Dracula La
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私には、密かに想いを寄せる人がいる。見た目はもちろん格好良くて、時に優しい頼れる兄貴分だ。
外を歩けば男女問わず皆が振り返る──言うまでもなく高嶺の花。
そんな相手を好きになってしまった弱み……だからこれまでは、絶対にこの気持ちを悟られないように──と、接してきた。
どうせ相手にされないことはわかっていたし、だからと言って、 弄 ばれるのも嫌だった。そんな女性を何人も見てきたから──でも、私は今、そんな彼をデートに誘おうとしている。
***
アジトでくつろぐプロシュートに向かって声をかける。あくまで自然に、いつも通りに──と、自分に言い聞かせながら。
「ねぇ──」
「──何だ?」
「今日も暑いよねぇ〜、なんか冷たい物食べたくなったからさ〜、ジェラート食べに行こうかな〜って思ってるんだけど……一緒に行かない?」
「……あ? なんで俺なんだよ?」
少し気だるそうな返事にも怯まず、たたみかけるように話を続ける。
「えっ、別にいいじゃん! 暇そうに新聞読んでるんだし……付き合ってよ!」
そういう私にチラリと視線を向けると、指に挟んでいたタバコに、一回だけ口を付けてから灰皿に押し付ける。そして、スッと、立ち上がると、再び私に視線を合わせた。
「おい、何ぼーっとしてんだ……? 行くんだろ? 付き合ってやるぜ」
不意に向けられたほほ笑みに、思わず心臓がドキリと高鳴る。それと同時に顔が高揚するのがわかり、慌てて背けてしまいそうになる。でも、意を決して、私もプロシュートに視線を合わせた。
「じゃあ……行こう!」
まだ鳴り止まない胸の高鳴りと共に、私はついに彼を誘い出すことに成功した。
浮き足立つのを抑えながら、二人でアジトを後にする。
向かう先は、最近流行りのカフェ──のはずだったのだが、一歩先を歩くプロシュートは、明後日の方向へと足を進めてしまう。
「ねぇ、どこに行くの……? 行きたいカフェは、向こうなんだけど──」
「どこか──そうだなァ……つーかよォ、デートなら、ちょっと遠くの方まで行ってみようぜ」
思わぬ言葉に顔が緩んでしまいそうになる。隣に並んで歩くのは、いつもよりラフな装いのプロシュート。その光景は、まさしくデートみたいだなと思っていたから、ひとしおだ。
ようやく誘い出すことができた。それと同時に、私の気持ちもたぶんバレてしまっていることだろう。それは少し怖くもあった。
プロシュートからみれば、私なんてきっとまだまだ子供だ。それは年齢ではなく、プロシュートを魅了するほどの、容姿も中身も持ち合わせていないという事。ポジション的に妹のような存在だろう。
そんなんじゃあ、いつまで経っても恋愛対象になるわけがない──いつもならそう諦めていた。現にプロシュートがすごく綺麗な、いわゆる“大人の女性”と居合わせているところを、嫌というほど目にしてきた。初めはなんとも思わなかった。それはただ“仲間”としてしか見ていなかったから。
でも、徐々に惹かれていく自分に気付かされていった。
それはプロシュートの見た目だけじゃあなくて──その中身を知っていくうちに、私は彼の事が好きなんだ──そう思うようになっていった。
でもそれは、同時に自らの首を絞めることにもなっていった。今までなら、なんとも思わなかったことが、辛く感じるようになっていく。
その手に触れてもらいたい──こんなに近くにいるのに……手を伸ばせば届く距離なのに──と、いつも思っていた。だから、今日は思い切って、ようやく誘い出すことができたのだ。
***
目当てのお店に到着する。
宝石箱のようなショーケースの中には、色とりどりのジェラートが並んでいる。どれもおいしそうだなと、中を覗き込み、食い入るように見ていると、不意に向けられる視線に気付く。
「な、何……?」
「いや、そんなに見つめてよォ、よっぽどジェラートが好きなんだなと思ってな」
「えっ? だって、美味しいじゃん! それに、色もカラフルで綺麗だな〜って思うしさ! 私はもう決めたけど……プロシュートはどれにするの?」
「俺は──じゃあ、オメーが俺の分も選んでくれ」
「えっ、うん、分かった!」
私はいつものリモーネで、プロシュートには、甘さを控えたカフェを選んであげた。それを持って、外のテラス席に座る。
「どうかな……? 美味しい?」
「あぁ、うまいな」
