Drifting Story
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空は白く晴れていて、吐く息も白い──十二月に入ったからか、気温も随分と低くなったようだ。俺は首をすくめて、手をこすり合わせながら暖をとった。
俺は今、ある女を待っている。
思いの外、仕事が早く片付いたから、待ち合わせ時間より少しばかり早く着いた。だから、アイツがまだ来ないのは当たり前なのに──会いたい気持ちが先走る。
不意に空を見上げれば、綿埃のような雪が降ってきやがった。通りで寒いわけだなと思いつつ、近くの店先に入る。手持ち無沙汰を紛らわす為に、かじかむ手で、タバコに火をつけようとしたその時だ──「お待たせ」と、アイツがようやくやってきた。
「ごめん、待った……?」
「いや……俺も今きたところだぜ」
そう告げると、アイツが俺の顔を見るなりクスッと笑いやがる。だから、少しばかり眉をひそめて 怪訝 そうな表情を向けてみた。
「おい、何笑ってんだよ?」
「だって、プロシュート……今きたって……それ、嘘でしょう? 随分前から待ってくれてたんじゃあないの?」
「ハンッ、何言ってんだよ、そんなわけ──」
「鼻先、赤くなってるよ?」
そう言いながら、アイツが再びクスクス笑うから、ちょっとだけ憎たらしく思えて、無性にいじめてやりたくなった。
「──あぁ、そうだぜ? 随分と待たされちまったからよォ、そんな時は、なんか詫びを入れるってのが筋ってもんだろ?」
「何で急に開き直るの……? ってか、詫びって……だから、ごめんって、謝ったじゃん?」
なんとも不服そうにして、口を尖らせるアイツを横目に、ニヤリと口角の端を吊り上げる。
「とりあえず温めてくれよ? ほれ、俺の手、冷たくなってんだろ?」
そう言って、目の前に手を差し出せば、アイツは迷うことなく両手で俺の手を包み込んだ。
「本当だ……冷たくなってる……」
アイツが握る手に、ぎゅっと力を込める。
「ほかは、どうすればいい?」
見上げた顔が、なんとも可愛らしく映ってしまう。堪らず、欲望のままを口にしてしまった。
「そうだなァ……キス、してくれよ?」
「……ハァ!? ここで!? ってか、なんでそうなんの……」
「ハンッ、体が火照って熱をもちゃあよォ……自然と温まんだろ?」
すると、人目を気にしながら、アイツが小声で「 屈 んで」と呟く。少し顔を近づけてみると、胸ぐらを掴まれて、軽く唇が触れたかと思うと、そのままするりと舌が絡む。それからちゅっと、リップ音を立てて、唇が離れた。
「──大胆なことするようになったじゃあねーかよ?」
「どう? これで満足……?」
フンッと、アイツが顔を背けるから、思わず腰に手を回して、自らの方へと引き寄せる。そして、耳元で囁くようにして語りかける。
「いや……こんなもんで満足するわけねーだろ? で、どこのホテルに行くんだ、んん?」
「え、ちょっ、何言ってんの!? これからご飯食べに行くんでしょう……?」
「あぁ、食いに行くぜ? だが、食うのは俺だけだ……オメーは黙って、俺に食われてろ」
さらにグッと引き寄せて、アイツの好きな声色を耳元で囁けば、その気になったのか──小声で「バカ……」と返事が戻る。
顔を赤らめる、そんなアイツの照れた表情もまた、悪くねーなァと思ってしまう──そんな冬支度の空だ。
俺は今、ある女を待っている。
思いの外、仕事が早く片付いたから、待ち合わせ時間より少しばかり早く着いた。だから、アイツがまだ来ないのは当たり前なのに──会いたい気持ちが先走る。
不意に空を見上げれば、綿埃のような雪が降ってきやがった。通りで寒いわけだなと思いつつ、近くの店先に入る。手持ち無沙汰を紛らわす為に、かじかむ手で、タバコに火をつけようとしたその時だ──「お待たせ」と、アイツがようやくやってきた。
「ごめん、待った……?」
「いや……俺も今きたところだぜ」
そう告げると、アイツが俺の顔を見るなりクスッと笑いやがる。だから、少しばかり眉をひそめて
「おい、何笑ってんだよ?」
「だって、プロシュート……今きたって……それ、嘘でしょう? 随分前から待ってくれてたんじゃあないの?」
「ハンッ、何言ってんだよ、そんなわけ──」
「鼻先、赤くなってるよ?」
そう言いながら、アイツが再びクスクス笑うから、ちょっとだけ憎たらしく思えて、無性にいじめてやりたくなった。
「──あぁ、そうだぜ? 随分と待たされちまったからよォ、そんな時は、なんか詫びを入れるってのが筋ってもんだろ?」
「何で急に開き直るの……? ってか、詫びって……だから、ごめんって、謝ったじゃん?」
なんとも不服そうにして、口を尖らせるアイツを横目に、ニヤリと口角の端を吊り上げる。
「とりあえず温めてくれよ? ほれ、俺の手、冷たくなってんだろ?」
そう言って、目の前に手を差し出せば、アイツは迷うことなく両手で俺の手を包み込んだ。
「本当だ……冷たくなってる……」
アイツが握る手に、ぎゅっと力を込める。
「ほかは、どうすればいい?」
見上げた顔が、なんとも可愛らしく映ってしまう。堪らず、欲望のままを口にしてしまった。
「そうだなァ……キス、してくれよ?」
「……ハァ!? ここで!? ってか、なんでそうなんの……」
「ハンッ、体が火照って熱をもちゃあよォ……自然と温まんだろ?」
すると、人目を気にしながら、アイツが小声で「
「──大胆なことするようになったじゃあねーかよ?」
「どう? これで満足……?」
フンッと、アイツが顔を背けるから、思わず腰に手を回して、自らの方へと引き寄せる。そして、耳元で囁くようにして語りかける。
「いや……こんなもんで満足するわけねーだろ? で、どこのホテルに行くんだ、んん?」
「え、ちょっ、何言ってんの!? これからご飯食べに行くんでしょう……?」
「あぁ、食いに行くぜ? だが、食うのは俺だけだ……オメーは黙って、俺に食われてろ」
さらにグッと引き寄せて、アイツの好きな声色を耳元で囁けば、その気になったのか──小声で「バカ……」と返事が戻る。
顔を赤らめる、そんなアイツの照れた表情もまた、悪くねーなァと思ってしまう──そんな冬支度の空だ。
the END