Gravity
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ヘブンズ・ドアーを使っても、ままならない相手がいる。
彼女は気まぐれに僕の心を魅了する。惚れた弱みだなんて、死んでも口にするわけないが、実際まさしくそういう事だろう。
この岸辺露伴が、たった1人の女性に心を奪われてしまうなんて……本当にあり得ない話だ。だが──
***
先日の事だ。
彼女が僕の家に来ていた時に不意に問いかけられる。
「先生って、いつも玄関の鍵──かけていないんですか?」
「かかっていなかったか? そう言えば、そんな質問を前にもされた事があったな……あぁ、泉くんだ」
「それって……あの美人な担当編集者の事ですか?」
彼女の言い草に若干の刺々しさが感じ取れた。これはまさか──
「僕の担当は泉くんだが……彼女──美人か? 綺麗どころと言うよりは、愛嬌のあるマスコットキャラ的な感じだと思うが──」
僕の発言を聞いて、彼女が一瞬眉を潜める。女性の容姿を偉そうに評価してしまったのは、良くなかったのかもしれないと、後になって思った。
「先生って、その人の事は名前で呼ぶんですね……」
「それが、どうかしたか?」
「別に……」
「別にと言う割には、明らかに機嫌が悪そうじゃあないか?」
「そんな事ありません!」
強気な彼女は、僕を睨みつけながら言い放つ。僕はそんな彼女に対し、更に畳み掛けるように話を続けた。
「いいや、明らかに機嫌が悪いな……なんだ、もしかしてやきもちを焼いているんじゃあないのか?」
「そんなわけ──」
言いかけた言葉を遮るように彼女に口付ける。こんな些細な事でヤキモチを焼く彼女が、あまりに愛しく思えた。無論、素直じゃない彼女は、軽く僕を突き放す。
「ちょっと! いきなり何するんですか!?」
「何って……自分の彼女にキスをした……それだけの事だが? ヤキモチを焼くなんて、案外可愛い所もあるじゃあないか」
「案外とか、一言余計です」
ふいっと顔を背ける彼女に、無造作に取り出したのは玄関の合鍵だ。
「そう言えば、さっき玄関の鍵の話をしたそのついでだ……戸締りが気になるなら、君も持っていればいいだろ?」
「えっ……!?」
「今後は鍵をちゃんとかけておく……泉くんは僕がいない時には入れないが、君はいつでも中に入れる……いつでも来ていい」
思いがけない贈り物だったようで、彼女が目を丸くしている。今ならその流れで言えそうな気がした。だから──
「それと……僕は今から、らしくない事を言うぞ? 今日からずっとここに──僕の側にいろ……」
「先生それって──」
「そ、それはつまり……」
思わぬ返しに言葉に詰まる。だが、今日くらい素直になれと自分に言い聞かせる。
「好きなんだよ、君のことが──堪らなく好きだ。だから、さっきの続きをちゃんとさせてくれ──もう一度キス……させてくれないか?」
言い終わると同時に唇を重ねた。今度は彼女も抵抗しなかった。もしかして、このまま続けてもいいと言うことか? と、するりと手を這わせようと思ったが、チュッとリップ音をたてて唇を離す。
本気で好きだからこそ、今はまだここまでにしておこうなんて……偉そうな事を思っている割に、うるさいくらい心臓が高鳴る。
一連のらしくない行動にも照れくささが相まって、顔が赤らむのが分かった。
だが、カッコ悪くとも、これが今の僕の精一杯だ。
彼女は気まぐれに僕の心を魅了する。惚れた弱みだなんて、死んでも口にするわけないが、実際まさしくそういう事だろう。
この岸辺露伴が、たった1人の女性に心を奪われてしまうなんて……本当にあり得ない話だ。だが──
***
先日の事だ。
彼女が僕の家に来ていた時に不意に問いかけられる。
「先生って、いつも玄関の鍵──かけていないんですか?」
「かかっていなかったか? そう言えば、そんな質問を前にもされた事があったな……あぁ、泉くんだ」
「それって……あの美人な担当編集者の事ですか?」
彼女の言い草に若干の刺々しさが感じ取れた。これはまさか──
「僕の担当は泉くんだが……彼女──美人か? 綺麗どころと言うよりは、愛嬌のあるマスコットキャラ的な感じだと思うが──」
僕の発言を聞いて、彼女が一瞬眉を潜める。女性の容姿を偉そうに評価してしまったのは、良くなかったのかもしれないと、後になって思った。
「先生って、その人の事は名前で呼ぶんですね……」
「それが、どうかしたか?」
「別に……」
「別にと言う割には、明らかに機嫌が悪そうじゃあないか?」
「そんな事ありません!」
強気な彼女は、僕を睨みつけながら言い放つ。僕はそんな彼女に対し、更に畳み掛けるように話を続けた。
「いいや、明らかに機嫌が悪いな……なんだ、もしかしてやきもちを焼いているんじゃあないのか?」
「そんなわけ──」
言いかけた言葉を遮るように彼女に口付ける。こんな些細な事でヤキモチを焼く彼女が、あまりに愛しく思えた。無論、素直じゃない彼女は、軽く僕を突き放す。
「ちょっと! いきなり何するんですか!?」
「何って……自分の彼女にキスをした……それだけの事だが? ヤキモチを焼くなんて、案外可愛い所もあるじゃあないか」
「案外とか、一言余計です」
ふいっと顔を背ける彼女に、無造作に取り出したのは玄関の合鍵だ。
「そう言えば、さっき玄関の鍵の話をしたそのついでだ……戸締りが気になるなら、君も持っていればいいだろ?」
「えっ……!?」
「今後は鍵をちゃんとかけておく……泉くんは僕がいない時には入れないが、君はいつでも中に入れる……いつでも来ていい」
思いがけない贈り物だったようで、彼女が目を丸くしている。今ならその流れで言えそうな気がした。だから──
「それと……僕は今から、らしくない事を言うぞ? 今日からずっとここに──僕の側にいろ……」
「先生それって──」
「そ、それはつまり……」
思わぬ返しに言葉に詰まる。だが、今日くらい素直になれと自分に言い聞かせる。
「好きなんだよ、君のことが──堪らなく好きだ。だから、さっきの続きをちゃんとさせてくれ──もう一度キス……させてくれないか?」
言い終わると同時に唇を重ねた。今度は彼女も抵抗しなかった。もしかして、このまま続けてもいいと言うことか? と、するりと手を這わせようと思ったが、チュッとリップ音をたてて唇を離す。
本気で好きだからこそ、今はまだここまでにしておこうなんて……偉そうな事を思っている割に、うるさいくらい心臓が高鳴る。
一連のらしくない行動にも照れくささが相まって、顔が赤らむのが分かった。
だが、カッコ悪くとも、これが今の僕の精一杯だ。
the END