第12章 Sliding Door
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そして、話は宵闇 時へと繋がる──
ブチャラティの手を振り払い、走り去ったキアラがリビングへと現れる──
しかも、目に光るものを浮かべながら、そのまま出て行こうとする始末……
明らかに何かあったであろう状況に、ミスタがキアラを呼び止める。
「おい、キアラッ──!」
ピタリと足を止めたキアラは、言葉を詰まらせながら答える。
「わ、私……帰るね」
「帰るって……ブチャラティがそっちに行ったろ? 2人で話してたんじゃあねぇのかよ? お前だって今朝、ブチャラティに話があるって……そう言ってただろ?」
「……もう終わったの……話す事はもう何もない……」
うつむくキアラを横目に、ミスタは一息吐くと、それ以上は何も聞かずに話を切り替える。
「分かった……帰るって言うならよォ、送るぜ?」
「いいよ、1人で帰れるから──」
「おいおい、外はもう暗くなってるっつーの……女の1人歩きは物騒だ……Signorina は家まで送る──それがイタリアーノってもんだろ?」
言い終わるとウインクを1つしてみせる……
ミスタのいつもの軽口に、キアラもフッと笑みを浮かべる。
「……そうね。じゃあ、お言葉に甘えてそうさせてもらうわ」
そしてキアラはミスタと共にアジトを後にした。
***
道中、キアラはややうつむき加減にゆっくり歩く。
それを横目に、ミスタは柄にもなく躊躇 していた──さっきのように明るく話しかければ良いのか否か……
それに……キアラとブチャラティが一体何を話していたのか……俺の勘が当たっているとすれば、それは多分──
ミスタがそう思った時、隣を歩いていたキアラがポツリと呟く。
「……ありがとう」
「お、おぉ……」
「ミスタって、いい男よね……」
「あ、今更かよ!? 今まで散々アピールしてたっつーのによォ、早く気付けよなァ」
『全くよォ』と、再び軽口を叩くその男の傍で、『ゴメン、ゴメン──』と言いながら、ようやくキアラが笑みを見せる──そしてそのまま話を続けた。
「何があったか、聞かないの?」
「何だ、その口振りはよォ……聞いて欲しいのか? まぁ、お前が言いたきゃ聞くし、言いたくないなら聞かねぇ……ただそれだけだ」
「そう……」
キアラはそのまま口を紡 ぐ。
やっぱり話せない事なのか……と、ミスタもそれ以上詮索する事はなく、ただ黙って隣を歩いた。
程なくしてキアラが足を止める。
「もうここで──」
「そうか、家まで送るぜ?」
「ううん、すぐそこだから大丈夫」
その言葉が、“これ以上は来なくていい”と言う警告のように、ミスタには聞こえた。
「そうかよォ、じゃあ……また明日」
ミスタが軽く手を振り去って行く。
その後ろ姿を見つめながら、キアラはため息を漏らす。
『また明日……』
その言葉がキアラの胸に突き刺さる。
不意に見上げた夜空には、以前ブチャラティと一緒に眺めた星が、1つ……また1つと瞬いている。
彼もまたあの場所で、この星を見上げている……かもしれない……
いや、それは自分勝手な理想像──
前に向き直ったキアラは、自宅ではなくまた別の方向へと歩き出した。その時だ──
「キアラ──」
不意に、自分の名を呼ぶ人物が目の前に現れる──その姿に目を見張る。
「プロシュートッ──!? 何で……?」
「お前を迎えに来た……やっぱり勘が当たったぜ……」
プロシュートがニヒルな笑みを浮かべながら、キアラの元へと歩み寄る──
ふと見上げるも、月明かりが逆光となりその表情が陰る──しかし、深いラファエル色の瞳には、キアラの姿がはっきりと映し出されている。
「リゾットから聞いた……お前がまた俺らのチームに来る事を──お前の事だ……きっと前日からアジトに来るだろう……そう思ったら居ても経ってもいられなかった──」
その瞳が憂いを帯びて見えた次の瞬間──キアラはプロシュートに抱き寄せられていた。
「──ッ!」
「ずっと、こうしたかった……」
「……」
「キアラ……」
耳元で自分の名を囁く──プロシュートの甘い声色は、今もあの頃と変わらない……
そして、優しく抱きしめられる──
