青い春
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俺とアイツは犬猿の仲だ。
顔を突き合わせば、互いに憎まれ口を叩き合うばかり──でも、俺の場合は、愛情の裏返し……だったりもする。
俺がこんなにも気を許せる相手は、そんなにいない。せいぜいこのチームの奴らくらいだろう。
そんなチームの一員のアイツに、こんな感情を抱くようになったのは、いったいいつからだろうか──一目惚れか? いや、最近になってからか……まぁ、恋の始まりなんてそんなもんだろう。でも、やっぱりなにかの間違いだろうと、最近は言い聞かせるようにしている。俺たちは、ただの仲間だ──と。
そんなある日──場所はアジトのリビング。
「ん……?」
ふと足元に目を向けると、紙切れのような物が落ちていることに気づく。紙切れ……というより、これは手紙か?
おもむろに拾い上げて、表裏を確認してみるも、無記名だ。手紙なら、中身を勝手に読むのは後ろめたい気もするが──とりあえず中をめくってみた。
「これは──」
やっぱり手紙だった。よくないとは思いつつも読み進めてしまう──というのも、筆跡から推測するに、これを書いたのはおそらくアイツだ。最近なにやらコソコソと書いていやがったのはこれだったのかと、妙に納得させられる。
果たしてこれは誰に宛てたものなのか、誰になにを伝えようとしているのか──すごく興味をそそられる。
聞こえはいいが、裏を返せばこれは嫉妬──この手紙を受け取る相手に対して。
中身は至ってシンプルに、相手に対する想いが綴られていた。
最初に会った時の印象は、最悪……? おいおい、普通こんなこと、本人に言わねーだろ? 後は……いっしょにいる内に段々と心が惹かれていった──まったく恥ずかしげもなくよォ、よくこんな文章書けたもんだぜ──
頭の中で悪態をつきながらも、この文章からは、相手のことが好きだという感情が嫌ほど見てとれた。思わずため息が溢れる。
たかが手紙一つなのに──こんなふうに落ち込むくらい感情を左右されるなんざ、俺も焼きが回ったもんだぜ。それに、手紙で想いを伝えるとか──案外、古風なことあんだな、アイツ──と、思いながらまた少しだけ胸の奥が痛かった。
まぁ、アイツをからかうにはうってつけのネタだと、そう思っていたのに、最後に書かれていた名前を目にした途端に固まってしまう。
“Caro Prosciutto”
そう──そこには、俺の名が記されていたのだ。まさかと思いながら、もう一度手紙を読み返す。
「マジかよ……」
顔を手で覆いながら、思わず口に出してしまっていた。手紙の内容が頭を巡り、その事実を理解し始めると、徐々に顔が熱を帯びていくのがわかった。
そこに、息を切らしたアイツが現れたから、思わず動きを止めてしまう。
「それ……」
アイツが指差しているのは、もちろん俺が手にしている手紙。
「あ、いや、そこに落ちててよォ……」
「もしかして……中身、見た?」
「……」
思わず目が泳ぐ。俺の態度に、アイツの顔がみるみるうちに赤く染まっていく。そして、鋭い視線を差し向けながら、手紙を引ったくるようにして奪ったから、それは二つに破けてしまった。アイツはすぐさま拾いあげると、グシャグシャにしながら手の中に仕舞い込んだ。
