1年目
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今日から9月に入った。テレビは早くも今年の紅葉隠れスポットや秋の味覚大特集など、とにかく季節の先取り合戦を繰り広げている。ただ天気予報だけはまだまだ夏真っ盛りだ。
昨日の原田との一件で、少し首に違和感と左脇腹に痛みが残っていた。どちらかといえば、脇腹のほうが格段に痛い。
‘いつも通り’に支度を済ませて、自転車で屯所へ向かう。
「おはようございます、姐さん」
「知里姐さん、おはようございます、大丈夫ですか?」
姐さん、姐さん、姐さん、姐さん…
心なしか呼び名が‘姐さん’の比率が高くなっている気がした。
いつも通りに食堂で女中さんたちにも挨拶する。昨日の原田との一件により、原田はもとより数人の隊士たち、さらに近藤が女中さんたちに「いつもありがとう」と初めてお礼を言われたと感謝された。
さらにおばちゃんが言うには、あの強面の十番隊隊長の原田に負けず劣らず立ち向かった知里に感銘を受けた隊士もおり、それが今の‘姐さん’の呼び名が増殖したのだそうだ。
「そっか、こんな事でね〜。」
知里は呟くと、
「アンタ、全然全然こんな事なんかじゃないよ!うちら女中らも近藤さんに‘真選組の一員と思ってこれからも頑張ってほしい’なんて言われたんだ。そんなこと言われたら、うちらも本気出さなきゃね〜。」
と女中のおばちゃんたちは腕まくりして皿を洗い始めた。
何はともあれ、みんな今日も‘いつもより’少し元気に仕事をし始めた。
知里は今日もエアコンのある会議室で仕事をする。
昨日の仕事が残っており、今日はハイペースでパソコンを打ちまくる。それは無意識ではあるが、物凄い形相だったらしく、会議室には人が寄り付かなかった。お陰で仕事は何とか先週分まで進めることができた。たがもう月初め、8月をまとめなければならないので、頭が重い。
ふぅ。と一息つこうと会議室から出るとちょうど原田が部屋に入るところだった。
お互いに、「ゲッ!」と少し顔をしかめてしまったが、「こんにちは。」と挨拶してやり過ごした。
みんなはどう思っているかはわからないが、知里はやはり昨日の今日ですぐに原田と話すのにはまだ抵抗があった。しかも元々原田は知里を好ましくは思っていない方で、これまでも仕事の話以外で話すことはなかった。
食堂に行き、コーヒーを入れて少し休憩した。願わくばこの間に原田が会議室から出ていてくれると助かったのだが、会議室には原田が座って仕事をしていた。
仕方なくそのまま知里も再びパソコンの前に座り、仕事を再開する。互いに無言のまま向かい合わせでいると、知里は首が凝り肩と首を手で揉んだ。すると原田は
「首、痛いのか?」
と話しかけてきた。
「え?あぁ、ただ首が凝って。」
知里は答えた。
「そうか、昨日俺が投げたからな。それも影響あるかもしれん。打撲はだいたい次の日からくる」
原田は昨日の喧嘩で知里に何か影響が出ていないか、遠からず確認していたようだ。
「多分デスクワークが1番の原因ですよ。私いつも痛いんで。」
原田にこれ以上責任を感じさせないように知里は答えると、
「いい接骨院を知ってる。ここだ。」
仕事道具を片付けた原田は、接骨院の名刺を持って知里の隣に立つ。
「ありがとうございます。」
知里も立って名刺をもらう。
「行くなら、予約した方がいいぞ。」
原田はそう言って会議室を出た。
お昼になり、今日は食堂でご飯を食べる。
隊士と共に並んでいると、少し腰が痛くなり抑えながら立っていた。
「へぇ、オバさんも昨日旦那とお楽しみだったんですかぃ?」
いつのまにか沖田が並んでいた。
「いつまでそのネタ引っ張るんですか?それにこれ貴方のせいですよね?忘れたとは言わせませんよ。」
知里は沖田を睨んだ。
カウンターでうどんを注文し、おばちゃんからお盆を受け取ろうとした時、サッと沖田が奪い取る。
「何するんですか。沖田さん、もうほっといてくれません?」
手を伸ばそうとすると、沖田はお盆を上の方に上げ、届かない。
「まぁまぁ、腰痛持ちのオバさんは待ってなせぇ。」
そのまま沖田は自分のお盆と知里のお盆を両手に持ち、食堂の席へ向かった。
おばちゃんからは、「アンタ優しいじゃないか。」と沖田は褒められて、「俺はいつも優しいですぜぃ。」と答えていた。
