サンタクロース
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ナターレ──
聖なる夜に唯一無二の存在と一緒にいた事なんて、今まで一度もなかった。
でも、今宵は違う。俺の傍には一人の愛しい人──こんな風に人を思うなんざ、世も末かもしれないと、俺はふと思う。
そんなアイツの寝顔を横目に、俺は少し乾いた喉を潤す為、飲み物を取りにキッチンへと向かう。そっとベッドから降りたつもりだったが、思いがけず名前を呼ばれて振り返る。
「プロシュート……?」
「悪ィな……起こしちまったか?」
「ううん……」
「お前も何か飲むか?」
「──大丈夫」
そう言って背を向けたアイツの声色がどことなく寂しさを帯びて聞こえる。
俺は冷蔵庫から水を取り出すと、一気に身体に流し込む。そして、再びベッドへと戻る。
優しく髪を撫でながら首筋にキスを落とすと、唇の冷たさにアイツが一瞬ビクッと体を震わせた。
「ちょっと、わざとでしょう?」
「ハンッ、オメーがわざと背を向けやがるからだろ?」
子供みたいな俺の言い草に、アイツはため息混じりにも似た笑みを浮かべ、こっちに向き直る。そして、急にこんな事を問いかけてきた。
「ねぇ、もしプロシュートがサンタクロースだったら、私に何をプレゼントしてくれる?」
「俺がサンタクロース? ……飛んだ御伽話だなァ」
「いいの、もしもの話だから」
「そうだなァ……俺ならオメーに千個のプレゼントをやるよ」
「千個も……?」
「あぁ……ガキ共には悪ィがその日おあずけだ……全部オメーにやるよ。まぁ、質は保証しねぇがなァ」
冗談混じりに鼻で笑う俺に対して、アイツは真顔で……でも、少し切なげに一瞬視線を下に向けつつ言い放つ。
「じゃあ一つ目をちょうだい──」
言われた俺は、アイツを軽く抱きしめた。『もっと──』なんて言うもんだから、今度は少しキツく抱き寄せる。
「次は、何をくれるの……?」
腕の中でそう呟くアイツに、触れるだけの軽いキスを落とす。チュッ……と、リップ音を一つだけ鳴らすと、次の言葉が出る前にすかさず深く口付けた。
「…んっ……っ、プロシュート──」
ねだるようにアイツが俺の名を呼ぶ。俺は組み敷くようにアイツを見下ろしながら、口角を片側だけ吊り上げる。
「こっから先はよォ、オメーが欲しいものを言葉にするんならくれてやるぜ?」
ニヒルな笑みを浮かべて出方を伺うも、『それじゃあいつもと変わらない』なんて言いながら微笑んだアイツが、急にまた真剣な眼差しを向けてきた。
「プロシュート……ありがとう。こうして私の側にいてくれて。千個もプレゼントなんいらない……だから、毎年こうして私の側にいて? 私にとっては、それが一番のプレゼントだから──」
そう言ったアイツがふわりと微笑む。その笑顔はいつも見ているはずなのに、その時ばかりは見た瞬間に、なぜだか瞳の奥が熱くなった。
「なんだよ、サンタの俺がプレゼント、貰っちまったじゃあねーかよ」
「え……?」
「ハンッ、なんでもねーよ」
***
儚く消えそうな──でも確かなこの想いは、一体いつまで続くのだろうか……
この小さくも幸せな日々が永遠に続かない事ぐらい、とうの昔に分かっていた。でも、今日のナターレで、俺にとってはその笑顔だけが唯一無二のプレゼントとなった──
こんな何気ない日々の積み重ねが、俺にとっては掛け替えのないプレゼントとなっていく──
それと同時にアイツにとっても、こんな些細な日常が、プレゼントみたいに記憶として積み重なっていてくれたらと──
いつの日か、それが別れへと変わる日が来たとしても……
***
「なぁ……」
「何?」
「今日は、オメーの方からキスしてくれねーか?」
「──うん、いいよ」
「窓に白く光る氷が、溶けて滴に変わる頃には……俺はオメーの元にきっと帰るから──」
そう言って交わした口付けが最後になる事は、なんとなく予期していた。
結局あの約束は、果たせないままどこかを彷徨う事になってしまったけれど、俺がアイツにとってのサンタクロースだったのだとすれば、それはもう元の場所に戻らなければならないことを知らせる為──だったのかもしれない。
