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第三話【ゴマカシきかない】
「そう言えば──さっき、偶然キアラに会った」
そう言いつつ、ブチャラティはテーブルに置いた荷物に手を伸ばす。
「これを貰ったんだが──そろそろメレンダの時間だな……皆で食べるといい」
「それ、最近話題のドルチェじゃあねーかよ! マジかよ、やった〜! 俺、ちょうど腹減ってたんだよなァ」
ナランチャは我先にと、袋から一つドルチェ掴み取ると、大口を開けて頬張った。口の横にクリームが付いているとフーゴに指摘され、手で拭いながらブチャラティに問いかける。
「それでブチャラティ、キアラは元気にしてたかよォ?」
「あぁ、相変わらず元気にしていたぞ……」
「ん? どうかしましたか、ブチャラティ……?」
ブチャラティの声色から、何かを察したジョルノが不意に問いかける。しかしブチャラティは、特に何も答えず、ただ、愛想笑いを浮かべるだけ──実はそれには理由があった。
先ほど偶然会ったのは、キアラだけじゃあなかった。いや、正確に言うならば、彼女に“男の影”が見えた──と、言ったところだ。
***
時を遡ること──ここは元暗殺者チームのアジト。
「じゃあ、早速今から水着、見にいこーっと!」
キアラが意気揚々と宣言し、アジトの入り口へと向かう。それを思わず止めたのは、プロシュートだ。
「おいおい、今からって、オメー……」
「え、別にいいじゃん! だって私、今日はオフだし、ちょうど時間あるし──思ったら、即行動……でしょう?」
「……じゃあ、俺もそれに付き合ってやろうか?」
「えっ……でも、今すぐ出さなきゃあならない報告書があるんでしょう?」
「ハンッ、そんなもんすぐに終わらせる」
「そう……じゃあ、私はちょっと──先に行ってるね!」
「あぁ、また後で連絡する」
キアラの背中を見送ったプロシュートは、ドカリとソファーに腰を下ろすと、すぐさま書類に目を通し始めた。
それを横目に、あまり快く思わなかった人物がいたようで──
「おいおい、何抜けがけしようとしてんだよ、オメーはよォ?」
「抜けがけ……? ギアッチョ……オメーの方こそ、妙な言いがかりつけてんじゃあねーよ」
「何だと!?」
今にも憤慨しそうなギアッチョを後目 に、プロシュートはただ黙々と作業を続けた。
その一方で──
一足先に街へとやってきたキアラには、ある目的があった。それは──
「確かこの辺りだったはず……あっ、あった!」
お目当ての物を即座に見つけて、店内に入る。狙っていたのは、今流行りのドルチェ。いつかメレンダに食べようと、目を付けていたのだ。
チーム全員分を購入し、店から一歩出たその時、不意に彼女の目の前を、見覚えのある横顔が通り過ぎていく。それを目で追うように顔を向けながら、思わず名前を口にする。
「ブチャラティ……?」
名前を呼ばれたブチャラティは、聞き覚えのある声に、立ち止まり振り返る。そこで目にしたのがキアラだったから、思わず微笑みを浮かべてしまった。
「やっぱり、ブチャラティじゃん! アバッキオも! こんなところで会うなんて、奇遇ね〜」
「あぁ、そうだな……キアラの方は一人か?」
「ん〜、ちょっと待ち合わせ」
「そうか……向こうのチームはどうだ? まぁ、噂はかねがね聞いているが──」
「何それ? いったいどんな噂〜? まぁとりあえず、私は元気よ! みんなは?」
「心配しなくても、アイツらならあり余るくらい元気だ」
「そっか〜、それならよかった!」
呆れた表情を浮かべるアバッキオの傍らで、キアラがニコリと微笑みを浮かべる。それを見て、口元を緩ませながら優しく微笑むブチャラティ──久しぶりに会った三人は、見るからに 和気藹々 としている。
「みんなも会いたがっている……たまには顔を出すといい」
「そうだね! あ、でも、週末に──そう言えば、二人は今から任務?」
「いや、帰るところだ」
「そっか! じゃあ……これ──」
そう言って、キアラはさっき買ったばかりのドルチェを彼らの前に差し出した。
「ん……?」
「これ、今、巷で流行ってるドルチェ! さっきそこで買ったんだけど……よかったら、みんなで食べて!」
「もらっても、いいのか?」
「うん! 私は用事が済んだらまた買うから!」
キアラが笑顔でそう答えたから、ブチャラティは、ここは素直に受け取ることにした。またいつかこの借りを返す為に彼女に会う口実ができたと、そう思ったからだ。
「そうか……じゃあ、遠慮なくいただくぞ」
その時、どこからか電話の呼び出し音が聞こえてくる。それに気づいたキアラが、鞄の中からスマホを取り出し、“ちょっと、ごめん”と、電話の応対をし始める。
「“あっ、プロシュート? うん……分かった、じゃあ、今から行くね”──ごめん、行かなきゃ……それじゃあ、また」
