スターフィッシュ(七夕ver.)
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アジトを出た私は、さっき耳にしたリゾットの言葉を思いおこしていた。
あれはいったい……どういう意味だろう──いや、きっとあの言葉に意味なんてない。ただの気まぐれ……冗談に違いない。
頭の中では分かっているつもりだ。でも、ほんの少しだけ、胸が淡く期待してしまう。それに比べて──
少し高鳴る胸を押さえつつ、私はギアッチョの元へと急ぐ。
待ち合わせ場所に着くと、すでに到着していたギアッチョから、おおかた調べはついていると説明された。
ギアッチョが詳細を話し始める。でも、私はさっきのことが気にかかり、正直、ギアッチョの話は右から左へと抜けてしまっていた。
「──おい!」
「……えっ? 何?」
「おいおい、オメーよォ〜、さっきからふぬけた顔しやがってると思ったら、やっぱり俺の話、聞いてなったのかよォ!?」
「ご、ごめん……」
「ったく……まぁ、大した相手じゃあねーからよォ、とりあえず、ここだけ調べたら、さっきの情報と合わせてリゾットに伝えといてくれ」
「うん、わかった……!」
そのとき、不意にギアッチョが空を見上げる。
「曇りかよ……これだと見えねーなァ……天の川──」
ギアッチョの言葉に、一瞬目を見開く。
「えっ、知ってるの?」
「あ、今日は七夕、だろ?」
「ふ〜ん……ギアッチョって、意外とロマンチストなんだね〜」
私の一言に、今度はギアッチョが目を見開く。そして、慌てて言葉を返す。
「ハァ!? なんでそうなんだよ!? 今朝ちょっと耳にしただけだぜ!」
「……あ、そうそう聞いてよ! 私も七夕の話をアジトでしてたんだけどさ、プロシュートの答えが最低だったの! 年に一度の遠くの女より近くのヤレる女だってさ〜。そんなこというなんて、プロシュートって……本気で人を好きになったこと……あるのかな?」
「ふ〜ん……俺もそっちの考えだな」
首を傾げる私を前に、ギアッチョが含みを持たせるように呟く。
「……え? マジで? 最低……前言撤回で」
「おい、そういう意味じゃあねーよ! アイツといっしょにすんな!」
「じゃあ……どういう意味?」
私に問いかけられて、少し顔を背けながら、ポツリと話し始める。
「……遠くにいるとよォ、相手が寂しい時にそばにいてやれねー。いつも相手を近くに感じたいって、俺はそう思うからよ……」
「ギアッチョ……」
「だからよォ、アイツもそれを言いたかったんじゃあねーの?」
「アイツ……?」
その問いかけには答えず、ギアッチョはただ緩く口角を上げた。
***
「じゃあ、また」
「あぁ、報告頼んだぜ」
ギアッチョと別れた私は、一人アジトへと向かう。
もうあたりは暗くなっていた。
少しだけ雲が薄らいだのか──頭上高く、月明かりがぼんやりと浮かんで見える。
ギアッチョが誰のことを言っていたのか──本心では気付いていた。
私はその月明かりのような彼のことを思い浮かべていた。
すると目の前に人影が見える。
「よぉ……」
「──プロシュート」
「終わったのか?」
「う、うん……今からアジトに戻るところ──リゾット、いた?」
「……あぁ」
「そう……じゃあ──」
そういって、隣をすり抜けようとしたそのときだ。不意に腕を捕まれる。
「……ちょっと、なに?」
「──アジトで、オメーに言ったこと……言い直させてくれよ」
「えっ……」
私はゆっくりとプロシュートのほうに向き直る。
そのときだ。雲の切れ間から、月明かりが差し込んできた。私は思わず夜空を指さす。
「ねぇ、見て! 月が見えてきた! もしかしたら、あの二人……今夜、会えるかもしれないね!」
思わず笑みを浮かべて、向き直る。しかし、プロシュートからの返事はない。
「プロシュート……?」
問いかける影と影が徐々に重なり──私はいつの間にか、彼の腕の中にいた。
「そうだな……きっと、こんな感じで会えてると思うぜ──」
「こ、こんな感じって、ちょっと……」
ささやかだが、押し返すように抵抗するも、その上からさらに力をかけられる。
「今だけ……そんの少しの間だけでいいんだ……このまま、抱きしめさせろ……」
耳元でプロシュートの声が響く。それはいつも耳にしているはずなのに、なぜかそのときばかりは、心地よく胸に響いた。
私は、寄り添うそうに頭をたむける。でも、やっぱりすぐさま両手でプロシュートを押しのけた。
「やめてよ! いきなり、なにすんの!? 私を……他の女の代わりにしないで! 私はそうじゃあないから──」
そう吐き捨てて、私はその場を走り去る。
どうして逃げ出しなくなったのかは、わからない……でも、さっきの言葉は、なぜか、私じゃあない誰かに向けられた想いのような気がしたから──
プロシュートはきっと、特定の女は作らない。だからこそ、本気で想う相手に私は──嫉妬してしまったのかもしれない……
