その日、キアラは１人で街に出掛けていた。



「用事は済んだし……さて、戻るとするかな」

　不意に風が吹き始め、キアラはふと空を見上げる。

「あれ？さっきまでいい天気だったのに、何か暗くなってきたな……雨降りそうだし……早く戻ろ」

　キアラは足早に帰路を急いだ。
　しばらくして、キアラがアジトに戻って来た。

「ただいま〜……あれ、みんなは？」

　部屋に他のメンバーの姿はなく、そこにいたのはブチャラティただ1人。

「今それぞれ出払ってる」
「そう……」

　キアラがソファーに腰掛ける。　

「ブチャラティだけなんて珍しいわね」
「そうだな……最近ちょっと仕事が立て込んでてな、今日で終わらせたいと思ってやっていたところだ」

　ブチャラティはそう言いながら、首を回して背伸びをする。

「ちょっと休憩したらどう？」
「そうだな」
「じゃあ、今コーヒー入れてくるね」
「あぁ、頼む」

　そう言って、キアラがキッチンに向かう。ケトルを火にかけながら、キアラはふと我に返る。

(……ん？　ちょっと待って！　もしかして、今ブチャラティと2人きりッ！？　……この前──クリスマスイブの事もあったから、何か妙に緊張してきた……)

　とりあえず、キアラは冷静を装ってコーヒーを入れる

「コーヒー、そっちに持って行こうか？」
「いや、今行く」
「えっ！？　じ、じゃあ、ここに置くね……」

　キアラがソファーのサイドテーブルにコーヒーを置く。こちらにやって来たブチャラティがソファー腰掛ける。
　肩が触れそうな距離感が余計にキアラの緊張度を上げる。

「アイツらがいないと静かだな……」
「そ、そうだね……そういえば、トリッシュはどこに行ったの？　みんなは任務とかあるのは分かるけど──」
「トリッシュならミスタと出かけて行った……今日の護衛担当はミスタだからな」
「そう……」
「……気になるか？」
「え？」
「いや、何でもない……」

　キアラはふと窓の外に目を向ける。
明らかに雲が広がり、今にも泣き出しそうな空色だ。

「外、だんだん暗くなってきたね……」
「そうだな。今日は夕立が降るみたいだからな」
「そうなんだ〜それでか……」

　その時突風が吹き、窓ガラスがカタカタ鳴り出す。