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いつものリストランテの片隅──
テーブルに頬杖を突きながら、ナランチャがぼーっと見据える視線の先。そこにいつもにいるのは、とある女の子。
「お前、最近よく見てるよなァ、キアラの事──」
「……えっ、ミスタ、今なんか言ったか?」
ミスタがやって来たことにすら、気付いていなかったのか……ナランチャが惚けたように問い正す。
「だ〜か〜ら〜、最近よく見てるよなァって言ってんだよォ、キアラの事をよォ」
「えっ!? そ、そんな事ないって! 全然見てねーよ!」
「いーや、見てる見てる! なんだ? ナランチャよォ、お前もしかしてアイツの事──」
***
ミスタとの会話に出てきた“キアラ”──
いつからだろうか……休みが合えば買い物に出かけたり、音楽の趣味も似ているからライブに行ったりと……とにかく一緒にいてすごく楽しい──気付けば隣にはいつもキアラがいる。
そんな俺とキアラは、まさに友達のような関係だ。そう、これは友情であって、恋愛感情じゃあないと、俺はつい最近までそう思っていた。でも──
まただ……最近よく、キアラがブチャラティと一緒にいるのが目につく。
嬉しいそうに笑顔で話をしながら、時折顔を赤らめ、照れたような仕草を見せる。
そんなアイツを横目にすると、モヤモヤして苦しくなって、思わず目を背けたくなってしまう。
俺にとってブチャラティは、憧れのヒーローだ。いつだってブチャラティのようになりたいと、そう思っている。だけど……笑顔のキアラがブチャラティの隣にいるのは、なんか嫌だ。
そう思うようになっていたある日──
「ねぇ、ナランチャ! 今日さ、一緒にランチに行かない?」
朝からいきなりキアラに誘われた。願ってもない話。本来なら、すぐさま二つ返事を返すところだが……なぜだろう……俺は本心とは裏腹な言葉を返してしまう。
「行かない……」
「えっ……あ〜、今日なんか予定あった?」
「別に……」
「……ナランチャ、どうかした?」
「俺なんて誘わなくてもよォ、ブチャラティと行けばいいだろ?」
「え……なんで……? なんでブチャラティと行けばいいなんて言うの?」
キアラの声色が急に下がったのが分かった。でも、それには気付かないフリをして話を続ける。
「とにかく、俺、今日は忙しいから──」
「そ、そっか……」
そう呟いたキアラが、一瞬目線を下に落とす。しかしすぐさま口角を上げて表情を明るく保つと、『分かった』と言って、そのままリストランテを静かに出て行った。程なくして、入れ違いに渦中の人物──ブチャラティが戻ってきた。
言葉を交わそうと近付いた俺に、ブチャラティが凄い剣幕で掴みかかってきた。いきなりの事で頭が回らない。気が動転している俺に、ブチャラティが言い放つ。
「おい、ナランチャ! 何でキアラにあんな事を言った!?」
「ち、ちょっと待てよ、ブチャラティ……いきなりなんの話だよォ?」
「ナランチャ、お前……今日、アイツにランチに誘われなかったか?」
掴んだ手を緩めて、ブチャラティが今度は冷静さを保ちながら問いかける。その質問を耳にした俺は、目を丸くする。
「どうしてブチャラティがその事を……? やっぱりキアラは……ブチャラティの事が好きなんだろ?」
そう言って俺が見上げると、ブチャラティはバツが悪そうに頭を掻く。そして、ため息を一つこぼしつつ続きを話し始める。
「──お前は何か勘違いをしてるみたいだな……誤解を解くにはいたしかたない…… キアラには口止めされていたんだが、実は──」
***
「俺、ちょっと行ってくる!」
そう告げてリストランテの表に出てみると、さっきまで晴れていたにもかかわらず、急に辺りは暗くなり雨が降り出してきた。