甘く漂うバニラの中に、程良くスパイスが効いている──そんな香水の香りが鼻をかすめる……それらが更にかつての記憶を呼び覚ます──
しかし、キアラは自らの両手をプロシュートの背中に回しはしなかった。
ブチャラティの手を振り払い、走り去ったキアラがリビングへと現れる──
しかも、目に光るものを浮かべながら、そのまま出て行こうとする始末……
明らかに何かあったであろう状況に、ミスタがキアラを呼び止める。
「おい、キアラッ──!」
ピタリと足を止めたキアラは、言葉を詰まらせながら答える。
「わ、私……帰るね」
「帰るって……ブチャラティがそっちに行ったろ? 2人で話してたんじゃあねぇのかよ? お前だって今朝、ブチャラティに話があるって……そう言ってただろ?」
「……もう終わったの……話す事はもう何もない……」
うつむくキアラを横目に、ミスタは一息吐くと、それ以上は何も聞かずに話を切り替える。
「分かった……帰るって言うならよォ、送るぜ?」
「いいよ、1人で帰れるから──」
「おいおい、外はもう暗くなってるっつーの……女の1人歩きは物騒だ……
言い終わるとウインクを1つしてみせる……
ミスタのいつもの軽口に、キアラもフッと笑みを浮かべる。
「……そうね。じゃあ、お言葉に甘えてそうさせてもらうわ」
そしてキアラはミスタと共にアジトを後にした。
***
道中、キアラはややうつむき加減にゆっくり歩く。
それを横目に、ミスタは柄にもなく
それに……キアラとブチャラティが一体何を話していたのか……俺の勘が当たっているとすれば、それは多分──
ミスタがそう思った時、隣を歩いていたキアラがポツリと呟く。
「……ありがとう」
「お、おぉ……」
「ミスタって、いい男よね……」
「あ、今更かよ!? 今まで散々アピールしてたっつーのによォ、早く気付けよなァ」
『全くよォ』と、再び軽口を叩くその男の傍で、『ゴメン、ゴメン──』と言いながら、ようやくキアラが笑みを見せる──そしてそのまま話を続けた。
「何があったか、聞かないの?」
「何だ、その口振りはよォ……聞いて欲しいのか? まぁ、お前が言いたきゃ聞くし、言いたくないなら聞かねぇ……ただそれだけだ」
「そう……」
キアラはそのまま口を
やっぱり話せない事なのか……と、ミスタもそれ以上詮索する事はなく、ただ黙って隣を歩いた。
程なくしてキアラが足を止める。
「もうここで──」
「そうか、家まで送るぜ?」
「ううん、すぐそこだから大丈夫」
その言葉が、“これ以上は来なくていい”と言う警告のように、ミスタには聞こえた。
「そうかよォ、じゃあ……また明日」
ミスタが軽く手を振り去って行く。
その後ろ姿を見つめながら、キアラはため息を漏らす。
『また明日……』
その言葉がキアラの胸に突き刺さる。
不意に見上げた夜空には、以前ブチャラティと一緒に眺めた星が、1つ……また1つと瞬いている。
彼もまたあの場所で、この星を見上げている……かもしれない……
いや、それは自分勝手な理想像──
前に向き直ったキアラは、自宅ではなくまた別の方向へと歩き出した。その時だ──
「キアラ──」
不意に、自分の名を呼ぶ人物が目の前に現れる──その姿に目を見張る。
「プロシュートッ──!? 何で……?」
「お前を迎えに来た……やっぱり勘が当たったぜ……」
プロシュートがニヒルな笑みを浮かべながら、キアラの元へと歩み寄る──
ふと見上げるも、月明かりが逆光となりその表情が陰る──しかし、深いラファエル色の瞳には、キアラの姿がはっきりと映し出されている。
「リゾットから聞いた……お前がまた俺らのチームに来る事を──お前の事だ……きっと前日からアジトに来るだろう……そう思ったら居ても経ってもいられなかった──」
その瞳が憂いを帯びて見えた次の瞬間──キアラはプロシュートに抱き寄せられていた。
「──ッ!」
「ずっと、こうしたかった……」
「……」
「キアラ……」
耳元で自分の名を囁く──プロシュートの甘い声色は、今もあの頃と変わらない……
そして、優しく抱きしめられる──
甘く漂うバニラの中に、程良くスパイスが効いている──そんな香水の香りが鼻をかすめる……それらが更にかつての記憶を呼び覚ます──
しかし、キアラは自らの両手をプロシュートの背中に回しはしなかった。
←To Be Continued…|/