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それは、数日前の出来事──
「え……何で私なの? 私がお酒飲めないの知ってるよね?」
私は、友人に向けて冷たく言い放つ。そんな私に友人は、両手を合わせながら頭を下げる。
「お願い……! だってあの店、なんか1人じゃ入りにくいし……それに店員さんと顔見知りで話せる人他にいなくてさ〜、だからお願い!」
「…………」
友人は、どうやらそのバールの店員さんに恋をしているらしい……常連さんになってどうにかお近付きになりたいようで──
初めてその店に行った時、一緒だった私を、やらたとそのバールに誘ってくるのだ。
しかし私は、躊躇うように黙ってしまう。
友人には、協力したいとは思っているのだが、そこにはどうにも私の苦手なタイプの店員がいるのだ。だから私は、いつも通り歯切れの悪い返事を返す。
「……別に飲みに行くのはいいけど……あのお店が──」
「ちょっとだけでいいから! お願い!」
「……分かった」
「ありがと〜! じゃあ、また後でね!」
意気揚々と帰っていく友人の背中を、私はため息混じり憂鬱な面持ちで見送る。
私の苦手な店員──思い浮かんだのは、ブロンド髪の店員だ。容姿は誰もが目を奪われる程のイケメンなのだが、言うことがいちいち鼻につく……そんなはっきり言わなくてもいいのにと。でも、言っている事はとことん的を射ているのは事実……だから余計に気に入らなのかもしれない。
***
夕暮れ時、私は友人と待ち合わせたバールへと向かう。
少し約束の時間より早めに着いた私は、入り口付近で待つことにした。その時背後から、急に話しかけられる。
「よぉ……また来たのか? 酒もろくに飲めねーバンビーナのくせによォ」
振り返るとそこにいたのは、
ブロンド髪の店員。私は思わず鋭い視線を向けてしまう。
「別にいいじゃあないですか? お酒以外もあるんですよね?」
「まぁ、あるにはあるがよォ……ん、どしたァ? 中に入らねーのか?」
「ここで待ち合わせしてるんです」
「男とか?」
「違います、友人とです」
「あ〜、この前一緒に来てた奴か……まぁ、こんな場所に女が1人で立ってると、ナンパ待ちだと思われちまうぜ? どうせなら中で待ってろよ」
そう促され、一緒に店内へと入る。そのままカウンター席へと誘われたが、なんだか気まずい──友人の言っていた1人では居り辛い雰囲気とはこれなのか……とにかく早くきて欲しい──と、友人の到着を刹那に願う。
その時、1本の電話が入る。
「プロント……? うん、私ならもう店内で待ってるけど──えっ、来れないの!? えっ……あ〜、それは大変だね……え、うん、こっちは大丈夫。分かった、じゃあまたね……」
私は、声色低くく電話を切る。そして、思わずため息が溢れた。そんな私の様子を見ていたのか──店員が話しかけてきた。
「何かあったのか?」
「えっ……あ〜、さっき話してた友人からだったんですけど、なんか急なトラブルが起きたって──その対処に追われてて、今日は来れなくなったって……それで、あの〜、ピンク髪の店員さん──あの方によろしくお伝えくださいって……そんなの私から言われてもね──」
「ピンクの髪って、メローネの事か? なんだ、オメーの友達はメローネに気があったのか? 飛んだ悪趣味だなァ」
ハンッと、鼻で笑うように店員が言うのを聞いて、私は思わず問いかける。
「それって……どーゆー意味ですか?」
「そのまんまの意味だ……ところで、オメーはどうなんだ? 目当ての相手とかいねーのか?」
「いませんよ。私はあくまでもただの付き合いですから」
即答し、サッと立ち上がる。
もうここには用はない……一刻も早く立ち去ろう思った矢先、目の前に一杯のカクテルが置かれる。
それは透き通るようなパステルブルー。グラスの淵には、真っ赤なチェリーが添えられていた。
そんなもの注文していないのに──