俺は、近くに置き忘れてあったビニール傘を手に取ると、キアラの後を追いかける。
きっとあそこにいるに違いない──根拠のない確信だけで足をその場所へと向かわせる。
そこは、ネアポリスの街並みを海岸線まで見渡すことが出来るところ。
そして、たどり着いた俺の目に、キアラの姿が飛び込んできた。思わず名前を叫んでいた。俺の声に振り向いたアイツは、案の定目を丸くしていた。
「ナランチャ……!?」
「雨、降ってる……」
俺は、キアラをそっと傘へと誘う。そして、ゆっくりと話を続けた。
「ブチャラティから聞いた……ごめん、お前の気持ち、踏みにじるような事しちまって……」
「……ううん、別にいいの。私が勝手にした事だから……ナランチャには迷惑だったね……」
「違う!」
「えっ……」
「俺、すっげー嬉しかったんだ、本当は。お前から誘われて、すごく……でも……自分の気持ちに素直になれなかった……」
「…………」
「ようやく、気付いたんだ……自分の本当の気持ちに。だから、今伝えなきゃって、そう思うから──」
その時、急にキアラが傘の外へと飛び出す。
「おい、雨降ってるって──」
「ううん、もう傘はいらないよ? だってほら──」
キアラの指差す方に目を向けると、そこにはネアポリスの街並みを見下ろすかのような大きな虹がかかっていた。
そして、振り向いたアイツが俺に笑顔を差し向ける。
「ナランチャ! 誕生日、おめでとう!」
あぁ、そうだ、この笑顔だ──
俺はゆっくりキアラに歩み寄り、唇を軽く重ねる。ちゅっ……とリップ音を立てて離れて見れば、驚いた表情を浮かべるアイツがそこにいた。いつもなら茶化してごまかしているところだが、今日は普段見せないような真剣な眼差しを向け──そして告げる。
「……俺は、お前の事が好きだ」
「うん、私も──」
そして再び2つの影が重なる──
雨はもう上がった。
そう、俺の隣にはいつも晴れ渡るような君の笑顔があるから──
テーブルに頬杖を突きながら、ナランチャがぼーっと見据える視線の先。そこにいつもにいるのは、とある女の子。
「お前、最近よく見てるよなァ、キアラの事──」
「……えっ、ミスタ、今なんか言ったか?」
ミスタがやって来たことにすら、気付いていなかったのか……ナランチャが惚けたように問い正す。
「だ〜か〜ら〜、最近よく見てるよなァって言ってんだよォ、キアラの事をよォ」
「えっ!? そ、そんな事ないって! 全然見てねーよ!」
「いーや、見てる見てる! なんだ? ナランチャよォ、お前もしかしてアイツの事──」
***
ミスタとの会話に出てきた“キアラ”──
いつからだろうか……休みが合えば買い物に出かけたり、音楽の趣味も似ているからライブに行ったりと……とにかく一緒にいてすごく楽しい──気付けば隣にはいつもキアラがいる。
そんな俺とキアラは、まさに友達のような関係だ。そう、これは友情であって、恋愛感情じゃあないと、俺はつい最近までそう思っていた。でも──
まただ……最近よく、キアラがブチャラティと一緒にいるのが目につく。
嬉しいそうに笑顔で話をしながら、時折顔を赤らめ、照れたような仕草を見せる。
そんなアイツを横目にすると、モヤモヤして苦しくなって、思わず目を背けたくなってしまう。
俺にとってブチャラティは、憧れのヒーローだ。いつだってブチャラティのようになりたいと、そう思っている。だけど……笑顔のキアラがブチャラティの隣にいるのは、なんか嫌だ。
そう思うようになっていたある日──
「ねぇ、ナランチャ! 今日さ、一緒にランチに行かない?」
朝からいきなりキアラに誘われた。願ってもない話。本来なら、すぐさま二つ返事を返すところだが……なぜだろう……俺は本心とは裏腹な言葉を返してしまう。
「行かない……」
「えっ……あ〜、今日なんか予定あった?」
「別に……」