キアラが手を振り去っていく──その後ろ姿を見送るブチャラティは、全く……思いがけないこともあるもんだなと思う。その反面、彼女の口から出た男の名前に、わだかまりも覚えた。相手は多分、元暗殺者チームの奴だろう。
こんな思いをするくらいなら、いっその事、気持ちをすべて打ち明けて、彼女を自分の物にしてからでも、そう遅くなかったのではないか──そんな気がしてならなかった。だが、そんなタラレバを思い起こしても、もう仕方がないことは十分承知している。だからこの先チャンスがあれば、彼女は誰にも渡さない──と、まだ見ぬ相手に闘志を燃やしていた。
***
ブチャラティ、アバッキオと別れたキアラは、待ち合わせ場所へと足を急がせる。たどり着くとすぐに、紫煙を吹かすプロシュートの元へと駆け寄った。
「お疲れ様!」
「あぁ……オメー、先にどっか行ってたのか?」
「えっ、あ〜、ドルチェ買ってたの」
「……あ? ドルチェ?」
どう見ても手ぶらのキアラを前に、プロシュートは、眉を潜め首を傾げる。
「食っちまったのか?」
「ううん、買ったんだけど……あげちゃった」
「あげた……いったい誰に?」
「ブチャラティとアバッキオに! さっき偶然、店の前で会ってさ──」
またその名前かと言わんばかりに、プロシュートが怪訝そうに眉間にシワを寄せる。
“ブチャラティ” プロシュート自身、まだ会ったことのない、キアラの元上司に当たる人物。何より彼女がよく口にする名前だったし、それがいつも褒める対象としてだから、どうにも気に食わない相手ではあった。きっと“普通”よりは、上の感情を 抱 いていると、そう勘ぐっていたのだ。だからプロシュートは、探るように話を進める。
「ブチャラティ……? あ〜、オメーの元上司か──」
「そうそう、久しぶりに会えたし、思わず手土産にあげちゃった」
プロシュートは、キアラの話に耳を傾けつつ、視線を背後のその先へと向けた。それから、軽く舌打ちをして向き直るも、次の瞬間に、パッと目を見開く。早く行こうと言わんばかりに、彼女が自分の手を掴み、引き寄せたから──
「おい、そう引っ張るなよ……」
プロシュートが冷めた口調で言ってしまうのは、キアラと二人きり──デートのようなシチュエーションに、つい、顔がにやけてしまいそうになるのを隠す為。
そう……本当は、もうとっくに気づいていた、自分自身の気持ちに──
だから、後はこのバカンスにかこつけて、自分の想いをちゃんと告げよう──そう思うプロシュートだった。
「そう言えば──さっき、偶然キアラに会った」
そう言いつつ、ブチャラティはテーブルに置いた荷物に手を伸ばす。
「これを貰ったんだが──そろそろメレンダの時間だな……皆で食べるといい」
「それ、最近話題のドルチェじゃあねーかよ! マジかよ、やった〜! 俺、ちょうど腹減ってたんだよなァ」
ナランチャは我先にと、袋から一つドルチェ掴み取ると、大口を開けて頬張った。口の横にクリームが付いているとフーゴに指摘され、手で拭いながらブチャラティに問いかける。
「それでブチャラティ、キアラは元気にしてたかよォ?」
「あぁ、相変わらず元気にしていたぞ……」
「ん? どうかしましたか、ブチャラティ……?」
ブチャラティの声色から、何かを察したジョルノが不意に問いかける。しかしブチャラティは、特に何も答えず、ただ、愛想笑いを浮かべるだけ──実はそれには理由があった。
先ほど偶然会ったのは、キアラだけじゃあなかった。いや、正確に言うならば、彼女に“男の影”が見えた──と、言ったところだ。
***
時を遡ること──ここは元暗殺者チームのアジト。
「じゃあ、早速今から水着、見にいこーっと!」
キアラが意気揚々と宣言し、アジトの入り口へと向かう。それを思わず止めたのは、プロシュートだ。
「おいおい、今からって、オメー……」
「え、別にいいじゃん! だって私、今日はオフだし、ちょうど時間あるし──思ったら、即行動……でしょう?」
「……じゃあ、俺もそれに付き合ってやろうか?」
「えっ……でも、今すぐ出さなきゃあならない報告書があるんでしょう?」
「ハンッ、そんなもんすぐに終わらせる」
「そう……じゃあ、私はちょっと──先に行ってるね!」
「あぁ、また後で連絡する」
キアラの背中を見送ったプロシュートは、ドカリとソファーに腰を下ろすと、すぐさま書類に目を通し始めた。
それを横目に、あまり快く思わなかった人物がいたようで──
「おいおい、何抜けがけしようとしてんだよ、オメーはよォ?」
「抜けがけ……? ギアッチョ……オメーの方こそ、妙な言いがかりつけてんじゃあねーよ」
「何だと!?」
今にも憤慨しそうなギアッチョを
その一方で──
一足先に街へとやってきたキアラには、ある目的があった。それは──
