My Savior
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ネアポリスの街角──
いろんな人々が行き交うその中で、1人の男に声をかけられる──
「 Ciao, bella! 」
イタリアではよくあるナンパだ。
そう、 いつもの ナンパ──
もちろん、呼びかけには気付いている──しかし、素知らぬ顔で通り過ぎる。
すると、また呼び止められる。
「 Bella signora? 」
今度は少し紳士的に話しかけられる。
それに合わせて、こちらも丁寧に対応する。
「 Mi dispiace, non posso 」
そう言って、するりとかわすも──3度目には壁に足を突き立てられ、通せんぼされる。
「おいおい、わざとやってんだろ、お前はよォ……一体どーゆーつもりだ……?」
そう言われ、やっと顔を上げて相手に向き直ると、男は少し不機嫌そうに、膨れっ面をこっちに向けている。
「私に何か用……? ミスタ──」
「用があるから話しかけてんだろがよォ?」
「だから、何?」
「暇なら俺とお茶しねー?」
「ん〜、忙しいから Alla prossima ~!」
そして手を軽く振りながら、立ち去る──
ここまでが、時折行われている一連の流れである。
私をナンパしてきたこの男……彼の名は、グイード・ミスタ──
噂に聞くと、彼はギャングらしい……
ここら辺でギャングと言えば、“パッショーネ”が名を馳 せている。
“ブローノ・ブチャラティ”の名は、私でも知っているくらい有名だ。その彼と一緒にいるのを見かけた事がある……だから多分、彼もパッショーネの構成員なのだろう。
ギャングなんて、関わらない方が身の為──
“触らぬ神に祟り無し”……なんて、よく言ったものだ。
それはさておき……話しは冒頭に戻る。
***
「相変わらず連れねーなァ、そんな事言わずによォ、行こーぜ? そこのカフェ、今日限定で苺のドルチェ祭りやってるみてーでよォ、さっきチラッと覗いて来たけど、かなりやばかったぜ……?」
“限定の苺ドルチェ”の言葉に、思わず目の色を変えてしまう──実はドルチェに目がない。しかも苺が好物ときたもんだ。
「ん〜それって〜、ミスタの奢り?」
「あぁ、もちろん! 俺の奢りだぜ!」
「それなら〜……行ってあげなくもないけど?」
「そうこなくっちゃあなァ」
ミスタがニカっと笑みを浮かべる。そして一緒にお店へと向かう──なんやかんや、お決まりのパターンだ。
いつも口車に乗せられてしまっている感は否めないが……でも、そんなやりとりも嫌じゃない自分がいる。
なぜギャングである彼とこんな風にドルチェまで一緒に食べる間柄になったのか──それについては、またの機会に語る事にして……
結論から言うと、ミスタは私の事を少なからず好いてくれていると思う……その一方で、私は──
私とミスタ──実は、過去に一度だけキスをしたことがある。
その時は色々あった……深くは思い出せないが、あの漆黒の瞳に吸い込まれるようにキスを交わした。後にも先にもその一度だけ。
その時、彼は私にこう言った──
『俺は誰かの代わりなんざごめんだぜ? お前が本当に俺の事を好きになるその時まで──俺はずっと待ってるから……な?』
そう言った彼の瞳が、少し悲しそうに見えたのだけは、今も鮮明に覚えている。
そんな事をふと思い出しているなんて……ミスタは知る由もないな──とふと思う。
そして店に入り注文を終えた後、思い切ってミスタに訊ねた。
「ねぇ、ミスタ──」
「あ、何だ?」
「今週末って……何か予定ある?」
「えっ、その口振りはよォ、まさかデートの誘いかよ──ッ⁉︎」
「さぁね〜? とりあえず、暇なら空けといて」
「おぉ、分かった! じゃあ、待ち合わせは、このカフェな!」
嬉しそうに話すミスタを横目に、自分の頬が緩むのが分かる。そう……本当は気付いている……だから、週末にその気持ちを──私はそう思っていた。
しかし、週末──
待ち合わせ場所に彼は現れなかった。
元より、あの日から街に出れば必ず声をかけてきた、彼の姿は消えてしまったのだ。
結局、私はフラれてしまったようだ。やっぱり住む世界が違ったのだ。きっと最初から、かわれていたんだと──
気持ちを弄 ばれたと言う怒りは不思議と湧いてこなかった……むしろ、突然消えてしまったという失念感の方が強かった。
それと同時に“会いたい”と思う気持ちは募るばかりだ。
あの時言えなかった気持ちをちゃんと伝えたい──だから、会いたい……!
