Marry Me
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それはまさに寝耳に水だった──
俺は組織のボスとなったジョルノに呼び出しをくらっていた。まぁ、呼び出しといっても、次の予定の確認程度の用事。その後はいつものように、他愛のない会話をしていた──その終わりがけ、突然、ジョルノが話を切り替える。
「そういえば……ミスタも聞いていますか? 彼女の事──」
「彼女……?」
俺は、一瞬眉をひそめる。“彼女”と言われ、ふと頭をよぎったのは──
黙りこくる俺に、痺れを切らしたジョルノが、ため息混じりに話を続ける。
「キアラですよ! たまに僕が立て込んでいるときに、事務仕事を手伝いにきてくれてた──ミスタ、あなたが連れてきてくれた──」
「あ〜、アイツね〜」
やっぱりそうかと納得したところで、次の言葉で思考が停止してしまう。
「今度、結婚するんですね、彼女──」
「……え? 結婚って……えっ、アイツが……!?」
「あれ……? 聞いてなかったんですか?」
「あ、いや〜、俺もよォ〜、色々と立て込んでてよォ──」
いきなりの知らせに、正直頭が回らない。確かに最近、キアラがジョルノの仕事を手伝うことも少なくなり、会う機会も少なくなっていたのは事実──それに伴って、頻繁にとっていた連絡もいつの間にか途絶えていた。
最後に彼女を見かけたとき、すごく艶っぽく映ったのは、きっと今の男がいたからかと、妙に納得させられる。でも、それ以前の関係は、ジョルノよりは深いと自負していたから、なんで俺には教えてくれなかったのかと、少し残念に思ってしまった。
俺はキアラの事が好きだった。でも、その想いを伝えることはしなかった。
彼女から一度告白されたこともあったが、そのときは、曖昧な態度をとってしまって──それで今に至るというわけだ。でも、なんとなく二人とも相手がいないまま──最終的に、彼女は俺と一緒になるもんだと、勝手にそうに思い込んでいた。根拠もないのに、全くめでたい奴だと、我ながら呆れてしまう。
***
「キアラ、明日書類をとりに顔を出すと言っていましたけど……ミスタ、あなたからもなにか一言、お祝いの言葉とかありますか?」
「祝いの言葉なんてよォ、どの面下げて言えってんだよ!?」
思わず本音をこぼしてしまう。ジョルノもそれを見透かしていたようで、思わぬことを口走る。
「まぁ、ある映画みたいに、結婚式に現れて花嫁を奪い去る──っていうのも僕はアリだと思いますけど……?」
「そんなことできるわけねーだろ? 今更よォ……」
「とあえず、僕は明日いないので、彼女への応対は、ミスタ……あなたに任せます。そのときにどうするか──じゃあ、よろしくお願いしますね」
涼しい顔でそう告げるジョルノを横目に、俺は柄にもなくため息混じりに部屋を後にした。その途端に騒ぎ出したのは、ピストルズたち。
「ミスタ! オ前ガチャントシテイナカッタカラダゼ!」
「ダカラ他ノ男二取ラレチマッタンダ!」
「ソーダソーダ!」
「ドウデモイイ女二ヨォ、ウツツヲ抜カシテタカライケネーンダ!」
「ミスタ……ドウスルンダヨォ……?」
「ジョルノノイウ通リ、奪イ去ルツモリカァ?」
今日だけは、こいつらの言う事が煩わしく感じる。俺は思わず声を荒げた。
「ギャーギャーうるせえよ! 俺だってよォ、今、一生懸命考えてんだろうがよォ……いや、今更何を考えるだつーんだよ、まったくよォ……」
ジョルノはキアラが組織と関係があったことは、内々にしておくと言っていた。婚約者はカタギ。妙な勘ぐりをされるのも、彼女にとってマイナスになることを避けたいというジョルノの意向だ。
確かにその考えは正論だ。でも、俺にとっちゃあ、彼女との思い出さえも消えちまうような気がして、少し寂しくもあった。
ともかく、今の俺にできることがあるとすれば、それは──ない頭をフル回転させて考えた。
***
当日──彼女は約束の時間通りにやってきた。
コンコンコンっと、ノック音が聴こえた後に、キアラが部屋の扉を開ける。
「ジョルノ〜、約束の書類取りにきたんだけど──」
彼女の動きがピタリと止まる。目を見開いて俺に視線を向けた。
「そんな目で見んなって……久しぶりに顔合わすってのによォ〜」
