東京
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今年もこの時期がやってきた──サン・ヴァレンティーノ。
気になる彼は、きっと今年も沢山のチョコレートをもらってくることだろう。
だから、私は毎年決めている──
*
「私、プロシュートにはチョコあげないから」
これは、私がニ週間前に吐き捨てたセリフ。当然、言われた彼も──
「ハンッ、別にオメーからなんて欲しいとも思ってねーよ」と、いとも簡単に跳ね返された。
そんな返事を返されることくらい、わかりきっていた。だって、彼には、他に好きな人がいるから。私のことなんて、まるで眼中にないことぐらい、痛いほどわかっていた。でも、わざわざ口に出してみせるのは、私のくだらないプライド。そんなもの、あの時捨ててしまえばよかったのに……
そして今日は、サン・ヴァレンティーノ当日──
私の手の内には、一つのチョコレート。誰に宛てた物かなんて、聞かなくてもわかってほしい……それはもちろん──
「ねぇ──」
私の呼びかけに、彼が振り向く。私はゆっくりと、立ち止まる彼の元へと歩み寄る。そして、何食わぬ顔でチョコレートを目の前に差し出した。
「……あげる」
「あ? 俺には渡さないんじゃあなかったのか?」
「気が変わったの」
「そうかよ……」
「受け取ってくれる?」
私は、ただ真っ直ぐに、彼のラファエロブルーの瞳を見据える。それは、決して逸らさないように。すると彼は、おもむろに胸ポケットからたばこを取り出すと、口元に運んで紫煙を吹かし始めた。やっぱり、受け取ってはくれないと確信して、差し出した手を引っ込めようとしたその時、腕を掴まれる。
「おい、何してんだ? 貰う……貰ってやるよ」
「え……」
予想外の展開に、思わず腑抜けた声が出してしまう。それと同時に、自分が彼の胸元へと引き寄せられたことに気づいた。そのまま抱きしめられてしまったから、身動きがとれない。
「えっ、どういう──!?」
「ハンッ、誰がチョコレートを貰うって言ったよ? 俺はオメーを貰い受けるって意味で言ったんだぜ?」
「貰い受けるって、何言って──」
間近で目が合った瞬間に、唇が重なる。これにはさすがに抗えずに、ゆっくりと瞳を閉じる。このまま、自惚れてしまってもいいような気がしていた。そして、リップ音を一つ残しながら、唇が離れるのに合わせて、目の前の彼を見据える。
「これでようやく、鈍いオメーでも理解できたか?」
「……できないよ」
「あぁ!? キスしたんだ、わかれよ」
「わからないよ……何で? プロシュートには、好きな人いるんじゃあ──」
「あぁ、目の前にな……俺はそいつに、幸せになって欲しいと思ってた……出会った時から、ずっと……でもそれは、俺じゃない誰かにだ。でも、今は違う」
再び向けられた視線をもう逸らすことなんて、できなくなっていた。それは、熱を帯びて艶っぽく映る。同時に胸の高鳴りを感じ始めた時に、彼が再び口を開く。
「俺がそいつに愛されたいって思っちまったんだ……本当、贅沢だよな」
少しだけやるせなく微笑む彼に、私は真っ直ぐに想いを伝える。今まで押し込めていた想いを──
「そんなことないよ……私も愛されて欲しい人がいる……できれば、私の想いが届いて欲しい……もし、今それが伝わったのなら、それは贅沢な人生だと思うよ……本当そう……ねぇ、プロシュート──」
その言葉は、口からこぼれ落ちるように発せられる。
「好き……私、プロシュートのことが好き……今、やっと言えた……」
「あぁ……知ってた……そして、俺もだ」
見つめ合うその先に、再び二つの影が重なる──
「ねぇ、ちゃんと言ってよ?」
「あ? なんだよ?」
「だって、今日は互いの気持ちを深め合う日……でしょう?」
「深め合う……もっといい方法があんだろ?」
「え……?」
