2年目
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今日は梅雨の晴れ間だ。貴重な晴れは洗濯に朝から全力を費やす。
「やっぱ晴れは洗濯に限るよな〜!」
勤務前にシーツなどの大物も洗った。
今日は朝一から工務店へ行く。最近は土方から特別な指示がない限り自分の予定で動いている。もし指示があっても大体携帯で済む。信用されているのだろう。
「おはよう御座います。」
知里は工務店へ立ち寄る。
「おぉ、知里さんよく来たな!おはよう!」
いつも元気な親父さんが挨拶してくれる。
「お世話様です、今日は今月分のお金です。お納め下さい。」
「いつもありがとよ!アンタんとかのお陰でこっちは食いっぱぐれなくて済むわ。」
「こちらも助かってますよ!いつも仕事が早くて!アレ?新しい人ですか?」
工務店の中には赤と青の小人らしき2人が忙しなく働いている。
「ああ、なんかデリバリー大工をしてた天人でウンケイ、カイケイってんだ。なんか江戸の建物に興味あるらしくてな、世話してやってんだ。」
親父さんは寧ろ若手に良い影響があっていいと気に入っているようだった。
ピカッ!
突然空から白く光る。
「なんだ?」
知里、親父さん、職人全員が外に出て確認する。
近所の人もみんな外に出てくる。
「花火でもないですよね、明るすぎます。」
知里は空を見上げる。
「歌舞伎町辺りからか?」
人だかりから声が聞こえる。
「心配だな、ちょっと様子見てから知里さんは帰りな。」
そう言ってもらい、しばらく工務店さんに居させてもらった。
10分ほどしてテレビからニュースが流れる。
『…こちら歌舞伎町です。謎の光が歌舞伎周辺を覆い、光を浴びたと思われる人々が急に子どもになる現象が起きています!』
工務店の職人さんと一緒にテレビにかじりついて見ていた。
「えー、怖いねー!歌舞伎町は子どもだらけっけこと?」
「大人も一応テレビに映ってるけどな、外から来た奴かな。」
ピピピピ♪
知里の携帯が鳴る、山崎からだ。
「知里さん、今どこ?平気?」
「山崎さん、私は工務店です。平気。歌舞伎町が大変ですね!」
「そうなんだよ、真選組に緊急事態宣言で歌舞伎町の警護が任されたから、すぐ屯所に戻って待機して!」
山崎は一通り話して直ぐに切れた。
知里はすぐに屯所に向かう。隊士のほとんどは出払っていた。
真選組への電話は鳴り止まず、だいたいがパニック状態の人からの電話だった。
現状が全くわからず、こちらも対応ができずに大混乱だった。
数時間が経ち、山崎たち隊士が数名と子ども2人が帰ってきた。
「お帰りなさい、現場はどうですか?」
知里は山崎に現状を確認する。
「びっくりだよ。元大人の子どもだと思うけど、大パニック。ただ、全身に光を浴びなかった人は大人のままで、建物内や車内にいた人は無事だった。」
山崎は驚いて話す。
「そんな事より、歌舞伎町を一旦立ち入り禁止にする。手配するぞ、各機関に連絡する。手伝え。」
知里は黒髪長髪の子どもに命令される。
「え?ちょっと誰。」
知里は屯所に上がり込んでくる子どもに驚く。
「知里さん、あれ副長なんだ。その隣は沖田さんだよ。歌舞伎町の見廻りだったんだ、2人。」
山崎は2人の隊服、刀を知里に渡す。服は歌舞伎町で買ったようだ。
「マジで?本当に子ども。8才くらい??」
「マジなんだよ。そのくらいかな…。とにかく凄い状況だから僕はもう一回行かないと。」
「え、置いてくの?やばいって、わかんないけど!」
「中身は大人だから、大丈夫!どこぞのコナン君だから!」
そう言って山崎たちは出て行った。
「知里早く行きまさぁ。」
沖田が呼ぶ。
とにかく事態の収拾が先だ。
土方の後に続き、大広間で対策室を作った。歌舞伎町の封鎖手続き、情報収集、避難所の設置を実施した。
ワイドショーでは次々と現場の情報を掻い摘んで不安を煽りまくっている。
夜も22時を超えると真選組隊士は順々に仮眠を取りに帰っては、すぐに歌舞伎町へ向かった。沖田は疲れたのか21時頃に姿を消した。
