Fall Out
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反吐が出そうだ……
華やかなパーティーが行われる中、私は1人そんな事を思っていた。ニコニコした仮面の裏側にあるのは、醜い欲望だけ。私の家族なんて所詮作り物──
そんな現実から逃れる為、こっそりとパーティーを抜け出し、やって来たのは裏庭のテラス。
ここには誰も来ない……
そこでは秋虫の鳴き声が響き渡り、少し肌寒い風が心地よく感じる──
ここに来ると、普段の雑踏や窮屈さから解放される──私が唯一落ち着ける場所だ。
綺麗な洋服が着られ、美味しい料理が食べられ、大きな家に住んでいられる──それは、確かに幸せな事なのかもしれない……けれど、全てを決められ、自分の自由がないなんて……それは借り物の自分──本物なんてどこにもいやしない。私はまるで着せ替え人形のごとく振る舞う。顔には決まった笑顔を張り付けて、いつも良い子を演じてきた。でも、そんな日々を送り続けるなんて、もう耐えられなかった。終いには、好きでもない人と婚約だなんて……ありえない。みんな消えて無くなってしまえばいい──
そして私もこのまま、何処かに消えてしまいたい──そう思った時だった。
「よォ……また会ったなァ」
背後からそう声をかけられた私は、“また”と言う言葉に、違和感を覚える。眉間にシワを寄せ、怪訝そうな表情を浮かべながら振り返ると、そこにいたのは眩しいくらい綺麗なブロンド髪の男。
「オメー、またこんなところで何してんだ……? 中では楽しいパーティーの真っ最中だろ?」
「誰……?」
「俺か? そうだなァ……いわゆる“救世主”ってところか……」
「何それ? 私はただこんな茶番のパーティーから抜け出してただけ……だって、みんな自分の事ばっかり……私が居なくなった事になんて気付きもしないわ」
そう吐き捨て、再び男に背を向ける。すると、背後から高笑いが聞こえてくる。何がそんなにおかしいの……? と、睨むような視線で再び振り向くと、男は満足そうな表情を浮かべながら、私に冷たいペットボトルを投げ渡す。それはまるで凍っているかのようだった。
「えっ、ちょっと──!?」
「お前の判断はある意味正しいかもな……まぁ、今からここは地獄絵図と化するからなァ」
「え、どういう意味──」
その時、突如としてガラスの割れる音と共に悲鳴が響き渡る。
「えっ、何ッ……!?」
「始まったか……さてと、俺もそろそろ参戦してくるかなァ」
「ねぇ、一体何が起こってるの!?」
「何ってよォ……オメー、みんな消えてなくなりゃいいって思ってただろ? だから、皆殺しだ……」
「み、皆殺しって──」
一瞬背筋が、凍りつく。しかし同時に安堵の感情も込み上げるのを感じた。全て消えてなくなるのかと思うと、どこかホッとする自分がそこにはいた。
「死にたくなけりゃあよォ、そいつで身体、冷やしとくんだな」
「ねぇ、あなたは一体──?」
「だからよォ、オメーの“救世主”って言ってんだろ? 迎えに来てやったんだ。ほら、行くぞ!」
「迎えに来たって──」
その言葉と共に思い起こされたのは、遠い記憶のカケラ──
***
幼い頃に母を亡くした私は、父の財産目当てで再婚した義母に、将来の為と厳しくしつけられ、やりたくもない勉強や習い事を日々押し付けられていた。それは今と変わらない窮屈で孤独な毎日──
友達と遊んでみたい……外を走り回って、泥だらけになってはしゃぎ回りたい。
そう……もっと自由に──
そして私はあるパーティーの日に、人目を盗んでこの裏庭にやって来た。
私は履物を脱ぎ捨てて、一歩足を踏み出した。ここには私しかいない……と、そう思ったその時だ。私の目の前に、ブロンド髪の少年が現れた。
多分同じ歳くらいだろうか……整った顔立ちに正装をして、いわゆる“良家のお坊ちゃん”といったところだ。彼の濃いサファイアブルーの瞳がすごく印象的だった。
『一緒に遊ぼう』
彼は私に手を差し伸べてこう言った。
そんな彼の手をとりながら、私達は泥だらけになって野原を駆け回り、鳥の声や花の香り、木々のざわめきを感じながら日が暮れるまで一緒に遊んだ。
後になり、怒られたのは服を汚した事……それだけ。私が居なくなった事には、誰一人として気付きもしなかった。
一緒に遊んだ男の子は、いつの間にか姿を消していた。けれど私は、少しも寂しくなかった。それは、彼と交わした約束があったから。
そう……彼は私にこう言った。
『僕は必ず、君をここから連れ出す……その時が来たら迎えに来るから……だから待ってて……約束する』
『うん……約束ね』
そう言って、2人で小指を絡めた──
そんな昔の記憶が何故だか思い起こされた。
まさか──そう思うより早く身体が動いていた。私は彼の手を取り一緒に走り出す。
「約束通り……また会いに来たんだ。今度は一緒に抜けだそうぜ? だが、待っているのは地獄だけどなァ」
「それでもいいわ……こんなところでくたばるぐらいなら──私も一緒に連れてって──」
そう言って、私は彼の手を強く握りしめる。
これは夏の終わり──
