第9章 バタフライ
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そして食事を終えた2人は、ただ街をブラブラと歩いた。
自分と並んで歩くブチャラティを横目に見つつ、キアラが問いかける。
「あ、あのさ、さっきのことなんだけど──」
「ん?」
「あっ、いや、なんでもない……」
確認する前に、キアラが口をつぐむ。
やっぱり冗談だったのだろう……キアラはホッとした反面……少し残念な気持ちにもなる。
「そろそろ戻るか?」
ブチャラティがそう問いかけた時、キアラが急に足を止める。
「どうした?」
「もう少し……もう少しだけ、このまま一緒に居てもいいかな……?」
キアラが絞り出すような声で問いかける。
ブチャラティは、一瞬言葉を詰まらせる──その声があまりにも切なく聞こえたからだ。
「あ、あぁ、それは構わないが──」
「……ありがと! だって今日、いい天気だしさ〜もう少しだけ散歩したいかなって!」
「そうだな……」
さっきとは打って変わり、キアラがやけに明るい声色で答える。それに違和感を覚えたブチャラティが、衝動的にキアラの手を取る。
「──ッ!」
「今日は一応デートなんだ……だから、これくらいしても構わないだろ?」
「…うん」
そう言って、キアラがブチャラティの手を握り返す──
そのまま2人はゆっくり運河沿いを歩く。
その一方で──
キアラとブチャラティの行先にはペッシの姿があった……だが、どうも様子がおかしい……
「あ、あれっ? ない……アジトの鍵がねーッ!? どこだ、どこにいったんだよ!?」
上着やズボンのポケットを何度も確認するが、どうにも見つからない──
ペッシが血相を変えて、周り中を探し回る。
「ど、どうしょう……見つからねぇ……これで2度目だ……ヤバイ……あ、兄貴に殺される──ッ!?」
ペッシが絶望して地面に膝をついた時、ポンポンと肩を叩かれる。
「あの〜もしかしてこれ、落としました?」
「えっ…?」
ペッシが振り向くと、そこには自分が落とした。鍵を持ったキアラの姿があった。
「あっ、鍵──ッ! すいやせん! これオイラのです!」
「そっか、良かった」
ペッシが案外礼儀正しいのは、無駄な争いはせず目立たない様にと、常に兄貴から言われているからだ。
鍵を受け取ったペッシがチラリとキアラに目を向ける。
見た目は綺麗だが、笑顔は無邪気で可愛い人だなァと、見惚れる。
「 La ringrazio! 」
「 Di niente 」
そう言って再びニコリと微笑み、ブチャラティの元に向かおうとした時──
「おい、ペッシ! オメーはどこほっつき歩いてんだよ?」
「あ、兄貴! すいやせんッ! ち、ちょっと落とし物しちまいやして……」
「オメーはまたかよ……」
「でも、この人が見つけてくれやして──」
ペッシが指し示す横顔を見て、プロシュートが思わずその名前を呼ぶ。
「お前、キアラ……!?」
「──プ、プロシュートッ!?」
呼び止められて振り向いたキアラもまた、プロシュートの名を口にする。
そんな2人を目の当たりにしたペッシの勘が働く。
「あれ? 兄貴、もしかして──」
そこへ、なかなか戻らないキアラに気を揉んだブチャラティがやって来た。
「どうしたキアラ、何かあったのか?」
「ブ、ブチャラティ……、」
不意にブチャラティが居合わせている男に目を向ける。その目つきは鋭く険しい……
プロシュートもまた横目でブチャラティを垣間見る。
キアラと親しげに話す様子から、その間柄を察したプロシュートが、わざとこの前のことを問いかける。
「その後、体調はどうだ?」
「えっ!? は、はい……大丈夫です」
「そうか……じゃあ、またな──」
そう言い残し、プロシュートはさっと2人の横を通り抜け行ってしまう。
キアラに軽く会釈をして、兄貴ィ〜と、言わんばかりにペッシも行ってしまった。
しばらくして、ブチャラティがキアラに問いかける。
「今のは……? ここらでは見かけない顔だったが……?」
「あ、あ〜、この前ちょっと街に出た時、急に体調が悪くなっちゃってさ、その時助けてもらったの……こんなところで偶然会うなんてさ〜、本当ビックリしちゃった!」
「そうか……」
ブチャラティはキアラの表情を伺う。
さっきの金髪 の男──
この前ミスタが言っていた男に多分間違いないだろう……
キアラの説明も大方嘘じゃあないが…わざとよそよそしく敬語を使っている辺りはどうも引っかかるな……
それにあの男……“またな”と言っていたが……ここで関係を聞くのはちょっと野暮だな…それに──