首を傾げながら不思議そうにしている私を後目に、店員が話をし始める。
「俺の奢りだ……せっかく来たんだ。一杯いくらい付き合えよ?」
「えっ、でも、私が飲めないの知ってますよね?」
「あぁ……だから、下戸のオメーでも飲める程度の弱い酒だ」
そう言われても、なおカクテルに口をつけない私に、店員は呆れたように再び話を続ける。
「あ? もしかして妙な勘ぐりしてんじゃあねーよなァ? 心配すんな。大体オメーなんざ酔わせてどーこーしたりするほど、こちとら女に不自由してねーよ」
「ベ、別にそんな事思ってませんよ! 私はただ、もう帰ろうと思ってたから──でも、せっかくだから、いただきます」
ホント、一言余計だな……この人──
そう思いながら、カクテルを一口飲んでみる。
柔らかな甘い香りが鼻を抜けると、後から柑橘系の爽やかな酸味が広がる──
「……美味しい」
思わず口をついて出た言葉──それは本心からだった。
「だろ? まぁ、昨日思いつきで作ってみた奴だが……今度オメーが来た時にでも出してみようと思っていた新作だ」
「またまた……お酒の弱いお客さんへの言い回し……ほんとお上手ですね」
「ハンッ、バレたか」
そう言いつつ、浮かべたいつもの意地悪そうな笑顔に、私は──
その後、店員の表情が、急に真面目なものに変わる。
「まぁ、酒は無理に飲む必要はねぇし、オメーにこの場所は、まだまだ似合わねぇ……と言いたいところだが……そんなオメーでも飲めるような似合いのカクテル、作ってやるからまた来いよ?」
そんな事をさらりと言ってくるような彼に、私は安定の答えを返す。
「ハイハイ……まぁ、友人にはまだしばらくは付き合わされそうなので、いずれまた──」
「いずれ……ねぇ──あ、それと名前! 俺はプロシュートだ。今後は店員じゃあなくて、そう名前で呼べよな? マンモーナのキアラ──」
「えっ、どうして何で私の名前を……?」
その問いかけには答えず、プロシュートはただ黙って口角を上げる──
そんなことから始まる物語──
この先の結末は、まだまだ読めそうにもない……
「え……何で私なの? 私がお酒飲めないの知ってるよね?」
私は、友人に向けて冷たく言い放つ。そんな私に友人は、両手を合わせながら頭を下げる。
「お願い……! だってあの店、なんか1人じゃ入りにくいし……それに店員さんと顔見知りで話せる人他にいなくてさ〜、だからお願い!」
「…………」
友人は、どうやらそのバールの店員さんに恋をしているらしい……常連さんになってどうにかお近付きになりたいようで──
初めてその店に行った時、一緒だった私を、やらたとそのバールに誘ってくるのだ。
しかし私は、躊躇うように黙ってしまう。
友人には、協力したいとは思っているのだが、そこにはどうにも私の苦手なタイプの店員がいるのだ。だから私は、いつも通り歯切れの悪い返事を返す。
「……別に飲みに行くのはいいけど……あのお店が──」
「ちょっとだけでいいから! お願い!」
「……分かった」
「ありがと〜! じゃあ、また後でね!」
意気揚々と帰っていく友人の背中を、私はため息混じり憂鬱な面持ちで見送る。
私の苦手な店員──思い浮かんだのは、ブロンド髪の店員だ。容姿は誰もが目を奪われる程のイケメンなのだが、言うことがいちいち鼻につく……そんなはっきり言わなくてもいいのにと。でも、言っている事はとことん的を射ているのは事実……だから余計に気に入らなのかもしれない。
***
夕暮れ時、私は友人と待ち合わせたバールへと向かう。
少し約束の時間より早めに着いた私は、入り口付近で待つことにした。その時背後から、急に話しかけられる。
「よぉ……また来たのか? 酒もろくに飲めねーバンビーナのくせによォ」
振り返るとそこにいたのは、
ブロンド髪の店員。私は思わず鋭い視線を向けてしまう。
「別にいいじゃあないですか? お酒以外もあるんですよね?」
「まぁ、あるにはあるがよォ……ん、どしたァ? 中に入らねーのか?」
「ここで待ち合わせしてるんです」
