がないと思う。
正直な所。さっきは信頼してほしいと言いつつ、どんな事に悩んでるのか純粋に気になるんですけど…もしや恋愛事だったり…。
「習い事が無くなっちゃたんだけど、ジョルノならどうします?」
あ…違ったか。
ジョルノの久しぶりにワクワクした気持ちが風船の空気が抜けたみたく萎んでいった。だがチラリと盗み見る名前の瞳は曇り無く澄んでいて、そして何処か儚げで何だか放っては置けない気にさせた。
「そうですね…ぼくなら、興味がある新しい習い事を探します。」
「興味…は今はアレしかなかったわ。」
「うーん…ならもう1度習ったらいいじゃあないですか。」
「もう1度…。ねぇ、それって…先生を変えるって事よね?」
「なるほど。名前は先生がお気に入りだったんですね?」
「べ、別にそう言う訳ではっ…。か、帰ります!」
「え…。」
いきなり立ち上がり慌てる名前を見上げると、真っ赤になったかと思ったら表情は曇って行き、みるみるうちに今にも雨が降りだしそうな程に切ないモノへと変わっていった。そして傷1つ無い長財布から多めのお金を取り出しジョルノの前に置けば逃げる様に去っていく。
が、直進していた彼女がいきなりUターンしてズカズカと雑な足音を立てて迫るからジョルノは何事かと息を飲むも、目の前のお金の隣に転がったのはカラフルな銀紙に包まれた3粒のチョコだった。
「お礼、忘れてました。」
それだけ言うと名前は機敏な動きで今度こそジョルノの前から姿を消した。
しかし何だかその行動が可笑しくてジョルノは「ふふっ、はははっ」と久しぶりに声を上げて笑いテーブルに置かれたチョコを指で弄りつつ彼女の変化に心和んだのであった。
* ** ***
心があの時から正常じゃない。
症状は3日前の、ブチャラティに告げられた"金曜日の勉強会の終わり"から始まったのは確かだ。成人の安静時の心拍数の正常値は1分間に60~100回とされているけど、あれからずっと心臓は速まったり、落ち着いたと思ったらキリキリと痛くなったり…なんだか心臓だけじゃなく胃まで痛みが広がっている気さえする。それに今日だって、ジョルノの言葉で名前の身体はグツグツと沸騰しそうなくらい熱くなった。
更年期障害に早すぎるし…生理前かしら。
私は鞄から手帳を取り出してスケジュールを確認するも、先月から割り出すが今月はまだ先だ。
なら…ブチャラティの言葉がショックだったとでも言うの?そんなに私の中で大事な事だったのかと問い掛ければ、確かに今1番興味を持っていた事だったし残念ではある。
「私はブチャラティを…気に入っていた?」
名前はそう自身に問い掛けながらペンを走らせた。
誕生日に家族に貰ったレモンの様に発色の良いペンで、赤い背表紙のノートに書くのは日々起こった事を記録する日記。この習慣も小学生の時からずっと続いていて、もう書かないと落ち着かないくらい身に付いている。それこそ他愛もない事を綴っていてつまらないかも知れないが、私しか読み返さないのだからと事細かに書くが最近じゃ病院のカルテみたくなっている。
気に入っていたの…かな?ブチャラティも『他に教えて貰うと良い』って言っていたけれど、実際頼んでないから解らないけど…想像する限り頼りないし、なら自身で調べてしまった方が良い気すらする。しかしその考えも中断させられてしまう。
ピンポーン!
