第14章 Tree Rings
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明日から再びアイツと共に──
そういう思いがあったからか、柄にもなく気持ちがどこか浮ついていた。それでも任務に支障を出すはなく、今日も俺はただやるべき事をこなすだけ──
リゾットはそう思いながらターゲットを始末していた。そしてふと近くの時計台に目を向ける。針はとっくにてっぺんを過ぎていた。
もうこんな時間か……アイツが来るのは明日の朝か、それとも──
再びそんな思いを巡らせながら、リゾットはアジトへと帰り着く。
中へ入ると部屋にあかりが灯っていることに気付く。まさか──と内に入りリビングを見回すと、ソファーで眠るキアラの姿が目に止まる。
やっぱり来ていたのかと、思わず安堵の表情を浮かべてしまっている事に、リゾット自身は気付いているのか否か……ゆっくりキアラへと歩み寄る。
「おい、起きろ……こんなところで寝ていたら、風邪をひく──」
見るとキアラの頰が微かに濡れている。泣いていたのか……その涙を親指でそっと拭いながら優しく頰に触れる──
「キアラ……全くお前と言う奴は……」
そう呟くとキアラを軽々と担ぎ、二階の自室へと運び込む。そして、ベッド上にゆっくり下ろすと、近くにあったブランケットをかけてやる。
キアラはその間も、全く起きる気配はなく、かけられたブランケットに無意識に潜り込むと、再び静かに寝息を立てた。
側に腰を下ろしたリゾットは、このまま抱きしめてしまおうか……そしてキスの一つでも落としてしまおうか──という自我の欲望に耳を傾けつつ、ここまで連れてきたのはきっとプロシュートに違いない──だとすれば、今はその時期ではないなとそう思った。
そして静かにキアラの側を離れたリゾットは、再びリビングへと戻り、その日はソファーで休息を取った。
***
翌日──私はまたある声で目を覚ます。
“お前に残された時間はあとわずか……早くしなければ、歴史はまた繰り返される……”
バッと目を見開き飛び起きる。その拍子で払い退けてしまったのか──ブランケットがはらりと床へと落ちた。心臓がドキンッドキンッと高鳴り、私は思いがけず肩で息をしていた。そして、はたと気付く。
「ここは……どこ?」
見た事のない室内に、脳をフル回転させながら昨日の記憶をうっすらと辿る。そして、思い出したのは淡い記憶。そう……私はプロシュートと──
とりあえず部屋の外に出る。すると、一階からであろう……コーヒーの香ばしい香りが鼻をかすめる。
階段を降りて行き、見覚えのあるリビング扉を開けると、そこに居たのは予想通りの人物。ソファーに腰を下ろしながら、書類に目を通しているのは──
「リゾット……」
私がその名を口にすると、こちらに顔を向け、一瞬口元を緩める。そして再び書類に目を向けながら話始める。
「眠れたか? まぁ、これだけ眠っていたんだ、聞かずとも分かるか……」
「もしかして私──」
「あぁ、このソファーで眠り落ちていた……起こしても全く起きないほどにな」
「そ、そっか……ベッドまで運んで来れたのね……ありがと」
「それより──顔ぐらい洗ってきたらどうだ? 化粧が落ちてるぞ……」
再びこちらに目を向け、ニヒルな笑みを浮かべるリゾットに、思わず我に返り顔を背ける。
「ち、ちょっと、そんなマジマジと見ないでよ……!」
「何だ? そんなのは今更だろう」
「私、一旦帰るね! みんなもまだ来てないみたいだし……すぐ戻るから──」
そう言いながら玄関に向かおうとする私に、リゾットが問いかける。
「アイツ──お前をここに連れて来たのは、プロシュート……だろ?」
私は急ぐ足を止め、でも振り向かずに答える。
「──そうよ。昨日ここに連れて来てもらったの……それがどうかした?」
「いや──」
「じゃあ、また後で──」
言葉を濁したリゾットを残し、私はアジトを後にした。
***
自宅に帰り着くと、すぐさまバスルームへと向かう。全てを脱ぎ捨て、頭からシャワーを浴びた。
ふと浴室の鏡に映る自分の姿に目を向けると、右腕のアザが日に日に色濃くなっているのが見てとれた。そっと指でなぞれば、微かに痺れる痛みが伴う。
