チョコレート(2021)
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任務終わり──
アジトへ戻る帰り道──話はペッシの唐突な質問から始まった。
「もうすぐサン・バレンティーノか……兄貴はいつも沢山チョコもらってるけど……オイラには縁遠い話だな……あ、そう言えば、兄貴は誰かにプレゼントとか渡すことってあるんですかィ?」
「あぁ?」
「す、すいやせん! 立ち入った事聞いちまって……」
俺のぶっきらぼうな反応に、ペッシが慌てて言葉を返す。そして、視線を後方に向けると首をすくめた。それに対し、俺は静かに答える。
「渡す……」
「えっ?」
「俺にだってよォ、プレゼントを渡してェAmoreの一人くらいはいるからなァ」
「マ、マジですかィ!? 兄貴の口からそんなことが聞けるなんて──」
ペッシがキラキラと目を輝かせている傍らで、俺は紫煙を吹かしながらおもむろに空を仰ぐ。
「ん? どうかしたんですかィ?」
「いや……なんでもねーよ、行くぞ──」
今日は雲一つない快晴だ──しかし、そんな真っ青な空がどこかもの寂しげに映る。それにはある理由があった。
***
「よぉ」
「あっ、プロシュートさん、いらっしゃい」
やってきたのは、とある花屋──
俺を出迎えてくれたのは、一人の店員。名前はキアラ。屈託の無い笑顔のこいつが俺の想い人だ。
「今日のオメーのお勧めは、どの花だ?」
「ん〜今日は……この花ですね!」
「じゃあ、それを花束にしてくれ……あ、それと──そろそろ、俺の女になってくれる気にはなったか……?」
さり気なく彼女の髪をひとすくいしながら、ニコリと微笑みかける。しかし、すぐさまサッと手を払い除けられてしまう。
「もう……またそれですか? だから、私には好きな人がいるので、プロシュートさんのお気持ちにはお応えできません」
「おいおい、相変わらず連れねぇなァ……冗談に決まってんだろ?」
「プロシュートさんが言うと冗談に聞こえないんですけど……」
「で、そいつとはなんか進展あったのかよ? やっぱりまだオメーの片想いか?」
「そ、それは……おっしゃる通り、まだ何も──」
その答えを聞いて、内心ほっとしている自分がいる。
俺だって人の物に手出しする様なマネはしねーが……まだ付き合ってねーなら話は別だ。乙女心と秋の空──この先、俺のやり方次第でいくらでも心変わりさせてやらァ──
そう思いつつ、表では裏腹な言葉を返す。
「ハンっ、せいぜい頑張れよ」
「あっ、プロシュートさん、花束──」
「オメーにやるよ、じゃあな──」
そう言って、アイツに背を向けながら手を挙げて、花屋を後にした。
***
そして、時はバレンティーノ前日──
花屋の前を通りかかった俺の目に、彼女の姿が飛び込んできた。
確か今日は意中の相手をデートに誘うと張り切って話していたのに──俺は思わず店に立ち寄った。
案の定、彼女は明らかに沈み込んでいた。見兼ねた俺は、さり気なく声をかける。
「おいおい、何しけたツラしてんだよ……?」
「あ、プロシュートさん……また来たんですか、暇ですね……」
「お前こそ、何暇そうに店番してんだよ? 今日はデートじゃあなかったのか?」
「……フラれましたよ、私。いや、正確には告白する前に玉砕しちゃいました」
「どう言う事だ……?」
「彼、来月結婚するんですって。婚約者がいたんですよ。私、そんな事全然知らなくて……そうですよね。あんなに素敵な人、彼女がいない方がおかしいですよね……」
そう言いながら、彼女がやるせなく微笑む。その傍らで、俺は内心笑みを浮かべていた。こんな話は願ったり叶ったりだ。
そして俺は一か八かの賭けに出た。
「おい──」
「何ですか?」
「俺は毎年、腐るほど女共からチョコを貰う」
「知ってますよ。いつもペッシくんが言ってますからね。“オイラの兄貴は凄いくモテるんだ”って──」
「明日、そのくだらねーチョコは全部蹴ってきてやる! そして俺は、99本のバラを持ってここに来る。だからオメーは、俺へのチョコを用意しとけよ?」
「……え? ち、ちょっと待ってください! それってどう言う──」
「99本のバラの意味……オメーなら分かるだろう? 明日俺はオメーをいただく……いいな……?」
それだけ吐き捨てると、豆鉄砲を喰らったような表情を浮かべたアイツを残し、俺は店を後にした。
そして、アジトへの帰路の途中にふと思う。
そう簡単にアイツの心は変わらないだろう……だが、こんな風に素直に気持ちをぶつけるのもそう悪くはない──