「土方さん、私少しだけ帰ってシャワー浴びてまた来ます。」
知里は土方に話す。
「今日は帰ってもいい。俺が起きてるから平気だ。」
8才児の土方に言われる。
「なんというかそういう訳にいかないんです。子どもに働かせておいて大人は休めないみたいな。」
「俺は大人だ、今たまたま子どもの姿なだけだ。」
土方はキレる、タバコを吸おうと探す。
「ちょっと待ったーーー!ムリ、ムリです。タバコはホントダメだから!中身大人でも体は子どもだから!悪影響パないから!口寂しいのか、とりあえずこれ舐めろ!」
知里はポケットの飴を渡す。
「はぁ?ニコチンがたんねぇんだよ。」
「子どもがニコチン言うな!買ってくるから、ニコニコレット買ってくるから!」
「禁煙はしねーよ。」
土方はとりあえず飴をなめる。
知里はすぐに家に帰り、冷え切った洗濯を取り込む。折角の洗濯が台無しである。シャワーを浴びて、ブルーブルを飲み、すぐに屯所へ帰った。
屯所につき土方に会うと、タバコを吸っていた。子どものタバコ姿は見てられなかった。
真選組の電話も24時を回るとあまり鳴らなくなった。隊士たちとの無線連絡は常に密だが、今以上になにかすぐ対策の変更などはなさそうだ。
「土方さん、一旦休んで下さい。私が担当しますので、何かあれば呼びますから。」
知里は土方に休むように促した。土方がかなり眠そうなのだ。
「いや、大丈夫だ。」
頭がふらついている。
「多分ですけど、体が子どもってことは、体力も子どもってことですよね。8才児の睡眠時間って9〜13時間だそうですよ。残念ながらこれが今現実です。」
知里は土方の首根っこを掴み大広間から力尽くで連れ出した。
「おい、やめろ。」
土方はバタバタ騒ぐ。
「大人に任せてください。それに女に力尽くで引っ張られるなんて久しぶりの経験でしょう。」
知里は隊士たちが仮眠で使っている部屋へ土方を押し込んだ。
土方は戻ってこなかったので、おそらく眠かったんだろう。
知里はそのまま徹夜で夜を明かした。
次の日の朝、ワイドショー、ニュースは歌舞伎町の話題一色だ。各研究機関が調査に乗り出したらしい。
歌舞伎町は封鎖され、少し暴動があった。大人も多少いたがほぼ子ども相手なので鎮圧が簡単という事だけは良かった。避難所も今は落ち着いたらしい。
「おはよう、昨日はすまなかったな。」
朝7時、土方が起きてきた。
「おはよう御座います。もう少し寝てても良さそうですよ。先にお風呂とかご飯とかしてきたらどうですか?」
知里はすでに朝食後2杯目のコーヒーを空にする。
「ああ、そうする。後で交代するから。」
土方は変わらず過ごしていた。
「おはようございますでさぁ。知里、ここの洗面台届かねぇでさぁ。」
沖田は若干土方より小さく感じる。6才くらいだろうか。踏み台になりそうな段ボールを探して沖田に渡す。
「知里、髪ゴムくだせぇ。」
確かに沖田も土方も髪が長い。
「括ってあげますよ。」
知里は沖田に言うと、意外や意外に沖田が快諾して、ちょこんと前に座る。
知里は手持ちのブラシとゴムで沖田の髪を結ぶ。
「沖田さんの髪は綺麗ですね。」
「綺麗なのは髪だけじゃねぇでさぁ。」
沖田はジッと髪結を待つ。
「腹は黒いままか。」
知里は沖田の髪を耳より上で一つ括りにする。そこまで髪の長さがなかったのか、ポニーテールとまではいかなかった。
「はい、どうぞ。」
沖田はありがとうもなく駆けて出た。
隊士は引き続き仮眠と歌舞伎町の往復をしてバタバタしている。
知里は自分も歌舞伎町に興味があったが、持ち場を離れる訳にもいかなかった。
正直、土方と沖田が子どもになっているのに、みんな忙しくて気にしている暇もない。
土方が身支度を整えて大広間へ戻って来た。
「何か変わったことは?」
土方は知里に聞く。
「特にありません。研究所の職員が歌舞伎町へ視察に午前中きます。パニックはおさまってきている模様です。」
知里は土方に報告する。