「!…こんな時間に誰?」
止めていたペン先が?マークを滲ませた時に、室内に来客を告げるチャイムが響いた。壁に掛かる時計に目をやれば19時を示す。こんな夕飯時に訪れる人など居ないけど…と思いつつ手にしていたペンを置いて名前は玄関へと向かう。
忘れていた…。
私はチェーン越しの人物を見るなり心臓がひゅんっと跳ねる感覚に襲われる。少し不機嫌そうに眉が釣り上がる男性は、単発で爽やかな雰囲気を持つ恋人であるジュゼッペ。彼が扉に手を添えてニッコリと笑顔を張り付けるから尚更背筋でゾワゾワと何かが踊るみたいな感覚が起こる。
「入れてくれよ。…まさか恋人を外で待たせっききりにはしないだろ、名前は。」
「…ええ、どうぞ。」
言葉通りチェーンを外して、可愛いインテリアの無いお世辞に女性の部屋らしいと言えない部屋へ招き入れた。
今まで急に来た事ないのに…。歩く度にギシギシと軋む床と比例して、後ろを歩く名前の胸も嫌な予感に押し潰されそうで軋んだ音を立て始める。
「何だか久しぶりだね、キミと会うのも。ぼくのメールも電話にも気付いてなかった?……そんなに忙しいんだ。」
「あ…ごめんなさい。最近仕事が立て込んでて…夜遅くに連絡するのも悪いと思って…。」
「ふーん。」
「……何か飲み物でも入れるわ。……っ!」
何だか室内に漂う雰囲気に飲み込まれたくなくて、名前が身を翻した瞬間だった。
手首を捕まれ後ろに引っ張られたかと思うと、視界いっぱいにジュゼッペが写り混むと反射神経が機敏に機能して顔を背けた。何故ならフラッシュバックしたのだ。
「何だよその態度…オレとのセックスを拒否してからずっとだよな?」
「そ…れは。やっ、止めて!」
「いいだろっ、ずっと我慢してやったんだっ!」
「やっ…!」
まずい。私を掴む手首に力が入って爪が食い込むのは、態度に苛立っている証拠で顔を見なくても解る。なのにキスは諦めたのかジュゼッペがパジャマの襟元から覗く首筋に顔を埋めて、強引にセックスへと持ち込もうとするから名前は必死に大柄な彼の中でもがく。
嫌だ!気持ち悪いっ…!!
心の内でハッキリと表現された言葉が形になったのか、気付いた時にはジュゼッペは大きな音を立てて床に尻餅を付いていた。何が起こったか解らない。例えるなら、自分の事なのに映画を観ているみたいな感覚でただただ起こった現実に付いていくに精一杯。はあ…はあ…と息が荒れているのに、隣には静かに佇む私のスタンドの存在で漸く力を借りたのだと知った。
「もう…はあっ…帰って…!」
自分でも驚くくらい発音良く発した言葉は、恋人を弾き飛ばす程の抵抗を見せた。付き合ってから流されていた名前の、初めてハッキリとした意思表示。
「くそっ、付き合ってやったらいい気になりやがって!セックスも出来ないお前とは終わりだ!」とジュゼッペは怒りから顔を真っ赤にして立ち上がると、女とか関係無く突き飛ばしてきたがスタンドが受けてめてくれて倒れずに済んだ。
反吐が出るくらい汚い言葉と扉が乱暴に閉まる音が響いた後に、再度訪れるいつもの安息の静寂。
「は…はは…。震えてる…。」
名前が安堵すると身体から力が抜けた筈なのに、捕まれていた手は小刻みに震えていて自身が想像以上に恐怖に飲み込まれていた事を示す。
彼は付き合ってから暫くして、こう言う乱暴な1面を見せる時が増えていった。初めての彼氏と言う存在だったし、こう言うものか…くらいにしか軽視していなかったが…やはり普通じゃないと今更思い知った。ふーっと長く息を吐いて気持ちを落ち着かせると、別れる事が出来て良かったと心から思える。