「えっと、ありがとうございます。」
知里はお盆の置かれた沖田の前の席に座る。
「「いただきます。」」
ご飯を食べながら、沖田は話しかけてくる。
「さっき、原田と何話してたんでぃ。」
「いい接骨院を紹介してもらいました。」
「へぇ、気にしてんのかねぇ。らしくねぇぜ。」
「ホント申し訳ないですよね。首はいつも痛いのに。」
知里は首をコキコキっとまわした。
「はぁ俺も疲れましたぜ。昨日、オバさんのせいで隊士が半分くらい外泊したんですぜ。」
「えっ、そうなの?」
名刺のパワーは効果絶大だったようだ。
「俺は誰かさんにもらえなかったもんで、代わりに深夜の見廻り代わってやったんでぃ。終兄さん珍しく一緒になりやしたぜ。」
斉藤は隊内の内偵調査を担当しているので、本来なら見廻りに出ない。余程人が不足したんだろう。
「そっか、これで壊した店の補償以上に花街にお金落としたんじゃない?江戸の為になったね。」
知里は次に花街へ行く時は隠れて行こうと思った。また名刺地獄になりそうだからだ。
「俺は楽しくないでさぁ。」
沖田はブツブツ文句を言う。
逆にその腫れた顔で行ってもイケメンの台無しだと思われた。イケメンといえば調子に乗りそうなので、言わないが。
「それに俺はもう19でさぁ、2年は置きすぎでさぁ。」
「そっか、少年よ大志を抱け。」
クラーク博士の銅像の真似をして、腕を上げる。
ピキッ
腰がやっぱり痛い。
「その腰ですが、あと2週間は痛いでさぁ。」
「マジか。」
「感謝してほしいくらいでさぁ、2週間で治るんだから。」
沖田が本気をだせば、竹刀でも重傷くらいなんて事はないだろう。昨日、私は真選組隊士全員、つまり近藤さんも含め馬鹿する言葉を吐いた。この痛みは沖田ら真選組隊士の心だ。それに対して、沖田が私に下した痛みだからこそ、隊士達もこれ以上の罰を要求してこない。確かに感謝しなくてはならないのかもしれない。
「甘んじて受け入れます。」
知里は沖田に一礼した。
「わかればいいでさぁ。」
沖田は食べ終わった食器も2つ一緒に返却口まで持っていく。
それから2週間、食堂でお昼を食べる際には、必ず沖田が後ろに立っていた。沖田が休暇の際には、おばちゃんからお盆をもらう前に‘ピロン♪’と軽快に携帯が鳴った。
昨日の原田との一件で、少し首に違和感と左脇腹に痛みが残っていた。どちらかといえば、脇腹のほうが格段に痛い。
‘いつも通り’に支度を済ませて、自転車で屯所へ向かう。
「おはようございます、姐さん」
「知里姐さん、おはようございます、大丈夫ですか?」
姐さん、姐さん、姐さん、姐さん…
心なしか呼び名が‘姐さん’の比率が高くなっている気がした。
いつも通りに食堂で女中さんたちにも挨拶する。昨日の原田との一件により、原田はもとより数人の隊士たち、さらに近藤が女中さんたちに「いつもありがとう」と初めてお礼を言われたと感謝された。
さらにおばちゃんが言うには、あの強面の十番隊隊長の原田に負けず劣らず立ち向かった知里に感銘を受けた隊士もおり、それが今の‘姐さん’の呼び名が増殖したのだそうだ。
「そっか、こんな事でね〜。」
知里は呟くと、
「アンタ、全然全然こんな事なんかじゃないよ!うちら女中らも近藤さんに‘真選組の一員と思ってこれからも頑張ってほしい’なんて言われたんだ。そんなこと言われたら、うちらも本気出さなきゃね〜。」
と女中のおばちゃんたちは腕まくりして皿を洗い始めた。
何はともあれ、みんな今日も‘いつもより’少し元気に仕事をし始めた。
知里は今日もエアコンのある会議室で仕事をする。
昨日の仕事が残っており、今日はハイペースでパソコンを打ちまくる。それは無意識ではあるが、物凄い形相だったらしく、会議室には人が寄り付かなかった。お陰で仕事は何とか先週分まで進めることができた。たがもう月初め、8月をまとめなければならないので、頭が重い。
ふぅ。と一息つこうと会議室から出るとちょうど原田が部屋に入るところだった。
お互いに、「ゲッ!」と少し顔をしかめてしまったが、「こんにちは。」と挨拶してやり過ごした。
みんなはどう思っているかはわからないが、知里はやはり昨日の今日ですぐに原田と話すのにはまだ抵抗があった。しかも元々原田は知里を好ましくは思っていない方で、これまでも仕事の話以外で話すことはなかった。
