第9章 バタフライ
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数日後──
「アバッキオ──」
「あ? 何だ、ブチャラティ……?」
不意に呼び止められたアバッキオが振り向く。見るとブチャラティの表情が、どことなく深刻そうな面持 ちに見える。
「……後でちょっといいか?」
「あぁ、別に構わないぜ。あんたの部屋に行きゃあいいか?」
「あぁ、そうしてくれ」
しばらくしてアバッキオがブチャラティを尋ねる。
「どうした? 何かトラブルでもあったのか?」
「いや……アバッキオ、お前……お返しは何にするんだ?」
ブチャラティからの突拍子 もない質問に、アバッキオが思わず眉間にシワを寄せる。
「……は? 何の話だ?」
「何って……ホワイトデーのお返しだ!」
「真面目な話かと思えば……」
ため息をつきつつ、アバッキオは呆れた表情を浮かべる……だが、一方のブチャラティは真顔で話を続ける。
「俺は至って真面目に聞いてるのだが……?」
「大体誰に返すんだ? ……あ〜、キアラか……」
「あ、あぁ……10倍返しと言われたからな」
またキアラの事か……と、アバッキオは思う。
そう、それは数日前の出来事だ──
この日ブチャラティは、朝から出かけていてアジトには不在。
しばらくして、ミスタと入れ違いに戻って来たブチャラティが、すぐ様近くにいたフーゴに問いかける。
「おい、ミスタは?」
「ミスタ……? あ〜彼ならさっき出かけて行きましたよ。確か近くのカフェでランチをするとかどうとか言ってましたけど……?」
「そうか……行ったか……」
そう呟いたブチャラティの表情は、何処となく浮かない──それにトントンと、指で何度も机を叩きながらソワソワとしている様にも見える。
それに気付いたアバッキオが話しかける。
「どうした、ブチャラティ? 何か落ち着きねーみたいだが……あんたらしくないな」
「そうか? 別にそんな事はないが……」
無自覚か? 全く……自分の事となると全く分かっちゃあいないな……と、この時ばかりはアバッキオも呆れ気味にそう思った。
「ミスタは確か……キアラをランチに誘っていたな……もしかして、キアラの事が気になるのか?」
「──ッ!」
ブチャラティの目が泳ぐ。
普段は絶対にしない反応に、図星なのは明らかだった。
「ブチャラティよォ……そんなに気になるなら、自分で誘えばよかったんじゃあねーか? 誰かに頼むとかよォ、そんな周りくどいやり方しなくても──」
「いや……そうしたいのは山々だったんだが──」
ブチャラティがうつむき加減に口ごもる。
その表情はどことなく憂いを帯びて見える。
「どうかしたのか……?」
「最近、どうも避けられているようでな……話しかけてもまともに顔さえ見てくれない……何か気に触る事をしたのかもしれないが、考えても心当たりがなくてな……全く分からん……」
「ふ〜ん……そーゆー事かよ」
アバッキオは何かを確信したかのように、1人頷 く。
「ブチャラティ、あんたようやく──」
「ん、何だ?」
「いや、何でもねーよ」
面白い事になってきたな……
アバッキオの率直な感想だった。
この日以来、ブチャラティがキアラを気にしているのは手に取るように分かった。
そして話は冒頭へ──
***
「貰ったって言ってもよォ、所詮義理チョコだろ?」
「あ、あぁ……だが、貰ったからには、返すのが礼義ってもんだろ?」
その言葉を聞いたアバッキオは、じゃあ、キアラ以外にも山の様に貰ってたチョコの返しはどーすんだ……? と、言う言葉が喉まで出かかったが……ぐっと飲み込んだ。
「まぁ、あんまり高いものを返したら、逆に気を遣わせちまうだろうからよォ、俺はコスメにでもしようかと思ってんだが──」
「そうか……」
「 まぁ、別に物じゃあなくても、飯に誘うとかよォ、色々あんだろ?」
「食事か……それはいいかもしれないな」
少し明るい表情になったブチャラティに対し、釘を刺すようにアバッキオが話す。
