ドラマツルギー
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「オイ、コラ、待て──!」
「──ッ」
路地裏を全力疾走する女──
それを追いかけるのは黒塗りスーツの男達──手には各々 銃を所持している。一方で、女は丸腰の様だ。しかも土地勘がないらしく、十字路に来ては左右に首を振りどちらに行こうかと、一瞬迷いながら走り抜ける。
このまま身をくらますには、少々不利な明るい時間帯。ここは一旦どこかに潜み、体勢を整えなければ──
次の路地に入ったところで、隠れ場所を探す。どこかいい場所はないか──パッと道際のゴミ箱が目に入る。その後ろへと身を潜め、息を殺す──
一方で追手の男達は、付近で女を見失ったと言って立ち往生していた。
「ったく、すばしっこい奴め……どこ行きやがった?」
「とりあえず、近くを探せ! そう遠くには行ってないはずだ!」
再び、男らが散り散りに去って行く。足音が遠ざかり、話し声が聞こえ無くなった。
程なくして、女はゆっくりとゴミ箱の影から辺りの様子を 伺 う。周りに誰もいない事を確認すると、ようやくホッと胸を撫で下ろした。
この追われている女──名前はキアラ。実は彼女、ギャング組織“パッショーネ”の構成員。しかも 暗殺者 チームの一員なのだ。
その彼女が何故追われているのか……
そう、事の発端は数時間前──
今回の任務は、対立するギャング組織内に潜入し、ターゲットを始末する事。相手の特徴から、お前ら2人で行うのが得策だろう──と、暗殺チームのリーダー、リゾットが指名したのは、キアラとプロシュート。
しかし、任務の直前── 些細 な事で言い争いの喧嘩となった。
このままでは任務に支障が出るという事で、土壇場で相手をプロシュートからメローネに変えてもらったのだ。
しかし、いきなりの変更ということもあり、ベィビィ・フェイスの教育に失敗……途中で正体がバレてしまったのだ。そして、逆にターゲットの護衛に追われている──という状況だ。
とりあえず巻いたか……でも、油断はできない。早くここから脱出して、集合場所に向わないと──キアラはそう思いながら、前後左右を確認し、再び走り出す。
このまま逃げ切ってやる……! そう思った矢先──
「いたぞー! 見つけた、こっちだ! お前ら早く来い!」
出る道を見誤ったか……再び追手に見つかってしまう。方向転換し、とにかく走った。
しかし、もうかなりの距離を走り続けている。体力的にも限界が近かった。このままでは、捕まるのも時間の問題だ。
こんなことなら、ちゃんと地図を見ておけば良かった……そうすれば、道に迷うこともなく、スムーズに逃げられたのに……いや、そもそも最初に決めたペアで任務を行うべきだった……そうすれば失敗する事自体なかったかもしれない。
キアラは走りながら、ついそんな“タラレバ”を思い浮かべてしまう。
でも、今回の喧嘩の発端は、どう考えてもプロシュートが悪い──キアラはこの後に及んでも尚、そこだけは譲りたくなかった。
この2人……性格が似ているらしく、気が合う時はとことん盛り上がっているのだが、逆に拘 りどころはお互い一歩も譲らない──だから、喧嘩は日常茶飯事だ。
喧嘩するほど何とやら……まさにこの2人のような関係を差すのだろうが……キアラ自身、そう言われる事をすごく嫌がる。きっとそれは────
***
あれこれ考えていたせいか……いつの間にか袋小路に入っていた。
“能力”を使えば、追跡をかわすことくらいわけない。だから巻いて逃げることは、さほど困難ではないだろうと、高を括 っていた……それが間違いだった。
こう見えて、私も一応スタンド使いだ。その能力はパワー型ではなく、幻影型という分類になるのか── 目を合わせた相手の動きをスローにさせる能力。
しかし、少人数には効果的だが、複数人だと能力が散漫となり、圧倒的に不利となってしまう。
今回、追手の数が思いの外多かった……流石に捕まったら、ただでは済まないだろう。辺りを見回しても、隠れる場所はもうどこにもない── 覚悟を決めるしかないな……