「確かこの辺りだったはず……あっ、あった!」
お目当ての物を即座に見つけて、店内に入る。狙っていたのは、今流行りのドルチェ。いつかメレンダに食べようと、目を付けていたのだ。
チーム全員分を購入し、店から一歩出たその時、不意に彼女の目の前を、見覚えのある横顔が通り過ぎていく。それを目で追うように顔を向けながら、思わず名前を口にする。
「ブチャラティ……?」
名前を呼ばれたブチャラティは、聞き覚えのある声に、立ち止まり振り返る。そこで目にしたのがキアラだったから、思わず微笑みを浮かべてしまった。
「やっぱり、ブチャラティじゃん! アバッキオも! こんなところで会うなんて、奇遇ね〜」
「あぁ、そうだな……キアラの方は一人か?」
「ん〜、ちょっと待ち合わせ」
「そうか……向こうのチームはどうだ? まぁ、噂はかねがね聞いているが──」
「何それ? いったいどんな噂〜? まぁとりあえず、私は元気よ! みんなは?」
「心配しなくても、アイツらならあり余るくらい元気だ」
「そっか〜、それならよかった!」
呆れた表情を浮かべるアバッキオの傍らで、キアラがニコリと微笑みを浮かべる。それを見て、口元を緩ませながら優しく微笑むブチャラティ──久しぶりに会った三人は、見るからに
「みんなも会いたがっている……たまには顔を出すといい」
「そうだね! あ、でも、週末に──そう言えば、二人は今から任務?」
「いや、帰るところだ」
「そっか! じゃあ……これ──」
そう言って、キアラはさっき買ったばかりのドルチェを彼らの前に差し出した。
「ん……?」
「これ、今、巷で流行ってるドルチェ! さっきそこで買ったんだけど……よかったら、みんなで食べて!」
「もらっても、いいのか?」
「うん! 私は用事が済んだらまた買うから!」
キアラが笑顔でそう答えたから、ブチャラティは、ここは素直に受け取ることにした。またいつかこの借りを返す為に彼女に会う口実ができたと、そう思ったからだ。
「そうか……じゃあ、遠慮なくいただくぞ」
その時、どこからか電話の呼び出し音が聞こえてくる。それに気づいたキアラが、鞄の中からスマホを取り出し、“ちょっと、ごめん”と、電話の応対をし始める。
「“あっ、プロシュート? うん……分かった、じゃあ、今から行くね”──ごめん、行かなきゃ……それじゃあ、また」
キアラが手を振り去っていく──その後ろ姿を見送るブチャラティは、全く……思いがけないこともあるもんだなと思う。その反面、彼女の口から出た男の名前に、わだかまりも覚えた。相手は多分、元暗殺者チームの奴だろう。
こんな思いをするくらいなら、いっその事、気持ちをすべて打ち明けて、彼女を自分の物にしてからでも、そう遅くなかったのではないか──そんな気がしてならなかった。だが、そんなタラレバを思い起こしても、もう仕方がないことは十分承知している。だからこの先チャンスがあれば、彼女は誰にも渡さない──と、まだ見ぬ相手に闘志を燃やしていた。
***
ブチャラティ、アバッキオと別れたキアラは、待ち合わせ場所へと足を急がせる。たどり着くとすぐに、紫煙を吹かすプロシュートの元へと駆け寄った。
「お疲れ様!」
「あぁ……オメー、先にどっか行ってたのか?」
「えっ、あ〜、ドルチェ買ってたの」
「……あ? ドルチェ?」
どう見ても手ぶらのキアラを前に、プロシュートは、眉を潜め首を傾げる。
「食っちまったのか?」
「ううん、買ったんだけど……あげちゃった」
「あげた……いったい誰に?」
「ブチャラティとアバッキオに! さっき偶然、店の前で会ってさ──」
またその名前かと言わんばかりに、プロシュートが怪訝そうに眉間にシワを寄せる。
“ブチャラティ” プロシュート自身、まだ会ったことのない、キアラの元上司に当たる人物。何より彼女がよく口にする名前だったし、それがいつも褒める対象としてだから、どうにも気に食わない相手ではあった。きっと“普通”よりは、上の感情を
「ブチャラティ……? あ〜、オメーの元上司か──」
「そうそう、久しぶりに会えたし、思わず手土産にあげちゃった」
プロシュートは、キアラの話に耳を傾けつつ、視線を背後のその先へと向けた。それから、軽く舌打ちをして向き直るも、次の瞬間に、パッと目を見開く。早く行こうと言わんばかりに、彼女が自分の手を掴み、引き寄せたから──
「おい、そう引っ張るなよ……」
プロシュートが冷めた口調で言ってしまうのは、キアラと二人きり──デートのようなシチュエーションに、つい、顔がにやけてしまいそうになるのを隠す為。
そう……本当は、もうとっくに気づいていた、自分自身の気持ちに──
だから、後はこのバカンスにかこつけて、自分の想いをちゃんと告げよう──そう思うプロシュートだった。
To Be Continued