その頃──
　実はこの一部始終を目撃していた人物が──それはキアラとプロシュートがカフェにいた時──

(さ〜てと、フーゴとの待ち合わせまではまだ時間もあるしよォ、ちょっとカフェでドルチェでも食ってようかなァ)

　そう思いながら、カフェの前を通りかかったのはミスタだ。

(ん？　あれはキアラ……？　1人か……いや、誰か一緒にいるなァ)

　ガラス張りの店内にキアラを見かけたミスタがおもわず足を止める。

(んんッ！？　誰だッ、あの金髪（ブロンド）の男はよォ──！？）

　ミスタが思わず植木に隠れる。
　そして、 木陰（こかげ）から中の様子を垣間見る。

(2人きりで会ってるって事はよォ、何だ……つまりそーゆー関係か！？　つーか、なんか深刻そうな感じにも見えるが……いかんせん、こっちからじゃよく見えねぇなァ……)

　その時──

「ミスタ……そんな所で何やってるんです……？」
「フ、フーゴ──！？」

　そこには 怪訝（けげん）そうにミスタを見つめるフーゴの姿があった。
　それに対し、ミスタが慌ててフーゴの前に立ちふさがる。

「何を見てたんです？　ん……？」

　フーゴが店内に目を向ける。 咄嗟（とっさ）に“ヤバイ”と感じたミスタが、慌てて機転を利かせる。

「あっ、あ〜、フーゴ！　あっちによォ、旨いドルチェの店があるみてぇなんだけどよォ〜」

　そう言って、カフェとは反対方向を指差しながら、ミスタがフーゴの視線をそっちに向かせる。

「えっ、僕は別に食べたくないんだけど……」
「いいじゃあねぇかよォ、たまに付き合えよ〜なっ？」
「ミスタ、全く貴方って人は……僕らはこれから任務でしょ？　何を 呑気（のんき）に……」
「そう言わずによォ、さーさー行こう行こう〜」
「おい、ミスタ！　ちょっ、押すなって！」

　

　ミスタはフーゴの背中を押しつつ、少し強引ではあるが、その場を離れる事に成功した。
そして、とりあえずこの事は自分の胸に留めておこう──そう思いながらその場を後にした。