「そうか、お前は一旦寝ろ。で、昼に起きろ。その間総悟にやらせる。」
「わかりました。土方さん、髪縛りましょうか?髪ゴムありますよ。」
「ああ、髪か。自分でできる、借りるぞ。」
土方は器用に髪を一つに縛る。
「器用ですね。綺麗なポニーテールです。」
「ああ、久しぶりだな。」
「お似合いですよ。」
「邪魔なだけだ。」
土方は知里にさっさと行けと手を振る。
知里は仮眠室へ向かう。ちょうど山崎も仮眠のために帰ってきた。
「お疲れ様。知里さん。」
「お疲れ様、山崎さん。」
「フラフラだけど、仮眠室いくの?」
山崎はすでに目をこすっている。
「山崎さんもフラフラだよ。」
知里は半目で答える。
「仮眠室むっさい状態だよ。」
仮眠室は広間の襖をぶち抜いて適当にたくさんの布団を敷き詰めているだけで、隊士達も適当に寝ている。
「関係ないよ、寝たい。」
「同じく。」
山崎と一緒に布団に倒れんだ。
目が覚めると昼になっていた。
山崎もゴソゴソ起きてきた。
「おはよう、山崎さん。あー、化粧落とすの忘れた…。化粧品も忘れたなぁ。はぁ。」
「おはよう、知里さん。そのままでもいいと思うよ、でも気になるか。確か救護室にマスクあるよ、使う?」
「ほんと?使いたい。」
山崎はスクっと立ち上がり、すぐに救護室へ向かった。
知里は形ばかりではあるが、布団を整えた。
着物で寝てしまったことにも不覚だったが、疲れていてしかなかった。山崎からマスクをもらい、洗面台で顔を洗った。着物も隊服へ着替えた。
ちょうど松平片栗虎が屯所に来ており、近藤、土方、沖田が呼ばれていた。
子どもになったのはウイルスなどではなく他人に移る物では無いようで、歌舞伎町隔離から土方、沖田は出てしまっているが特別に屯所にいることが許された。一人での外出は自粛と命令し、さっさと松平は帰っていった。
「あれ、知里さん隊服?それにマスクだし、風邪?」
近藤は食堂で昼食中の知里に声をかけた。
「近藤さん、お疲れ様です。着物で仮眠しちゃうし、化粧品忘れるしでこの状態です。」
知里は食事を早く終えようと急ぐ。
「えー、じゃあスッピンなんだ!変わらない変わらない。」
近藤は大声で話しながら知里の前に座る。
「近藤さん、変わりますよ、さすがにアラサーのスッピンはキツいでさぁ。」
沖田は近藤の隣に、土方は知里の隣に座る。
「わかってるから、傷口抉らないで。」
知里は沖田の足を右脚で小突いた。
「いて、近藤さんー、知里が蹴ったー!」
沖田は近藤に訴える。
「ヨシヨシ、総悟。痛かったのか〜。」
近藤は総悟の頭を撫でる。
知里は箸が止まり目が点になった。
「近藤さんの父性本能が爆発してるだけだ。」
土方は黙々と食べている。
「トシ、えらいぞー、好き嫌いせずに食べられるなんてな!ハハハ!」
近藤は土方にも父性が爆発している。
「近藤さん、子ども扱いはヤメロ。」
土方は冷たく放った。
「でもわかるよ、この歳になるとキミたちくらいの子どもいてもおかしくないからね…。」
知里は遠い目をして話した。
「やっぱ晴れは洗濯に限るよな〜!」
勤務前にシーツなどの大物も洗った。
今日は朝一から工務店へ行く。最近は土方から特別な指示がない限り自分の予定で動いている。もし指示があっても大体携帯で済む。信用されているのだろう。
「おはよう御座います。」
知里は工務店へ立ち寄る。
「おぉ、知里さんよく来たな!おはよう!」
いつも元気な親父さんが挨拶してくれる。
「お世話様です、今日は今月分のお金です。お納め下さい。」
「いつもありがとよ!アンタんとかのお陰でこっちは食いっぱぐれなくて済むわ。」
「こちらも助かってますよ!いつも仕事が早くて!アレ?新しい人ですか?」
工務店の中には赤と青の小人らしき2人が忙しなく働いている。
「ああ、なんかデリバリー大工をしてた天人でウンケイ、カイケイってんだ。なんか江戸の建物に興味あるらしくてな、世話してやってんだ。」
親父さんは寧ろ若手に良い影響があっていいと気に入っているようだった。
ピカッ!