キアラはそう思うと、静かに動きを止め、深く息を吸い一気に吐き捨てると、壁を背に身構える──
程なくして、1人の追手がキアラの前に現れた。
「やっと追い詰めた……ちょろちょろ逃げ回りやがってよォ……すばしっこい奴め……だが、もう逃げられねーぜ?」
1人また1人と、徐々に追手が集まってくる。そして、ジリジリとキアラに迫り来る。
「ん? よく見りゃよォ、結構いい女じゃあねーか……パッショーネの情報を聞き出す以外にも、色々楽しませてもらおうとするかな……」
男達は、品定めをするかの如くニヤニヤしながら下から上へと視線を当てる。
相手は7人……果たしてこの人数相手にどこまでやれるか──そんな言葉に構う事なく、キアラは至って冷静に状況を判断する。彼女も一応暗殺者チームの端くれ……ある程度の訓練は受けている。
もう、やるしかない──キッと鋭い視線を相手に向ける。そして、両手の平を相手に向けて言い放つ──
「くらえッ、〈ハンズ・オブ・グラヴィティ〉──!」
一瞬視界がグニャリと歪む。それに伴って、動きがゆっくりになったのは7人中3人……残りの4人はタイミングが合わなかったのか、そのまま攻撃を仕掛けようと迫り来る──非常にまずい状況だ。スタンド能力を全力疾走で使ったからか、息が上がる。
なんとか身をかわしてはいるが、幾分かくらった攻撃が、後になって衝撃としてやってくる。
「──ッ!」
ガクンッ、と片膝を地面に着きながら、キアラは肩で息をした。
もう、ここまでか……こんな事ならやっぱり謝っておけば良かった。
そう思いながら、諦めて目を閉じた……その時──
「おい! 寝てんじゃあねーよ? ちゃんと前を見ろ! 逃げるな! 生きる事に逃げてんじゃね──!」
それは聞き覚えのある声──ハッと目を見開く。それと同時に氷塊が飛んでくる。素早く掴み取ると、辺りが紫煙 に包まれ始めた。
「な、何だッ⁉︎ この、け……むり……は……」
追手が次々に干からび、老いていく。あっという間に、彼らの寿命は尽きていった。このスタンド能力は〈ザ・グレイトフル・デッド〉──そこに現れたのは、紛れもないプロシュート。
キアラは思わずその場にへたり込み、安堵の表情を浮かべる。
「ハンッ、何泣きそうなツラしてんだ、オメーはよォ……?」
「どうしてここに……?」
「あ? メローネが追跡を可能にしたからな……ったく、ベィビィが失敗作だったんだ。それくらいはしてもらわねーとなァ」
「──!」
プロシュートが腕を押さえている。怪我でもしているのか……?そう思ったキアラが問いかける。
「プロシュート、それ──」
「あ、これか? さっきターゲットを始末した時のかすり傷だ、たいしたことねーよ」
「始末したって……⁉︎」
「何だよ? 元はと言えば、俺とお前でやるはずだった仕事だ。だから、俺が始末したとしても問題ないだろ? それに……惚れた女の前でくらい、ちょっとは格好つけさせろよなァ……」
「えっ、ちょっ、今何て──」
「それより、オメーは? どこも怪我してねーか……?」
「うん、私は大丈夫……」
「そうか……とりあえず長居は禁物だ、とっとと行くぞ!」
プロシュートがキアラの腕を取り、足早にその場を立ち去る。
表通り出ると、そこには赤いスポーツカーが止まっていた。運転席にいるのはギアッチョ。一緒に迎えに来てくれたようだ。
「おいおい、いつまで待たせんだよ、クソがッ! 早く乗れッ!」
「う、うん……」
急かされながら、キアラは後部座席にプロシュートと共に乗り込む。それと同時に車は急発進した。
不意に隣に目をやると、プロシュートの服が血で滲んでいる。さっきはかすり傷だと言っていたが、本当はかなり負傷しているようだ……キアラは咄嗟 に袖をめくり、ポケットに入っていたハンカチで腕の傷を押さえた。
「──ッ、大したことねーって。だから俺に構うな」
「でも──」
車内に静寂が流れる。
任務の失敗は、自分のエゴのせい。なのに、いつもプロシュートは助けてくれる。それに比べて自分は……口先だけは一丁前で中身は半人前ですらない。情けない……、とキアラは思うと同時に、ある言葉が口を突いて出た。