「いや、だって、ジョルノだけだと思ってたから──」
「残念だったな……いたのが俺で……」
「別にそんなこと言ってないでしょう?……元気だった?」
「まぁ、そこそこな……お前は?」
「私もまあまあ……かな?」
他愛もない会話が続く。平然を装ってはいるが、どうにも胸の奥底が掴まれる思いがする。またいつでもすぐに会えると思っていた。だが、そんなふうにたかを括っていたのがよくなかった。それが次第に積み重なって、行き着く末がこの始末──
やっぱり思ったことは、行動に起こさないとダメだなとか……今更思ってみても、もう遅い……
そう思っていた矢先、話を切り出してきたのはキアラからだった。
「ねぇ……ジョルノから聞いてるんでしょう? 私が結婚するってこと──」
心なしか、キアラの声色が低くく感じる。
「あぁ……一応な。でもよォ、水臭ェじゃあねーかよ? 俺にも言ってくれりゃあよかったのによォ」
少しふてぶてしく言ってみせる。彼女が少し困ったように言葉を詰まらせるから、俺は笑って、用意していた物を目の前に差し出した。
「まぁ、別に俺に話す義理はねーよなァ……つーか、これ! やるよ」
「えっ……」
「改めて見ても、お前はやっぱりいい女だぜ……幸せになれよ!」
無理してみせた満面の笑みは、キアラにはどう映ったのか──そんなことは、俺には知る由もない。ただ、ありがとうと告げ、俺にあどけない笑みを向ける──それは俺が一番好きだった彼女。その表情を最後に見られてよかったなと、今はそう思った。
彼女に贈ったのは、白とピンクのコントラストが美しい胡蝶蘭のような花を咲かせるデンファレの花束。その花言葉は“わがままな美人”“魅惑”そして、“お似合いのふたり”
俺にとって、キアラは“わがままな美人”だった。コロコロ表情が移り変わる──時にそれは、“魅惑”のスパイスとなり、俺の心を魅了した。そして、俺たち“二人がお似合い”だと、そう思っていた。
でも、俺じゃあない、他の誰かとお似合いの彼女を祝福しようと思う。
だけど──
もし、俺が生まれ変わったなら──そして、もし、またキアラと巡り会えたとしたら──
今度はそいつとじゃあなくて、俺と結婚してほしいと、そう思ってならない。
俺は組織のボスとなったジョルノに呼び出しをくらっていた。まぁ、呼び出しといっても、次の予定の確認程度の用事。その後はいつものように、他愛のない会話をしていた──その終わりがけ、突然、ジョルノが話を切り替える。
「そういえば……ミスタも聞いていますか? 彼女の事──」
「彼女……?」
俺は、一瞬眉をひそめる。“彼女”と言われ、ふと頭をよぎったのは──
黙りこくる俺に、痺れを切らしたジョルノが、ため息混じりに話を続ける。
「キアラですよ! たまに僕が立て込んでいるときに、事務仕事を手伝いにきてくれてた──ミスタ、あなたが連れてきてくれた──」
「あ〜、アイツね〜」
やっぱりそうかと納得したところで、次の言葉で思考が停止してしまう。
「今度、結婚するんですね、彼女──」
「……え? 結婚って……えっ、アイツが……!?」
「あれ……? 聞いてなかったんですか?」
「あ、いや〜、俺もよォ〜、色々と立て込んでてよォ──」
いきなりの知らせに、正直頭が回らない。確かに最近、キアラがジョルノの仕事を手伝うことも少なくなり、会う機会も少なくなっていたのは事実──それに伴って、頻繁にとっていた連絡もいつの間にか途絶えていた。
最後に彼女を見かけたとき、すごく艶っぽく映ったのは、きっと今の男がいたからかと、妙に納得させられる。でも、それ以前の関係は、ジョルノよりは深いと自負していたから、なんで俺には教えてくれなかったのかと、少し残念に思ってしまった。
俺はキアラの事が好きだった。でも、その想いを伝えることはしなかった。
彼女から一度告白されたこともあったが、そのときは、曖昧な態度をとってしまって──それで今に至るというわけだ。でも、なんとなく二人とも相手がいないまま──最終的に、彼女は俺と一緒になるもんだと、勝手にそうに思い込んでいた。根拠もないのに、全くめでたい奴だと、我ながら呆れてしまう。
***
「キアラ、明日書類をとりに顔を出すと言っていましたけど……ミスタ、あなたからもなにか一言、お祝いの言葉とかありますか?」
