ジョジョプラス
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「キアラだ」
初めてその人を紹介された時は、正直驚いた。オイラの中で兄貴は結婚なんてしないもんだと勝手にそう決めつけていた。
女とはいつもテキトーに遊んで、特定の彼女なんていなかったし、兄貴はいつだってオイラの隣にいてくれるもんだと、心のどこかでそう思い込んでいた。
***
「おい、ペッシ……どうかしたか?」
「……えっ? な、何でもないですぜィ、兄貴ィ! えっと、その〜……兄貴にはいつもお世話になっています!」
勢いよく頭を下げるオイラを見て、キアラさんは『いつも話に聞いていますよ』と優しく微笑んだ。
見た目は確かに綺麗な人ではあるが、どことなく笑顔は可愛らしい感じの女性だった。オイラがいつも兄貴の傍で目にしてきた派手な女とは、似ても似つかなかった。
それからしばらくして、兄貴はキアラさんと身を固めると言って2人は結ばれた。
式は挙げずに籍だけを入れたらしい。その日から兄貴の左手の薬指には光るものが増えた。
2人の新居はネアポリス内のアパート。マンションではないが、セキュリティは万全らしい。兄貴にしては少しこじんまりとした感じがした。
実はリーダーだけが、以前から2人の事を知っていた。というのも、キアラさんはリーダーとも知り合いで、オイラが組織に入団するずっと前から3人は知り合いだったらしい。ホルマジオの情報によると、どうやら兄貴がずっと想いを寄せていて、ようやく口説き落としたらしい。
最後に兄貴が選んだ人だから“いい人”には違いないとそう思う一方で、心の中に少しモヤモヤしたものが広がっていった。
そんなある日──アジトで飲んでいた時の事。
いつもより飲み過ぎた兄貴を家まで送る羽目になった。兄貴の家に行くのは引っ越しの手伝い以来だったから、何となく緊張感に似た気まずさがあった。
アパートに辿り着くと、部屋の前で立ち止まる。そして、一呼吸置いてからインターフォンを鳴らした。ガチャリと入口扉が開いて、中からキアラさんが現れる。リーダーが事前に連絡してくれていたおかげで、オイラが来る事は既に周知済みだった。
「ペッシくん、ありがとう! ごめんなさいね……この人たまに悪酔いしちゃうのよね……ねぇ、ちょっと起きてよ!」
「……あ? 俺は寝てねーし、まだまだ飲めるっつーんだよ! おい、ペッシ! 上がってけ! 家で飲み直すぞ!」
「兄貴ィ〜、もうやめといた方がいいですぜィ」
「あぁん? ペッシ、ペッシ、ペッシよォ〜、俺の誘いを断わろうってのかよ? んんっ!?」
「ちょっと、絡んでないで、いいからシャワー浴びてきて!」
一喝された兄貴は怪訝そうな表情を浮かべながら、渋々シャワールームへと向かう。残されたオイラはそそくさと帰ろうとしたが、不意に声をかけられる。
「ペッシくん……時間あるならさ、家に上がって少しお茶でも飲んでいってよ?」
「えっ、で、でも……」
「あの人をわざわざ送り届けてくれたお礼! それに今帰したら、後からグダグダ言われそうだし……ねっ?」
そう言われて、オイラは遠慮しがちに中へと入った。
しばらくして『どうぞ』とホットミルクが出てきた。キアラさんはコーヒーを片手にオイラの向かい側の席に座る。そして、徐に話しかけられる。
「ペッシくん……私、あなたが羨ましいわ」
「えっ……?」
「あの人……口を開けばいつもあなたの話ばかり」
「兄貴が……ですかィ?」
「そうよ。今日はよくやってたとか、アイツは出来る奴だとか──」
そう言って彼女は、少し節目がちにコーヒーを口に運ぶ。
