学園パロ
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そして、バレンタインデー当日──
今日に限ってやることが山積みで、どうにも定時にはあがれそうにもなかった。残業確定だなと思いつつ、とりあえず気分転換にと、コーヒーを口にする。
ハァ……と、思わずため息がこぼれ落ちると共に、職員室から引き上げてきた自分の鞄に目を向ける。中にはチョコレートの入った紙袋。生徒には“禁止だ”と言っているのに、自らは持ってきてしまった。誰に渡す予定でもないのに、何でこんな無駄なことをしてしまうのだろうかと、頭を抱えたくもなった。
プロシュートは、きっと定時でさっさと帰ってしまうから、もう明日の朝まで会うことはないのに……
再び大きため息を一つ置き去りにして、私は机の報告書と向き合った。
今日はあまり天気がよくないから、夕方の時点で、すでに辺りは暗くなり始めていた。とりあえず、早く帰りたい。帰ったら、チョコを肴に酒でも煽ろうと考え始めていた。
案の定、定時を大幅に過ぎたところで仕事はひと段落ついた。今日はここまでにしてさっさと帰ろうと思い、保健室の外に出る。
入口の鍵をかけようとしたところで、はたと後方に気配を感じる。見回りの警備員の方かなと思って振り返ってみると、そこにいた人物を目にした途端に固まってしまった。
「プロシュート……!?」
彼は何も言わずに、勢いよく保健室の入り口を開けると、私もろとも中へと押しやり、そして扉の前に立つと、すぐさま後ろ手で入口の鍵をかけた。
私は思わず彼を見上げた。
「ちょっと……何!?」
冷静を装ってみようにも、言葉に詰まってしまう。心臓は、今にも口から飛び出しそうなくらいにドキドキと高鳴っていく。
彼のラファエロブルーの瞳を真っ直ぐに見据えると、彼もまた私に視線を合わせてきた。
「オメーと二人きりになりたかった……こうでもしねーと、また逃げられちまうからなァ」
ニヒルに微笑む彼の心境を私は知る由もないが、ただ、いろんな意味で逃げられなくなっていた。
「何で二人きりになりたいの?」
「おい……元も子もないこと言ってんじゃあねーよ。そのままの意味だ。オメーと二人きり……誰にも邪魔されずに──」
ジワジワと距離を詰められ、壁際まで追い詰められてしまった。そして、そのまま抱きしめられてしまう。
彼からフワリと少し甘く──でも、スパイスも効いた爽やかな香りが漂う。正直、嘘でも抱きしめ返したい衝動にかられていた。
一方で──
さて、これからどうしようか……間違いなく勢いでやってしまった行動に、柄にもなく焦りの色を見せてしまう。
本来なら、このままキスの一つでもすれば、落ちない女はいなかった。でも、この女……今までの相手とは訳が違う。どうしようもなく、俺が惚れちまった相手だ。
とりあえず、抱きしめ返してこないところを見ると──やっぱり脈なしな上に、殴られかねないなと思った俺は、一旦距離をとろうと、アイツの両肩に手を置いて引き離す。だが、次の瞬間に、アイツの表情を見て、胸の奥がぎゅっと掴まれちまう……思わずため息がこぼれた。
「おい……何つー顔してんだよ……まじでやめろ」
「そんなこと言われたって……自分が今、どんな顔してるかなんて、わからないよ……」
真っ赤にしているその頬に手を添えながら、俺は今度こそ、ゆっくりと距離を縮める。今度は、はぐらかしようもなくアイツが瞳を閉じるから、そのまま唇が重なり合った。
啄むように口付け交わしながら、後一歩で、ベットに押し倒しそうになる手前でストップがかかる。
「ちょっと、何考えてんのよ……!? ここ学校だから……」
「ハンッ、人のこと言えんのかよ? そんな瞳で見てきたくせしてよ」
“うるさいな”と、機嫌を損なうその前に、“悪かった”と、先に謝っておいた。
「この前の返事……受けてくれるっつーことでいいんだよな?」
改めて念押ししている自分が、少しばかり滑稽に思えた。ホント……柄にもないことばっかりだ。
そうこうしていると、無言のままに、アイツが鞄から何やら取り出す。そして、目の前に差し出してきたのは、紛れもなくチョコレート。
「これ──」
「見てわかんないの? チョコレート! 今日、バレンタインデーでしょう? 本当は持ってきちゃダメなんだけど……」
そう言ってアイツが顔を背けるから、笑いが込み上げてくる。
「オメー、何言ってんだ? 例の“おふれ”は生徒に向けてだろ? ましてや今は、就業時間もとっくに過ぎてる。だから、俺らには関係ねーってこった」
この時ばかりは、自分に都合よく解釈しても構わないと思ってしまう──だって、それはずっと手に入れたかったものだから。
「それ、受け取ってくれる……?」
「あぁ、オメーの気持ちもろともなァ」
受け取りざまに、再びキスを落としたから、さすがに調子に乗り過ぎだと釘を刺された。でも、俺は真っ直ぐ見据えて想いを告げる。
「好きだ……」
「うん……私も──」
それはぎこちない台詞だけど、想いは言葉にしなきゃあ、何も届きはしない。
