GHOST OF CHRISTMAS PAST
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今日は十二月二十四日──
オレンジやイエローのイルミネーションが、街並みを柔らかく彩っている。
綺麗に飾り付けられた大きなツリーの周りには、恋人たちが寄り添いながら肩を並べて眺める風景が、あちらこちらで見受けられる……今宵はそんな聖夜──
とは言っても、見ているのは液晶画面であって、実際現場にいるわけではない。
「ハァ……いいな〜、私も見に行きたいな〜……」
そんな哀れな嘆きを画面に向かってこぼしていると、そこにやってきたのは、いつものとは一味違うシックなスーツに身を包むプロシュート。明らかに他所行きの雰囲気を漂わせている彼に、思わず問いかける。
「プロシュート……今からどっか行くの?」
「ハンッ、オメーよォ、今日は二十四日だぜ? どこに行くかなんて、そんなことをいちいち聞くなんざ、野暮ってもんだろ?」
「ふ〜ん、デートに行くのか……いいな〜……ねぇ、リーダー! 私と一緒にイルミネーション見に行こうよ?」
「じゃあ、行ってくる──」
私の言葉に被せるようにしてそう告げると、プロシュートはどこかへと出かけていく。その後、リゾットがポツリと呟く。
「プロシュートのやつは、任務だ」
「えっ? だって、さっきデートだって──」
「確かに間違いではないが……相手はターゲットの女……任務遂行の為だ」
任務だと聞いて、少しホッとする自分がいる。
「イルミネーションなら、プロシュートと見に行け。アイツなら三十分もすれば戻ってくるだろう」
リゾットの言葉に、一瞬、眉間にシワ立てながら顔を向ける。それは気持ちを悟られないようにする為──
「何でプロシュートと行けなんて言うの?」
「ん、目当ての相手がいるのに、俺と行くのは門違いだろ?」
「別にそんな相手なんて──」
やっぱりリゾットには、胸の内がバレてしまっているようだ。
それから私は、コーヒーを飲んだり、雑誌に目を向けながらのんびりやり過ごすふりをしていると、リゾットの言った通り、プロシュートは数十分後に戻ってきた。
「……首尾は?」
「あぁ? 終わったから戻ってきたんだろう? さてと……着替えてくる」
「え、なんで、着替えちゃうの? 折角オシャレな感じなのに──」
私の言葉に、ピタリと足を止めたプロシュートが振り返る。向けられたその表情には、呆れの色が見てとれる。
「ハンッ、どこがだ? こんな他人に貰ったもんをよォ、おいそれと着て喜ぶほど落ちぶれちゃあいねーよ」
そう言ってプロシュートは、バスルームへと向かう。しばらくして現れたその姿は、髪をハーフアップに束ね、ベーシックなコート下にフーディの着こなし。さっきとは打って変わってラフな装いだ。何を着ても似合うなと見惚れそうになっていると「おい、行くぞ!」と、唐突に言葉を投げかけられたから、思わず目を見開く。
「えっ!? 行くって……どこに?」
「どこって……イルミネーション見に行きたいんだろ? 連れてってやるよ」
一緒に来いと言わんばかりに、腕を掴まれる。私は、慌ててアウターとマフラーを手にとると、プロシュートと共に、夜の街へとくり出した。
***
しばらく歩いてやってきたのは、イルミネーションの街並み。辺りが恋人たちで溢れかえっているところも、さっきの映像と重なる。そして、何だか場違いなところきてしまっているなと気付かされる。それはきっと、隣にいるのがプロシュートだから。
さっきから、すれ違う人誰もが皆、プロシュートに目を向けてくる。確かに誰が見ても申し分のない容姿だから、それは致し方のないこと──でも、隣の私は、段々と惨めに思えてくる。誰が見ても、私と彼とでは不釣り合だから──
そう思ったのと同時に、足を止めてしまう。
「ねぇ、やっぱり帰ろ? 寒いし、私こんな格好だし……」