***
それから9日余が経ったある日、その時は突然訪れる。
ネアポリスの街に彼が……ミスタが現れたのだ。彼を目の当たりにして、私は迷わずその名を叫んでいた。
「ミスタッ──!」
彼は気付いていないのか……そのまま行ってしまう。この機会を逃せば、もう二度と会えないような気がする……だからもう一度──
有りったけの声を振り絞り叫ぶ……その愛しい名を──
「ミスタッ! グイード・ミスタ──ッ!」
その声が街中に響き渡る。行き交う誰もが振り返る中、ようやくミスタにも届いたのか……こちらに振り向く──
「お前……キアラ──ッ⁉︎」
同時に隣にいた金髪の男の存在に気づく。
何とも言えないオーラを放つ男……しかし、どことなくあどけなさも感じるくらいの若者だ。
「知り合いですか、ミスタ……?」
「あ、あぁ……」
「もしかして、彼女がいつぞや話してくれた“忘れえぬ人”……ですか?」
「悪い──、ちょっと行って来てもいいか……?」
「えぇ、構いませんよ? じゃあ、先に行ってますね」
2人が何を話しているかは分からない──ヤキモキしていると、ミスタがこちらにやって来る。
声をかける間もなく、私はミスタの腕の中──抱きしめられていた。
「えっ、ちょっ──」
「会いたかった……いや、もう会えないと思ってた……あの日……約束破っちまって悪かっ──」
言い終わるか否か──思いっ切りミスタの頰を殴ってやった。
「痛ってーなァ──ッ! 何すん──…」
頰を押さえたミスタが、自分の方へと向き直る。そんな彼の胸に再び飛び込むと、今度は自ら口付けた。
「──ッ⁉︎」
「好き……私、ミスタの事が好き──やっと言えた……」
「キアラ……」
安堵にも似た笑顔を向けると──今度はミスタが優しく口付ける。
「俺もだ……もう、離さない──」
「うん……」
ゆっくりとミスタの胸に顔を埋めた。愛しいと言わんばかりにすり寄ると、優しく……それでいて力強く抱きしめてくれる。
ミスタが今まで、どこにいて何をしていたのかは聞かない。だって彼はギャングだ。理由を聞いても、ろくな答えは返ってこないだろう……
だけど、置いてけぼりを食らうのはもうこりごりだ──
「今度は、私も連れてって……?」
「えっ⁉︎ ……ん〜、まぁ、いっか! とりあえず、ジョルノに紹介する方が先だな」
「ジョルノ……? あっ、もしかしてさっき一緒にいた──」
「そうそう、あれがうちのボス──」
「ボ、ボスッ⁉︎ 嘘、かなり若くないッ⁉︎ 」
「じゃあ、今から行くぞ! ほれ──」
ミスタがこちらに向けて手を差し出す。
私はそれを迷うことなくとり、一緒に歩き出す──
今度は決して離れないようにと……
いろんな人々が行き交うその中で、1人の男に声をかけられる──
「
イタリアではよくあるナンパだ。
そう、
もちろん、呼びかけには気付いている──しかし、素知らぬ顔で通り過ぎる。
すると、また呼び止められる。
「
今度は少し紳士的に話しかけられる。
それに合わせて、こちらも丁寧に対応する。
「
そう言って、するりとかわすも──3度目には壁に足を突き立てられ、通せんぼされる。
「おいおい、わざとやってんだろ、お前はよォ……一体どーゆーつもりだ……?」
そう言われ、やっと顔を上げて相手に向き直ると、男は少し不機嫌そうに、膨れっ面をこっちに向けている。
「私に何か用……? ミスタ──」
「用があるから話しかけてんだろがよォ?」
「だから、何?」
「暇なら俺とお茶しねー?」
「ん〜、忙しいから
そして手を軽く振りながら、立ち去る──
ここまでが、時折行われている一連の流れである。
私をナンパしてきたこの男……彼の名は、グイード・ミスタ──
噂に聞くと、彼はギャングらしい……
ここら辺でギャングと言えば、“パッショーネ”が名を
“ブローノ・ブチャラティ”の名は、私でも知っているくらい有名だ。その彼と一緒にいるのを見かけた事がある……だから多分、彼もパッショーネの構成員なのだろう。
ギャングなんて、関わらない方が身の為──
“触らぬ神に祟り無し”……なんて、よく言ったものだ。
それはさておき……話しは冒頭に戻る。
***
「相変わらず連れねーなァ、そんな事言わずによォ、行こーぜ? そこのカフェ、今日限定で苺のドルチェ祭りやってるみてーでよォ、さっきチラッと覗いて来たけど、かなりやばかったぜ……?」
“限定の苺ドルチェ”の言葉に、思わず目の色を変えてしまう──実はドルチェに目がない。しかも苺が好物ときたもんだ。
「ん〜それって〜、ミスタの奢り?」
「あぁ、もちろん! 俺の奢りだぜ!」
「それなら〜……行ってあげなくもないけど?」
「そうこなくっちゃあなァ」
