あの日──
　ちゃんと気持ちを伝えておけばよかったなんて、いまさら思っても、もう遅いのに……ただ、どうしようもない後悔の念だけが、胸の奥底に渦巻く。
　それは、あなたからの突然の電話。

「なぁ……今から会えないか？」
「えっ、今から！？　どうしたの？　何か急ぎの用事とか──」
「いや、別にそんなんじゃあねーよ」
「それなら今日はもう遅いし、明日でもいい？　明日ならゆっくりできるしさ」

　私の言葉に、彼は一瞬、間を置いて答える。

「──あぁ、じゃあ明日な」
「うん、明日ね？」
「……なぁ」
「ん、何？」
「……愛してっぞ？」
「えっ、ちょっと、急にどうしたの？」
「別にどうもしねーよ……俺はただ、思ったことを言ったまでだが？　で、オメーはどうなんだ？」
「え、私……！？　そんなの言わないよ……明日……明日、直接伝えるから──」

　私の返しに、若干不満げな彼の声色を、その時ばかりは気付かぬふりをして電話を切った。その気持ちは、今伝えなくても別に構わない……明日また伝えればいいから──なんて、そう思っていた。
　それはいつだって、今日と変わらない明日が、当たり前のようにやってくると、そう思っていたから──
　でも、その当たり前の明日が、必ずしもやってくるとは限らないことを、今思い知らさせる。気付いた時にはもう遅いのに……
　だから、また今度会えた時には、一番に伝えたい。
　心からあなたを愛していると──