「こんな格好って……別におかしくねーだろ?」
「それに……周りはカップルばっかりじゃん? 私たちはそうじゃないしさ、プロシュートも嫌でしょう? 私とそんなふうに見られちゃうのは──」
やるせなく微笑む私に、プロシュートが、再び呆れた表情を向けてきた。
「別に俺はそんなこと思ってねーよ……つーか、思うわけねーし」
「え……」
「大体、オメーが見たいって言ったから来たんだろ? ……いや、俺がオメーと一緒に見たいと思ったから誘ったんだがな……だから、周りにどう思われていようが、そんなもん関係ねーんだよ」
そんなふうに言い切られてしまうと、少しだけ淡い期待を抱いてしまうなと、思ったその時──
「なぁ……キスしてもいいか?」
「えっ!?」
突然言われて目が泳ぐ。話が急すぎて、頭がついていかない。
「ちょっ、何言ってんの!? ……冗談はやめてよ!」
「そうだよな……オメーのことだ、そう言うと思ったぜ……」
スッと距離をとられたかと思うと、少しだけ惜しくなる。あのままキスしてしまえばよかったと思う自分の気持ちに、嘘がつけなくなっていた。
「──ねぇ! やっぱりしてよ? その……キスしてほしい……」
言い終わるな否や、腰に手を添えて、引き寄せられる。それと同時に重なった唇は、初めは優しく触れるだけ──次第に甘さを増していくから、その雰囲気に合わせて、繰り返す──そして唇が離れるのを合図に、スッと目を合わせてみた。
「……どうした? 俺はてっきり押し返されると思ったんだが──」
「……ダメだった?」
「いや……別に?」
そう呟くと、何かを誤魔化すようにして、わざと目の前のツリーに目を向ける。一方で、一瞬触れた手に、思いを告げるようにして、私は彼の手を握る。
「ねぇ……これからどうするの?」
「ハンッ、聖なる夜はこれからだろ?」
そう言って、ニヒルな笑みを浮かべたプロシュートだったが、少しだけ頬が赤らんで見える──珍しく彼の表情がそのように映って見えたのは、きっと冬の寒さとイルミネーションの煌めきのせいだ。
オレンジやイエローのイルミネーションが、街並みを柔らかく彩っている。
綺麗に飾り付けられた大きなツリーの周りには、恋人たちが寄り添いながら肩を並べて眺める風景が、あちらこちらで見受けられる……今宵はそんな聖夜──
とは言っても、見ているのは液晶画面であって、実際現場にいるわけではない。
「ハァ……いいな〜、私も見に行きたいな〜……」
そんな哀れな嘆きを画面に向かってこぼしていると、そこにやってきたのは、いつものとは一味違うシックなスーツに身を包むプロシュート。明らかに他所行きの雰囲気を漂わせている彼に、思わず問いかける。
「プロシュート……今からどっか行くの?」
「ハンッ、オメーよォ、今日は二十四日だぜ? どこに行くかなんて、そんなことをいちいち聞くなんざ、野暮ってもんだろ?」
「ふ〜ん、デートに行くのか……いいな〜……ねぇ、リーダー! 私と一緒にイルミネーション見に行こうよ?」
「じゃあ、行ってくる──」
私の言葉に被せるようにしてそう告げると、プロシュートはどこかへと出かけていく。その後、リゾットがポツリと呟く。
「プロシュートのやつは、任務だ」
「えっ? だって、さっきデートだって──」
「確かに間違いではないが……相手はターゲットの女……任務遂行の為だ」
任務だと聞いて、少しホッとする自分がいる。
「イルミネーションなら、プロシュートと見に行け。アイツなら三十分もすれば戻ってくるだろう」
リゾットの言葉に、一瞬、眉間にシワ立てながら顔を向ける。それは気持ちを悟られないようにする為──
「何でプロシュートと行けなんて言うの?」
「ん、目当ての相手がいるのに、俺と行くのは門違いだろ?」
「別にそんな相手なんて──」
やっぱりリゾットには、胸の内がバレてしまっているようだ。
