Der Freischutz
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
とある日の午後──
場所はリストランテ“Libeccio”
いつもの窓際の席で遅めの昼食を摂っているミスタのところにナランチャがやって来た。
「なぁ、ミスタ──」
「あ、なんだよ?」
「最近、見かけないけどよォ……キアラ、どうしたんだ?」
唐突な質問にミスタがパスタを食べる手を止める。ナランャの言う“キアラ”とは、ちょっと前までよくここに顔を出していた女で、たぶんミスタの彼女であろう人物。チームの皆とも割と仲良くしていたようだ。
「あ〜アイツねぇ……ここ最近任務が立て込んでたからよォ、連絡来てたかもしれないけど……そう言えば返してなかったわ」
「彼女なら、この前街で見かけましたよ?」
後方から2人の会話に入って来たのはジョルノだ。おもむろにナランャの隣に腰掛ける。
「お〜そっかそっか〜……で、元気そうだったかよォ?」
ミスタの問いかけに、自分の彼女の事なのにそんな事も知らないのか──と言わんばかりにジョルノが一瞬呆れた表情を差し向ける。
「えぇ、とても元気そうでしたよ」
「じゃあ、後で連絡でもしてみっかな?」
「──男性と仲良く腕組みしながら、歩いてましたけどね」
話す内容とは似つかわしくない笑顔のジョルノに『この男……一体何を言い出すんだ?』と、言わんばかりにミスタが眉間にシワを寄せる。
「……え? お、男と一緒!?」
「えぇ、相手の男性とはとても親しげで、まるで“彼氏”のように見えましたけど──」
「ミスタ……お前、フラれたんじゃね?」
「ハァ!? んなわけねーだろ!?」
からかうように問いかけてきたナランャに、ミスタは思わず声を張りげる。それと同時に妙な胸騒ぎを覚えていた。キアラに限ってそんな事はないはずだ。きっとジョルノの見間違いだろう──と、ミスタはそう思いたかった。
確かに任務が多忙だったのは事実。だが、他の女と遊んでいたのもまた事実──少し傲りがあったのだ。
でもそれは遊び。本命はキアラだけ。
彼女は自分の事を好きでいてくれている。何があってもそれは変わらない──と、そう決め付けていた。
しかし、それはミスタの思い上がりだった様で、すぐさま連絡してみたものの──何度かけても話し中。徐々にナランャが口にした事が現実味を帯びてきた。でも、それだけはどうしても認めたくないと思いつつ、気分を紛らわす為、街を歩いていると──
「あ……」
「──!」
偶然にも出会してしまった渦中の人物に、双方が思わず動きを止めてしまう。
そして皮肉にもミスタが目にした光景は、ジョルノが言っていたそれそのものだった。男と腕組みしながら寄り添うその姿は、まさに恋人同士そのものだ。
「──知り合いか?」
隣の男がキアラに問いかける。それに対し、若干バツが悪そうに視線を下に落としながら、キアラが口ごもる。
「いや、その……」
「おいおい、ひでーじゃあねぇかよ! しばらく会わねー間によォ、忘れちまったのか、彼氏の顔をよォ?」
「ち、ちょっと! 勝手な事言わないでよ!
あなたなんて知りません! 行きましょう──」
「おい、ちょっと待てよ!」
男の手を取り、足早に立ち去ろとするキアラをミスタが慌てて呼び止める。逃すまいと思わず掴んだ手に力がこもる。
「痛っ……離して!」
「──おい」
その様子を見兼ねた男が、ミスタに鋭い視線を差し向ける。
「手荒な真似してんじゃあねーよ。コイツに話があるならよォ、素直にそう言やァいいだろ?」
「……」
「俺は先に行ってる。話ぐらい聞いてやれ──」
黒い服の男はキアラにそう言い残し、紫煙と共に行ってしまった。
余裕のある立ち振る舞い。まさに大人な“いい男”と言うやつか……ギリっと歯を食いしばりながらその背中を見据える。
そして、ミスタとキアラの2人が残される。先に話を切り出したのはミスタだ。
「──誰だ、アイツ?」
「ミスタには、関係ないでしょう」
「もう新しい男かよ?」
「──ッ! 何それ? 節操のないあなたと一緒にしないで!」
そう言い放ち顔を背けるキアラに、やっぱりバレていたのかとミスタは一瞬目を泳がせる。その表情を横目にキアラがため息づく。
「どうせ私達は付き合ってなんていなかった……あなたにとっては単なる遊び……そうでしょう? 私だって、そんな事くらい分かってた……」
キアラの口から初めて聞かされる本音──それはミスタにとって、とても納得のいく内容ではなかった。
「違う! そんなわけねーだろ! だって俺はお前の事が──」
「もう、今更遅いよ……さよなら──」
「──ちょっと、待て!」
立ち去ろうとするキアラに、ミスタが自分の拳銃を差し出す。それを目の当たりにしたキアラが目を見開き、次にミスタへと視線を移す。
「これは……何? 一体私にどうしろと──?」
「そいつでよォ、俺に一発打ち込めよ……? 俺ァ今更になって、お前しかいないって……そう思っちまったからなァ……お前がどうしても行くってんならよォ、いっそのこと、それでこの報われねぇ想いにとどめを刺してくれよ? なァ……?」
「……何言ってんの? そんなくだらない想い……一生報われないまま彷徨い続ければいいわ──」
そう言い放ち、キアラがミスタの前から立ち去って行く──
後に残した微笑みが、ミスタの漆黒の瞳にやたらと綺麗に映った。