「私ね、そんなあなた達2人の関係が羨ましかった……見えない絆で結ばれてるような……そんな気がしたの。私の知らないあの人がそこにはいる……だから言ってやったの。そんなに好きならペッシくんと結婚すればいいのにって……本当、大人気ないよね……」
「えっ、そんなことは──」
「ペッシくん、あなたの兄貴はこれからも変わらないわ。変わらずにあなたの隣にいるわよ? だから、気兼ねなくいて欲しいの。そして、これからもあの人の事を──」
「違うんです! オイラの方こそ──」
ガタリと立ち上がった時、シャワーを浴び終えた兄貴が戻って来た。
「おい、シャンプー切れてた」
「あっ、ごめんごめん……! 入れ忘れてた」
2人の会話を少しうつむき加減に聞いているオイラに、兄貴が話しかける。
「……ん? どうした、ペッシ?」
「兄貴……オイラずっと思ってた。兄貴が結婚してから、勝手に置いて行かれちゃった様な……兄貴がずっと遠くに行っちゃった様なそんな気がしてた。でも、そうじゃあなかった。うまくは言えないけど……兄貴の相手がキアラの姉貴で良かった」
そう言って2人を見上げると、自然と涙が込み上げてきた。
「ねぇ、ペッシくん──」
「何ですかィ? 姉貴ィ?」
「ちょっと、一言いいかな……?」
「えっ? なんですかィ?」
「その“姉貴”って言い方はやめて! 何か極道臭がプンプンするし……私は普通に名前で呼ばれたい! 今後はそうしてね? 分かったァ? このマンモーニが!」
「えっ……えぇ〜!? ここでまさかのそんな展開ですかィ!?」
目を丸くして驚くオイラを横目に、彼女は『な〜んてね』と言いながら微笑む。
その表情は、どことなく仲間内にだけ見せる兄貴と雰囲気が重なる──そして、やっぱりお似合いの2人だなとそう思った。
***
帰り道──
1人歩く傍に自分にも似合いの彼女がたまらなく欲しくなった──そんなある日の出来事。
初めてその人を紹介された時は、正直驚いた。オイラの中で兄貴は結婚なんてしないもんだと勝手にそう決めつけていた。
女とはいつもテキトーに遊んで、特定の彼女なんていなかったし、兄貴はいつだってオイラの隣にいてくれるもんだと、心のどこかでそう思い込んでいた。
***
「おい、ペッシ……どうかしたか?」
「……えっ? な、何でもないですぜィ、兄貴ィ! えっと、その〜……兄貴にはいつもお世話になっています!」
勢いよく頭を下げるオイラを見て、キアラさんは『いつも話に聞いていますよ』と優しく微笑んだ。
見た目は確かに綺麗な人ではあるが、どことなく笑顔は可愛らしい感じの女性だった。オイラがいつも兄貴の傍で目にしてきた派手な女とは、似ても似つかなかった。
それからしばらくして、兄貴はキアラさんと身を固めると言って2人は結ばれた。
式は挙げずに籍だけを入れたらしい。その日から兄貴の左手の薬指には光るものが増えた。
2人の新居はネアポリス内のアパート。マンションではないが、セキュリティは万全らしい。兄貴にしては少しこじんまりとした感じがした。
実はリーダーだけが、以前から2人の事を知っていた。というのも、キアラさんはリーダーとも知り合いで、オイラが組織に入団するずっと前から3人は知り合いだったらしい。ホルマジオの情報によると、どうやら兄貴がずっと想いを寄せていて、ようやく口説き落としたらしい。
最後に兄貴が選んだ人だから“いい人”には違いないとそう思う一方で、心の中に少しモヤモヤしたものが広がっていった。
そんなある日──アジトで飲んでいた時の事。
いつもより飲み過ぎた兄貴を家まで送る羽目になった。兄貴の家に行くのは引っ越しの手伝い以来だったから、何となく緊張感に似た気まずさがあった。