ミスタがニカっと笑みを浮かべる。そして一緒にお店へと向かう──なんやかんや、お決まりのパターンだ。
いつも口車に乗せられてしまっている感は否めないが……でも、そんなやりとりも嫌じゃない自分がいる。
なぜギャングである彼とこんな風にドルチェまで一緒に食べる間柄になったのか──それについては、またの機会に語る事にして……
結論から言うと、ミスタは私の事を少なからず好いてくれていると思う……その一方で、私は──
私とミスタ──実は、過去に一度だけキスをしたことがある。
その時は色々あった……深くは思い出せないが、あの漆黒の瞳に吸い込まれるようにキスを交わした。後にも先にもその一度だけ。
その時、彼は私にこう言った──
『俺は誰かの代わりなんざごめんだぜ? お前が本当に俺の事を好きになるその時まで──俺はずっと待ってるから……な?』
そう言った彼の瞳が、少し悲しそうに見えたのだけは、今も鮮明に覚えている。
そんな事をふと思い出しているなんて……ミスタは知る由もないな──とふと思う。
そして店に入り注文を終えた後、思い切ってミスタに訊ねた。
「ねぇ、ミスタ──」
「あ、何だ?」
「今週末って……何か予定ある?」
「えっ、その口振りはよォ、まさかデートの誘いかよ──ッ⁉︎」
「さぁね〜? とりあえず、暇なら空けといて」
「おぉ、分かった! じゃあ、待ち合わせは、このカフェな!」
嬉しそうに話すミスタを横目に、自分の頬が緩むのが分かる。そう……本当は気付いている……だから、週末にその気持ちを──私はそう思っていた。
しかし、週末──
待ち合わせ場所に彼は現れなかった。
元より、あの日から街に出れば必ず声をかけてきた、彼の姿は消えてしまったのだ。
結局、私はフラれてしまったようだ。やっぱり住む世界が違ったのだ。きっと最初から、かわれていたんだと──
気持ちを
それと同時に“会いたい”と思う気持ちは募るばかりだ。
あの時言えなかった気持ちをちゃんと伝えたい──だから、会いたい……!
***
それから9日余が経ったある日、その時は突然訪れる。
ネアポリスの街に彼が……ミスタが現れたのだ。彼を目の当たりにして、私は迷わずその名を叫んでいた。
「ミスタッ──!」
彼は気付いていないのか……そのまま行ってしまう。この機会を逃せば、もう二度と会えないような気がする……だからもう一度──
有りったけの声を振り絞り叫ぶ……その愛しい名を──
「ミスタッ! グイード・ミスタ──ッ!」
その声が街中に響き渡る。行き交う誰もが振り返る中、ようやくミスタにも届いたのか……こちらに振り向く──
「お前……キアラ──ッ⁉︎」
同時に隣にいた金髪の男の存在に気づく。
何とも言えないオーラを放つ男……しかし、どことなくあどけなさも感じるくらいの若者だ。
「知り合いですか、ミスタ……?」
「あ、あぁ……」
「もしかして、彼女がいつぞや話してくれた“忘れえぬ人”……ですか?」
「悪い──、ちょっと行って来てもいいか……?」
「えぇ、構いませんよ? じゃあ、先に行ってますね」
2人が何を話しているかは分からない──ヤキモキしていると、ミスタがこちらにやって来る。
声をかける間もなく、私はミスタの腕の中──抱きしめられていた。
「えっ、ちょっ──」
「会いたかった……いや、もう会えないと思ってた……あの日……約束破っちまって悪かっ──」
言い終わるか否か──思いっ切りミスタの頰を殴ってやった。
「痛ってーなァ──ッ! 何すん──…」
頰を押さえたミスタが、自分の方へと向き直る。そんな彼の胸に再び飛び込むと、今度は自ら口付けた。
「──ッ⁉︎」
「好き……私、ミスタの事が好き──やっと言えた……」
「キアラ……」
安堵にも似た笑顔を向けると──今度はミスタが優しく口付ける。
「俺もだ……もう、離さない──」
「うん……」
ゆっくりとミスタの胸に顔を埋めた。愛しいと言わんばかりにすり寄ると、優しく……それでいて力強く抱きしめてくれる。
ミスタが今まで、どこにいて何をしていたのかは聞かない。だって彼はギャングだ。理由を聞いても、ろくな答えは返ってこないだろう……
だけど、置いてけぼりを食らうのはもうこりごりだ──
「今度は、私も連れてって……?」
「えっ⁉︎ ……ん〜、まぁ、いっか! とりあえず、ジョルノに紹介する方が先だな」
「ジョルノ……? あっ、もしかしてさっき一緒にいた──」
「そうそう、あれがうちのボス──」
「ボ、ボスッ⁉︎ 嘘、かなり若くないッ⁉︎ 」
「じゃあ、今から行くぞ! ほれ──」
ミスタがこちらに向けて手を差し出す。
私はそれを迷うことなくとり、一緒に歩き出す──
今度は決して離れないようにと……
the END