それから名前が長い睫毛を伏せて視界が暗転すると、クリアになった心に見えてきた存在を確認するのである。そうか…。
「ブチャラティを知ってしまったからだ…。」
ジュゼッペに乱暴されそうな時にフラッシュバックしたのは、ブチャラティの私を思いやる気持ちと雰囲気。真逆さに嫌悪感に襲われたのだ。彼はいつだって無茶な質問にも真剣に考えてくれていたし、昔から1歩離れた場所で見ていた私の中へ簡単に入っては変な目で見ず寄り添ってくれた。何より…。
ああ、まただ。あの自然と距離が近付いて触れてしまいそうな唇。少しずつ近付くにつれて自分が自分じゃなくなるみたいに身体がざわめく感覚。頭の天辺から爪先まで熱くなる巡る血脈。この感情は初めてでハッキリとした言葉で言えないけど…けど、きっと…。
「気に入っていたのね…。」
初めて出来た恋人に別れを告げられたら普通は悲しい感情で支配されるのだろう。なのに置き去りにされた私は、見つけた感情に鼻の奥が切なくなり泣きそうになった。
be continued
心理学では明確な定義は無いが、生きてきた環境や関わってきた人物、また自身に課せられた経験がその人物の性格を作っていくとも言われている。"持って生まれた性格""天性から備わっている性格"も、個性の1つでもあるし、遺伝の影響も少なからず受けているのも事実。
その1つが我々の身体を隅々まで流れる血液から解る。血液型にもそれぞれ統計で出ている性格の特徴が解っているが、これも当てはまる人と当てはまらない人がいるが名前は誰もが口を揃えて言う「典型的なA型」なのだ。
真面目で几帳面な優等生タイプ、責任感が強く完璧主義、綺麗好きで整理整頓が得意、神経質で完璧主義者。マネキンが決められたテーマの服を着てショーウィンドウで完璧なポーズを取って飾られてるみたいなA型の代表が名前なのだ。
毎夜、明日の支度をして再度確認をしてから就寝に着くので忘れ物を今までした事はないし、この方が効率もいいからゆったりとした気持ちで家を出る事が出来るから何故皆がそうしないのか幼少期から思っていた。
「名前、失礼ですが…あの…ソックスの左右の色が違ってませんか?」
「えっ…。ぁ…。」
ジョルノに指摘されて、足を組んだ時に皺1つ無いスーツのパンツから覗く僅かなストッキング素材のソックスの色合いが若干違っている事に気付く。それはよくよく見ないと気付かない程の、薄いブラウンとそれよりももう少し濃いブラウンの違い。普通なら指摘されなく、誰にも気付かれずに家に帰って脱いだ時に漸く気付く程の些細なミス。
しかしジョルノが気付いたのは、そのミスをしたのが名前だったから。普段完璧な人程、余計に目に付いたのだ。
初めてのミスにカアッと耳まで赤くなる私は、組んでいた足を崩してジョルノに小さな声で「ありがとう…助かりました。」と礼を添えた。そんな姿が妙に可愛らしく見えて、ジョルノは普段なら聞かないが踏み出して聞いてみても言いかと唇を開いた。
「…最近なんだか落ち着かないみたいですけど、何かありました?」
「いえ、特に何も。」
しかし踏み入れるなとばかりにバッサリとジョルノの好奇心は切り裂かれてしまった。
やっぱり名前の本音まではまだ難しいか…。
今まで興味が無かった訳ではないが、一応メンバーとしては仲良くなれるならばなっておきたいのがジョルノの本音だ。何故なら一時の時間を共にする学校の同級生とは違い、この護衛チームはぼくがギャングスターになった後も大事な仲間に違いないから。同級生や親以上に時間を共に過ごしてるんですから…彼女ももっと信頼してくれてもいいんですがね。
「…あの、やっぱり聞いていいですか?」