二人にとって今日という日が、一輪の赤いバラを彩るかのような……そんな日となった。おわり。
今日に限ってやることが山積みで、どうにも定時にはあがれそうにもなかった。残業確定だなと思いつつ、とりあえず気分転換にと、コーヒーを口にする。
ハァ……と、思わずため息がこぼれ落ちると共に、職員室から引き上げてきた自分の鞄に目を向ける。中にはチョコレートの入った紙袋。生徒には“禁止だ”と言っているのに、自らは持ってきてしまった。誰に渡す予定でもないのに、何でこんな無駄なことをしてしまうのだろうかと、頭を抱えたくもなった。
プロシュートは、きっと定時でさっさと帰ってしまうから、もう明日の朝まで会うことはないのに……
再び大きため息を一つ置き去りにして、私は机の報告書と向き合った。
今日はあまり天気がよくないから、夕方の時点で、すでに辺りは暗くなり始めていた。とりあえず、早く帰りたい。帰ったら、チョコを肴に酒でも煽ろうと考え始めていた。
案の定、定時を大幅に過ぎたところで仕事はひと段落ついた。今日はここまでにしてさっさと帰ろうと思い、保健室の外に出る。
入口の鍵をかけようとしたところで、はたと後方に気配を感じる。見回りの警備員の方かなと思って振り返ってみると、そこにいた人物を目にした途端に固まってしまった。
「プロシュート……!?」
彼は何も言わずに、勢いよく保健室の入り口を開けると、私もろとも中へと押しやり、そして扉の前に立つと、すぐさま後ろ手で入口の鍵をかけた。
私は思わず彼を見上げた。
「ちょっと……何!?」
冷静を装ってみようにも、言葉に詰まってしまう。心臓は、今にも口から飛び出しそうなくらいにドキドキと高鳴っていく。
彼のラファエロブルーの瞳を真っ直ぐに見据えると、彼もまた私に視線を合わせてきた。
「オメーと二人きりになりたかった……こうでもしねーと、また逃げられちまうからなァ」
ニヒルに微笑む彼の心境を私は知る由もないが、ただ、いろんな意味で逃げられなくなっていた。
「何で二人きりになりたいの?」
「おい……元も子もないこと言ってんじゃあねーよ。そのままの意味だ。オメーと二人きり……誰にも邪魔されずに──」
ジワジワと距離を詰められ、壁際まで追い詰められてしまった。そして、そのまま抱きしめられてしまう。
彼からフワリと少し甘く──でも、スパイスも効いた爽やかな香りが漂う。正直、嘘でも抱きしめ返したい衝動にかられていた。
一方で──
さて、これからどうしようか……間違いなく勢いでやってしまった行動に、柄にもなく焦りの色を見せてしまう。
本来なら、このままキスの一つでもすれば、落ちない女はいなかった。でも、この女……今までの相手とは訳が違う。どうしようもなく、俺が惚れちまった相手だ。
とりあえず、抱きしめ返してこないところを見ると──やっぱり脈なしな上に、殴られかねないなと思った俺は、一旦距離をとろうと、アイツの両肩に手を置いて引き離す。だが、次の瞬間に、アイツの表情を見て、胸の奥がぎゅっと掴まれちまう……思わずため息がこぼれた。
「おい……何つー顔してんだよ……まじでやめろ」
「そんなこと言われたって……自分が今、どんな顔してるかなんて、わからないよ……」
真っ赤にしているその頬に手を添えながら、俺は今度こそ、ゆっくりと距離を縮める。今度は、はぐらかしようもなくアイツが瞳を閉じるから、そのまま唇が重なり合った。
啄むように口付け交わしながら、後一歩で、ベットに押し倒しそうになる手前でストップがかかる。
「ちょっと、何考えてんのよ……!? ここ学校だから……」
「ハンッ、人のこと言えんのかよ? そんな瞳で見てきたくせしてよ」
“うるさいな”と、機嫌を損なうその前に、“悪かった”と、先に謝っておいた。
「この前の返事……受けてくれるっつーことでいいんだよな?」
改めて念押ししている自分が、少しばかり滑稽に思えた。ホント……柄にもないことばっかりだ。
そうこうしていると、無言のままに、アイツが鞄から何やら取り出す。そして、目の前に差し出してきたのは、紛れもなくチョコレート。
「これ──」
「見てわかんないの? チョコレート! 今日、バレンタインデーでしょう? 本当は持ってきちゃダメなんだけど……」
そう言ってアイツが顔を背けるから、笑いが込み上げてくる。
「オメー、何言ってんだ? 例の“おふれ”は生徒に向けてだろ? ましてや今は、就業時間もとっくに過ぎてる。だから、俺らには関係ねーってこった」
この時ばかりは、自分に都合よく解釈しても構わないと思ってしまう──だって、それはずっと手に入れたかったものだから。
「それ、受け取ってくれる……?」
「あぁ、オメーの気持ちもろともなァ」
受け取りざまに、再びキスを落としたから、さすがに調子に乗り過ぎだと釘を刺された。でも、俺は真っ直ぐ見据えて想いを告げる。
「好きだ……」
「うん……私も──」
それはぎこちない台詞だけど、想いは言葉にしなきゃあ、何も届きはしない。
二人にとって今日という日が、一輪の赤いバラを彩るかのような……そんな日となった。おわり。
つづく