突然空から白く光る。
「なんだ?」
知里、親父さん、職人全員が外に出て確認する。
近所の人もみんな外に出てくる。
「花火でもないですよね、明るすぎます。」
知里は空を見上げる。
「歌舞伎町辺りからか?」
人だかりから声が聞こえる。
「心配だな、ちょっと様子見てから知里さんは帰りな。」
そう言ってもらい、しばらく工務店さんに居させてもらった。
10分ほどしてテレビからニュースが流れる。
『…こちら歌舞伎町です。謎の光が歌舞伎周辺を覆い、光を浴びたと思われる人々が急に子どもになる現象が起きています!』
工務店の職人さんと一緒にテレビにかじりついて見ていた。
「えー、怖いねー!歌舞伎町は子どもだらけっけこと?」
「大人も一応テレビに映ってるけどな、外から来た奴かな。」
ピピピピ♪
知里の携帯が鳴る、山崎からだ。
「知里さん、今どこ?平気?」
「山崎さん、私は工務店です。平気。歌舞伎町が大変ですね!」
「そうなんだよ、真選組に緊急事態宣言で歌舞伎町の警護が任されたから、すぐ屯所に戻って待機して!」
山崎は一通り話して直ぐに切れた。
知里はすぐに屯所に向かう。隊士のほとんどは出払っていた。
真選組への電話は鳴り止まず、だいたいがパニック状態の人からの電話だった。
現状が全くわからず、こちらも対応ができずに大混乱だった。
数時間が経ち、山崎たち隊士が数名と子ども2人が帰ってきた。
「お帰りなさい、現場はどうですか?」
知里は山崎に現状を確認する。
「びっくりだよ。元大人の子どもだと思うけど、大パニック。ただ、全身に光を浴びなかった人は大人のままで、建物内や車内にいた人は無事だった。」
山崎は驚いて話す。
「そんな事より、歌舞伎町を一旦立ち入り禁止にする。手配するぞ、各機関に連絡する。手伝え。」
知里は黒髪長髪の子どもに命令される。
「え?ちょっと誰。」
知里は屯所に上がり込んでくる子どもに驚く。
「知里さん、あれ副長なんだ。その隣は沖田さんだよ。歌舞伎町の見廻りだったんだ、2人。」
山崎は2人の隊服、刀を知里に渡す。服は歌舞伎町で買ったようだ。
「マジで?本当に子ども。8才くらい??」
「マジなんだよ。そのくらいかな…。とにかく凄い状況だから僕はもう一回行かないと。」
「え、置いてくの?やばいって、わかんないけど!」
「中身は大人だから、大丈夫!どこぞのコナン君だから!」
そう言って山崎たちは出て行った。
「知里早く行きまさぁ。」
沖田が呼ぶ。
とにかく事態の収拾が先だ。
土方の後に続き、大広間で対策室を作った。歌舞伎町の封鎖手続き、情報収集、避難所の設置を実施した。
ワイドショーでは次々と現場の情報を掻い摘んで不安を煽りまくっている。
夜も22時を超えると真選組隊士は順々に仮眠を取りに帰っては、すぐに歌舞伎町へ向かった。沖田は疲れたのか21時頃に姿を消した。
「土方さん、私少しだけ帰ってシャワー浴びてまた来ます。」
知里は土方に話す。
「今日は帰ってもいい。俺が起きてるから平気だ。」
8才児の土方に言われる。
「なんというかそういう訳にいかないんです。子どもに働かせておいて大人は休めないみたいな。」
「俺は大人だ、今たまたま子どもの姿なだけだ。」
土方はキレる、タバコを吸おうと探す。