「ごめん、なさい……」
そう言ってうつむくキアラの頭を軽く撫で、プロシュートもポツリと呟く。
「俺もあの時は言い過ぎた、悪かった……」
隣り合う手と手が触れる……いや、プロシュートが重ねてきたのだ。
その手に目を向けた後、不意に見上げたところで今度は目と目が合う。そして、徐々にプロシュートが距離を詰める。後少しで唇が触れそうになる──思わず目を閉じる……が、何やらお決まりの怒号が響き渡る。
「おいおい、何いちゃついてんだよ〜〜? こっちから丸見えだぜ? 見せつけてんじゃねーぞ、クソがッ!」
その言葉に我に返ったキアラは、目を見開きパッと離れようとする。しかし、プロシュートがそれを逃さないと言わんばかりに、キアラの頭を抱え込む。そして、『見せつけてやろーぜ?』と、口角を上げながら囁いたかと思うと、少し強引に口付ける。
「んんっ……ぁ、ん……」
ギアッチョに見られて恥ずかしいと思う傍ら、こんな事を平然とやってのけるプロシュートには敵わない……そう思いながら身を委ねた。
「あぁ⁉︎ 何キスしてんだ、お前ら──ッ⁉︎ ︎ 前から薄々そうなんじゃねーかなとは思ってたがよォ……まじまじとリア充見せつけられると、 虫唾 が走るぜ! なめやがって──! もうぜってー運転手なんざしねーからな!」
「ハンッ、これで分かったろ? こいつは俺んのだから、今後は手ェ出しすんじゃあねーよ?」
「……!」
ギアッチョが急に口ごもる。その意味をキアラは後々知る事になるのだが……
それよりも気になったのは、プロシュートの行動と発言のようで……思わず確認せずにはいられなかった。
「あ、あのさ、プロシュート……それって、つまりは、その……」
「一々言わせんなよ」
「ちょっと、待ってよ! 逐一言ってもらうからね? つまりどういう事ッ⁉︎」
「言わねーよ!」
「言ってよ!」
「だから、言わねーって言ってんだろ⁉︎」
「言ってってば!」
「だ〜か〜ら〜、両想いなんだろ、オメーら2人はよォ? つーか、何言わせんだよ⁉︎ このギアッチョによォ〜〜⁉︎」
狭い車内に再びギアッチョの怒号が響き渡る。それを聞いて、2人は思わず目を合わせて笑い合う──
いつも私を助けてくれるのは、白馬の王子様でもなければ、勇敢なヒーローでもない……
それはただ隣で肩を並べてくれる Assassino なのでした……?
「──ッ」
路地裏を全力疾走する女──
それを追いかけるのは黒塗りスーツの男達──手には
このまま身をくらますには、少々不利な明るい時間帯。ここは一旦どこかに潜み、体勢を整えなければ──
次の路地に入ったところで、隠れ場所を探す。どこかいい場所はないか──パッと道際のゴミ箱が目に入る。その後ろへと身を潜め、息を殺す──
一方で追手の男達は、付近で女を見失ったと言って立ち往生していた。
「ったく、すばしっこい奴め……どこ行きやがった?」
「とりあえず、近くを探せ! そう遠くには行ってないはずだ!」
再び、男らが散り散りに去って行く。足音が遠ざかり、話し声が聞こえ無くなった。
程なくして、女はゆっくりとゴミ箱の影から辺りの様子を
この追われている女──名前はキアラ。実は彼女、ギャング組織“パッショーネ”の構成員。しかも
その彼女が何故追われているのか……
そう、事の発端は数時間前──
今回の任務は、対立するギャング組織内に潜入し、ターゲットを始末する事。相手の特徴から、お前ら2人で行うのが得策だろう──と、暗殺チームのリーダー、リゾットが指名したのは、キアラとプロシュート。
しかし、任務の直前──
このままでは任務に支障が出るという事で、土壇場で相手をプロシュートからメローネに変えてもらったのだ。
しかし、いきなりの変更ということもあり、ベィビィ・フェイスの教育に失敗……途中で正体がバレてしまったのだ。そして、逆にターゲットの護衛に追われている──という状況だ。