「ち、違うから! そんなんじゃあないから! だから、それは、つまり……」
「中身を勝手に見たのは悪かった……でも、そいつは罰ゲームかなんかのネタだろ? 大体、オメーが俺にあんな感情抱くわけねーよなァ?」
俺の問いかけに対し、急にアイツが黙りこくる。俺はてっきり笑い話になると、そう思っていたのに……
しばらくの沈黙の後、アイツがスッと俺を見据える。
「いつかこの気持ちを伝えよう、伝えようって……そう思ってた。でも、私たちって、面と向かうとすぐこんなふうに言い合いになっちゃうし……それに、私たちは仲間でしょう? そう、ただの仲間……だから、こんな感情なんてきっとバカにされる……相手になんて到底されないって……だから──」
その先の言葉を待たずして、俺は思わずアイツを抱きしめていた。
「えっ、ちょっ、プロシュート……?」
「こんな時はよォ……いったいなんていうのがいいんだ? なんでいつもみてーに、気の利いた口説き文句が出てこねーんだよ……」
「し、知らないわよ、そんなこと! ってか、離してよ……誰か来ちゃう……」
「ハンッ、んなもん知ったことかよ? それより……これだけは言えるぜ……俺もオメーと同じだ」
「えっ、同じって──」
俺は抱きしめる腕を緩め、目を丸くしているであろうアイツに視線を合わせた。
「オメー、手紙に書いてたろ? “俺の事が好きだ”って……俺も同じだって言ってんだ」
同じ気持ち……その言葉の本心を待っているアイツに、続けざまに言い放つ。
「俺もオメーの事が好きだ……多分な」
「ちょっと、多分は余計でしょう? でも──プロシュートって、案外こういうのに弱いのね」
そういって、アイツがニヤリと口角の端を吊り上げ、笑みを浮かべる。その表情に、まさかこの一連の流れが、すべて演技だったのかと疑いたくもなった。だが、アイツの手の内に転がされるのも、そう悪くはないなと思う。
この俺にあんな表情をさせるとは──全く大した女だぜ、と思いながら、ここは一つ、余裕を見せたくて、顎を上向きに押し上げる。
「ちょ、なにすんのよ!?」
「なにされるかなんざ、分かってんだろ? いいから目ェつぶっとけ……」
ムードのカケラもなくアイツを急かしてしまうのは、余裕のなさの現れか──
そんな誘いをあっさりと断るアイツの腕を掴んで、無理矢理唇を重ねる──それはいつもより少し余裕のない口付け。
そんなキスから始まる恋を、人は“青春”なんて呼ぶのかもしれない。
顔を突き合わせば、互いに憎まれ口を叩き合うばかり──でも、俺の場合は、愛情の裏返し……だったりもする。
俺がこんなにも気を許せる相手は、そんなにいない。せいぜいこのチームの奴らくらいだろう。
そんなチームの一員のアイツに、こんな感情を抱くようになったのは、いったいいつからだろうか──一目惚れか? いや、最近になってからか……まぁ、恋の始まりなんてそんなもんだろう。でも、やっぱりなにかの間違いだろうと、最近は言い聞かせるようにしている。俺たちは、ただの仲間だ──と。
そんなある日──場所はアジトのリビング。
「ん……?」
ふと足元に目を向けると、紙切れのような物が落ちていることに気づく。紙切れ……というより、これは手紙か?