あまりにも唐突な返答に思わず「え…何て言いました?」なんて自分でも間抜けなくらい耳を疑ってしまった。そしたら少し嫌そうに眉を寄せて「ジョルノ…ちゃんと聞いて。……聞きたい事があります」と強めな口調の彼女は何時もより幼く見えた。だって1度拒否したんですよ?聞き返したって仕方がないと思う。
正直な所。さっきは信頼してほしいと言いつつ、どんな事に悩んでるのか純粋に気になるんですけど…もしや恋愛事だったり…。
「習い事が無くなっちゃたんだけど、ジョルノならどうします?」
あ…違ったか。
ジョルノの久しぶりにワクワクした気持ちが風船の空気が抜けたみたく萎んでいった。だがチラリと盗み見る名前の瞳は曇り無く澄んでいて、そして何処か儚げで何だか放っては置けない気にさせた。
「そうですね…ぼくなら、興味がある新しい習い事を探します。」
「興味…は今はアレしかなかったわ。」
「うーん…ならもう1度習ったらいいじゃあないですか。」
「もう1度…。ねぇ、それって…先生を変えるって事よね?」
「なるほど。名前は先生がお気に入りだったんですね?」
「べ、別にそう言う訳ではっ…。か、帰ります!」
「え…。」
いきなり立ち上がり慌てる名前を見上げると、真っ赤になったかと思ったら表情は曇って行き、みるみるうちに今にも雨が降りだしそうな程に切ないモノへと変わっていった。そして傷1つ無い長財布から多めのお金を取り出しジョルノの前に置けば逃げる様に去っていく。
が、直進していた彼女がいきなりUターンしてズカズカと雑な足音を立てて迫るからジョルノは何事かと息を飲むも、目の前のお金の隣に転がったのはカラフルな銀紙に包まれた3粒のチョコだった。
「お礼、忘れてました。」
それだけ言うと名前は機敏な動きで今度こそジョルノの前から姿を消した。
しかし何だかその行動が可笑しくてジョルノは「ふふっ、はははっ」と久しぶりに声を上げて笑いテーブルに置かれたチョコを指で弄りつつ彼女の変化に心和んだのであった。
* ** ***
心があの時から正常じゃない。
症状は3日前の、ブチャラティに告げられた"金曜日の勉強会の終わり"から始まったのは確かだ。成人の安静時の心拍数の正常値は1分間に60~100回とされているけど、あれからずっと心臓は速まったり、落ち着いたと思ったらキリキリと痛くなったり…なんだか心臓だけじゃなく胃まで痛みが広がっている気さえする。それに今日だって、ジョルノの言葉で名前の身体はグツグツと沸騰しそうなくらい熱くなった。
更年期障害に早すぎるし…生理前かしら。
私は鞄から手帳を取り出してスケジュールを確認するも、先月から割り出すが今月はまだ先だ。
なら…ブチャラティの言葉がショックだったとでも言うの?そんなに私の中で大事な事だったのかと問い掛ければ、確かに今1番興味を持っていた事だったし残念ではある。
「私はブチャラティを…気に入っていた?」
名前はそう自身に問い掛けながらペンを走らせた。
誕生日に家族に貰ったレモンの様に発色の良いペンで、赤い背表紙のノートに書くのは日々起こった事を記録する日記。この習慣も小学生の時からずっと続いていて、もう書かないと落ち着かないくらい身に付いている。それこそ他愛もない事を綴っていてつまらないかも知れないが、私しか読み返さないのだからと事細かに書くが最近じゃ病院のカルテみたくなっている。
気に入っていたの…かな?ブチャラティも『他に教えて貰うと良い』って言っていたけれど、実際頼んでないから解らないけど…想像する限り頼りないし、なら自身で調べてしまった方が良い気すらする。しかしその考えも中断させられてしまう。
ピンポーン!