とりあえず巻いたか……でも、油断はできない。早くここから脱出して、集合場所に向わないと──キアラはそう思いながら、前後左右を確認し、再び走り出す。
このまま逃げ切ってやる……! そう思った矢先──
「いたぞー! 見つけた、こっちだ! お前ら早く来い!」
出る道を見誤ったか……再び追手に見つかってしまう。方向転換し、とにかく走った。
しかし、もうかなりの距離を走り続けている。体力的にも限界が近かった。このままでは、捕まるのも時間の問題だ。
こんなことなら、ちゃんと地図を見ておけば良かった……そうすれば、道に迷うこともなく、スムーズに逃げられたのに……いや、そもそも最初に決めたペアで任務を行うべきだった……そうすれば失敗する事自体なかったかもしれない。
キアラは走りながら、ついそんな“タラレバ”を思い浮かべてしまう。
でも、今回の喧嘩の発端は、どう考えてもプロシュートが悪い──キアラはこの後に及んでも尚、そこだけは譲りたくなかった。
この2人……性格が似ているらしく、気が合う時はとことん盛り上がっているのだが、逆に
喧嘩するほど何とやら……まさにこの2人のような関係を差すのだろうが……キアラ自身、そう言われる事をすごく嫌がる。きっとそれは────
***
あれこれ考えていたせいか……いつの間にか袋小路に入っていた。
“能力”を使えば、追跡をかわすことくらいわけない。だから巻いて逃げることは、さほど困難ではないだろうと、
こう見えて、私も一応スタンド使いだ。その能力はパワー型ではなく、幻影型という分類になるのか── 目を合わせた相手の動きをスローにさせる能力。
しかし、少人数には効果的だが、複数人だと能力が散漫となり、圧倒的に不利となってしまう。
今回、追手の数が思いの外多かった……流石に捕まったら、ただでは済まないだろう。辺りを見回しても、隠れる場所はもうどこにもない── 覚悟を決めるしかないな……
キアラはそう思うと、静かに動きを止め、深く息を吸い一気に吐き捨てると、壁を背に身構える──
程なくして、1人の追手がキアラの前に現れた。
「やっと追い詰めた……ちょろちょろ逃げ回りやがってよォ……すばしっこい奴め……だが、もう逃げられねーぜ?」
1人また1人と、徐々に追手が集まってくる。そして、ジリジリとキアラに迫り来る。
「ん? よく見りゃよォ、結構いい女じゃあねーか……パッショーネの情報を聞き出す以外にも、色々楽しませてもらおうとするかな……」
男達は、品定めをするかの如くニヤニヤしながら下から上へと視線を当てる。
相手は7人……果たしてこの人数相手にどこまでやれるか──そんな言葉に構う事なく、キアラは至って冷静に状況を判断する。彼女も一応暗殺者チームの端くれ……ある程度の訓練は受けている。
もう、やるしかない──キッと鋭い視線を相手に向ける。そして、両手の平を相手に向けて言い放つ──
「くらえッ、〈ハンズ・オブ・グラヴィティ〉──!」
一瞬視界がグニャリと歪む。それに伴って、動きがゆっくりになったのは7人中3人……残りの4人はタイミングが合わなかったのか、そのまま攻撃を仕掛けようと迫り来る──非常にまずい状況だ。スタンド能力を全力疾走で使ったからか、息が上がる。
なんとか身をかわしてはいるが、幾分かくらった攻撃が、後になって衝撃としてやってくる。
「──ッ!」
ガクンッ、と片膝を地面に着きながら、キアラは肩で息をした。
もう、ここまでか……こんな事ならやっぱり謝っておけば良かった。
そう思いながら、諦めて目を閉じた……その時──
「おい! 寝てんじゃあねーよ? ちゃんと前を見ろ! 逃げるな! 生きる事に逃げてんじゃね──!」
それは聞き覚えのある声──ハッと目を見開く。それと同時に氷塊が飛んでくる。素早く掴み取ると、辺りが
「な、何だッ⁉︎ この、け……むり……は……」
追手が次々に干からび、老いていく。あっという間に、彼らの寿命は尽きていった。このスタンド能力は〈ザ・グレイトフル・デッド〉──そこに現れたのは、紛れもないプロシュート。
キアラは思わずその場にへたり込み、安堵の表情を浮かべる。