その瞬間──この先もこの恋の呪縛からは、決して逃れられない──と、ミスタがそう思いながら仰ぎ見るのは快晴の空だ。
場所はリストランテ“Libeccio”
いつもの窓際の席で遅めの昼食を摂っているミスタのところにナランチャがやって来た。
「なぁ、ミスタ──」
「あ、なんだよ?」
「最近、見かけないけどよォ……キアラ、どうしたんだ?」
唐突な質問にミスタがパスタを食べる手を止める。ナランャの言う“キアラ”とは、ちょっと前までよくここに顔を出していた女で、たぶんミスタの彼女であろう人物。チームの皆とも割と仲良くしていたようだ。
「あ〜アイツねぇ……ここ最近任務が立て込んでたからよォ、連絡来てたかもしれないけど……そう言えば返してなかったわ」
「彼女なら、この前街で見かけましたよ?」
後方から2人の会話に入って来たのはジョルノだ。おもむろにナランャの隣に腰掛ける。
「お〜そっかそっか〜……で、元気そうだったかよォ?」
ミスタの問いかけに、自分の彼女の事なのにそんな事も知らないのか──と言わんばかりにジョルノが一瞬呆れた表情を差し向ける。
「えぇ、とても元気そうでしたよ」
「じゃあ、後で連絡でもしてみっかな?」
「──男性と仲良く腕組みしながら、歩いてましたけどね」
話す内容とは似つかわしくない笑顔のジョルノに『この男……一体何を言い出すんだ?』と、言わんばかりにミスタが眉間にシワを寄せる。
「……え? お、男と一緒!?」
「えぇ、相手の男性とはとても親しげで、まるで“彼氏”のように見えましたけど──」
「ミスタ……お前、フラれたんじゃね?」
「ハァ!? んなわけねーだろ!?」
からかうように問いかけてきたナランャに、ミスタは思わず声を張りげる。それと同時に妙な胸騒ぎを覚えていた。キアラに限ってそんな事はないはずだ。きっとジョルノの見間違いだろう──と、ミスタはそう思いたかった。
確かに任務が多忙だったのは事実。だが、他の女と遊んでいたのもまた事実──少し傲りがあったのだ。
でもそれは遊び。本命はキアラだけ。
彼女は自分の事を好きでいてくれている。何があってもそれは変わらない──と、そう決め付けていた。
しかし、それはミスタの思い上がりだった様で、すぐさま連絡してみたものの──何度かけても話し中。徐々にナランャが口にした事が現実味を帯びてきた。でも、それだけはどうしても認めたくないと思いつつ、気分を紛らわす為、街を歩いていると──
「あ……」
「──!」
偶然にも出会してしまった渦中の人物に、双方が思わず動きを止めてしまう。
そして皮肉にもミスタが目にした光景は、ジョルノが言っていたそれそのものだった。男と腕組みしながら寄り添うその姿は、まさに恋人同士そのものだ。
「──知り合いか?」
隣の男がキアラに問いかける。それに対し、若干バツが悪そうに視線を下に落としながら、キアラが口ごもる。
「いや、その……」
「おいおい、ひでーじゃあねぇかよ! しばらく会わねー間によォ、忘れちまったのか、彼氏の顔をよォ?」
「ち、ちょっと! 勝手な事言わないでよ!
あなたなんて知りません! 行きましょう──」
「おい、ちょっと待てよ!」
男の手を取り、足早に立ち去ろとするキアラをミスタが慌てて呼び止める。逃すまいと思わず掴んだ手に力がこもる。
「痛っ……離して!」
「──おい」
その様子を見兼ねた男が、ミスタに鋭い視線を差し向ける。
「手荒な真似してんじゃあねーよ。コイツに話があるならよォ、素直にそう言やァいいだろ?」
「……」
「俺は先に行ってる。話ぐらい聞いてやれ──」
黒い服の男はキアラにそう言い残し、紫煙と共に行ってしまった。
余裕のある立ち振る舞い。まさに大人な“いい男”と言うやつか……ギリっと歯を食いしばりながらその背中を見据える。
そして、ミスタとキアラの2人が残される。先に話を切り出したのはミスタだ。
「──誰だ、アイツ?」
「ミスタには、関係ないでしょう」
「もう新しい男かよ?」
「──ッ! 何それ? 節操のないあなたと一緒にしないで!」
そう言い放ち顔を背けるキアラに、やっぱりバレていたのかとミスタは一瞬目を泳がせる。その表情を横目にキアラがため息づく。
「どうせ私達は付き合ってなんていなかった……あなたにとっては単なる遊び……そうでしょう? 私だって、そんな事くらい分かってた……」
キアラの口から初めて聞かされる本音──それはミスタにとって、とても納得のいく内容ではなかった。
「違う! そんなわけねーだろ! だって俺はお前の事が──」
「もう、今更遅いよ……さよなら──」
「──ちょっと、待て!」
立ち去ろうとするキアラに、ミスタが自分の拳銃を差し出す。それを目の当たりにしたキアラが目を見開き、次にミスタへと視線を移す。
「これは……何? 一体私にどうしろと──?」
「そいつでよォ、俺に一発打ち込めよ……? 俺ァ今更になって、お前しかいないって……そう思っちまったからなァ……お前がどうしても行くってんならよォ、いっそのこと、それでこの報われねぇ想いにとどめを刺してくれよ? なァ……?」
「……何言ってんの? そんなくだらない想い……一生報われないまま彷徨い続ければいいわ──」
そう言い放ち、キアラがミスタの前から立ち去って行く──
後に残した微笑みが、ミスタの漆黒の瞳にやたらと綺麗に映った。
その瞬間──この先もこの恋の呪縛からは、決して逃れられない──と、ミスタがそう思いながら仰ぎ見るのは快晴の空だ。
the END