一方で、とある人物も近くに来ていた──

「さて、アジトに戻るか……」
「兄貴ィ〜ちょっと腹減ったんで、あそこでジェラード買って帰りません？」

　ペッシがジェラテリアを指差す。

「ジェラードって……お前は本当にマンモーニだなァ……俺はいらねぇがお前が食べたいなら勝手にしろ……」
「ありがとうございます、兄貴ッ！」

　やった──ッ！と言わんばかりに、ペッシが買いに走るその様子を目を細めながら、プロシュートが見送る。
　その人混みの中、一瞬だが見覚えのある人影が目に飛び込んできた。

(今のは──ッ！？)

「兄貴、お待たせしてすみませんッ！　お詫びに兄貴の分も買ってき──」
「ペッシ、お前先に戻ってろッ！」
「えっ、ちょっ、兄貴ィ！？　どこ行くんだよ！？　プロシュート兄貴ィ──ッ！」

　ペッシを置き去りにして、プロシュートはその人影を追った。

(まさか、あいつは──)

　跡を追うも人混みに紛れてしまったのか、見失ってしまった。

(見間違えか……？　いや、確かにあいつだった……見間違うわけがねェ……)

「兄貴ィ〜」

　しばらくしてペッシが追いてきた。

「ハァ……ハァ…… ──や、やっと追いついた…いきなり走って行っちゃうなんて……何かあったんですかィ？」
「いや……」

　そう言いつつ、プロシュートは煩雑する街中を見つめた。そしてアジトに戻るとすぐに、リゾットを尋ねる。

「リゾット、ちょっといいか？」
「何だ……？」
「お前……最近あいつを……キアラを見なかったか？」

　プロシュートの口から出た“キアラ”と言うフレーズに、一瞬リゾットが反応を見せる。

「何だ、お前も会ったのか、キアラに──
「お前も……だとッ！？　リゾット、お前……確かにあいつと会ったんだなッ──！？」
「あぁ……」
「……ッ」

　プロシュートが急に口を 紡（つむ）ぐ。

「……どうした？」
「俺は会っちゃいねぇ……今日偶然似たような奴を見かけてよォ……じゃあ、そいつは間違いなくキアラだったっつーことか……？」
「気になるよなァ……だって、キアラはかつてお前の──」

　リゾットの話を遮る様にプロシュートが切り出す。

「リゾット……お前、何でキアラの居場所を知ってんだ？」
「ちょっとある所から情報が入ってなァ……真偽のほどを確かめただけだ……キアラは、今ブチャラティのチームにいる……」
「ブチャラティ……？」

　プロシュートが首を傾げる。それは初めて聞く名だった。

「奴はポルポの後釜で、最近幹部になった奴だ」
「……」
「そして、奴のチームは例の任務に選ばれてる……選んだのはおそらくキアラだろう」
「そうか……」

　プロシュートが目線を下に落す。

「何だ、その顔は……？　お前、まだキアラに未練があるのか……？」
「──ッ！」

　プロシュートがギロリとリゾットを睨む。
背後にはプロシュートのスタンド〈ザ・グレイトフル・デッド〉が見え隠れしている。

「おいおい、落ち着けよ……でもまぁ、新しいチームで楽しくやってるみたいだぜ？　いろんな意味でなァ……」
「別にあいつがどうだろうと俺には関係ねーよ」

　リゾットの手前そうは言ったものの、内心は違っていた。

(いや、次に会った時は──)