ムーンソング
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とある男が、たった今息絶えた。胸を無数の刃物で貫かれて──
殺した男は返り血一つ浴びていない。その男の名はリゾット・ネエロ──暗殺者チームのリーダーだ。
その様子を高みの見物でいた女が話しかける。
「ねぇ、リゾット……この山いくら?」
「──確か2000万リラ……だったか」
「それってさ、高いの? それとも安いの?」
「そうだなァ……ギアッチョから言わせると安いみたいだな」
「それは報酬の話でしょう? 私が聞いているのは、命の値段──」
「さぁな……俺には関係のない話だ。行くぞ」
その場を後にしながら、女は再び問いかける。
「じゃあ、あなたの命は? 私が今、あなたを始末したなら……いくらになるのかしら?」
「──俺の命に価値なんてない」
そう言い放つリゾットに、女が静かに話始める。
「有名な絵画も、知らない人にとってはただの落書きに過ぎない……高価な宝石だって、子供にとったらただの綺麗な石ころ──価値なんて人それぞれ。だとしたら──ねぇ、その命……私に預けてみない?」
「あ? 何を言い出すんだ、急に……?」
「私に預けるって事は、あなたの命は私の手の内にあると言いう事──勝手に死ぬ事は許さない。あなたの価値は私が決める……だから、生きて──」
「全く……お前は、本当に面白い女だな」
そう言ったリゾットの頰が微かに緩んだ。
何の為の命なのか……その答えはきっと命と引き換えに報酬を得る俺には、易々と分かりはしないだろう。だが、最期に空を見上げた時、お前を想い、生きる価値があったと思えたとしたら、それで上出来だったと思うだろう。
それから静かに時は過ぎた。
***
あの日──
あなたを失った私は、今もどこかにあなたの面影を追い求めてしまう──
あなたを忘れることなんて、私には到底出来ないけれど……あなたはそれを決して望みはしない。
それはいつの日か、あなたが私に言った言葉──
『もし俺が命を落としたその時は、俺の事はそれっきり忘れろ……』
結局私は、今でもあなたの事が──
でも……あなたが触れる手の温もりを、優しく口付けるその感覚も、きっといつしか忘れてしまうのだろう。
そして、あなたのいないこの日常に、私の心さえも慣れてしまうことだろう。
それでも私は、その日が来るまで抗って生きていたい──
そう思って見上げるのは清々しい程の碧空だ。
殺した男は返り血一つ浴びていない。その男の名はリゾット・ネエロ──暗殺者チームのリーダーだ。
その様子を高みの見物でいた女が話しかける。
「ねぇ、リゾット……この山いくら?」
「──確か2000万リラ……だったか」
「それってさ、高いの? それとも安いの?」
「そうだなァ……ギアッチョから言わせると安いみたいだな」
「それは報酬の話でしょう? 私が聞いているのは、命の値段──」
「さぁな……俺には関係のない話だ。行くぞ」
その場を後にしながら、女は再び問いかける。
「じゃあ、あなたの命は? 私が今、あなたを始末したなら……いくらになるのかしら?」
「──俺の命に価値なんてない」
そう言い放つリゾットに、女が静かに話始める。
「有名な絵画も、知らない人にとってはただの落書きに過ぎない……高価な宝石だって、子供にとったらただの綺麗な石ころ──価値なんて人それぞれ。だとしたら──ねぇ、その命……私に預けてみない?」
「あ? 何を言い出すんだ、急に……?」
「私に預けるって事は、あなたの命は私の手の内にあると言いう事──勝手に死ぬ事は許さない。あなたの価値は私が決める……だから、生きて──」
「全く……お前は、本当に面白い女だな」
そう言ったリゾットの頰が微かに緩んだ。
何の為の命なのか……その答えはきっと命と引き換えに報酬を得る俺には、易々と分かりはしないだろう。だが、最期に空を見上げた時、お前を想い、生きる価値があったと思えたとしたら、それで上出来だったと思うだろう。
それから静かに時は過ぎた。
***
あの日──
あなたを失った私は、今もどこかにあなたの面影を追い求めてしまう──
あなたを忘れることなんて、私には到底出来ないけれど……あなたはそれを決して望みはしない。
それはいつの日か、あなたが私に言った言葉──
『もし俺が命を落としたその時は、俺の事はそれっきり忘れろ……』
結局私は、今でもあなたの事が──
でも……あなたが触れる手の温もりを、優しく口付けるその感覚も、きっといつしか忘れてしまうのだろう。
そして、あなたのいないこの日常に、私の心さえも慣れてしまうことだろう。
それでも私は、その日が来るまで抗って生きていたい──
そう思って見上げるのは清々しい程の碧空だ。
the END