そんな事に気付かされた……いつかのバレンティーノ。
アジトへ戻る帰り道──話はペッシの唐突な質問から始まった。
「もうすぐサン・バレンティーノか……兄貴はいつも沢山チョコもらってるけど……オイラには縁遠い話だな……あ、そう言えば、兄貴は誰かにプレゼントとか渡すことってあるんですかィ?」
「あぁ?」
「す、すいやせん! 立ち入った事聞いちまって……」
俺のぶっきらぼうな反応に、ペッシが慌てて言葉を返す。そして、視線を後方に向けると首をすくめた。それに対し、俺は静かに答える。
「渡す……」
「えっ?」
「俺にだってよォ、プレゼントを渡してェAmoreの一人くらいはいるからなァ」
「マ、マジですかィ!? 兄貴の口からそんなことが聞けるなんて──」
ペッシがキラキラと目を輝かせている傍らで、俺は紫煙を吹かしながらおもむろに空を仰ぐ。
「ん? どうかしたんですかィ?」
「いや……なんでもねーよ、行くぞ──」
今日は雲一つない快晴だ──しかし、そんな真っ青な空がどこかもの寂しげに映る。それにはある理由があった。
***
「よぉ」
「あっ、プロシュートさん、いらっしゃい」
やってきたのは、とある花屋──
俺を出迎えてくれたのは、一人の店員。名前はキアラ。屈託の無い笑顔のこいつが俺の想い人だ。
「今日のオメーのお勧めは、どの花だ?」
「ん〜今日は……この花ですね!」
「じゃあ、それを花束にしてくれ……あ、それと──そろそろ、俺の女になってくれる気にはなったか……?」
さり気なく彼女の髪をひとすくいしながら、ニコリと微笑みかける。しかし、すぐさまサッと手を払い除けられてしまう。
「もう……またそれですか? だから、私には好きな人がいるので、プロシュートさんのお気持ちにはお応えできません」
「おいおい、相変わらず連れねぇなァ……冗談に決まってんだろ?」
「プロシュートさんが言うと冗談に聞こえないんですけど……」
「で、そいつとはなんか進展あったのかよ? やっぱりまだオメーの片想いか?」
「そ、それは……おっしゃる通り、まだ何も──」
その答えを聞いて、内心ほっとしている自分がいる。
俺だって人の物に手出しする様なマネはしねーが……まだ付き合ってねーなら話は別だ。乙女心と秋の空──この先、俺のやり方次第でいくらでも心変わりさせてやらァ──
そう思いつつ、表では裏腹な言葉を返す。
「ハンっ、せいぜい頑張れよ」
「あっ、プロシュートさん、花束──」
「オメーにやるよ、じゃあな──」
そう言って、アイツに背を向けながら手を挙げて、花屋を後にした。
***
そして、時はバレンティーノ前日──
花屋の前を通りかかった俺の目に、彼女の姿が飛び込んできた。
確か今日は意中の相手をデートに誘うと張り切って話していたのに──俺は思わず店に立ち寄った。
案の定、彼女は明らかに沈み込んでいた。見兼ねた俺は、さり気なく声をかける。
「おいおい、何しけたツラしてんだよ……?」
「あ、プロシュートさん……また来たんですか、暇ですね……」
「お前こそ、何暇そうに店番してんだよ? 今日はデートじゃあなかったのか?」
「……フラれましたよ、私。いや、正確には告白する前に玉砕しちゃいました」
「どう言う事だ……?」
「彼、来月結婚するんですって。婚約者がいたんですよ。私、そんな事全然知らなくて……そうですよね。あんなに素敵な人、彼女がいない方がおかしいですよね……」
そう言いながら、彼女がやるせなく微笑む。その傍らで、俺は内心笑みを浮かべていた。こんな話は願ったり叶ったりだ。
そして俺は一か八かの賭けに出た。
「おい──」
「何ですか?」
「俺は毎年、腐るほど女共からチョコを貰う」
「知ってますよ。いつもペッシくんが言ってますからね。“オイラの兄貴は凄いくモテるんだ”って──」
「明日、そのくだらねーチョコは全部蹴ってきてやる! そして俺は、99本のバラを持ってここに来る。だからオメーは、俺へのチョコを用意しとけよ?」
「……え? ち、ちょっと待ってください! それってどう言う──」
「99本のバラの意味……オメーなら分かるだろう? 明日俺はオメーをいただく……いいな……?」
それだけ吐き捨てると、豆鉄砲を喰らったような表情を浮かべたアイツを残し、俺は店を後にした。
そして、アジトへの帰路の途中にふと思う。
そう簡単にアイツの心は変わらないだろう……だが、こんな風に素直に気持ちをぶつけるのもそう悪くはない──
そんな事に気付かされた……いつかのバレンティーノ。
the END