聖なる夜に唯一無二の存在と一緒にいた事なんて、今まで一度もなかった。
でも、今宵は違う。俺の傍には一人の愛しい人──こんな風に人を思うなんざ、世も末かもしれないと、俺はふと思う。
そんなアイツの寝顔を横目に、俺は少し乾いた喉を潤す為、飲み物を取りにキッチンへと向かう。そっとベッドから降りたつもりだったが、思いがけず名前を呼ばれて振り返る。
「プロシュート……?」
「悪ィな……起こしちまったか?」
「ううん……」
「お前も何か飲むか?」
「──大丈夫」
そう言って背を向けたアイツの声色がどことなく寂しさを帯びて聞こえる。
俺は冷蔵庫から水を取り出すと、一気に身体に流し込む。そして、再びベッドへと戻る。
優しく髪を撫でながら首筋にキスを落とすと、唇の冷たさにアイツが一瞬ビクッと体を震わせた。
「ちょっと、わざとでしょう?」
「ハンッ、オメーがわざと背を向けやがるからだろ?」
子供みたいな俺の言い草に、アイツはため息混じりにも似た笑みを浮かべ、こっちに向き直る。そして、急にこんな事を問いかけてきた。
「ねぇ、もしプロシュートがサンタクロースだったら、私に何をプレゼントしてくれる?」
「俺がサンタクロース? ……飛んだ御伽話だなァ」
「いいの、もしもの話だから」
「そうだなァ……俺ならオメーに千個のプレゼントをやるよ」
「千個も……?」
「あぁ……ガキ共には悪ィがその日おあずけだ……全部オメーにやるよ。まぁ、質は保証しねぇがなァ」
冗談混じりに鼻で笑う俺に対して、アイツは真顔で……でも、少し切なげに一瞬視線を下に向けつつ言い放つ。
「じゃあ一つ目をちょうだい──」
言われた俺は、アイツを軽く抱きしめた。『もっと──』なんて言うもんだから、今度は少しキツく抱き寄せる。
「次は、何をくれるの……?」
腕の中でそう呟くアイツに、触れるだけの軽いキスを落とす。チュッ……と、リップ音を一つだけ鳴らすと、次の言葉が出る前にすかさず深く口付けた。
「…んっ……っ、プロシュート──」
ねだるようにアイツが俺の名を呼ぶ。俺は組み敷くようにアイツを見下ろしながら、口角を片側だけ吊り上げる。
「こっから先はよォ、オメーが欲しいものを言葉にするんならくれてやるぜ?」
ニヒルな笑みを浮かべて出方を伺うも、『それじゃあいつもと変わらない』なんて言いながら微笑んだアイツが、急にまた真剣な眼差しを向けてきた。
「プロシュート……ありがとう。こうして私の側にいてくれて。千個もプレゼントなんいらない……だから、毎年こうして私の側にいて? 私にとっては、それが一番のプレゼントだから──」
そう言ったアイツがふわりと微笑む。その笑顔はいつも見ているはずなのに、その時ばかりは見た瞬間に、なぜだか瞳の奥が熱くなった。
「なんだよ、サンタの俺がプレゼント、貰っちまったじゃあねーかよ」
「え……?」
「ハンッ、なんでもねーよ」
***
儚く消えそうな──でも確かなこの想いは、一体いつまで続くのだろうか……
この小さくも幸せな日々が永遠に続かない事ぐらい、とうの昔に分かっていた。でも、今日のナターレで、俺にとってはその笑顔だけが唯一無二のプレゼントとなった──
こんな何気ない日々の積み重ねが、俺にとっては掛け替えのないプレゼントとなっていく──
それと同時にアイツにとっても、こんな些細な日常が、プレゼントみたいに記憶として積み重なっていてくれたらと──
いつの日か、それが別れへと変わる日が来たとしても……
***
「なぁ……」
「何?」
「今日は、オメーの方からキスしてくれねーか?」
「──うん、いいよ」
「窓に白く光る氷が、溶けて滴に変わる頃には……俺はオメーの元にきっと帰るから──」
そう言って交わした口付けが最後になる事は、なんとなく予期していた。
結局あの約束は、果たせないままどこかを彷徨う事になってしまったけれど、俺がアイツにとってのサンタクロースだったのだとすれば、それはもう元の場所に戻らなければならないことを知らせる為──だったのかもしれない。
the END