「……よかった!」
不意に空を見上げれば、雲一つとない晴天。太陽の日差しが眩しく降り注ぎ、少し汗ばむ陽気だから、ひんやりとしたジェラートが、ひときわ美味しく感じた。いや、それはきっと、一緒に食べているのがプロシュートだから──
溶けてしまわないうちに、ジェラートを食べ終えると、どこへ向かうこともなく、ただ歩き始めた。私はプロシュートの少し後ろを歩いていたが、ふと欲が出てしまった。
「ねぇ……手を繋いでもいい?」
「あぁ……別に構わねーよ」
思いがけない返しに嬉しく思う反面──聞かれたプロシュートが、内心どう思ったのかが、少しばかり気にかかる。だから、恐る恐る指先に触れてみた。すると、プロシュートの方から、ギュッと手を握ってきた。思わず目を丸くしながら見上げると、瞬時に鼻で笑われる。
「ハンッ、そんな指先を握ってるだけじゃあよォ、すぐに離れちまうだろ?」
「そ、そうだね……」
私の方からもゆっくりと握り返す。そんなふうに優しくされると、つい期待してしまうけど、きっとこの優しさは、私に対するお情けで、この後に上手くあしらわれるに違いない。
優しいプロシュートは、私を傷つけないように、気を遣ってくれている。そう、頭では理解していても、気持ちがなかなか追いつかない。
思った瞬間に、気落ちしてしまいそうになるのを悟られないように、私は話を切り出した。
「さてと……目的も果たしたことだし──帰ろっか?」
「いや……ここで帰すわけにはいかねーなァ……」
「……えっ? だって、ジェラートは食べたわけだし……別にもう、アジトに帰っても──」
「……あ? 大アリだろ? オメーから誘われるなんてよォ、思ってもみなかったからなァ」
私は思わず目を丸くする。やっと誘い出したのは私の方だと、そう思っていたのに──今の言い方だと、まるで私が誘うのを待っていたかのような口振りだ。
なんて言葉を返そうかと黙り込む私に、プロシュートが再び話を切り出した。
「オメーは、何もわかってねーようだなァ。デートはよォ、まだ始まったばっかりだろ? それに明日はオフだ──今日は、このまま大人しく帰れると思うなよ?」
そう言って、ニヒルな笑みを浮かべたプロシュートに妙な期待は禁物だけど……でも、それ以上に、私は胸に高揚感を得ていた。例えその後に、泣く羽目になろうとも、今はこのまま騙されたいだなんて──私はすでにあなたの虜だ。
外を歩けば男女問わず皆が振り返る──言うまでもなく高嶺の花。
そんな相手を好きになってしまった弱み……だからこれまでは、絶対にこの気持ちを悟られないように──と、接してきた。
どうせ相手にされないことはわかっていたし、だからと言って、
***
アジトでくつろぐプロシュートに向かって声をかける。あくまで自然に、いつも通りに──と、自分に言い聞かせながら。
「ねぇ──」
「──何だ?」
「今日も暑いよねぇ〜、なんか冷たい物食べたくなったからさ〜、ジェラート食べに行こうかな〜って思ってるんだけど……一緒に行かない?」
「……あ? なんで俺なんだよ?」
少し気だるそうな返事にも怯まず、たたみかけるように話を続ける。
「えっ、別にいいじゃん! 暇そうに新聞読んでるんだし……付き合ってよ!」
そういう私にチラリと視線を向けると、指に挟んでいたタバコに、一回だけ口を付けてから灰皿に押し付ける。そして、スッと、立ち上がると、再び私に視線を合わせた。
「おい、何ぼーっとしてんだ……? 行くんだろ? 付き合ってやるぜ」
不意に向けられたほほ笑みに、思わず心臓がドキリと高鳴る。それと同時に顔が高揚するのがわかり、慌てて背けてしまいそうになる。でも、意を決して、私もプロシュートに視線を合わせた。
「じゃあ……行こう!」
まだ鳴り止まない胸の高鳴りと共に、私はついに彼を誘い出すことに成功した。
浮き足立つのを抑えながら、二人でアジトを後にする。
向かう先は、最近流行りのカフェ──のはずだったのだが、一歩先を歩くプロシュートは、明後日の方向へと足を進めてしまう。
「ねぇ、どこに行くの……? 行きたいカフェは、向こうなんだけど──」
「どこか──そうだなァ……つーかよォ、デートなら、ちょっと遠くの方まで行ってみようぜ」
思わぬ言葉に顔が緩んでしまいそうになる。隣に並んで歩くのは、いつもよりラフな装いのプロシュート。その光景は、まさしくデートみたいだなと思っていたから、ひとしおだ。
