青と夏
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昼下がり──
俺はペッシと共にターゲットの下調べを終えて、アジトに戻る途中だった。
蝉の声がうるさいくらいに鳴り響く──今日は茹だるような暑さだ。
地面からはたゆたいと陽炎が立ち上り、太陽からもジリジリと痛いくらいの日差しが降り注ぐ──気温は三十度以上の真夏日。
普段、汗をあまりかかない俺ですら、額から胸元へと汗が流れ落ちる。
「暑ィな……」
「そうですねィ、兄貴……」
ペッシは顔を赤くして、うつむきかげんに 項垂 れている。ちょっとどこかでひと息つこうかと、不意に立ち止まったそのときだ──後方から声をかけられる。
「よォ、お前らも、今戻りか?」
「お疲れさま! 今日も暑いねェ」
聞き覚えのある声に振り返る。そこに居たのはチームを同じくするホルマジオとアイツだ。二人が一緒のところを見るのは、あんまりいい心地はしないなと、少し視線を下へと外す。
「兄貴ィ、どこかで休憩しやしょうぜ〜。オイラ、暑くてもう倒れそうで……」
「うん、そうしよう! 確かこの近くに美味しいジェラートのお店があるんだけど──」
そうアイツが口走った途端に、若干嫌な予感がする。このパターン──前にもどこかであったような……たぶん、次にアイツが口にする言葉は──
「ねぇ、兄貴ィ〜、私、ジェラートが食べたいな〜」
わざとらしい上目遣いに猫撫で声──物をねだるときのアイツの得意技だ。それを皮切りに、ホルマジオの奴も悪ノリし始める。
「兄貴ィ〜、俺も食べたいな〜」
「おいおい、オメーらよォ、こんな時ばっかり兄貴呼ばわりしてんじゃあねーよ!」
「えぇ〜、だって、プロシュート兄貴が1番年上なのは事実でしょう?」
「あ? オメー、よく言うぜ……その年上に向かって“プロシュート”って呼び捨てにしてんのはよォ、どこのどいつだ……?」
「えっ……誰だっけ? とにかく、暑くて耐えられないから、行こう!」
惚けてみせるアイツに押されるようにして、俺は半ば強引に店へと向かわされる。でも、そんなやりとりも、実は嫌じゃなかったりしている。
***
店に着くと、皆が自分好みのジェラートを注文する中、甘い物がそんなに得意ではない俺は、冷たい飲み物を購入した。もちろんそれだけではなく、メンバー全員分のジェラートの支払いも俺もちだ。なんでホルマジオにも買ってやらなきゃあならないのかだけ、若干腑に落ちない面はあるものの……アイツとペッシの手前──納得しておくとするか。
「美味しい〜! 本当、生き返る──兄貴、ありがとう! 私、兄ィのこと大好き!」
「ハンッ、よく言うぜ……」
軽率に“好き”を口にするアイツに、全くこっちの気も知らねーでよォと、若干呆れてしまう。でも、幸せそうにジェラートを頬張るアイツの笑顔が見れたから、全てのことがチャラになる。
ちょっと見過ぎていたからか──アイツとパッと目が合った。
「ん? もしかしてプロシュートも食べたいの?」
「あ? 別にいらねーよ」
「そう? でも、これ、すっごく美味しいよ! ハイ……!」
そういったアイツが、スプーンでジェラートをひとすくいして、俺の目の前に差し出す。
ちょっと待て。この状況下で食べろということか……?