私はまだ気付かないフリをしていたかった。しかしその時は、確実に近付いている──腕のアザがその事を物語っているような気がした。
そういう思いがあったからか、柄にもなく気持ちがどこか浮ついていた。それでも任務に支障を出すはなく、今日も俺はただやるべき事をこなすだけ──
リゾットはそう思いながらターゲットを始末していた。そしてふと近くの時計台に目を向ける。針はとっくにてっぺんを過ぎていた。
もうこんな時間か……アイツが来るのは明日の朝か、それとも──
再びそんな思いを巡らせながら、リゾットはアジトへと帰り着く。
中へ入ると部屋にあかりが灯っていることに気付く。まさか──と内に入りリビングを見回すと、ソファーで眠るキアラの姿が目に止まる。
やっぱり来ていたのかと、思わず安堵の表情を浮かべてしまっている事に、リゾット自身は気付いているのか否か……ゆっくりキアラへと歩み寄る。
「おい、起きろ……こんなところで寝ていたら、風邪をひく──」
見るとキアラの頰が微かに濡れている。泣いていたのか……その涙を親指でそっと拭いながら優しく頰に触れる──
「キアラ……全くお前と言う奴は……」
そう呟くとキアラを軽々と担ぎ、二階の自室へと運び込む。そして、ベッド上にゆっくり下ろすと、近くにあったブランケットをかけてやる。
キアラはその間も、全く起きる気配はなく、かけられたブランケットに無意識に潜り込むと、再び静かに寝息を立てた。
側に腰を下ろしたリゾットは、このまま抱きしめてしまおうか……そしてキスの一つでも落としてしまおうか──という自我の欲望に耳を傾けつつ、ここまで連れてきたのはきっとプロシュートに違いない──だとすれば、今はその時期ではないなとそう思った。
そして静かにキアラの側を離れたリゾットは、再びリビングへと戻り、その日はソファーで休息を取った。
***
翌日──私はまたある声で目を覚ます。
“お前に残された時間はあとわずか……早くしなければ、歴史はまた繰り返される……”
バッと目を見開き飛び起きる。その拍子で払い退けてしまったのか──ブランケットがはらりと床へと落ちた。心臓がドキンッドキンッと高鳴り、私は思いがけず肩で息をしていた。そして、はたと気付く。
「ここは……どこ?」
見た事のない室内に、脳をフル回転させながら昨日の記憶をうっすらと辿る。そして、思い出したのは淡い記憶。そう……私はプロシュートと──
とりあえず部屋の外に出る。すると、一階からであろう……コーヒーの香ばしい香りが鼻をかすめる。
階段を降りて行き、見覚えのあるリビング扉を開けると、そこに居たのは予想通りの人物。ソファーに腰を下ろしながら、書類に目を通しているのは──
「リゾット……」
私がその名を口にすると、こちらに顔を向け、一瞬口元を緩める。そして再び書類に目を向けながら話始める。
「眠れたか? まぁ、これだけ眠っていたんだ、聞かずとも分かるか……」
「もしかして私──」
「あぁ、このソファーで眠り落ちていた……起こしても全く起きないほどにな」
「そ、そっか……ベッドまで運んで来れたのね……ありがと」
「それより──顔ぐらい洗ってきたらどうだ? 化粧が落ちてるぞ……」
再びこちらに目を向け、ニヒルな笑みを浮かべるリゾットに、思わず我に返り顔を背ける。
「ち、ちょっと、そんなマジマジと見ないでよ……!」
「何だ? そんなのは今更だろう」
「私、一旦帰るね! みんなもまだ来てないみたいだし……すぐ戻るから──」
そう言いながら玄関に向かおうとする私に、リゾットが問いかける。
「アイツ──お前をここに連れて来たのは、プロシュート……だろ?」
私は急ぐ足を止め、でも振り向かずに答える。
「──そうよ。昨日ここに連れて来てもらったの……それがどうかした?」
「いや──」
「じゃあ、また後で──」
言葉を濁したリゾットを残し、私はアジトを後にした。
***
自宅に帰り着くと、すぐさまバスルームへと向かう。全てを脱ぎ捨て、頭からシャワーを浴びた。
ふと浴室の鏡に映る自分の姿に目を向けると、右腕のアザが日に日に色濃くなっているのが見てとれた。そっと指でなぞれば、微かに痺れる痛みが伴う。
私はまだ気付かないフリをしていたかった。しかしその時は、確実に近付いている──腕のアザがその事を物語っているような気がした。