アパートに辿り着くと、部屋の前で立ち止まる。そして、一呼吸置いてからインターフォンを鳴らした。ガチャリと入口扉が開いて、中からキアラさんが現れる。リーダーが事前に連絡してくれていたおかげで、オイラが来る事は既に周知済みだった。
「ペッシくん、ありがとう! ごめんなさいね……この人たまに悪酔いしちゃうのよね……ねぇ、ちょっと起きてよ!」
「……あ? 俺は寝てねーし、まだまだ飲めるっつーんだよ! おい、ペッシ! 上がってけ! 家で飲み直すぞ!」
「兄貴ィ〜、もうやめといた方がいいですぜィ」
「あぁん? ペッシ、ペッシ、ペッシよォ〜、俺の誘いを断わろうってのかよ? んんっ!?」
「ちょっと、絡んでないで、いいからシャワー浴びてきて!」
一喝された兄貴は怪訝そうな表情を浮かべながら、渋々シャワールームへと向かう。残されたオイラはそそくさと帰ろうとしたが、不意に声をかけられる。
「ペッシくん……時間あるならさ、家に上がって少しお茶でも飲んでいってよ?」
「えっ、で、でも……」
「あの人をわざわざ送り届けてくれたお礼! それに今帰したら、後からグダグダ言われそうだし……ねっ?」
そう言われて、オイラは遠慮しがちに中へと入った。
しばらくして『どうぞ』とホットミルクが出てきた。キアラさんはコーヒーを片手にオイラの向かい側の席に座る。そして、徐に話しかけられる。
「ペッシくん……私、あなたが羨ましいわ」
「えっ……?」
「あの人……口を開けばいつもあなたの話ばかり」
「兄貴が……ですかィ?」
「そうよ。今日はよくやってたとか、アイツは出来る奴だとか──」
そう言って彼女は、少し節目がちにコーヒーを口に運ぶ。
「私ね、そんなあなた達2人の関係が羨ましかった……見えない絆で結ばれてるような……そんな気がしたの。私の知らないあの人がそこにはいる……だから言ってやったの。そんなに好きならペッシくんと結婚すればいいのにって……本当、大人気ないよね……」
「えっ、そんなことは──」
「ペッシくん、あなたの兄貴はこれからも変わらないわ。変わらずにあなたの隣にいるわよ? だから、気兼ねなくいて欲しいの。そして、これからもあの人の事を──」
「違うんです! オイラの方こそ──」
ガタリと立ち上がった時、シャワーを浴び終えた兄貴が戻って来た。
「おい、シャンプー切れてた」
「あっ、ごめんごめん……! 入れ忘れてた」
2人の会話を少しうつむき加減に聞いているオイラに、兄貴が話しかける。
「……ん? どうした、ペッシ?」
「兄貴……オイラずっと思ってた。兄貴が結婚してから、勝手に置いて行かれちゃった様な……兄貴がずっと遠くに行っちゃった様なそんな気がしてた。でも、そうじゃあなかった。うまくは言えないけど……兄貴の相手がキアラの姉貴で良かった」
そう言って2人を見上げると、自然と涙が込み上げてきた。
「ねぇ、ペッシくん──」
「何ですかィ? 姉貴ィ?」
「ちょっと、一言いいかな……?」
「えっ? なんですかィ?」
「その“姉貴”って言い方はやめて! 何か極道臭がプンプンするし……私は普通に名前で呼ばれたい! 今後はそうしてね? 分かったァ? このマンモーニが!」
「えっ……えぇ〜!? ここでまさかのそんな展開ですかィ!?」
目を丸くして驚くオイラを横目に、彼女は『な〜んてね』と言いながら微笑む。
その表情は、どことなく仲間内にだけ見せる兄貴と雰囲気が重なる──そして、やっぱりお似合いの2人だなとそう思った。
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帰り道──
1人歩く傍に自分にも似合いの彼女がたまらなく欲しくなった──そんなある日の出来事。
the END