「だがよォ、ブチャラティ……キアラは俺達以外の少なからず他の奴ら4人にもチョコを渡して同じ事を言ってるはずだぜ? 同じ様な考えの奴が他にいてもおかしくねぇよなァ……?」
アバッキオが含みを持たせるようなニュアンスで問いかける。
「ん、つまりどーゆー事だ?」
「3月14日のキアラの予定が空いてるかどうか……」
「──!?」
「ウカウカしてると他の奴に取られちまうかもしれねーなァ」
「あ、後で予定を聞いてみる」
「その方が賢明だな」
アバッキオに背中を押され、勢いでキアラをデートに誘うべく、ブチャラティが行動を起こす。
そして、しばらくしてアジトへやって来たキアラを即座に呼び止める。
「キアラ──」
「な、何、ブチャラティ……?」
「お前、14日の予定はどうなってる?」
「えっ、14日……?」
いきなりの問いかけに、キアラは少し戸惑いながらも、ここは冷静に予定の確認を行う。
「午前はちょっと予定があるけど、その後夕方までは空いてるかな……? 何かあった? 任務とか──」
「いや、そうじゃあないんだが──」
「じゃあ、何……?」
キアラは、ブチャラティの言葉に首を傾げる一方、内心では予定を聞かれるなんてまさかデートの誘い!? ……なんて淡い期待も待ってしまう。
「じゃあ、一緒にランチでもどうだ?」
「えぇッ!?」
キアラの声が上ずる。
幻聴? いや、確かに今、ブチャラティに食事に誘われたからだ。
「ど、どうしたの、急にッ!?」
「チョコレートのお返しだ」
「 あっ、あ〜、お返し……ね……あれなら別にお返しとかいらないから! 私、何か余計な事言ったかもしれないけど……別に気を遣わなくていいから!」
キアラはわざと明るく返事を返す。
「いや、そーゆーわけにはいかないな。時間がとれそうなら、ランチぐらい奢らせてくれ……」
そう言って願いを乞 うブチャラティの表情は、どこか寂し気に見えた。
何故こんな表情を浮かべているのか……キアラには理解し難かった。
「……分かった! じゃあ、お言葉に甘えて……14日──」
「あぁ、約束だ」
優しくそう言うブチャラティを見ながら、キアラは鼓動が早くなるのを感じる──
そして、ブチャラティとデートできる事に、心弾ませている自分がいる事に気付かされる。
「アバッキオ──」
「あ? 何だ、ブチャラティ……?」
不意に呼び止められたアバッキオが振り向く。見るとブチャラティの表情が、どことなく深刻そうな
「……後でちょっといいか?」
「あぁ、別に構わないぜ。あんたの部屋に行きゃあいいか?」
「あぁ、そうしてくれ」
しばらくしてアバッキオがブチャラティを尋ねる。
「どうした? 何かトラブルでもあったのか?」
「いや……アバッキオ、お前……お返しは何にするんだ?」
ブチャラティからの
「……は? 何の話だ?」
「何って……ホワイトデーのお返しだ!」
「真面目な話かと思えば……」
ため息をつきつつ、アバッキオは呆れた表情を浮かべる……だが、一方のブチャラティは真顔で話を続ける。
「俺は至って真面目に聞いてるのだが……?」
「大体誰に返すんだ? ……あ〜、キアラか……」
「あ、あぁ……10倍返しと言われたからな」
またキアラの事か……と、アバッキオは思う。
そう、それは数日前の出来事だ──
この日ブチャラティは、朝から出かけていてアジトには不在。
しばらくして、ミスタと入れ違いに戻って来たブチャラティが、すぐ様近くにいたフーゴに問いかける。
「おい、ミスタは?」
「ミスタ……? あ〜彼ならさっき出かけて行きましたよ。確か近くのカフェでランチをするとかどうとか言ってましたけど……?」
「そうか……行ったか……」
そう呟いたブチャラティの表情は、何処となく浮かない──それにトントンと、指で何度も机を叩きながらソワソワとしている様にも見える。
それに気付いたアバッキオが話しかける。
「どうした、ブチャラティ? 何か落ち着きねーみたいだが……あんたらしくないな」
「そうか? 別にそんな事はないが……」
無自覚か? 全く……自分の事となると全く分かっちゃあいないな……と、この時ばかりはアバッキオも呆れ気味にそう思った。
