プレアデス
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冷たい風が頬を刺す……そんな冬のある日──
私はかじかむ手に息を吹きかけながら、家路を急いでいた。
夕暮れに差し掛かり、また冷え込んできた。今朝の最低気温も1桁台だった事を思い出す。いつもなら手袋をして出かけるのに、寝坊してしまい、慌てて準備していたからか、それすら忘れてしまったことを少し後悔した。もうすぐ雪が降ってきそうな──そんな予感がしていた。
ふと正面に目を向けると、向こうから見覚えのある人物がやって来るのが見えた。その人物は、岸辺露伴──人気漫画で私とはちょっとした知り合いだ。向こうも私に気付いた様で、こっちに向かってやって来る。先に話しかけたのは私。
「あ、露伴先生──こんにちは」
「あぁ、君か……今日は1人なのか? いつも一緒のスカタン共はどうした?」
「仗助達なら先に帰りましたよ。私は日直だったんで、少し残って日誌書いてたんです」
見ると先生も寒そうに首をすくめている。よくよく顔を見れば、鼻先が少し赤くなっていることに気付く。思いがけず“可愛い”だなんて思ってしまった。
「今日、寒いですね。ところで、先生は何してたんですか?」
「ぼくは編集者と打ち合わせだよ。それが割とスムーズに終わったんでね、面白いネタがないかと少しフラフラとしてたところだ」
「そうですか──」
他愛もない世間話。長居もどうかと思った私は『それじゃあ』と言って、横を通り過ぎようとしたが、思いがけず呼び止められる。
「時間があるなら──そこのカフェにでも行かないか? 何か温かい飲み物でも飲もうと思っているんのだが……?」
「いいですね〜! 先生の奢りですか〜?」
私が笑みを浮かべ冗談まじりに問いかけると、フンッと偉そうに鼻を鳴らしながら『当たり前だ。ぼくから誘ったんだからな』と答える。
私は内心ドキドキしていた。先生と2人きり──これはデートと呼んでもいいんじゃあないかと、少し浮かれそうになるのを噛み殺して平然を装う。実は今日1日、浮かない事が多かったけど、これで全てが帳消しになった。
この事がきっかけで、私達はその後付き合う事になったのだ。
***
そして、月日は巡り──今にも雪が降ってきそうなそんな季節が再びやってきた。
今日は、あの日先生と初めて行ったカフェに来ていた。あれ以来このカフェがいつもの待ち合わせ場所となっていた。
その時の事をふと思い出した私は、先生に問いかける。
「ねぇ、私達が初めてここに来た時の事──覚えてる?」
「──あぁ、覚えている……君は確かココアを頼んだな、それにケーキも……ぼくが奢りだと言った途端にあれこれ頼みやがって……全く図々しい奴だと思ったよ」
「だって、あの時は小腹が空いていたから……ってか、本当、その言い方……何とかならないの?」
私達はいつもこんな感じだ。気取らず常に自然体でいられる関係。
そんな昔話に花が咲き、当時の想いを打ち明けてみた。
「私ね……先生に誘われた時、すごく嬉しくてすごくドキドキしてた。だって、あの時から私……先生の事が好きだったから──ねぇ、何であの時、私を誘ったの? もしかして、先生も私の事……少しは気になってたとか〜?」
そんな冗談混じりの問いかけに、先生は口角の端を吊り上げ、意地悪げな笑みを浮かべる。
そして、案の定憎たらしく惚けた様にこう答えた。
「さあ、どうだったかな」
私はかじかむ手に息を吹きかけながら、家路を急いでいた。
夕暮れに差し掛かり、また冷え込んできた。今朝の最低気温も1桁台だった事を思い出す。いつもなら手袋をして出かけるのに、寝坊してしまい、慌てて準備していたからか、それすら忘れてしまったことを少し後悔した。もうすぐ雪が降ってきそうな──そんな予感がしていた。
ふと正面に目を向けると、向こうから見覚えのある人物がやって来るのが見えた。その人物は、岸辺露伴──人気漫画で私とはちょっとした知り合いだ。向こうも私に気付いた様で、こっちに向かってやって来る。先に話しかけたのは私。
「あ、露伴先生──こんにちは」
「あぁ、君か……今日は1人なのか? いつも一緒のスカタン共はどうした?」
「仗助達なら先に帰りましたよ。私は日直だったんで、少し残って日誌書いてたんです」
見ると先生も寒そうに首をすくめている。よくよく顔を見れば、鼻先が少し赤くなっていることに気付く。思いがけず“可愛い”だなんて思ってしまった。
「今日、寒いですね。ところで、先生は何してたんですか?」
「ぼくは編集者と打ち合わせだよ。それが割とスムーズに終わったんでね、面白いネタがないかと少しフラフラとしてたところだ」
「そうですか──」
他愛もない世間話。長居もどうかと思った私は『それじゃあ』と言って、横を通り過ぎようとしたが、思いがけず呼び止められる。
「時間があるなら──そこのカフェにでも行かないか? 何か温かい飲み物でも飲もうと思っているんのだが……?」
「いいですね〜! 先生の奢りですか〜?」
私が笑みを浮かべ冗談まじりに問いかけると、フンッと偉そうに鼻を鳴らしながら『当たり前だ。ぼくから誘ったんだからな』と答える。
私は内心ドキドキしていた。先生と2人きり──これはデートと呼んでもいいんじゃあないかと、少し浮かれそうになるのを噛み殺して平然を装う。実は今日1日、浮かない事が多かったけど、これで全てが帳消しになった。
この事がきっかけで、私達はその後付き合う事になったのだ。
***
そして、月日は巡り──今にも雪が降ってきそうなそんな季節が再びやってきた。
今日は、あの日先生と初めて行ったカフェに来ていた。あれ以来このカフェがいつもの待ち合わせ場所となっていた。
その時の事をふと思い出した私は、先生に問いかける。
「ねぇ、私達が初めてここに来た時の事──覚えてる?」
「──あぁ、覚えている……君は確かココアを頼んだな、それにケーキも……ぼくが奢りだと言った途端にあれこれ頼みやがって……全く図々しい奴だと思ったよ」
「だって、あの時は小腹が空いていたから……ってか、本当、その言い方……何とかならないの?」
私達はいつもこんな感じだ。気取らず常に自然体でいられる関係。
そんな昔話に花が咲き、当時の想いを打ち明けてみた。
「私ね……先生に誘われた時、すごく嬉しくてすごくドキドキしてた。だって、あの時から私……先生の事が好きだったから──ねぇ、何であの時、私を誘ったの? もしかして、先生も私の事……少しは気になってたとか〜?」
そんな冗談混じりの問いかけに、先生は口角の端を吊り上げ、意地悪げな笑みを浮かべる。
そして、案の定憎たらしく惚けた様にこう答えた。
「さあ、どうだったかな」
the END