そんなふうに思わせるのは、待宵空に浮かび上がる、月明かりのせいだ。
あれはいったい……どういう意味だろう──いや、きっとあの言葉に意味なんてない。ただの気まぐれ……冗談に違いない。
頭の中では分かっているつもりだ。でも、ほんの少しだけ、胸が淡く期待してしまう。それに比べて──
少し高鳴る胸を押さえつつ、私はギアッチョの元へと急ぐ。
待ち合わせ場所に着くと、すでに到着していたギアッチョから、おおかた調べはついていると説明された。
ギアッチョが詳細を話し始める。でも、私はさっきのことが気にかかり、正直、ギアッチョの話は右から左へと抜けてしまっていた。
「──おい!」
「……えっ? 何?」
「おいおい、オメーよォ〜、さっきからふぬけた顔しやがってると思ったら、やっぱり俺の話、聞いてなったのかよォ!?」
「ご、ごめん……」
「ったく……まぁ、大した相手じゃあねーからよォ、とりあえず、ここだけ調べたら、さっきの情報と合わせてリゾットに伝えといてくれ」
「うん、わかった……!」
そのとき、不意にギアッチョが空を見上げる。
「曇りかよ……これだと見えねーなァ……天の川──」
ギアッチョの言葉に、一瞬目を見開く。
「えっ、知ってるの?」
「あ、今日は七夕、だろ?」
「ふ〜ん……ギアッチョって、意外とロマンチストなんだね〜」
私の一言に、今度はギアッチョが目を見開く。そして、慌てて言葉を返す。
「ハァ!? なんでそうなんだよ!? 今朝ちょっと耳にしただけだぜ!」
「……あ、そうそう聞いてよ! 私も七夕の話をアジトでしてたんだけどさ、プロシュートの答えが最低だったの! 年に一度の遠くの女より近くのヤレる女だってさ〜。そんなこというなんて、プロシュートって……本気で人を好きになったこと……あるのかな?」
「ふ〜ん……俺もそっちの考えだな」
首を傾げる私を前に、ギアッチョが含みを持たせるように呟く。
「……え? マジで? 最低……前言撤回で」
「おい、そういう意味じゃあねーよ! アイツといっしょにすんな!」
「じゃあ……どういう意味?」
私に問いかけられて、少し顔を背けながら、ポツリと話し始める。
「……遠くにいるとよォ、相手が寂しい時にそばにいてやれねー。いつも相手を近くに感じたいって、俺はそう思うからよ……」
「ギアッチョ……」
「だからよォ、アイツもそれを言いたかったんじゃあねーの?」
「アイツ……?」
その問いかけには答えず、ギアッチョはただ緩く口角を上げた。
***
「じゃあ、また」
「あぁ、報告頼んだぜ」
ギアッチョと別れた私は、一人アジトへと向かう。
もうあたりは暗くなっていた。
少しだけ雲が薄らいだのか──頭上高く、月明かりがぼんやりと浮かんで見える。
ギアッチョが誰のことを言っていたのか──本心では気付いていた。
私はその月明かりのような彼のことを思い浮かべていた。
すると目の前に人影が見える。
「よぉ……」
「──プロシュート」
「終わったのか?」
「う、うん……今からアジトに戻るところ──リゾット、いた?」
「……あぁ」
「そう……じゃあ──」
そういって、隣をすり抜けようとしたそのときだ。不意に腕を捕まれる。
「……ちょっと、なに?」
「──アジトで、オメーに言ったこと……言い直させてくれよ」
「えっ……」
私はゆっくりとプロシュートのほうに向き直る。
そのときだ。雲の切れ間から、月明かりが差し込んできた。私は思わず夜空を指さす。
「ねぇ、見て! 月が見えてきた! もしかしたら、あの二人……今夜、会えるかもしれないね!」
思わず笑みを浮かべて、向き直る。しかし、プロシュートからの返事はない。
「プロシュート……?」
問いかける影と影が徐々に重なり──私はいつの間にか、彼の腕の中にいた。
「そうだな……きっと、こんな感じで会えてると思うぜ──」
「こ、こんな感じって、ちょっと……」
ささやかだが、押し返すように抵抗するも、その上からさらに力をかけられる。
「今だけ……そんの少しの間だけでいいんだ……このまま、抱きしめさせろ……」
耳元でプロシュートの声が響く。それはいつも耳にしているはずなのに、なぜかそのときばかりは、心地よく胸に響いた。
私は、寄り添うそうに頭をたむける。でも、やっぱりすぐさま両手でプロシュートを押しのけた。
「やめてよ! いきなり、なにすんの!? 私を……他の女の代わりにしないで! 私はそうじゃあないから──」
そう吐き捨てて、私はその場を走り去る。
どうして逃げ出しなくなったのかは、わからない……でも、さっきの言葉は、なぜか、私じゃあない誰かに向けられた想いのような気がしたから──
プロシュートはきっと、特定の女は作らない。だからこそ、本気で想う相手に私は──嫉妬してしまったのかもしれない……
そんなふうに思わせるのは、待宵空に浮かび上がる、月明かりのせいだ。
the END