「ミスタは確か……キアラをランチに誘っていたな……もしかして、キアラの事が気になるのか?」
「──ッ!」
ブチャラティの目が泳ぐ。
普段は絶対にしない反応に、図星なのは明らかだった。
「ブチャラティよォ……そんなに気になるなら、自分で誘えばよかったんじゃあねーか? 誰かに頼むとかよォ、そんな周りくどいやり方しなくても──」
「いや……そうしたいのは山々だったんだが──」
ブチャラティがうつむき加減に口ごもる。
その表情はどことなく憂いを帯びて見える。
「どうかしたのか……?」
「最近、どうも避けられているようでな……話しかけてもまともに顔さえ見てくれない……何か気に触る事をしたのかもしれないが、考えても心当たりがなくてな……全く分からん……」
「ふ〜ん……そーゆー事かよ」
アバッキオは何かを確信したかのように、1人
「ブチャラティ、あんたようやく──」
「ん、何だ?」
「いや、何でもねーよ」
面白い事になってきたな……
アバッキオの率直な感想だった。
この日以来、ブチャラティがキアラを気にしているのは手に取るように分かった。
そして話は冒頭へ──
***
「貰ったって言ってもよォ、所詮義理チョコだろ?」
「あ、あぁ……だが、貰ったからには、返すのが礼義ってもんだろ?」
その言葉を聞いたアバッキオは、じゃあ、キアラ以外にも山の様に貰ってたチョコの返しはどーすんだ……? と、言う言葉が喉まで出かかったが……ぐっと飲み込んだ。
「まぁ、あんまり高いものを返したら、逆に気を遣わせちまうだろうからよォ、俺はコスメにでもしようかと思ってんだが──」
「そうか……」
「 まぁ、別に物じゃあなくても、飯に誘うとかよォ、色々あんだろ?」
「食事か……それはいいかもしれないな」
少し明るい表情になったブチャラティに対し、釘を刺すようにアバッキオが話す。
「だがよォ、ブチャラティ……キアラは俺達以外の少なからず他の奴ら4人にもチョコを渡して同じ事を言ってるはずだぜ? 同じ様な考えの奴が他にいてもおかしくねぇよなァ……?」
アバッキオが含みを持たせるようなニュアンスで問いかける。
「ん、つまりどーゆー事だ?」
「3月14日のキアラの予定が空いてるかどうか……」
「──!?」
「ウカウカしてると他の奴に取られちまうかもしれねーなァ」
「あ、後で予定を聞いてみる」
「その方が賢明だな」
アバッキオに背中を押され、勢いでキアラをデートに誘うべく、ブチャラティが行動を起こす。
そして、しばらくしてアジトへやって来たキアラを即座に呼び止める。
「キアラ──」
「な、何、ブチャラティ……?」
「お前、14日の予定はどうなってる?」
「えっ、14日……?」
いきなりの問いかけに、キアラは少し戸惑いながらも、ここは冷静に予定の確認を行う。
「午前はちょっと予定があるけど、その後夕方までは空いてるかな……? 何かあった? 任務とか──」
「いや、そうじゃあないんだが──」
「じゃあ、何……?」
キアラは、ブチャラティの言葉に首を傾げる一方、内心では予定を聞かれるなんてまさかデートの誘い!? ……なんて淡い期待も待ってしまう。
「じゃあ、一緒にランチでもどうだ?」
「えぇッ!?」
キアラの声が上ずる。
幻聴? いや、確かに今、ブチャラティに食事に誘われたからだ。
「ど、どうしたの、急にッ!?」
「チョコレートのお返しだ」
「 あっ、あ〜、お返し……ね……あれなら別にお返しとかいらないから! 私、何か余計な事言ったかもしれないけど……別に気を遣わなくていいから!」
キアラはわざと明るく返事を返す。
「いや、そーゆーわけにはいかないな。時間がとれそうなら、ランチぐらい奢らせてくれ……」
そう言って願いを
何故こんな表情を浮かべているのか……キアラには理解し難かった。
「……分かった! じゃあ、お言葉に甘えて……14日──」
「あぁ、約束だ」
優しくそう言うブチャラティを見ながら、キアラは鼓動が早くなるのを感じる──
そして、ブチャラティとデートできる事に、心弾ませている自分がいる事に気付かされる。