キアラと一緒に街を歩いていた時だ。

　どこからか子供の泣き声が聞こえてきた。声のする方に目を向けると、そこにいたのは1人の女の子。ブロンドの髪に薄水色のワンピースを着て、手には茶色のクマのぬいぐるみを持っている。
　迷子か……？　そう思っていると、隣にいたはずのキアラの姿がない。見ると徐にその子の元へ向かい、目線が合うようにしゃがみ込む。
　何を話しているのやら……しばらくすると女の子は母親を見つけたようで、向こうに走り去って行く。一瞬立ち止まって振り返り、アイツに笑顔で手を振っていた。
　そんな様子を遠巻きに見ていた俺は、ゆっくりとアイツの元へと歩み寄る。

「なんだオメー、子供なんざ好きだったかァ？」
「別に〜……たださ、泣いてたからなんとかしてあげたいなぁって……そう思っただけ。あ〜、これがいわゆる母性ってやつ？」

　ドヤ顔でそう言うアイツを鼻で笑ってみせる。

「ハンッ、何言ってやがんだ」
「でも、可愛かったなぁ、あの子。ブロンドヘアでさ、目も青くて……子供がいたらあんな感じかなぁ……なんて」
「オメー、今誰の子を想像したんだ……？」

　ニヒルな笑みを浮かべながら、アイツに視線を投げかければ、案の定な反応が返ってくる。

「──えっ！？　別に誰の事も思ってないよ！」
「ガキが欲しいんならよォ、協力してやってもいいぜ……？」
「またプロシュートってば……そんな事ばっかり言って……」

　いつも通りの会話を繰り広げながら、微笑むキアラを垣間見つつ……こういう普通の幸せがあってもいいのかもしれない──


　そん事を思いながら、思わずキアラの手をとり、自身も顔がほころぶのを感じるそんな、秋の帰り道。