チョコレート
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2月のある日──
「露伴先生、知ってます? イタリアじゃあ、バレンタインデーには男性から女性にプレゼントを送るのが主流なんですって! 定番はバラの花束! あ〜、私も素敵な男性から花束とか貰ってみたなぁ〜……って、先生聞いてます?」
場所はぼくの家。呼びもしないのにやって来ては、打ち合わせと称してくだらない世間話をしに来ているのは、担当編集者の泉くん。この日は、2月のくだらないイベント──バレンタインデーについての話だった。
「ふん、それくらの事……この岸辺露伴が知らないとでも思ってるのか?」
「あ〜、ご存知だったんですね! じゃあ先生は、バレンタインデーにプレゼントを贈りたいって思う相手とか……いたりするんですか?」
問いかけられたぼくの頭にある人物が思い浮かぶ。それがいわゆる“好きになっている”と言う事なのだろうか──
黙ったままの僕を横目に、泉くんが話を続ける。
「えっ、まさか先生……いるんですか、好きな人!? だとしたら、大スクープですね! 早速詳しく聞かせて──」
興奮気味の泉くんを有無を言わさず玄関へといざなう。
「えっ、ちょっと先生……!」
「全く君は、毎回何をしに来てるんだ? 僕は君と世間話なんてしてる暇はない。帰れ!」
泉くんをとっとと追い出して、ふと思う。
そう言えば、これも以前泉くんが言っていた事だったか──普段と違う一面が見れたりすると、そのギャップにころっと恋に落ちてしまう事もあるとか──
それは確かあの山岸由花子も似たような事を言っていたな……まぁ、信憑性は低そうだが──
ふと、カレンダーに目を向ける。
2月14日──プレゼントか……たまにはいいかもしれないな。そう思い立ったぼくは、スマートフォンを手に取った。
***
そして、2月14日──
場所は大手出版社“集明社”の編集部。
「これ……どうしよう……」
頭を抱えながらうな垂れているのは泉だ。机の上には山積みのチョコレート。全て岸辺露伴宛のファンから送られてきた、バレンタインデーのプレゼントだ。
「露伴先生って、毎年こんなにチョコ貰ってたんですね……しかも今年は全部受け取らないって、そんな事わざわざわざ連絡してくるなんて、全く……どうしろっていうんですかこれ……? あ……! もしかして先生──」
そう呟いた後、泉はふふっと不敵な笑みを浮かべた。
その頃──
場所はカフェ・ドゥ・マゴ。
ぼくはとある人物を呼び出していた。相手は既にテラス席に座っていた。
「先生〜、いきなりどうしたんですか、こんな日に……? あ! もしかしてバレンタインデーのリアルを取材したいとか? でも、私の話なんて聞いても何の参考にもなりませんよ?」
「別に取材とかじゃあ無い……とりあえず、何か好きな物でも頼んだらどうだ?」
「えっ、いいですか!? じゃあ、バレンタインデーなんでチョコレートパフェ、お願いします!」
彼女のチョコレートパフェと自分のコーヒーを注文した後、再び彼女が質問を投げかけてきた。
「じゃあ今日は一体……何の用ですか?」
首を傾げる彼女の目の前に、12本のバラの花束を差し出した。いきなりの事だ。彼女は当然目を丸くしている。そして、ゆっくりと今度は視線をぼくの方に移す。
「えっ……これ、どうしたんですか?」
「ふん、気まぐれだ……」
そう言って、ぼくは彼女から視線を外す。どうせこの“意味”なんて知らないだろうとたかを括っていた。しかし、彼女がぽつりと呟く。
「──知ってます」
「え?」
「……私、知ってますよ。海外だとバレンタインデーには、男性から女性にプレゼントを贈るのが主流の国もあるって。プレゼントの定番は真っ赤なバラ──最近読んだ雑誌に書いてありました。でも、何でバラの花……12本なんですか?」
「そ、それは……自分で調べてみるといい──」
そう吐き捨てると、彼女は早速スマートフォンで調べ始めた。マジか!? と思ったが時既に遅し……意味を知った彼女から容赦のない言葉が飛んでくる。
「先生、これって……私の事が“好きだ”って、そう言う事ですか……? その意味を知った上でこの本数なんですか!?」
「あぁ、知っている……だが、参ったな……こんな公衆の面前で口走るなんて……全く君と言う奴は──」
ぼくは柄にもなく、赤ら顔を隠す様に手で顔を覆った。
このギャップに彼女が落ちたかどうか……それはさておき──