ようやく誘い出すことができた。それと同時に、私の気持ちもたぶんバレてしまっていることだろう。それは少し怖くもあった。
プロシュートからみれば、私なんてきっとまだまだ子供だ。それは年齢ではなく、プロシュートを魅了するほどの、容姿も中身も持ち合わせていないという事。ポジション的に妹のような存在だろう。
そんなんじゃあ、いつまで経っても恋愛対象になるわけがない──いつもならそう諦めていた。現にプロシュートがすごく綺麗な、いわゆる“大人の女性”と居合わせているところを、嫌というほど目にしてきた。初めはなんとも思わなかった。それはただ“仲間”としてしか見ていなかったから。
でも、徐々に惹かれていく自分に気付かされていった。
それはプロシュートの見た目だけじゃあなくて──その中身を知っていくうちに、私は彼の事が好きなんだ──そう思うようになっていった。
でもそれは、同時に自らの首を絞めることにもなっていった。今までなら、なんとも思わなかったことが、辛く感じるようになっていく。
その手に触れてもらいたい──こんなに近くにいるのに……手を伸ばせば届く距離なのに──と、いつも思っていた。だから、今日は思い切って、ようやく誘い出すことができたのだ。
***
目当てのお店に到着する。
宝石箱のようなショーケースの中には、色とりどりのジェラートが並んでいる。どれもおいしそうだなと、中を覗き込み、食い入るように見ていると、不意に向けられる視線に気付く。
「な、何……?」
「いや、そんなに見つめてよォ、よっぽどジェラートが好きなんだなと思ってな」
「えっ? だって、美味しいじゃん! それに、色もカラフルで綺麗だな〜って思うしさ! 私はもう決めたけど……プロシュートはどれにするの?」
「俺は──じゃあ、オメーが俺の分も選んでくれ」
「えっ、うん、分かった!」
私はいつものリモーネで、プロシュートには、甘さを控えたカフェを選んであげた。それを持って、外のテラス席に座る。
「どうかな……? 美味しい?」
「あぁ、うまいな」
「……よかった!」
不意に空を見上げれば、雲一つとない晴天。太陽の日差しが眩しく降り注ぎ、少し汗ばむ陽気だから、ひんやりとしたジェラートが、ひときわ美味しく感じた。いや、それはきっと、一緒に食べているのがプロシュートだから──
溶けてしまわないうちに、ジェラートを食べ終えると、どこへ向かうこともなく、ただ歩き始めた。私はプロシュートの少し後ろを歩いていたが、ふと欲が出てしまった。
「ねぇ……手を繋いでもいい?」
「あぁ……別に構わねーよ」
思いがけない返しに嬉しく思う反面──聞かれたプロシュートが、内心どう思ったのかが、少しばかり気にかかる。だから、恐る恐る指先に触れてみた。すると、プロシュートの方から、ギュッと手を握ってきた。思わず目を丸くしながら見上げると、瞬時に鼻で笑われる。
「ハンッ、そんな指先を握ってるだけじゃあよォ、すぐに離れちまうだろ?」
「そ、そうだね……」
私の方からもゆっくりと握り返す。そんなふうに優しくされると、つい期待してしまうけど、きっとこの優しさは、私に対するお情けで、この後に上手くあしらわれるに違いない。
優しいプロシュートは、私を傷つけないように、気を遣ってくれている。そう、頭では理解していても、気持ちがなかなか追いつかない。
思った瞬間に、気落ちしてしまいそうになるのを悟られないように、私は話を切り出した。
「さてと……目的も果たしたことだし──帰ろっか?」
「いや……ここで帰すわけにはいかねーなァ……」
「……えっ? だって、ジェラートは食べたわけだし……別にもう、アジトに帰っても──」
「……あ? 大アリだろ? オメーから誘われるなんてよォ、思ってもみなかったからなァ」
私は思わず目を丸くする。やっと誘い出したのは私の方だと、そう思っていたのに──今の言い方だと、まるで私が誘うのを待っていたかのような口振りだ。
なんて言葉を返そうかと黙り込む私に、プロシュートが再び話を切り出した。
「オメーは、何もわかってねーようだなァ。デートはよォ、まだ始まったばっかりだろ? それに明日はオフだ──今日は、このまま大人しく帰れると思うなよ?」
そう言って、ニヒルな笑みを浮かべたプロシュートに妙な期待は禁物だけど……でも、それ以上に、私は胸に高揚感を得ていた。例えその後に、泣く羽目になろうとも、今はこのまま騙されたいだなんて──私はすでにあなたの虜だ。
the END