東京流星群
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「今日は曇りか……じゃあ、会えないね──」
アイツが、窓外から空を見上げて呟く。
「あ? 誰に会うんだ……?」
ソファーに腰掛けていた俺は、新聞を読む手を止める。
「え、決まってるじゃん! 織姫様と彦星様だよ!」
そういったアイツが、不意にカレンダーに目を向ける。
今日は七月七日──そうか、七夕か。
俺がやおら向き直ると、アイツはため息混じりに話を続ける。
「一年に一度しか会えないのにさ……今日ぐらい晴れてくれたらよかったのに……ねぇ、そう思わない?」
そんなアイツを俺は鼻で笑う。
「オメーよォ、年に一度しか会えねー女と近くにいていつでもヤレる女──どっちがいいかなんざ、そんなもんすぐにわかるだろ……?」
いったそばから、アイツの刺さるような視線が飛んでくるのがわかった。
「──そうだよね〜。ただれた恋愛しかしてこなかったプロシュートには、この純愛は理解できないよね〜……聞いた私がバカだった」
「あぁ!? なんだその言い草はよォ……?」
「だってそうでしょう? どうせろくな付き合い方してなさそうだし……」
「オメーに俺の何がわかるってんだよ!? そういうオメーこそ──」
「おい……、随分と楽しそうだなァ……」
そこにやってきたのは、リゾットだ。急にアイツの声色が、なんだか明るくなったのが勘に触る。
「あっ、リーダー! ちょうどいいところに来てくれた! ねぇ、今日は七夕でしょう? リーダーはさ、年に一度だけ会えるのを待ちわびる恋とかって……どう思う?」
「──そうだな……そんな恋も、別に悪い気はしないな……相手がお前なら──」
「……え?」
「そんなことより任務だ。このターゲットについて、下調べをして欲しい。現場には、すでにギアッチョが向かっている──今から合流しろ」
「わ、わかった!」
そういってアイツは、バタバタとアジトを出て行く。
その背中を見送った俺は、煙草に火をつけようと、胸ポケットからライターを取り出した。
そのときだ。リゾットからの妙な視線に気付く。珍しく口角の端を吊り上げ、笑みを浮かべているのが見てとれた。
俺は手を止めて、リゾットに目を向ける。
「おい、なんだその顔はよォ……?」
「いや──ただ、お前は本当に天邪鬼だなと思ってな」
「あぁ? どういう意味だ……?」
俺は、いかにも怪訝だと言わんばかりに眉間にシワを寄せる。そんな俺を知りめに、リゾットもソファーに腰を下ろす。
「ちゃんとアイツに言ったらどうだ? そばにいるお前のことが気になる──いや、お前に惚れている──と、そう告げればいいだけのこと。それなのに、なぜ言わないんだ?」
リゾットのストレートな言葉に、一瞬息が詰まる。コイツ……もしかして──
「お、おいおい、オメーは何勘違いしてんだァ? だいたい、なんで俺がアイツのことを──」
「なんだ違うのか? まぁそのほうが、俺にとってはいくぶんも都合がいい……」
それだけ告げると、リゾットもおもむろに席を立ち、リビングを後にする。
残された俺は、大きく紫煙を吐き出した。
***
七夕ねェ──
全く……願いなんてもんは、星に託しても仕方がないことなんて、百も承知だ。でも、こんな天邪鬼な俺の願いは、柄にもなく、流れ星にさえ手を合わせてしまいたくなるほどに、叶いそうにもない。
ましてや今日はあいにくの曇天──
でも、その分厚い雲の上では、きっと天の川を越えて織姫と彦星が会っているのなら──
俺のアイツへの想いも、1年越しに届いて欲しい──
そんなことを願う薄煙越しの星月夜。
アイツが、窓外から空を見上げて呟く。
「あ? 誰に会うんだ……?」
ソファーに腰掛けていた俺は、新聞を読む手を止める。
「え、決まってるじゃん! 織姫様と彦星様だよ!」
そういったアイツが、不意にカレンダーに目を向ける。
今日は七月七日──そうか、七夕か。
俺がやおら向き直ると、アイツはため息混じりに話を続ける。
「一年に一度しか会えないのにさ……今日ぐらい晴れてくれたらよかったのに……ねぇ、そう思わない?」
そんなアイツを俺は鼻で笑う。
「オメーよォ、年に一度しか会えねー女と近くにいていつでもヤレる女──どっちがいいかなんざ、そんなもんすぐにわかるだろ……?」
いったそばから、アイツの刺さるような視線が飛んでくるのがわかった。
「──そうだよね〜。ただれた恋愛しかしてこなかったプロシュートには、この純愛は理解できないよね〜……聞いた私がバカだった」
「あぁ!? なんだその言い草はよォ……?」
「だってそうでしょう? どうせろくな付き合い方してなさそうだし……」
「オメーに俺の何がわかるってんだよ!? そういうオメーこそ──」
「おい……、随分と楽しそうだなァ……」
そこにやってきたのは、リゾットだ。急にアイツの声色が、なんだか明るくなったのが勘に触る。
「あっ、リーダー! ちょうどいいところに来てくれた! ねぇ、今日は七夕でしょう? リーダーはさ、年に一度だけ会えるのを待ちわびる恋とかって……どう思う?」
「──そうだな……そんな恋も、別に悪い気はしないな……相手がお前なら──」
「……え?」
「そんなことより任務だ。このターゲットについて、下調べをして欲しい。現場には、すでにギアッチョが向かっている──今から合流しろ」
「わ、わかった!」
そういってアイツは、バタバタとアジトを出て行く。
その背中を見送った俺は、煙草に火をつけようと、胸ポケットからライターを取り出した。
そのときだ。リゾットからの妙な視線に気付く。珍しく口角の端を吊り上げ、笑みを浮かべているのが見てとれた。
俺は手を止めて、リゾットに目を向ける。
「おい、なんだその顔はよォ……?」
「いや──ただ、お前は本当に天邪鬼だなと思ってな」
「あぁ? どういう意味だ……?」
俺は、いかにも怪訝だと言わんばかりに眉間にシワを寄せる。そんな俺を知りめに、リゾットもソファーに腰を下ろす。
「ちゃんとアイツに言ったらどうだ? そばにいるお前のことが気になる──いや、お前に惚れている──と、そう告げればいいだけのこと。それなのに、なぜ言わないんだ?」
リゾットのストレートな言葉に、一瞬息が詰まる。コイツ……もしかして──
「お、おいおい、オメーは何勘違いしてんだァ? だいたい、なんで俺がアイツのことを──」
「なんだ違うのか? まぁそのほうが、俺にとってはいくぶんも都合がいい……」
それだけ告げると、リゾットもおもむろに席を立ち、リビングを後にする。
残された俺は、大きく紫煙を吐き出した。
***
七夕ねェ──
全く……願いなんてもんは、星に託しても仕方がないことなんて、百も承知だ。でも、こんな天邪鬼な俺の願いは、柄にもなく、流れ星にさえ手を合わせてしまいたくなるほどに、叶いそうにもない。
ましてや今日はあいにくの曇天──
でも、その分厚い雲の上では、きっと天の川を越えて織姫と彦星が会っているのなら──
俺のアイツへの想いも、1年越しに届いて欲しい──
そんなことを願う薄煙越しの星月夜。
the END