おもむろに拾い上げて、表裏を確認してみるも、無記名だ。手紙なら、中身を勝手に読むのは後ろめたい気もするが──とりあえず中をめくってみた。
「これは──」
やっぱり手紙だった。よくないとは思いつつも読み進めてしまう──というのも、筆跡から推測するに、これを書いたのはおそらくアイツだ。最近なにやらコソコソと書いていやがったのはこれだったのかと、妙に納得させられる。
果たしてこれは誰に宛てたものなのか、誰になにを伝えようとしているのか──すごく興味をそそられる。
聞こえはいいが、裏を返せばこれは嫉妬──この手紙を受け取る相手に対して。
中身は至ってシンプルに、相手に対する想いが綴られていた。
最初に会った時の印象は、最悪……? おいおい、普通こんなこと、本人に言わねーだろ? 後は……いっしょにいる内に段々と心が惹かれていった──まったく恥ずかしげもなくよォ、よくこんな文章書けたもんだぜ──
頭の中で悪態をつきながらも、この文章からは、相手のことが好きだという感情が嫌ほど見てとれた。思わずため息が溢れる。
たかが手紙一つなのに──こんなふうに落ち込むくらい感情を左右されるなんざ、俺も焼きが回ったもんだぜ。それに、手紙で想いを伝えるとか──案外、古風なことあんだな、アイツ──と、思いながらまた少しだけ胸の奥が痛かった。
まぁ、アイツをからかうにはうってつけのネタだと、そう思っていたのに、最後に書かれていた名前を目にした途端に固まってしまう。
“Caro Prosciutto”
そう──そこには、俺の名が記されていたのだ。まさかと思いながら、もう一度手紙を読み返す。
「マジかよ……」
顔を手で覆いながら、思わず口に出してしまっていた。手紙の内容が頭を巡り、その事実を理解し始めると、徐々に顔が熱を帯びていくのがわかった。
そこに、息を切らしたアイツが現れたから、思わず動きを止めてしまう。
「それ……」
アイツが指差しているのは、もちろん俺が手にしている手紙。
「あ、いや、そこに落ちててよォ……」
「もしかして……中身、見た?」
「……」
思わず目が泳ぐ。俺の態度に、アイツの顔がみるみるうちに赤く染まっていく。そして、鋭い視線を差し向けながら、手紙を引ったくるようにして奪ったから、それは二つに破けてしまった。アイツはすぐさま拾いあげると、グシャグシャにしながら手の中に仕舞い込んだ。
「ち、違うから! そんなんじゃあないから! だから、それは、つまり……」
「中身を勝手に見たのは悪かった……でも、そいつは罰ゲームかなんかのネタだろ? 大体、オメーが俺にあんな感情抱くわけねーよなァ?」
俺の問いかけに対し、急にアイツが黙りこくる。俺はてっきり笑い話になると、そう思っていたのに……
しばらくの沈黙の後、アイツがスッと俺を見据える。
「いつかこの気持ちを伝えよう、伝えようって……そう思ってた。でも、私たちって、面と向かうとすぐこんなふうに言い合いになっちゃうし……それに、私たちは仲間でしょう? そう、ただの仲間……だから、こんな感情なんてきっとバカにされる……相手になんて到底されないって……だから──」
その先の言葉を待たずして、俺は思わずアイツを抱きしめていた。
「えっ、ちょっ、プロシュート……?」
「こんな時はよォ……いったいなんていうのがいいんだ? なんでいつもみてーに、気の利いた口説き文句が出てこねーんだよ……」
「し、知らないわよ、そんなこと! ってか、離してよ……誰か来ちゃう……」
「ハンッ、んなもん知ったことかよ? それより……これだけは言えるぜ……俺もオメーと同じだ」
「えっ、同じって──」
俺は抱きしめる腕を緩め、目を丸くしているであろうアイツに視線を合わせた。
「オメー、手紙に書いてたろ? “俺の事が好きだ”って……俺も同じだって言ってんだ」
同じ気持ち……その言葉の本心を待っているアイツに、続けざまに言い放つ。
「俺もオメーの事が好きだ……多分な」
「ちょっと、多分は余計でしょう? でも──プロシュートって、案外こういうのに弱いのね」
そういって、アイツがニヤリと口角の端を吊り上げ、笑みを浮かべる。その表情に、まさかこの一連の流れが、すべて演技だったのかと疑いたくもなった。だが、アイツの手の内に転がされるのも、そう悪くはないなと思う。
この俺にあんな表情をさせるとは──全く大した女だぜ、と思いながら、ここは一つ、余裕を見せたくて、顎を上向きに押し上げる。
「ちょ、なにすんのよ!?」
「なにされるかなんざ、分かってんだろ? いいから目ェつぶっとけ……」
ムードのカケラもなくアイツを急かしてしまうのは、余裕のなさの現れか──
そんな誘いをあっさりと断るアイツの腕を掴んで、無理矢理唇を重ねる──それはいつもより少し余裕のない口付け。
そんなキスから始まる恋を、人は“青春”なんて呼ぶのかもしれない。
the END