「なァ……」

　不意にあなたが呼びかける。私はただ、黙ってあなたに視線を向ける。

「オメーはいつまでそうやってるつもりだ……？　いったい、いつになれば、本心を明かしてくれんだよ？」
「えっ……」

　図星を突かれて言葉に詰まる。本心を明かしていないと、彼に見透かされていたようだ。

「俺はなァ、おまえが思っているような、完璧な男じゃあねーよ？　だから、オメーにも自然体でいて欲しい……」

　優しく口元を緩ませるあなたを見て、私はようやく気付かされた。
　あぁ……私は今まで、いったい何に気をとられていたのだろうか。嫌われないように、その一線を踏み越えないようにとうつむく私は、彼のこんな表情を見逃していた──
　それから私は面を上げて、真っ直ぐあなたへと一歩を踏み出す。歩みを進めるその先で、例えば、足元に張る氷を割ってしまったとしても、見上げた先の虹を見落とさないように──