学園パロ
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毎年この時期が近付くと、アイツの機嫌が悪くなるような……そんな気がする2月──
帰りのホームルームを終えて、教壇から降りた俺は、教室が静まり返った後に決まって屋上に向かう。そこは、生徒の立ち入らない、いわば“秘密の場所”
ここで一人一服するのが、ほぼ日課となっている。
校庭側を背に、手すりにもたれながら、遠く頭上に紫煙を吐き出せば、一瞬白く広がった煙は、瞬く間に風に流されていく。その時、ふと後方から誰がやって来る気配に気付く。こんな場所にやって来るやつなんて限られているから、誰がきたのかはすぐに察しがついた。
「お疲れさん。なぁ、例の話──オメーにとってはどうなんだ?」
ニヤけた面で現れたのは、体育教師のホルマジオ。一緒にここに赴任してきた、いわば同期だ。
「ハンッ、丁度よかったぜ。こんなくだらねーイベントなんざなくなってよォ」
ホルマジオからの質問に、俺は涼しい顔で答える。あたかも気にしていないかのごとく。
「そんなもんか……オメーは、毎年沢山のチョコ貰ってたからよォ、ちょっとは寂しいんじゃあねーの?」
「ハンッ、まさかだろ?」
2月のイベントと言えば──そう、バレンタイン。
今年は校内でのチョコの受け渡しは禁止となった。このご時世だ……教育委員会から衛生上の関係やら 云々 とのご達しがあったようだ。
「くだらねーイベントねぇ……まぁ、本当に欲しいやつからは貰えないとなると……確かにくだらねーとか言いたくもなっちまうよなァ」
馴々しく肩をポンポンと叩きながら、アヒャヒャッと高笑いを決めこむホルマジオの傍で、俺は思い切り眉を潜めた。
本当に欲しいやつからは貰えない……確かにそれは事実だ。だから、何も言い返せない。
「まぁ、今年は少なくとも余計なチョコを貰うことはなくなったからよォ……ちったぁ期待してもいいんじゃあねーの?」
何やら企むような表情が気に食わねーなと思いつつ、俺は再びタバコを口元に運ぶ。それからしばらくすると、再び誰ががやってくる。
「あ〜、やっぱりここにいた!」
今度も誰が来たのかは、すぐに声でわかった。俺とホルマジオの同じく同期にして、白衣の養護教諭。いわゆる保健室の先生──アイツだ。
俺は何食わぬ顔で話しかける。
「よォ……お疲れさん」
「ちょっと、何を呑気に……まだ職務中でしょう!? こんなところでサボってないで、早く校内に戻ってよ! しかもまたタバコ吸ってるし……それ、今度見つかったら減給処分でしょう? もう知らないからね?」
「口やかましいなァ……オメーは風紀委員かよ?」
言われたアイツは、あからさまに呆れた表情を浮かべながら、ため息を一つこぼす。そして、俺には背を向けて、ホルマジオに向かって話しかける。
「学年主任が探してたよ」
「あ、やべっ! 呼び出しくらってたんだった!」
ホルマジオがそう言って、そそくさとその場を後にするから、俺はアイツと二人きりになった。
「プロシュート先生も、早く戻ってくださいね?」
そんな捨て台詞を吐き捨てながら、校内へと戻ろうとするアイツを思わず引き留める。腕を捕まれたアイツは、一瞬目を見開いた。
「ちょっと、何……?」
「こんなところを見られちまったんだ……オメーには、口止めしといた方がよさそうだと思ってよォ……」
ニィと口角の端を吊り上げて、そのまま腕を引き寄せると、思惑通りに距離が縮まる。だが、それに対してアイツは顔色一つ変えずに冷めた視線を向けてくるから、俺はすんでのところで動きを止める。
「……冗談だ。そんなこえー顔すんなよ……せっかくの美人が台無しだぜ?」
「誰のせいだと思ってんの? そんなくだらないこと言ってないで、早く戻ってくださいね? さっき、生徒が探してましたよ?」
「……あぁ、わかった、わかった」
俺は、タバコを携帯灰皿に押し付けると、なんとなくアイツを振り切るようにして横を通り過ぎ、校内へと戻った。
正直、絶望感に似た何かを感じてしまう。明らかに俺はキスをしようとしていた。それなのに、あの反応はないだろ? まるで俺のことは眼中にありませんと言った様子だ。