そう思ったブチャラティは、それ以上何も聞かなかった
一方で──
「兄貴ィ〜」
「……」
「兄貴ってばッ!」
足早に立ち去るプロシュートにペッシが必死で食い下がる。そしてようやくプロシュートが足を止める。
「喧 しいぞ、ペッシ! なんだ?」
「もしかして、さっきの人がキアラさん…ですかィ?」
「……あぁ、そうだ」
「 Bellissima でしたねィ、それに Molto carina でもありやすね〜」
「あ? 結局どっちだなんだよ?」
「両方ですぜ! それと……もしかして一緒にいたのが、最近幹部になったブチャラティとか言う野郎で……?」
「だろうな……」
「あの2人……付き合ってるんですかねィ? なんか親しげでしたし……ハッ、す、すいやせん!」
「あ? 別に、俺には関係ねーよ……それより例の調査、面倒くせーが続けるぞ」
「へ、へィ!」
ペッシはそれ以上何も聞けなかった。
その頃──
キアラは黙ったままのブチャラティに静かに問いかける。
「ねぇ、ブチャラティ……」
「何だ?」
「他には何も聞かないのね…?」
「ん、何をだ?」
「さっきの事とかとか……まぁ、別に興味なんてあるわけないか……ごめん、私何言ってんだろ……」
キアラが目線を下に落とす。
「いや、そうじゃあない! さっきは、お前の口から他の男の話を聞きたくなかっただけだ」
「えっ……」
「俺はもっとキアラの事を知りたい……そう思っている……だから、俺にもっと見せてくれ! 他の奴が知り得ないお前を俺だけに──」
少し強い口調で言い放ったブチャラティがキアラを見据える。
そのシアンの瞳はキアラを捉 えて離さない。
キアラもまた、そんなブチャラティを見つめ返す。だが、急に我に返ったブチャラティが慌てて視線を外す。
「あ、いや、何を言っているんだ俺は……忘れてくれ」
「そ、そうだよ、ビックリしたじゃん! それに……そんな事、簡単に言わないでよ…勘違いしちゃうじゃん…でも──」
そう言って、キアラがブチャラティの頰にキスを落とす。
「──ッ!」
「今日くらいは勘違いしてもいいかな……?」
ポツリ呟くキアラは、どこか寂しげな表情を浮かべる。そんな様子を見かねたブチャラティがたまらず手を伸ばす──が、キアラがピクリと一歩後ろに下がる。
「ご、ごめん! 何してんだろ、私……やっぱりもう行くね! この後の予定の準備、忘れてたし……」
「あ、あぁ」
「それじゃあ……」
そう言い残し、キアラは足早に立ち去る。
その後ろ姿を、ブチャラティはただ送るしかできなかった。
自分と並んで歩くブチャラティを横目に見つつ、キアラが問いかける。
「あ、あのさ、さっきのことなんだけど──」
「ん?」
「あっ、いや、なんでもない……」
確認する前に、キアラが口をつぐむ。
やっぱり冗談だったのだろう……キアラはホッとした反面……少し残念な気持ちにもなる。
「そろそろ戻るか?」
ブチャラティがそう問いかけた時、キアラが急に足を止める。
「どうした?」
「もう少し……もう少しだけ、このまま一緒に居てもいいかな……?」
キアラが絞り出すような声で問いかける。
ブチャラティは、一瞬言葉を詰まらせる──その声があまりにも切なく聞こえたからだ。
「あ、あぁ、それは構わないが──」
「……ありがと! だって今日、いい天気だしさ〜もう少しだけ散歩したいかなって!」
「そうだな……」
さっきとは打って変わり、キアラがやけに明るい声色で答える。それに違和感を覚えたブチャラティが、衝動的にキアラの手を取る。
「──ッ!」
「今日は一応デートなんだ……だから、これくらいしても構わないだろ?」
「…うん」
そう言って、キアラがブチャラティの手を握り返す──
そのまま2人はゆっくり運河沿いを歩く。
その一方で──
キアラとブチャラティの行先にはペッシの姿があった……だが、どうも様子がおかしい……
「あ、あれっ? ない……アジトの鍵がねーッ!? どこだ、どこにいったんだよ!?」
上着やズボンのポケットを何度も確認するが、どうにも見つからない──
ペッシが血相を変えて、周り中を探し回る。
「ど、どうしょう……見つからねぇ……これで2度目だ……ヤバイ……あ、兄貴に殺される──ッ!?」
ペッシが絶望して地面に膝をついた時、ポンポンと肩を叩かれる。
「あの〜もしかしてこれ、落としました?」
「えっ…?」
ペッシが振り向くと、そこには自分が落とした。鍵を持ったキアラの姿があった。
「あっ、鍵──ッ! すいやせん! これオイラのです!」
「そっか、良かった」
ペッシが案外礼儀正しいのは、無駄な争いはせず目立たない様にと、常に兄貴から言われているからだ。