それと同時にやってくる、秋の始まりを告げるある日の出来事──
華やかなパーティーが行われる中、私は1人そんな事を思っていた。ニコニコした仮面の裏側にあるのは、醜い欲望だけ。私の家族なんて所詮作り物──
そんな現実から逃れる為、こっそりとパーティーを抜け出し、やって来たのは裏庭のテラス。
ここには誰も来ない……
そこでは秋虫の鳴き声が響き渡り、少し肌寒い風が心地よく感じる──
ここに来ると、普段の雑踏や窮屈さから解放される──私が唯一落ち着ける場所だ。
綺麗な洋服が着られ、美味しい料理が食べられ、大きな家に住んでいられる──それは、確かに幸せな事なのかもしれない……けれど、全てを決められ、自分の自由がないなんて……それは借り物の自分──本物なんてどこにもいやしない。私はまるで着せ替え人形のごとく振る舞う。顔には決まった笑顔を張り付けて、いつも良い子を演じてきた。でも、そんな日々を送り続けるなんて、もう耐えられなかった。終いには、好きでもない人と婚約だなんて……ありえない。みんな消えて無くなってしまえばいい──
そして私もこのまま、何処かに消えてしまいたい──そう思った時だった。
「よォ……また会ったなァ」
背後からそう声をかけられた私は、“また”と言う言葉に、違和感を覚える。眉間にシワを寄せ、怪訝そうな表情を浮かべながら振り返ると、そこにいたのは眩しいくらい綺麗なブロンド髪の男。
「オメー、またこんなところで何してんだ……? 中では楽しいパーティーの真っ最中だろ?」
「誰……?」
「俺か? そうだなァ……いわゆる“救世主”ってところか……」
「何それ? 私はただこんな茶番のパーティーから抜け出してただけ……だって、みんな自分の事ばっかり……私が居なくなった事になんて気付きもしないわ」
そう吐き捨て、再び男に背を向ける。すると、背後から高笑いが聞こえてくる。何がそんなにおかしいの……? と、睨むような視線で再び振り向くと、男は満足そうな表情を浮かべながら、私に冷たいペットボトルを投げ渡す。それはまるで凍っているかのようだった。
「えっ、ちょっと──!?」
「お前の判断はある意味正しいかもな……まぁ、今からここは地獄絵図と化するからなァ」
「え、どういう意味──」
その時、突如としてガラスの割れる音と共に悲鳴が響き渡る。
「えっ、何ッ……!?」
「始まったか……さてと、俺もそろそろ参戦してくるかなァ」
「ねぇ、一体何が起こってるの!?」
「何ってよォ……オメー、みんな消えてなくなりゃいいって思ってただろ? だから、皆殺しだ……」
「み、皆殺しって──」
一瞬背筋が、凍りつく。しかし同時に安堵の感情も込み上げるのを感じた。全て消えてなくなるのかと思うと、どこかホッとする自分がそこにはいた。
「死にたくなけりゃあよォ、そいつで身体、冷やしとくんだな」
「ねぇ、あなたは一体──?」
「だからよォ、オメーの“救世主”って言ってんだろ? 迎えに来てやったんだ。ほら、行くぞ!」
「迎えに来たって──」
その言葉と共に思い起こされたのは、遠い記憶のカケラ──
***
幼い頃に母を亡くした私は、父の財産目当てで再婚した義母に、将来の為と厳しくしつけられ、やりたくもない勉強や習い事を日々押し付けられていた。それは今と変わらない窮屈で孤独な毎日──
友達と遊んでみたい……外を走り回って、泥だらけになってはしゃぎ回りたい。
そう……もっと自由に──
そして私はあるパーティーの日に、人目を盗んでこの裏庭にやって来た。
私は履物を脱ぎ捨てて、一歩足を踏み出した。ここには私しかいない……と、そう思ったその時だ。私の目の前に、ブロンド髪の少年が現れた。
多分同じ歳くらいだろうか……整った顔立ちに正装をして、いわゆる“良家のお坊ちゃん”といったところだ。彼の濃いサファイアブルーの瞳がすごく印象的だった。
『一緒に遊ぼう』
彼は私に手を差し伸べてこう言った。
そんな彼の手をとりながら、私達は泥だらけになって野原を駆け回り、鳥の声や花の香り、木々のざわめきを感じながら日が暮れるまで一緒に遊んだ。
後になり、怒られたのは服を汚した事……それだけ。私が居なくなった事には、誰一人として気付きもしなかった。
一緒に遊んだ男の子は、いつの間にか姿を消していた。けれど私は、少しも寂しくなかった。それは、彼と交わした約束があったから。
そう……彼は私にこう言った。
『僕は必ず、君をここから連れ出す……その時が来たら迎えに来るから……だから待ってて……約束する』
『うん……約束ね』
そう言って、2人で小指を絡めた──
そんな昔の記憶が何故だか思い起こされた。
まさか──そう思うより早く身体が動いていた。私は彼の手を取り一緒に走り出す。
「約束通り……また会いに来たんだ。今度は一緒に抜けだそうぜ? だが、待っているのは地獄だけどなァ」
「それでもいいわ……こんなところでくたばるぐらいなら──私も一緒に連れてって──」
そう言って、私は彼の手を強く握りしめる。
これは夏の終わり──
それと同時にやってくる、秋の始まりを告げるある日の出来事──
the END