「……ナランチャ、どうかした?」
「俺なんて誘わなくてもよォ、ブチャラティと行けばいいだろ?」
「え……なんで……? なんでブチャラティと行けばいいなんて言うの?」
キアラの声色が急に下がったのが分かった。でも、それには気付かないフリをして話を続ける。
「とにかく、俺、今日は忙しいから──」
「そ、そっか……」
そう呟いたキアラが、一瞬目線を下に落とす。しかしすぐさま口角を上げて表情を明るく保つと、『分かった』と言って、そのままリストランテを静かに出て行った。程なくして、入れ違いに渦中の人物──ブチャラティが戻ってきた。
言葉を交わそうと近付いた俺に、ブチャラティが凄い剣幕で掴みかかってきた。いきなりの事で頭が回らない。気が動転している俺に、ブチャラティが言い放つ。
「おい、ナランチャ! 何でキアラにあんな事を言った!?」
「ち、ちょっと待てよ、ブチャラティ……いきなりなんの話だよォ?」
「ナランチャ、お前……今日、アイツにランチに誘われなかったか?」
掴んだ手を緩めて、ブチャラティが今度は冷静さを保ちながら問いかける。その質問を耳にした俺は、目を丸くする。
「どうしてブチャラティがその事を……? やっぱりキアラは……ブチャラティの事が好きなんだろ?」
そう言って俺が見上げると、ブチャラティはバツが悪そうに頭を掻く。そして、ため息を一つこぼしつつ続きを話し始める。
「──お前は何か勘違いをしてるみたいだな……誤解を解くにはいたしかたない…… キアラには口止めされていたんだが、実は──」
***
「俺、ちょっと行ってくる!」
そう告げてリストランテの表に出てみると、さっきまで晴れていたにもかかわらず、急に辺りは暗くなり雨が降り出してきた。
俺は、近くに置き忘れてあったビニール傘を手に取ると、キアラの後を追いかける。
きっとあそこにいるに違いない──根拠のない確信だけで足をその場所へと向かわせる。
そこは、ネアポリスの街並みを海岸線まで見渡すことが出来るところ。
そして、たどり着いた俺の目に、キアラの姿が飛び込んできた。思わず名前を叫んでいた。俺の声に振り向いたアイツは、案の定目を丸くしていた。
「ナランチャ……!?」
「雨、降ってる……」
俺は、キアラをそっと傘へと誘う。そして、ゆっくりと話を続けた。
「ブチャラティから聞いた……ごめん、お前の気持ち、踏みにじるような事しちまって……」
「……ううん、別にいいの。私が勝手にした事だから……ナランチャには迷惑だったね……」
「違う!」
「えっ……」
「俺、すっげー嬉しかったんだ、本当は。お前から誘われて、すごく……でも……自分の気持ちに素直になれなかった……」
「…………」
「ようやく、気付いたんだ……自分の本当の気持ちに。だから、今伝えなきゃって、そう思うから──」
その時、急にキアラが傘の外へと飛び出す。
「おい、雨降ってるって──」
「ううん、もう傘はいらないよ? だってほら──」
キアラの指差す方に目を向けると、そこにはネアポリスの街並みを見下ろすかのような大きな虹がかかっていた。
そして、振り向いたアイツが俺に笑顔を差し向ける。
「ナランチャ! 誕生日、おめでとう!」
あぁ、そうだ、この笑顔だ──
俺はゆっくりキアラに歩み寄り、唇を軽く重ねる。ちゅっ……とリップ音を立てて離れて見れば、驚いた表情を浮かべるアイツがそこにいた。いつもなら茶化してごまかしているところだが、今日は普段見せないような真剣な眼差しを向け──そして告げる。
「……俺は、お前の事が好きだ」
「うん、私も──」
そして再び2つの影が重なる──
雨はもう上がった。
そう、俺の隣にはいつも晴れ渡るような君の笑顔があるから──
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