この岸辺露伴にこんな顔をさせるなんて……この女、やっぱり只者じゃあないなと改めて思い知らされる──そんなバレンタインデー。
「露伴先生、知ってます? イタリアじゃあ、バレンタインデーには男性から女性にプレゼントを送るのが主流なんですって! 定番はバラの花束! あ〜、私も素敵な男性から花束とか貰ってみたなぁ〜……って、先生聞いてます?」
場所はぼくの家。呼びもしないのにやって来ては、打ち合わせと称してくだらない世間話をしに来ているのは、担当編集者の泉くん。この日は、2月のくだらないイベント──バレンタインデーについての話だった。
「ふん、それくらの事……この岸辺露伴が知らないとでも思ってるのか?」
「あ〜、ご存知だったんですね! じゃあ先生は、バレンタインデーにプレゼントを贈りたいって思う相手とか……いたりするんですか?」
問いかけられたぼくの頭にある人物が思い浮かぶ。それがいわゆる“好きになっている”と言う事なのだろうか──
黙ったままの僕を横目に、泉くんが話を続ける。
「えっ、まさか先生……いるんですか、好きな人!? だとしたら、大スクープですね! 早速詳しく聞かせて──」
興奮気味の泉くんを有無を言わさず玄関へといざなう。
「えっ、ちょっと先生……!」
「全く君は、毎回何をしに来てるんだ? 僕は君と世間話なんてしてる暇はない。帰れ!」
泉くんをとっとと追い出して、ふと思う。
そう言えば、これも以前泉くんが言っていた事だったか──普段と違う一面が見れたりすると、そのギャップにころっと恋に落ちてしまう事もあるとか──
それは確かあの山岸由花子も似たような事を言っていたな……まぁ、信憑性は低そうだが──
ふと、カレンダーに目を向ける。
2月14日──プレゼントか……たまにはいいかもしれないな。そう思い立ったぼくは、スマートフォンを手に取った。
***
そして、2月14日──
場所は大手出版社“集明社”の編集部。
「これ……どうしよう……」
頭を抱えながらうな垂れているのは泉だ。机の上には山積みのチョコレート。全て岸辺露伴宛のファンから送られてきた、バレンタインデーのプレゼントだ。
「露伴先生って、毎年こんなにチョコ貰ってたんですね……しかも今年は全部受け取らないって、そんな事わざわざわざ連絡してくるなんて、全く……どうしろっていうんですかこれ……? あ……! もしかして先生──」
そう呟いた後、泉はふふっと不敵な笑みを浮かべた。
その頃──
場所はカフェ・ドゥ・マゴ。
ぼくはとある人物を呼び出していた。相手は既にテラス席に座っていた。
「先生〜、いきなりどうしたんですか、こんな日に……? あ! もしかしてバレンタインデーのリアルを取材したいとか? でも、私の話なんて聞いても何の参考にもなりませんよ?」
「別に取材とかじゃあ無い……とりあえず、何か好きな物でも頼んだらどうだ?」
「えっ、いいですか!? じゃあ、バレンタインデーなんでチョコレートパフェ、お願いします!」
彼女のチョコレートパフェと自分のコーヒーを注文した後、再び彼女が質問を投げかけてきた。
「じゃあ今日は一体……何の用ですか?」
首を傾げる彼女の目の前に、12本のバラの花束を差し出した。いきなりの事だ。彼女は当然目を丸くしている。そして、ゆっくりと今度は視線をぼくの方に移す。
「えっ……これ、どうしたんですか?」
「ふん、気まぐれだ……」
そう言って、ぼくは彼女から視線を外す。どうせこの“意味”なんて知らないだろうとたかを括っていた。しかし、彼女がぽつりと呟く。
「──知ってます」
「え?」
「……私、知ってますよ。海外だとバレンタインデーには、男性から女性にプレゼントを贈るのが主流の国もあるって。プレゼントの定番は真っ赤なバラ──最近読んだ雑誌に書いてありました。でも、何でバラの花……12本なんですか?」
「そ、それは……自分で調べてみるといい──」
そう吐き捨てると、彼女は早速スマートフォンで調べ始めた。マジか!? と思ったが時既に遅し……意味を知った彼女から容赦のない言葉が飛んでくる。
「先生、これって……私の事が“好きだ”って、そう言う事ですか……? その意味を知った上でこの本数なんですか!?」
「あぁ、知っている……だが、参ったな……こんな公衆の面前で口走るなんて……全く君と言う奴は──」
ぼくは柄にもなく、赤ら顔を隠す様に手で顔を覆った。
このギャップに彼女が落ちたかどうか……それはさておき──
この岸辺露伴にこんな顔をさせるなんて……この女、やっぱり只者じゃあないなと改めて思い知らされる──そんなバレンタインデー。
the END