鍵を受け取ったペッシがチラリとキアラに目を向ける。
見た目は綺麗だが、笑顔は無邪気で可愛い人だなァと、見惚れる。
「
「
そう言って再びニコリと微笑み、ブチャラティの元に向かおうとした時──
「おい、ペッシ! オメーはどこほっつき歩いてんだよ?」
「あ、兄貴! すいやせんッ! ち、ちょっと落とし物しちまいやして……」
「オメーはまたかよ……」
「でも、この人が見つけてくれやして──」
ペッシが指し示す横顔を見て、プロシュートが思わずその名前を呼ぶ。
「お前、キアラ……!?」
「──プ、プロシュートッ!?」
呼び止められて振り向いたキアラもまた、プロシュートの名を口にする。
そんな2人を目の当たりにしたペッシの勘が働く。
「あれ? 兄貴、もしかして──」
そこへ、なかなか戻らないキアラに気を揉んだブチャラティがやって来た。
「どうしたキアラ、何かあったのか?」
「ブ、ブチャラティ……、」
不意にブチャラティが居合わせている男に目を向ける。その目つきは鋭く険しい……
プロシュートもまた横目でブチャラティを垣間見る。
キアラと親しげに話す様子から、その間柄を察したプロシュートが、わざとこの前のことを問いかける。
「その後、体調はどうだ?」
「えっ!? は、はい……大丈夫です」
「そうか……じゃあ、またな──」
そう言い残し、プロシュートはさっと2人の横を通り抜け行ってしまう。
キアラに軽く会釈をして、兄貴ィ〜と、言わんばかりにペッシも行ってしまった。
しばらくして、ブチャラティがキアラに問いかける。
「今のは……? ここらでは見かけない顔だったが……?」
「あ、あ〜、この前ちょっと街に出た時、急に体調が悪くなっちゃってさ、その時助けてもらったの……こんなところで偶然会うなんてさ〜、本当ビックリしちゃった!」
「そうか……」
ブチャラティはキアラの表情を伺う。
さっきの
この前ミスタが言っていた男に多分間違いないだろう……
キアラの説明も大方嘘じゃあないが…わざとよそよそしく敬語を使っている辺りはどうも引っかかるな……
それにあの男……“またな”と言っていたが……ここで関係を聞くのはちょっと野暮だな…それに──
そう思ったブチャラティは、それ以上何も聞かなかった
一方で──
「兄貴ィ〜」
「……」
「兄貴ってばッ!」
足早に立ち去るプロシュートにペッシが必死で食い下がる。そしてようやくプロシュートが足を止める。
「
「もしかして、さっきの人がキアラさん…ですかィ?」
「……あぁ、そうだ」
「
「あ? 結局どっちだなんだよ?」
「両方ですぜ! それと……もしかして一緒にいたのが、最近幹部になったブチャラティとか言う野郎で……?」
「だろうな……」
「あの2人……付き合ってるんですかねィ? なんか親しげでしたし……ハッ、す、すいやせん!」
「あ? 別に、俺には関係ねーよ……それより例の調査、面倒くせーが続けるぞ」
「へ、へィ!」
ペッシはそれ以上何も聞けなかった。
その頃──
キアラは黙ったままのブチャラティに静かに問いかける。
「ねぇ、ブチャラティ……」
「何だ?」
「他には何も聞かないのね…?」
「ん、何をだ?」
「さっきの事とかとか……まぁ、別に興味なんてあるわけないか……ごめん、私何言ってんだろ……」
キアラが目線を下に落とす。
「いや、そうじゃあない! さっきは、お前の口から他の男の話を聞きたくなかっただけだ」
「えっ……」
「俺はもっとキアラの事を知りたい……そう思っている……だから、俺にもっと見せてくれ! 他の奴が知り得ないお前を俺だけに──」
少し強い口調で言い放ったブチャラティがキアラを見据える。
そのシアンの瞳はキアラを
キアラもまた、そんなブチャラティを見つめ返す。だが、急に我に返ったブチャラティが慌てて視線を外す。
「あ、いや、何を言っているんだ俺は……忘れてくれ」
「そ、そうだよ、ビックリしたじゃん! それに……そんな事、簡単に言わないでよ…勘違いしちゃうじゃん…でも──」
そう言って、キアラがブチャラティの頰にキスを落とす。
「──ッ!」
「今日くらいは勘違いしてもいいかな……?」
ポツリ呟くキアラは、どこか寂しげな表情を浮かべる。そんな様子を見かねたブチャラティがたまらず手を伸ばす──が、キアラがピクリと一歩後ろに下がる。
「ご、ごめん! 何してんだろ、私……やっぱりもう行くね! この後の予定の準備、忘れてたし……」
「あ、あぁ」
「それじゃあ……」
そう言い残し、キアラは足早に立ち去る。
その後ろ姿を、ブチャラティはただ送るしかできなかった。