「男とか?」
「違います、友人とです」
「あ〜、この前一緒に来てた奴か……まぁ、こんな場所に女が1人で立ってると、ナンパ待ちだと思われちまうぜ? どうせなら中で待ってろよ」
そう促され、一緒に店内へと入る。そのままカウンター席へと誘われたが、なんだか気まずい──友人の言っていた1人では居り辛い雰囲気とはこれなのか……とにかく早くきて欲しい──と、友人の到着を刹那に願う。
その時、1本の電話が入る。
「プロント……? うん、私ならもう店内で待ってるけど──えっ、来れないの!? えっ……あ〜、それは大変だね……え、うん、こっちは大丈夫。分かった、じゃあまたね……」
私は、声色低くく電話を切る。そして、思わずため息が溢れた。そんな私の様子を見ていたのか──店員が話しかけてきた。
「何かあったのか?」
「えっ……あ〜、さっき話してた友人からだったんですけど、なんか急なトラブルが起きたって──その対処に追われてて、今日は来れなくなったって……それで、あの〜、ピンク髪の店員さん──あの方によろしくお伝えくださいって……そんなの私から言われてもね──」
「ピンクの髪って、メローネの事か? なんだ、オメーの友達はメローネに気があったのか? 飛んだ悪趣味だなァ」
ハンッと、鼻で笑うように店員が言うのを聞いて、私は思わず問いかける。
「それって……どーゆー意味ですか?」
「そのまんまの意味だ……ところで、オメーはどうなんだ? 目当ての相手とかいねーのか?」
「いませんよ。私はあくまでもただの付き合いですから」
即答し、サッと立ち上がる。
もうここには用はない……一刻も早く立ち去ろう思った矢先、目の前に一杯のカクテルが置かれる。
それは透き通るようなパステルブルー。グラスの淵には、真っ赤なチェリーが添えられていた。
そんなもの注文していないのに──
首を傾げながら不思議そうにしている私を後目に、店員が話をし始める。
「俺の奢りだ……せっかく来たんだ。一杯いくらい付き合えよ?」
「えっ、でも、私が飲めないの知ってますよね?」
「あぁ……だから、下戸のオメーでも飲める程度の弱い酒だ」
そう言われても、なおカクテルに口をつけない私に、店員は呆れたように再び話を続ける。
「あ? もしかして妙な勘ぐりしてんじゃあねーよなァ? 心配すんな。大体オメーなんざ酔わせてどーこーしたりするほど、こちとら女に不自由してねーよ」
「ベ、別にそんな事思ってませんよ! 私はただ、もう帰ろうと思ってたから──でも、せっかくだから、いただきます」
ホント、一言余計だな……この人──
そう思いながら、カクテルを一口飲んでみる。
柔らかな甘い香りが鼻を抜けると、後から柑橘系の爽やかな酸味が広がる──
「……美味しい」
思わず口をついて出た言葉──それは本心からだった。
「だろ? まぁ、昨日思いつきで作ってみた奴だが……今度オメーが来た時にでも出してみようと思っていた新作だ」
「またまた……お酒の弱いお客さんへの言い回し……ほんとお上手ですね」
「ハンッ、バレたか」
そう言いつつ、浮かべたいつもの意地悪そうな笑顔に、私は──
その後、店員の表情が、急に真面目なものに変わる。
「まぁ、酒は無理に飲む必要はねぇし、オメーにこの場所は、まだまだ似合わねぇ……と言いたいところだが……そんなオメーでも飲めるような似合いのカクテル、作ってやるからまた来いよ?」
そんな事をさらりと言ってくるような彼に、私は安定の答えを返す。
「ハイハイ……まぁ、友人にはまだしばらくは付き合わされそうなので、いずれまた──」
「いずれ……ねぇ──あ、それと名前! 俺はプロシュートだ。今後は店員じゃあなくて、そう名前で呼べよな? マンモーナのキアラ──」
「えっ、どうして何で私の名前を……?」
その問いかけには答えず、プロシュートはただ黙って口角を上げる──
そんなことから始まる物語──
この先の結末は、まだまだ読めそうにもない……
the END