Kiss me quick
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休日にアジトへ向かう途中の出来事──
時折立ち寄る花屋の前で、一つの鉢植えが目に止まった。この花──そう思いしゃがみ込んで見ていると、後方から声をかけられる。
「お前……こんなところで何をしている?」
聞き覚えのある声に振り向くと、そこには愛しき人の姿があった。
「リゾットさん……!」
振り向きざまに、ついつい笑みをこぼしてしまう。
「花でも買うのか?」
「えっ? いや、見ていただけなんですけど……この花アジトに置いてもいいですか?」
「あぁ……別に構わんが──」
「ありがとうございます! じゃあ、買ってくるんで、ちょっと待っててくださいね?」
そう告げて、私はレジへと向かった。
***
それから二人でアジトへと帰り着く。室内に入ると、今日に限っては、リビングがガラリと静まり返っていた。どうやら皆は出払っているようだ。
つまりは彼と二人きり──
不意に目を向けると、彼もこちらを見ていたようで、思わずぶつかった視線に、良からぬことを期待するかのように、心臓がドキッと高鳴る。すると、その沈黙を打ち破るかのようにして、彼が話しかけてきた。
「おまえまでアジトに来る必要はなかったのだが──今日はオフだろ? 会うのは夜の予定だったはずだが?」
「それはそうなんですけど……それまでの間、特に予定もなくて手持ち無沙汰だったんで、フラフラしてたんです。でも、こうして会えたんで、ちょうどよかった! リゾットさんこそ、任務のはずじゃあ……?」
「ん? 何か疑っているのか……?」
そう言いながら、ニヒルな笑みを向けられたから、思わず視線を逸らす。その真紅の瞳で見つめられると、なんだか心まで見透かされたように感じてしまう。
「そんなことはありません!」
「そうか……? まぁ、俺の方は任務が思いの外早く片付いた……後はここに溜まった書類に目を通せば終わる……まぁ、おまえがすでにここにいるから慌てる必要も無くなったということか」
“俺もちょうどよかった”と、言いながら、彼が傍にやって来る。
私はさっき買ってきた鉢植えを、そっと窓際に置いてみた。それは“スプレンデンス”というハナキリンの一種。もっともポピュラーな物で、赤く平べったい小花を咲かせるのが特徴的な多肉植物だ。その花の色は、まるでリゾットの瞳を連想させるかのようだ。
ハナキリンの茎には鋭い棘がある。触れようとするものには容赦なく攻撃するさまが、まるで出会った頃の彼を象徴するかのようにも思えた。
「ねぇ、リゾットさん……」
「ん、なんだ?」
「私との出会い……覚えてますか?」
「あぁ、互いの故郷、シチリアだったな……」
「じゃあ、初めてキスした場所は?」
「……アジト、だったか?」
「じゃあ、私が今、何を思っているか……わかりますか?」
少しだけ突拍子のない質問を投げかけてみる。すると彼は、しばし間を空けてから私に向き直ると、頬に優しく手を添える。そして、一瞬だけ口元を緩めて目を細める。それから近くなる気配に合わせて、私は瞳を閉じた。
“早くキスして──”
やっぱり、あなたには私の心が手にとるようにわかってしまうのだなと、思ってしまう瞬間だ。
時折立ち寄る花屋の前で、一つの鉢植えが目に止まった。この花──そう思いしゃがみ込んで見ていると、後方から声をかけられる。
「お前……こんなところで何をしている?」
聞き覚えのある声に振り向くと、そこには愛しき人の姿があった。
「リゾットさん……!」
振り向きざまに、ついつい笑みをこぼしてしまう。
「花でも買うのか?」
「えっ? いや、見ていただけなんですけど……この花アジトに置いてもいいですか?」
「あぁ……別に構わんが──」
「ありがとうございます! じゃあ、買ってくるんで、ちょっと待っててくださいね?」
そう告げて、私はレジへと向かった。
***
それから二人でアジトへと帰り着く。室内に入ると、今日に限っては、リビングがガラリと静まり返っていた。どうやら皆は出払っているようだ。
つまりは彼と二人きり──
不意に目を向けると、彼もこちらを見ていたようで、思わずぶつかった視線に、良からぬことを期待するかのように、心臓がドキッと高鳴る。すると、その沈黙を打ち破るかのようにして、彼が話しかけてきた。
「おまえまでアジトに来る必要はなかったのだが──今日はオフだろ? 会うのは夜の予定だったはずだが?」
「それはそうなんですけど……それまでの間、特に予定もなくて手持ち無沙汰だったんで、フラフラしてたんです。でも、こうして会えたんで、ちょうどよかった! リゾットさんこそ、任務のはずじゃあ……?」
「ん? 何か疑っているのか……?」
そう言いながら、ニヒルな笑みを向けられたから、思わず視線を逸らす。その真紅の瞳で見つめられると、なんだか心まで見透かされたように感じてしまう。
「そんなことはありません!」
「そうか……? まぁ、俺の方は任務が思いの外早く片付いた……後はここに溜まった書類に目を通せば終わる……まぁ、おまえがすでにここにいるから慌てる必要も無くなったということか」
“俺もちょうどよかった”と、言いながら、彼が傍にやって来る。
私はさっき買ってきた鉢植えを、そっと窓際に置いてみた。それは“スプレンデンス”というハナキリンの一種。もっともポピュラーな物で、赤く平べったい小花を咲かせるのが特徴的な多肉植物だ。その花の色は、まるでリゾットの瞳を連想させるかのようだ。
ハナキリンの茎には鋭い棘がある。触れようとするものには容赦なく攻撃するさまが、まるで出会った頃の彼を象徴するかのようにも思えた。
「ねぇ、リゾットさん……」
「ん、なんだ?」
「私との出会い……覚えてますか?」
「あぁ、互いの故郷、シチリアだったな……」
「じゃあ、初めてキスした場所は?」
「……アジト、だったか?」
「じゃあ、私が今、何を思っているか……わかりますか?」
少しだけ突拍子のない質問を投げかけてみる。すると彼は、しばし間を空けてから私に向き直ると、頬に優しく手を添える。そして、一瞬だけ口元を緩めて目を細める。それから近くなる気配に合わせて、私は瞳を閉じた。
“早くキスして──”
やっぱり、あなたには私の心が手にとるようにわかってしまうのだなと、思ってしまう瞬間だ。
the END
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