ニヒルに微笑み耳打ちしてきた彼に「バカじゃないの?」と可愛げなく答える私だけど、本当は、そんなのも悪くないなと思える、そんな日となった。
気になる彼は、きっと今年も沢山のチョコレートをもらってくることだろう。
だから、私は毎年決めている──
*
「私、プロシュートにはチョコあげないから」
これは、私がニ週間前に吐き捨てたセリフ。当然、言われた彼も──
「ハンッ、別にオメーからなんて欲しいとも思ってねーよ」と、いとも簡単に跳ね返された。
そんな返事を返されることくらい、わかりきっていた。だって、彼には、他に好きな人がいるから。私のことなんて、まるで眼中にないことぐらい、痛いほどわかっていた。でも、わざわざ口に出してみせるのは、私のくだらないプライド。そんなもの、あの時捨ててしまえばよかったのに……
そして今日は、サン・ヴァレンティーノ当日──
私の手の内には、一つのチョコレート。誰に宛てた物かなんて、聞かなくてもわかってほしい……それはもちろん──
「ねぇ──」
私の呼びかけに、彼が振り向く。私はゆっくりと、立ち止まる彼の元へと歩み寄る。そして、何食わぬ顔でチョコレートを目の前に差し出した。
「……あげる」
「あ? 俺には渡さないんじゃあなかったのか?」
「気が変わったの」
「そうかよ……」
「受け取ってくれる?」
私は、ただ真っ直ぐに、彼のラファエロブルーの瞳を見据える。それは、決して逸らさないように。すると彼は、おもむろに胸ポケットからたばこを取り出すと、口元に運んで紫煙を吹かし始めた。やっぱり、受け取ってはくれないと確信して、差し出した手を引っ込めようとしたその時、腕を掴まれる。
「おい、何してんだ? 貰う……貰ってやるよ」
「え……」
予想外の展開に、思わず腑抜けた声が出してしまう。それと同時に、自分が彼の胸元へと引き寄せられたことに気づいた。そのまま抱きしめられてしまったから、身動きがとれない。
「えっ、どういう──!?」
「ハンッ、誰がチョコレートを貰うって言ったよ? 俺はオメーを貰い受けるって意味で言ったんだぜ?」
「貰い受けるって、何言って──」
間近で目が合った瞬間に、唇が重なる。これにはさすがに抗えずに、ゆっくりと瞳を閉じる。このまま、自惚れてしまってもいいような気がしていた。そして、リップ音を一つ残しながら、唇が離れるのに合わせて、目の前の彼を見据える。
「これでようやく、鈍いオメーでも理解できたか?」
「……できないよ」
「あぁ!? キスしたんだ、わかれよ」
「わからないよ……何で? プロシュートには、好きな人いるんじゃあ──」
「あぁ、目の前にな……俺はそいつに、幸せになって欲しいと思ってた……出会った時から、ずっと……でもそれは、俺じゃない誰かにだ。でも、今は違う」
再び向けられた視線をもう逸らすことなんて、できなくなっていた。それは、熱を帯びて艶っぽく映る。同時に胸の高鳴りを感じ始めた時に、彼が再び口を開く。
「俺がそいつに愛されたいって思っちまったんだ……本当、贅沢だよな」
少しだけやるせなく微笑む彼に、私は真っ直ぐに想いを伝える。今まで押し込めていた想いを──
「そんなことないよ……私も愛されて欲しい人がいる……できれば、私の想いが届いて欲しい……もし、今それが伝わったのなら、それは贅沢な人生だと思うよ……本当そう……ねぇ、プロシュート──」
その言葉は、口からこぼれ落ちるように発せられる。
「好き……私、プロシュートのことが好き……今、やっと言えた……」
「あぁ……知ってた……そして、俺もだ」
見つめ合うその先に、再び二つの影が重なる──
「ねぇ、ちゃんと言ってよ?」
「あ? なんだよ?」
「だって、今日は互いの気持ちを深め合う日……でしょう?」
「深め合う……もっといい方法があんだろ?」
「え……?」
ニヒルに微笑み耳打ちしてきた彼に「バカじゃないの?」と可愛げなく答える私だけど、本当は、そんなのも悪くないなと思える、そんな日となった。
the END