俺は柄にもなく周囲の目が気になった。
「ほら〜、早くしないと溶けちゃうよ!」
そういってアイツが急かすから、パクッとプーンを口に含んだ。
「……うまいな……俺も好きだ」
「でしょう?」
ここで案の定、ホルマジオの茶々が入る。
「なんだよ、見せつけやがってよォ〜、そういうのは二人きりの時にしろよな〜」
「兄貴ィ……良かったですねィ」
「……え? な、なに?」
二人からの反応に対して、ちょっと慌てるアイツに向けて言い放つ。
「オメー、さっき言ったよな? 俺のことが好きだって」
「え? 何言ってるの、あれはいつもの──」
「俺もさっき言った……で、どうするよ?」
「どうするって……えっ……!?」
「考えとけよ……ペッシ! 先行くぞ!」
「へ、へィ、兄貴ィ!」
唖然とするアイツとホルマジオを残して、俺はその場を後にする。
あんなことをいきなり言っちまったのは、茹だるような暑さに、頭の中まで沸いてしまったからだろうか──いや、今がそのタイミングだったんだと思う。
鈍いアイツが、これで俺を意識し始める──ここからが勝負だなと、妙に気合いが入る思いがした。
これからまだまだ、いろんな意味で暑い日が続く予感がした──そんな日だ。
俺はペッシと共にターゲットの下調べを終えて、アジトに戻る途中だった。
蝉の声がうるさいくらいに鳴り響く──今日は茹だるような暑さだ。
地面からはたゆたいと陽炎が立ち上り、太陽からもジリジリと痛いくらいの日差しが降り注ぐ──気温は三十度以上の真夏日。
普段、汗をあまりかかない俺ですら、額から胸元へと汗が流れ落ちる。
「暑ィな……」
「そうですねィ、兄貴……」
ペッシは顔を赤くして、うつむきかげんに
「よォ、お前らも、今戻りか?」
「お疲れさま! 今日も暑いねェ」
聞き覚えのある声に振り返る。そこに居たのはチームを同じくするホルマジオとアイツだ。二人が一緒のところを見るのは、あんまりいい心地はしないなと、少し視線を下へと外す。
「兄貴ィ、どこかで休憩しやしょうぜ〜。オイラ、暑くてもう倒れそうで……」
「うん、そうしよう! 確かこの近くに美味しいジェラートのお店があるんだけど──」
そうアイツが口走った途端に、若干嫌な予感がする。このパターン──前にもどこかであったような……たぶん、次にアイツが口にする言葉は──
「ねぇ、兄貴ィ〜、私、ジェラートが食べたいな〜」
わざとらしい上目遣いに猫撫で声──物をねだるときのアイツの得意技だ。それを皮切りに、ホルマジオの奴も悪ノリし始める。
「兄貴ィ〜、俺も食べたいな〜」
「おいおい、オメーらよォ、こんな時ばっかり兄貴呼ばわりしてんじゃあねーよ!」
「えぇ〜、だって、プロシュート兄貴が1番年上なのは事実でしょう?」
「あ? オメー、よく言うぜ……その年上に向かって“プロシュート”って呼び捨てにしてんのはよォ、どこのどいつだ……?」
「えっ……誰だっけ? とにかく、暑くて耐えられないから、行こう!」
惚けてみせるアイツに押されるようにして、俺は半ば強引に店へと向かわされる。でも、そんなやりとりも、実は嫌じゃなかったりしている。
***
店に着くと、皆が自分好みのジェラートを注文する中、甘い物がそんなに得意ではない俺は、冷たい飲み物を購入した。もちろんそれだけではなく、メンバー全員分のジェラートの支払いも俺もちだ。なんでホルマジオにも買ってやらなきゃあならないのかだけ、若干腑に落ちない面はあるものの……アイツとペッシの手前──納得しておくとするか。
「美味しい〜! 本当、生き返る──兄貴、ありがとう! 私、兄ィのこと大好き!」
「ハンッ、よく言うぜ……」
軽率に“好き”を口にするアイツに、全くこっちの気も知らねーでよォと、若干呆れてしまう。でも、幸せそうにジェラートを頬張るアイツの笑顔が見れたから、全てのことがチャラになる。
ちょっと見過ぎていたからか──アイツとパッと目が合った。
「ん? もしかしてプロシュートも食べたいの?」
「あ? 別にいらねーよ」
「そう? でも、これ、すっごく美味しいよ! ハイ……!」
そういったアイツが、スプーンでジェラートをひとすくいして、俺の目の前に差し出す。
ちょっと待て。この状況下で食べろということか……?
俺は柄にもなく周囲の目が気になった。
「ほら〜、早くしないと溶けちゃうよ!」
そういってアイツが急かすから、パクッとプーンを口に含んだ。
「……うまいな……俺も好きだ」
「でしょう?」
ここで案の定、ホルマジオの茶々が入る。
「なんだよ、見せつけやがってよォ〜、そういうのは二人きりの時にしろよな〜」
「兄貴ィ……良かったですねィ」
「……え? な、なに?」
二人からの反応に対して、ちょっと慌てるアイツに向けて言い放つ。
「オメー、さっき言ったよな? 俺のことが好きだって」
「え? 何言ってるの、あれはいつもの──」
「俺もさっき言った……で、どうするよ?」
「どうするって……えっ……!?」
「考えとけよ……ペッシ! 先行くぞ!」
「へ、へィ、兄貴ィ!」
唖然とするアイツとホルマジオを残して、俺はその場を後にする。
あんなことをいきなり言っちまったのは、茹だるような暑さに、頭の中まで沸いてしまったからだろうか──いや、今がそのタイミングだったんだと思う。
鈍いアイツが、これで俺を意識し始める──ここからが勝負だなと、妙に気合いが入る思いがした。
これからまだまだ、いろんな意味で暑い日が続く予感がした──そんな日だ。
the END