「ちょっと待ったーーー!ムリ、ムリです。タバコはホントダメだから!中身大人でも体は子どもだから!悪影響パないから!口寂しいのか、とりあえずこれ舐めろ!」
知里はポケットの飴を渡す。
「はぁ?ニコチンがたんねぇんだよ。」
「子どもがニコチン言うな!買ってくるから、ニコニコレット買ってくるから!」
「禁煙はしねーよ。」
土方はとりあえず飴をなめる。
知里はすぐに家に帰り、冷え切った洗濯を取り込む。折角の洗濯が台無しである。シャワーを浴びて、ブルーブルを飲み、すぐに屯所へ帰った。
屯所につき土方に会うと、タバコを吸っていた。子どものタバコ姿は見てられなかった。
真選組の電話も24時を回るとあまり鳴らなくなった。隊士たちとの無線連絡は常に密だが、今以上になにかすぐ対策の変更などはなさそうだ。
「土方さん、一旦休んで下さい。私が担当しますので、何かあれば呼びますから。」
知里は土方に休むように促した。土方がかなり眠そうなのだ。
「いや、大丈夫だ。」
頭がふらついている。
「多分ですけど、体が子どもってことは、体力も子どもってことですよね。8才児の睡眠時間って9〜13時間だそうですよ。残念ながらこれが今現実です。」
知里は土方の首根っこを掴み大広間から力尽くで連れ出した。
「おい、やめろ。」
土方はバタバタ騒ぐ。
「大人に任せてください。それに女に力尽くで引っ張られるなんて久しぶりの経験でしょう。」
知里は隊士たちが仮眠で使っている部屋へ土方を押し込んだ。
土方は戻ってこなかったので、おそらく眠かったんだろう。
知里はそのまま徹夜で夜を明かした。
次の日の朝、ワイドショー、ニュースは歌舞伎町の話題一色だ。各研究機関が調査に乗り出したらしい。
歌舞伎町は封鎖され、少し暴動があった。大人も多少いたがほぼ子ども相手なので鎮圧が簡単という事だけは良かった。避難所も今は落ち着いたらしい。
「おはよう、昨日はすまなかったな。」
朝7時、土方が起きてきた。
「おはよう御座います。もう少し寝てても良さそうですよ。先にお風呂とかご飯とかしてきたらどうですか?」
知里はすでに朝食後2杯目のコーヒーを空にする。
「ああ、そうする。後で交代するから。」
土方は変わらず過ごしていた。
「おはようございますでさぁ。知里、ここの洗面台届かねぇでさぁ。」
沖田は若干土方より小さく感じる。6才くらいだろうか。踏み台になりそうな段ボールを探して沖田に渡す。
「知里、髪ゴムくだせぇ。」
確かに沖田も土方も髪が長い。
「括ってあげますよ。」
知里は沖田に言うと、意外や意外に沖田が快諾して、ちょこんと前に座る。
知里は手持ちのブラシとゴムで沖田の髪を結ぶ。
「沖田さんの髪は綺麗ですね。」
「綺麗なのは髪だけじゃねぇでさぁ。」
沖田はジッと髪結を待つ。
「腹は黒いままか。」
知里は沖田の髪を耳より上で一つ括りにする。そこまで髪の長さがなかったのか、ポニーテールとまではいかなかった。
「はい、どうぞ。」
沖田はありがとうもなく駆けて出た。
隊士は引き続き仮眠と歌舞伎町の往復をしてバタバタしている。
知里は自分も歌舞伎町に興味があったが、持ち場を離れる訳にもいかなかった。
正直、土方と沖田が子どもになっているのに、みんな忙しくて気にしている暇もない。