「ハンッ、何泣きそうなツラしてんだ、オメーはよォ……?」
「どうしてここに……?」
「あ? メローネが追跡を可能にしたからな……ったく、ベィビィが失敗作だったんだ。それくらいはしてもらわねーとなァ」
「──!」
プロシュートが腕を押さえている。怪我でもしているのか……?そう思ったキアラが問いかける。
「プロシュート、それ──」
「あ、これか? さっきターゲットを始末した時のかすり傷だ、たいしたことねーよ」
「始末したって……⁉︎」
「何だよ? 元はと言えば、俺とお前でやるはずだった仕事だ。だから、俺が始末したとしても問題ないだろ? それに……惚れた女の前でくらい、ちょっとは格好つけさせろよなァ……」
「えっ、ちょっ、今何て──」
「それより、オメーは? どこも怪我してねーか……?」
「うん、私は大丈夫……」
「そうか……とりあえず長居は禁物だ、とっとと行くぞ!」
プロシュートがキアラの腕を取り、足早にその場を立ち去る。
表通り出ると、そこには赤いスポーツカーが止まっていた。運転席にいるのはギアッチョ。一緒に迎えに来てくれたようだ。
「おいおい、いつまで待たせんだよ、クソがッ! 早く乗れッ!」
「う、うん……」
急かされながら、キアラは後部座席にプロシュートと共に乗り込む。それと同時に車は急発進した。
不意に隣に目をやると、プロシュートの服が血で滲んでいる。さっきはかすり傷だと言っていたが、本当はかなり負傷しているようだ……キアラは
「──ッ、大したことねーって。だから俺に構うな」
「でも──」
車内に静寂が流れる。
任務の失敗は、自分のエゴのせい。なのに、いつもプロシュートは助けてくれる。それに比べて自分は……口先だけは一丁前で中身は半人前ですらない。情けない……、とキアラは思うと同時に、ある言葉が口を突いて出た。
「ごめん、なさい……」
そう言ってうつむくキアラの頭を軽く撫で、プロシュートもポツリと呟く。
「俺もあの時は言い過ぎた、悪かった……」
隣り合う手と手が触れる……いや、プロシュートが重ねてきたのだ。
その手に目を向けた後、不意に見上げたところで今度は目と目が合う。そして、徐々にプロシュートが距離を詰める。後少しで唇が触れそうになる──思わず目を閉じる……が、何やらお決まりの怒号が響き渡る。
「おいおい、何いちゃついてんだよ〜〜? こっちから丸見えだぜ? 見せつけてんじゃねーぞ、クソがッ!」
その言葉に我に返ったキアラは、目を見開きパッと離れようとする。しかし、プロシュートがそれを逃さないと言わんばかりに、キアラの頭を抱え込む。そして、『見せつけてやろーぜ?』と、口角を上げながら囁いたかと思うと、少し強引に口付ける。
「んんっ……ぁ、ん……」
ギアッチョに見られて恥ずかしいと思う傍ら、こんな事を平然とやってのけるプロシュートには敵わない……そう思いながら身を委ねた。
「あぁ⁉︎ 何キスしてんだ、お前ら──ッ⁉︎ ︎ 前から薄々そうなんじゃねーかなとは思ってたがよォ……まじまじとリア充見せつけられると、
「ハンッ、これで分かったろ? こいつは俺んのだから、今後は手ェ出しすんじゃあねーよ?」
「……!」
ギアッチョが急に口ごもる。その意味をキアラは後々知る事になるのだが……
それよりも気になったのは、プロシュートの行動と発言のようで……思わず確認せずにはいられなかった。
「あ、あのさ、プロシュート……それって、つまりは、その……」
「一々言わせんなよ」
「ちょっと、待ってよ! 逐一言ってもらうからね? つまりどういう事ッ⁉︎」
「言わねーよ!」
「言ってよ!」
「だから、言わねーって言ってんだろ⁉︎」
「言ってってば!」
「だ〜か〜ら〜、両想いなんだろ、オメーら2人はよォ? つーか、何言わせんだよ⁉︎ このギアッチョによォ〜〜⁉︎」
狭い車内に再びギアッチョの怒号が響き渡る。それを聞いて、2人は思わず目を合わせて笑い合う──
いつも私を助けてくれるのは、白馬の王子様でもなければ、勇敢なヒーローでもない……
それはただ隣で肩を並べてくれる
the END