それから私は、コーヒーを飲んだり、雑誌に目を向けながらのんびりやり過ごすふりをしていると、リゾットの言った通り、プロシュートは数十分後に戻ってきた。
「……首尾は?」
「あぁ? 終わったから戻ってきたんだろう? さてと……着替えてくる」
「え、なんで、着替えちゃうの? 折角オシャレな感じなのに──」
私の言葉に、ピタリと足を止めたプロシュートが振り返る。向けられたその表情には、呆れの色が見てとれる。
「ハンッ、どこがだ? こんな他人に貰ったもんをよォ、おいそれと着て喜ぶほど落ちぶれちゃあいねーよ」
そう言ってプロシュートは、バスルームへと向かう。しばらくして現れたその姿は、髪をハーフアップに束ね、ベーシックなコート下にフーディの着こなし。さっきとは打って変わってラフな装いだ。何を着ても似合うなと見惚れそうになっていると「おい、行くぞ!」と、唐突に言葉を投げかけられたから、思わず目を見開く。
「えっ!? 行くって……どこに?」
「どこって……イルミネーション見に行きたいんだろ? 連れてってやるよ」
一緒に来いと言わんばかりに、腕を掴まれる。私は、慌ててアウターとマフラーを手にとると、プロシュートと共に、夜の街へとくり出した。
***
しばらく歩いてやってきたのは、イルミネーションの街並み。辺りが恋人たちで溢れかえっているところも、さっきの映像と重なる。そして、何だか場違いなところきてしまっているなと気付かされる。それはきっと、隣にいるのがプロシュートだから。
さっきから、すれ違う人誰もが皆、プロシュートに目を向けてくる。確かに誰が見ても申し分のない容姿だから、それは致し方のないこと──でも、隣の私は、段々と惨めに思えてくる。誰が見ても、私と彼とでは不釣り合だから──
そう思ったのと同時に、足を止めてしまう。
「ねぇ、やっぱり帰ろ? 寒いし、私こんな格好だし……」
「こんな格好って……別におかしくねーだろ?」
「それに……周りはカップルばっかりじゃん? 私たちはそうじゃないしさ、プロシュートも嫌でしょう? 私とそんなふうに見られちゃうのは──」
やるせなく微笑む私に、プロシュートが、再び呆れた表情を向けてきた。
「別に俺はそんなこと思ってねーよ……つーか、思うわけねーし」
「え……」
「大体、オメーが見たいって言ったから来たんだろ? ……いや、俺がオメーと一緒に見たいと思ったから誘ったんだがな……だから、周りにどう思われていようが、そんなもん関係ねーんだよ」
そんなふうに言い切られてしまうと、少しだけ淡い期待を抱いてしまうなと、思ったその時──
「なぁ……キスしてもいいか?」
「えっ!?」
突然言われて目が泳ぐ。話が急すぎて、頭がついていかない。
「ちょっ、何言ってんの!? ……冗談はやめてよ!」
「そうだよな……オメーのことだ、そう言うと思ったぜ……」
スッと距離をとられたかと思うと、少しだけ惜しくなる。あのままキスしてしまえばよかったと思う自分の気持ちに、嘘がつけなくなっていた。
「──ねぇ! やっぱりしてよ? その……キスしてほしい……」
言い終わるな否や、腰に手を添えて、引き寄せられる。それと同時に重なった唇は、初めは優しく触れるだけ──次第に甘さを増していくから、その雰囲気に合わせて、繰り返す──そして唇が離れるのを合図に、スッと目を合わせてみた。
「……どうした? 俺はてっきり押し返されると思ったんだが──」
「……ダメだった?」
「いや……別に?」
そう呟くと、何かを誤魔化すようにして、わざと目の前のツリーに目を向ける。一方で、一瞬触れた手に、思いを告げるようにして、私は彼の手を握る。
「ねぇ……これからどうするの?」
「ハンッ、聖なる夜はこれからだろ?」
そう言って、ニヒルな笑みを浮かべたプロシュートだったが、少しだけ頬が赤らんで見える──珍しく彼の表情がそのように映って見えたのは、きっと冬の寒さとイルミネーションの煌めきのせいだ。
the END