土方が身支度を整えて大広間へ戻って来た。
「何か変わったことは?」
土方は知里に聞く。
「特にありません。研究所の職員が歌舞伎町へ視察に午前中きます。パニックはおさまってきている模様です。」
知里は土方に報告する。
「そうか、お前は一旦寝ろ。で、昼に起きろ。その間総悟にやらせる。」
「わかりました。土方さん、髪縛りましょうか?髪ゴムありますよ。」
「ああ、髪か。自分でできる、借りるぞ。」
土方は器用に髪を一つに縛る。
「器用ですね。綺麗なポニーテールです。」
「ああ、久しぶりだな。」
「お似合いですよ。」
「邪魔なだけだ。」
土方は知里にさっさと行けと手を振る。
知里は仮眠室へ向かう。ちょうど山崎も仮眠のために帰ってきた。
「お疲れ様。知里さん。」
「お疲れ様、山崎さん。」
「フラフラだけど、仮眠室いくの?」
山崎はすでに目をこすっている。
「山崎さんもフラフラだよ。」
知里は半目で答える。
「仮眠室むっさい状態だよ。」
仮眠室は広間の襖をぶち抜いて適当にたくさんの布団を敷き詰めているだけで、隊士達も適当に寝ている。
「関係ないよ、寝たい。」
「同じく。」
山崎と一緒に布団に倒れんだ。
目が覚めると昼になっていた。
山崎もゴソゴソ起きてきた。
「おはよう、山崎さん。あー、化粧落とすの忘れた…。化粧品も忘れたなぁ。はぁ。」
「おはよう、知里さん。そのままでもいいと思うよ、でも気になるか。確か救護室にマスクあるよ、使う?」
「ほんと?使いたい。」
山崎はスクっと立ち上がり、すぐに救護室へ向かった。
知里は形ばかりではあるが、布団を整えた。
着物で寝てしまったことにも不覚だったが、疲れていてしかなかった。山崎からマスクをもらい、洗面台で顔を洗った。着物も隊服へ着替えた。
ちょうど松平片栗虎が屯所に来ており、近藤、土方、沖田が呼ばれていた。
子どもになったのはウイルスなどではなく他人に移る物では無いようで、歌舞伎町隔離から土方、沖田は出てしまっているが特別に屯所にいることが許された。一人での外出は自粛と命令し、さっさと松平は帰っていった。
「あれ、知里さん隊服?それにマスクだし、風邪?」
近藤は食堂で昼食中の知里に声をかけた。
「近藤さん、お疲れ様です。着物で仮眠しちゃうし、化粧品忘れるしでこの状態です。」
知里は食事を早く終えようと急ぐ。
「えー、じゃあスッピンなんだ!変わらない変わらない。」
近藤は大声で話しながら知里の前に座る。
「近藤さん、変わりますよ、さすがにアラサーのスッピンはキツいでさぁ。」
沖田は近藤の隣に、土方は知里の隣に座る。
「わかってるから、傷口抉らないで。」
知里は沖田の足を右脚で小突いた。
「いて、近藤さんー、知里が蹴ったー!」
沖田は近藤に訴える。
「ヨシヨシ、総悟。痛かったのか〜。」
近藤は総悟の頭を撫でる。
知里は箸が止まり目が点になった。
「近藤さんの父性本能が爆発してるだけだ。」
土方は黙々と食べている。
「トシ、えらいぞー、好き嫌いせずに食べられるなんてな!ハハハ!」
近藤は土方にも父性が爆発している。
「近藤さん、子ども扱いはヤメロ。」
土方は冷たく放った。
「でもわかるよ、この歳になるとキミたちくらいの子どもいてもおかしくないからね…。」
知里は遠い目をして話した。