食堂に行き、コーヒーを入れて少し休憩した。願わくばこの間に原田が会議室から出ていてくれると助かったのだが、会議室には原田が座って仕事をしていた。
仕方なくそのまま知里も再びパソコンの前に座り、仕事を再開する。互いに無言のまま向かい合わせでいると、知里は首が凝り肩と首を手で揉んだ。すると原田は
「首、痛いのか?」
と話しかけてきた。
「え?あぁ、ただ首が凝って。」
知里は答えた。
「そうか、昨日俺が投げたからな。それも影響あるかもしれん。打撲はだいたい次の日からくる」
原田は昨日の喧嘩で知里に何か影響が出ていないか、遠からず確認していたようだ。
「多分デスクワークが1番の原因ですよ。私いつも痛いんで。」
原田にこれ以上責任を感じさせないように知里は答えると、
「いい接骨院を知ってる。ここだ。」
仕事道具を片付けた原田は、接骨院の名刺を持って知里の隣に立つ。
「ありがとうございます。」
知里も立って名刺をもらう。
「行くなら、予約した方がいいぞ。」
原田はそう言って会議室を出た。
お昼になり、今日は食堂でご飯を食べる。
隊士と共に並んでいると、少し腰が痛くなり抑えながら立っていた。
「へぇ、オバさんも昨日旦那とお楽しみだったんですかぃ?」
いつのまにか沖田が並んでいた。
「いつまでそのネタ引っ張るんですか?それにこれ貴方のせいですよね?忘れたとは言わせませんよ。」
知里は沖田を睨んだ。
カウンターでうどんを注文し、おばちゃんからお盆を受け取ろうとした時、サッと沖田が奪い取る。
「何するんですか。沖田さん、もうほっといてくれません?」
手を伸ばそうとすると、沖田はお盆を上の方に上げ、届かない。
「まぁまぁ、腰痛持ちのオバさんは待ってなせぇ。」
そのまま沖田は自分のお盆と知里のお盆を両手に持ち、食堂の席へ向かった。
おばちゃんからは、「アンタ優しいじゃないか。」と沖田は褒められて、「俺はいつも優しいですぜぃ。」と答えていた。
「えっと、ありがとうございます。」
知里はお盆の置かれた沖田の前の席に座る。
「「いただきます。」」
ご飯を食べながら、沖田は話しかけてくる。
「さっき、原田と何話してたんでぃ。」
「いい接骨院を紹介してもらいました。」
「へぇ、気にしてんのかねぇ。らしくねぇぜ。」
「ホント申し訳ないですよね。首はいつも痛いのに。」
知里は首をコキコキっとまわした。
「はぁ俺も疲れましたぜ。昨日、オバさんのせいで隊士が半分くらい外泊したんですぜ。」
「えっ、そうなの?」
名刺のパワーは効果絶大だったようだ。
「俺は誰かさんにもらえなかったもんで、代わりに深夜の見廻り代わってやったんでぃ。終兄さん珍しく一緒になりやしたぜ。」
斉藤は隊内の内偵調査を担当しているので、本来なら見廻りに出ない。余程人が不足したんだろう。
「そっか、これで壊した店の補償以上に花街にお金落としたんじゃない?江戸の為になったね。」
知里は次に花街へ行く時は隠れて行こうと思った。また名刺地獄になりそうだからだ。
「俺は楽しくないでさぁ。」
沖田はブツブツ文句を言う。
逆にその腫れた顔で行ってもイケメンの台無しだと思われた。イケメンといえば調子に乗りそうなので、言わないが。
「それに俺はもう19でさぁ、2年は置きすぎでさぁ。」
「そっか、少年よ大志を抱け。」
クラーク博士の銅像の真似をして、腕を上げる。
ピキッ
腰がやっぱり痛い。
「その腰ですが、あと2週間は痛いでさぁ。」
「マジか。」
「感謝してほしいくらいでさぁ、2週間で治るんだから。」
沖田が本気をだせば、竹刀でも重傷くらいなんて事はないだろう。昨日、私は真選組隊士全員、つまり近藤さんも含め馬鹿する言葉を吐いた。この痛みは沖田ら真選組隊士の心だ。それに対して、沖田が私に下した痛みだからこそ、隊士達もこれ以上の罰を要求してこない。確かに感謝しなくてはならないのかもしれない。
「甘んじて受け入れます。」
知里は沖田に一礼した。
「わかればいいでさぁ。」
沖田は食べ終わった食器も2つ一緒に返却口まで持っていく。
それから2週間、食堂でお昼を食べる際には、必ず沖田が後ろに立っていた。沖田が休暇の際には、おばちゃんからお盆をもらう前に‘ピロン♪’と軽快に携帯が鳴った。