あぁ……やっぱり今年も俺だけが貰えないという、バッドエンドへのカウトダウンの始まりを確信してしまった。
帰りのホームルームを終えて、教壇から降りた俺は、教室が静まり返った後に決まって屋上に向かう。そこは、生徒の立ち入らない、いわば“秘密の場所”
ここで一人一服するのが、ほぼ日課となっている。
校庭側を背に、手すりにもたれながら、遠く頭上に紫煙を吐き出せば、一瞬白く広がった煙は、瞬く間に風に流されていく。その時、ふと後方から誰がやって来る気配に気付く。こんな場所にやって来るやつなんて限られているから、誰がきたのかはすぐに察しがついた。
「お疲れさん。なぁ、例の話──オメーにとってはどうなんだ?」
ニヤけた面で現れたのは、体育教師のホルマジオ。一緒にここに赴任してきた、いわば同期だ。
「ハンッ、丁度よかったぜ。こんなくだらねーイベントなんざなくなってよォ」
ホルマジオからの質問に、俺は涼しい顔で答える。あたかも気にしていないかのごとく。
「そんなもんか……オメーは、毎年沢山のチョコ貰ってたからよォ、ちょっとは寂しいんじゃあねーの?」
「ハンッ、まさかだろ?」
2月のイベントと言えば──そう、バレンタイン。
今年は校内でのチョコの受け渡しは禁止となった。このご時世だ……教育委員会から衛生上の関係やら
「くだらねーイベントねぇ……まぁ、本当に欲しいやつからは貰えないとなると……確かにくだらねーとか言いたくもなっちまうよなァ」
馴々しく肩をポンポンと叩きながら、アヒャヒャッと高笑いを決めこむホルマジオの傍で、俺は思い切り眉を潜めた。
本当に欲しいやつからは貰えない……確かにそれは事実だ。だから、何も言い返せない。
「まぁ、今年は少なくとも余計なチョコを貰うことはなくなったからよォ……ちったぁ期待してもいいんじゃあねーの?」
何やら企むような表情が気に食わねーなと思いつつ、俺は再びタバコを口元に運ぶ。それからしばらくすると、再び誰ががやってくる。
「あ〜、やっぱりここにいた!」
今度も誰が来たのかは、すぐに声でわかった。俺とホルマジオの同じく同期にして、白衣の養護教諭。いわゆる保健室の先生──アイツだ。
俺は何食わぬ顔で話しかける。
「よォ……お疲れさん」
「ちょっと、何を呑気に……まだ職務中でしょう!? こんなところでサボってないで、早く校内に戻ってよ! しかもまたタバコ吸ってるし……それ、今度見つかったら減給処分でしょう? もう知らないからね?」
「口やかましいなァ……オメーは風紀委員かよ?」
言われたアイツは、あからさまに呆れた表情を浮かべながら、ため息を一つこぼす。そして、俺には背を向けて、ホルマジオに向かって話しかける。
「学年主任が探してたよ」
「あ、やべっ! 呼び出しくらってたんだった!」
ホルマジオがそう言って、そそくさとその場を後にするから、俺はアイツと二人きりになった。
「プロシュート先生も、早く戻ってくださいね?」
そんな捨て台詞を吐き捨てながら、校内へと戻ろうとするアイツを思わず引き留める。腕を捕まれたアイツは、一瞬目を見開いた。
「ちょっと、何……?」
「こんなところを見られちまったんだ……オメーには、口止めしといた方がよさそうだと思ってよォ……」
ニィと口角の端を吊り上げて、そのまま腕を引き寄せると、思惑通りに距離が縮まる。だが、それに対してアイツは顔色一つ変えずに冷めた視線を向けてくるから、俺はすんでのところで動きを止める。
「……冗談だ。そんなこえー顔すんなよ……せっかくの美人が台無しだぜ?」
「誰のせいだと思ってんの? そんなくだらないこと言ってないで、早く戻ってくださいね? さっき、生徒が探してましたよ?」
「……あぁ、わかった、わかった」
俺は、タバコを携帯灰皿に押し付けると、なんとなくアイツを振り切るようにして横を通り過ぎ、校内へと戻った。
正直、絶望感に似た何かを感じてしまう。明らかに俺はキスをしようとしていた。それなのに、あの反応はないだろ? まるで俺のことは眼中にありませんと言った様子だ。
あぁ……やっぱり今年も俺だけが貰えないという、バッドエンドへのカウトダウンの始まりを確信してしまった。
つづく