一方キアラは──
　翌日──
　不意に目が覚める……窓の外は薄暗く、まだ夜明け前なのだと分かる。
　キアラは気怠（けだる）い体を起こしてキッチンに向かうと、冷蔵庫から水を取り出して一口飲んだ。
　そして、ハァ……と、息をつく。
　今日はちゃんと平然を保っていられるか──
　プロシュートに再開したあの日──キアラにはこんな事が起こっていたのだ。
　それは、時を同じくしてカフェでの出来事──

＊＊＊

　プロシュートが去った後、キアラはさっき自分の身に起こった事を再び思い起こしていた。
　あの時──私には確かに聞こえた……それはプロシュートの声より先に、勝手に頭に流れこんできた言葉。

『キアラ……お前をようやく見つけた……そしてその時はもう直ぐだ……』

　私はこの言葉に振り返った。
だから、そこにプロシュートがいたのは全くの　偶然……あの時プロシュートがいなかったら、私は──
　そう思いつつキアラがアジトに戻ろうと席を立った時、スマホが鳴った。
　どうやら伝言（メッセージ）が入ったようだ……それは幹部が持っている組織専用の連絡ツールだ。
　差出人を見たキアラに緊張が走る。
　それはボスからの伝言──
　実際には、誰が送ってきているのか詳細不明……だが……こうして指令が送られてくる。
　人差し指を押し当て伝言を読む……読み終わるとその伝言は自動的に消去される。
　スマホをしまい、キアラが窓の外に目を向ける。
　何を見るでもなく、ただ街の雑踏に人々が行き交う様を映し出していた。
　そしてキアラはその日、アジトには戻らなかった。

＊＊＊

　翌日──
　いつもよりアジトに早く着いたキアラは、カプチーノを入れてソファーに座る。
しばらくして、メンバーが集まってきた。
　何気ない会話……それはいつも通りの光景だ。



　だが、其々にそんな事があったとは、ここにいる誰しもが知る由もなかった。