ハッピーエンドへの期待は
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会えない時に限って、あれもこれもと話したいことが思い浮かぶもので──
でも、実際会いたかった相手を目の前にすると、なかなか言葉が出てこなかったりしてしまう。
***
私はチラリと時計に目を向ける。もうそろそろ彼がやってくる頃だ。
浮き足立つのを堪えながら、私は冷静を装って、彼が来るのを待った。
しばらくして、カツカツカツ──と、革靴が床を叩く。その聞き覚えのある音に振り返る。
「──おかえり」
「あぁ……」
そう言葉を返して、彼が私のそばに腰掛ける。グッとソファーが沈み込む振動に、少しばかり距離をとりたくなってしまった。彼は何食わぬ顔で、いつものように胸ポケットからたばこを取り出し、口元に運んだところで目が合った。
「ん、何だ……? そんなに見つめてよォ……?」
「えっ!? 別に見つめてなんてないし……」
ぶっきらぼうに言葉を吐き捨てながら視線を逸らすと、鼻先で笑う彼の声が聞こえる。
「何だ、オメー……さっきからやけに静かじゃあねーか……そんなに無口だったかよ? もしかして……緊張してんのか?」
「ハァ? 何言ってんの? たかが数週間会っていなかっただけ……緊張なんてするわけないでしょう?」
口を尖らせながら、思わず可愛げのない言葉が口をついて出てしまう。本心なんてものは、気持ちとは裏腹で──本当にままならないものだ。
そう思った矢先、ソファーが再び沈み込むから、彼が距離を詰めてきたのがわかった。思わず傍らを見上げると、少しばかり顔を背けた彼と再び目が合った。
「なぁ……キス、してもいいか?」
「え……」
二人きりの空間だが、思わぬ言葉に目が泳ぐ。でも、平然を装って答えた。
「珍しいね……わざわざ聞くなんて。さっき、私にあんなこと言ってたけど、本当は、プロシュートも緊張してたりするんじゃあないの?」
わざとらしくニヒルな笑みを向けてみた。
「……そうだ。柄にもねーよな……」
そう言いながら、ゆっくり頬をなぞった手が顎に添えられる。それから、私の返事を待たずして、唇が重なっていく。それは次第に深まりながら、ソファーへと押し倒されていった。そのまま甘い雰囲気に流されそうになりつつも、ここがアジトであることを思い出す。慌てて軽く押しのけようと、両手で彼を突き放した。
「ち、ちょっと、待って! さすがにここじゃあ──」
“ん、あぁ……”と、頷きながらも、プロシュートは、首筋にキスを落とすのをやめようとはしない。その時、足音と共に彼の名を呼ぶ弟分の声が聞こえると、途端に血相を変えて、私を起こす。そして耳元で、“今夜、俺の家に来い”と、ニヒルな笑みを浮かべながら告げると、サッと距離をとる。私は、心臓が飛び出さんばかりの鼓動を抑えるのに必死だった。まるで、いけないことをしてしまった気分だ。
少し赤らめた顔を下に向ける私をよそに、プロシュートは、素知らぬ顔でペッシを出迎える。しばらくして、再びアジトを後にする彼の背中を見つめていると、振り返った彼が目配せをしてきた。それを目に、この先のハッピーエンドを期待してしまうのは、さっきの出来事があまりにも刺激的だった……からであろうか──
そして今、ここから再び、冷めやまぬ夢の続きが始まる。
でも、実際会いたかった相手を目の前にすると、なかなか言葉が出てこなかったりしてしまう。
***
私はチラリと時計に目を向ける。もうそろそろ彼がやってくる頃だ。
浮き足立つのを堪えながら、私は冷静を装って、彼が来るのを待った。
しばらくして、カツカツカツ──と、革靴が床を叩く。その聞き覚えのある音に振り返る。
「──おかえり」
「あぁ……」
そう言葉を返して、彼が私のそばに腰掛ける。グッとソファーが沈み込む振動に、少しばかり距離をとりたくなってしまった。彼は何食わぬ顔で、いつものように胸ポケットからたばこを取り出し、口元に運んだところで目が合った。
「ん、何だ……? そんなに見つめてよォ……?」
「えっ!? 別に見つめてなんてないし……」
ぶっきらぼうに言葉を吐き捨てながら視線を逸らすと、鼻先で笑う彼の声が聞こえる。
「何だ、オメー……さっきからやけに静かじゃあねーか……そんなに無口だったかよ? もしかして……緊張してんのか?」
「ハァ? 何言ってんの? たかが数週間会っていなかっただけ……緊張なんてするわけないでしょう?」
口を尖らせながら、思わず可愛げのない言葉が口をついて出てしまう。本心なんてものは、気持ちとは裏腹で──本当にままならないものだ。
そう思った矢先、ソファーが再び沈み込むから、彼が距離を詰めてきたのがわかった。思わず傍らを見上げると、少しばかり顔を背けた彼と再び目が合った。
「なぁ……キス、してもいいか?」
「え……」
二人きりの空間だが、思わぬ言葉に目が泳ぐ。でも、平然を装って答えた。
「珍しいね……わざわざ聞くなんて。さっき、私にあんなこと言ってたけど、本当は、プロシュートも緊張してたりするんじゃあないの?」
わざとらしくニヒルな笑みを向けてみた。
「……そうだ。柄にもねーよな……」
そう言いながら、ゆっくり頬をなぞった手が顎に添えられる。それから、私の返事を待たずして、唇が重なっていく。それは次第に深まりながら、ソファーへと押し倒されていった。そのまま甘い雰囲気に流されそうになりつつも、ここがアジトであることを思い出す。慌てて軽く押しのけようと、両手で彼を突き放した。
「ち、ちょっと、待って! さすがにここじゃあ──」
“ん、あぁ……”と、頷きながらも、プロシュートは、首筋にキスを落とすのをやめようとはしない。その時、足音と共に彼の名を呼ぶ弟分の声が聞こえると、途端に血相を変えて、私を起こす。そして耳元で、“今夜、俺の家に来い”と、ニヒルな笑みを浮かべながら告げると、サッと距離をとる。私は、心臓が飛び出さんばかりの鼓動を抑えるのに必死だった。まるで、いけないことをしてしまった気分だ。
少し赤らめた顔を下に向ける私をよそに、プロシュートは、素知らぬ顔でペッシを出迎える。しばらくして、再びアジトを後にする彼の背中を見つめていると、振り返った彼が目配せをしてきた。それを目に、この先のハッピーエンドを期待してしまうのは、さっきの出来事があまりにも刺激的だった……からであろうか──
そして今、ここから再び、冷めやまぬ夢の続きが始まる。
the END