「!…こんな時間に誰?」
止めていたペン先が?マークを滲ませた時に、室内に来客を告げるチャイムが響いた。壁に掛かる時計に目をやれば19時を示す。こんな夕飯時に訪れる人など居ないけど…と思いつつ手にしていたペンを置いて名前は玄関へと向かう。
忘れていた…。
私はチェーン越しの人物を見るなり心臓がひゅんっと跳ねる感覚に襲われる。少し不機嫌そうに眉が釣り上がる男性は、単発で爽やかな雰囲気を持つ恋人であるジュゼッペ。彼が扉に手を添えてニッコリと笑顔を張り付けるから尚更背筋でゾワゾワと何かが踊るみたいな感覚が起こる。
「入れてくれよ。…まさか恋人を外で待たせっききりにはしないだろ、名前は。」
「…ええ、どうぞ。」
言葉通りチェーンを外して、可愛いインテリアの無いお世辞に女性の部屋らしいと言えない部屋へ招き入れた。
今まで急に来た事ないのに…。歩く度にギシギシと軋む床と比例して、後ろを歩く名前の胸も嫌な予感に押し潰されそうで軋んだ音を立て始める。
「何だか久しぶりだね、キミと会うのも。ぼくのメールも電話にも気付いてなかった?……そんなに忙しいんだ。」
「あ…ごめんなさい。最近仕事が立て込んでて…夜遅くに連絡するのも悪いと思って…。」
「ふーん。」
「……何か飲み物でも入れるわ。……っ!」
何だか室内に漂う雰囲気に飲み込まれたくなくて、名前が身を翻した瞬間だった。
手首を捕まれ後ろに引っ張られたかと思うと、視界いっぱいにジュゼッペが写り混むと反射神経が機敏に機能して顔を背けた。何故ならフラッシュバックしたのだ。
「何だよその態度…オレとのセックスを拒否してからずっとだよな?」
「そ…れは。やっ、止めて!」
「いいだろっ、ずっと我慢してやったんだっ!」
「やっ…!」
まずい。私を掴む手首に力が入って爪が食い込むのは、態度に苛立っている証拠で顔を見なくても解る。なのにキスは諦めたのかジュゼッペがパジャマの襟元から覗く首筋に顔を埋めて、強引にセックスへと持ち込もうとするから名前は必死に大柄な彼の中でもがく。
嫌だ!気持ち悪いっ…!!
心の内でハッキリと表現された言葉が形になったのか、気付いた時にはジュゼッペは大きな音を立てて床に尻餅を付いていた。何が起こったか解らない。例えるなら、自分の事なのに映画を観ているみたいな感覚でただただ起こった現実に付いていくに精一杯。はあ…はあ…と息が荒れているのに、隣には静かに佇む私のスタンドの存在で漸く力を借りたのだと知った。
「もう…はあっ…帰って…!」
自分でも驚くくらい発音良く発した言葉は、恋人を弾き飛ばす程の抵抗を見せた。付き合ってから流されていた名前の、初めてハッキリとした意思表示。
「くそっ、付き合ってやったらいい気になりやがって!セックスも出来ないお前とは終わりだ!」とジュゼッペは怒りから顔を真っ赤にして立ち上がると、女とか関係無く突き飛ばしてきたがスタンドが受けてめてくれて倒れずに済んだ。
反吐が出るくらい汚い言葉と扉が乱暴に閉まる音が響いた後に、再度訪れるいつもの安息の静寂。
「は…はは…。震えてる…。」
名前が安堵すると身体から力が抜けた筈なのに、捕まれていた手は小刻みに震えていて自身が想像以上に恐怖に飲み込まれていた事を示す。
彼は付き合ってから暫くして、こう言う乱暴な1面を見せる時が増えていった。初めての彼氏と言う存在だったし、こう言うものか…くらいにしか軽視していなかったが…やはり普通じゃないと今更思い知った。ふーっと長く息を吐いて気持ちを落ち着かせると、別れる事が出来て良かったと心から思える。
それから名前が長い睫毛を伏せて視界が暗転すると、クリアになった心に見えてきた存在を確認するのである。そうか…。
「ブチャラティを知ってしまったからだ…。」
ジュゼッペに乱暴されそうな時にフラッシュバックしたのは、ブチャラティの私を思いやる気持ちと雰囲気。真逆さに嫌悪感に襲われたのだ。彼はいつだって無茶な質問にも真剣に考えてくれていたし、昔から1歩離れた場所で見ていた私の中へ簡単に入っては変な目で見ず寄り添ってくれた。何より…。
ああ、まただ。あの自然と距離が近付いて触れてしまいそうな唇。少しずつ近付くにつれて自分が自分じゃなくなるみたいに身体がざわめく感覚。頭の天辺から爪先まで熱くなる巡る血脈。この感情は初めてでハッキリとした言葉で言えないけど…けど、きっと…。
「気に入っていたのね…。」
初めて出来た恋人に別れを告げられたら普通は悲しい感情で支配されるのだろう。なのに置き去りにされた私は、見つけた感情に鼻の奥が切なくなり泣きそうになった。
be continued