「祝いの言葉なんてよォ、どの面下げて言えってんだよ!?」
思わず本音をこぼしてしまう。ジョルノもそれを見透かしていたようで、思わぬことを口走る。
「まぁ、ある映画みたいに、結婚式に現れて花嫁を奪い去る──っていうのも僕はアリだと思いますけど……?」
「そんなことできるわけねーだろ? 今更よォ……」
「とあえず、僕は明日いないので、彼女への応対は、ミスタ……あなたに任せます。そのときにどうするか──じゃあ、よろしくお願いしますね」
涼しい顔でそう告げるジョルノを横目に、俺は柄にもなくため息混じりに部屋を後にした。その途端に騒ぎ出したのは、ピストルズたち。
「ミスタ! オ前ガチャントシテイナカッタカラダゼ!」
「ダカラ他ノ男二取ラレチマッタンダ!」
「ソーダソーダ!」
「ドウデモイイ女二ヨォ、ウツツヲ抜カシテタカライケネーンダ!」
「ミスタ……ドウスルンダヨォ……?」
「ジョルノノイウ通リ、奪イ去ルツモリカァ?」
今日だけは、こいつらの言う事が煩わしく感じる。俺は思わず声を荒げた。
「ギャーギャーうるせえよ! 俺だってよォ、今、一生懸命考えてんだろうがよォ……いや、今更何を考えるだつーんだよ、まったくよォ……」
ジョルノはキアラが組織と関係があったことは、内々にしておくと言っていた。婚約者はカタギ。妙な勘ぐりをされるのも、彼女にとってマイナスになることを避けたいというジョルノの意向だ。
確かにその考えは正論だ。でも、俺にとっちゃあ、彼女との思い出さえも消えちまうような気がして、少し寂しくもあった。
ともかく、今の俺にできることがあるとすれば、それは──ない頭をフル回転させて考えた。
***
当日──彼女は約束の時間通りにやってきた。
コンコンコンっと、ノック音が聴こえた後に、キアラが部屋の扉を開ける。
「ジョルノ〜、約束の書類取りにきたんだけど──」
彼女の動きがピタリと止まる。目を見開いて俺に視線を向けた。
「そんな目で見んなって……久しぶりに顔合わすってのによォ〜」
「いや、だって、ジョルノだけだと思ってたから──」
「残念だったな……いたのが俺で……」
「別にそんなこと言ってないでしょう?……元気だった?」
「まぁ、そこそこな……お前は?」
「私もまあまあ……かな?」
他愛もない会話が続く。平然を装ってはいるが、どうにも胸の奥底が掴まれる思いがする。またいつでもすぐに会えると思っていた。だが、そんなふうにたかを括っていたのがよくなかった。それが次第に積み重なって、行き着く末がこの始末──
やっぱり思ったことは、行動に起こさないとダメだなとか……今更思ってみても、もう遅い……
そう思っていた矢先、話を切り出してきたのはキアラからだった。
「ねぇ……ジョルノから聞いてるんでしょう? 私が結婚するってこと──」
心なしか、キアラの声色が低くく感じる。
「あぁ……一応な。でもよォ、水臭ェじゃあねーかよ? 俺にも言ってくれりゃあよかったのによォ」
少しふてぶてしく言ってみせる。彼女が少し困ったように言葉を詰まらせるから、俺は笑って、用意していた物を目の前に差し出した。
「まぁ、別に俺に話す義理はねーよなァ……つーか、これ! やるよ」
「えっ……」
「改めて見ても、お前はやっぱりいい女だぜ……幸せになれよ!」
無理してみせた満面の笑みは、キアラにはどう映ったのか──そんなことは、俺には知る由もない。ただ、ありがとうと告げ、俺にあどけない笑みを向ける──それは俺が一番好きだった彼女。その表情を最後に見られてよかったなと、今はそう思った。
彼女に贈ったのは、白とピンクのコントラストが美しい胡蝶蘭のような花を咲かせるデンファレの花束。その花言葉は“わがままな美人”“魅惑”そして、“お似合いのふたり”
俺にとって、キアラは“わがままな美人”だった。コロコロ表情が移り変わる──時にそれは、“魅惑”のスパイスとなり、俺の心を魅了した。そして、俺たち“二人がお似合い”だと、そう思っていた。
でも、俺じゃあない、他の誰かとお似合いの彼女を祝福しようと思う。
だけど──
もし、俺が生まれ変わったなら──そして、もし、またキアラと巡り会えたとしたら──
今度はそいつとじゃあなくて、俺と結婚してほしいと、そう思ってならない。
the END