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1年目

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主人公の名前

沖田は後ろから、アッチやら、コッチやら行先の指示を出す。
指示に従って走っていると、見覚えのある同じ道を走っていた。

「沖田さんってやっぱすごいです。人をイラつかせる天才です。」

「オバさんが褒めてくれるなんて感激でさぁ。」

「ハァーー、もう無理。」
知里は汗だくとなり、公園のベンチに座り込んだ。
沖田は近くの自販機から冷たい‘ポカロ’を買って、知里の頬に当てがった。

「オバさんは体力がなくていけねぇや。」  

「アラサーの体力なめんな…。」
知里は‘ポカロ’を半分ほど一気に飲み干して、目を閉じた。

ミーンミンミンミンミンミーン

セミの泣き声が夏を余計に暑くする。

「ここのセミはさ、上品なんだよ。」

「セミに上品とかあるんですかぃ?」

「関西に行ってみろ、2倍大きいセミが数倍大きな声で鳴くから。」
知里はどこか懐かしむように話した。

沖田は隣の知里が、知らない知里に見えた。当たり前だが、知里には知里の人生があって、それがちょうど偶々自分の人生と被っただけなのだ。沖田は近藤以外の他人に興味はなかった。だから誰がどんな風に思って、どんな風に感じて生きているかなんて、考えるだけ無駄だった。ただ、今の知里を見ていると、今何を考えているのか聞きたくなっている。自分にはなんの意味のないのに。

ドシ、ドシ、ドシ、ワン、ワンワン

知里と沖田の前に、神楽を乗せた定春がハァハァと息を切らして立っている。

知里〜、とバカ警察かよ。」
神楽が銀時と新八を呼んだ。

「おいおい、お二人でデートですかこのヤロウ。暑いんだから、もう熱いの見せつけないで。暑苦しい。」
銀時は両手にスイカを持っている。

「どこの世界で、アラサー女の自転車の後ろにドS野郎が乗って行先を命令されることがデートになるんでしょう。」
知里は言っていて自分が悲しくなった。

「何してんの。総一郎くん、銀さん最近の若い子の考えが理解できないわ。」

「旦那ぁ、俺は総悟でさぁ。」

新八もスイカを持ってやってきた。
知里さん、沖田さん、こんにちは。暑いですね〜。万事屋の仕事だったんですけど、今日の報酬がスイカだったんですよ〜、信じられます?」

にわかには信じられない話だが、両手にスイカを抱えた銀時と新八をみるとおかしくて笑った。

「笑い話じゃないからね、銀さんスイカだけじゃ生きていけないから!」

「もー、仕方ないじゃないですか。それより、このスイカみんなで食べませんか?うちの道場でスイカ割りするんです。」

新八の誘いをうけて、早速志村の道場へ向かった。

「あら、いらっしゃい。スイカ大きいわねー、スイカ割りも準備してるのよ。」
妙が庭にビニールシート、棒を準備していた。

何故かスイカをシートの上に置く前に、すでにスイカが1つ置かれていた。

「お妙さぁぁぁぁぁん!お妙さんがスイカが好きだということを聞いて、勲、スイカになります!さぁどこからでも食べてくだ

ドカーン!

近藤の脳天に妙の振り下ろした棒が見事に刺さった。沖田はスッと近藤をシートから移動させた。

「さて、邪魔なスイカも消えたことだし、本当のスイカ割り始めましょ!」

1番は立候補で沖田がスイカ割りをする。目隠しをして10回グルグル棒を持って回る。

「右、前前前、ちょっと左」
新八は真面目に指示するなか、

「後ろ、後ろ、後ろ、後ろ、そのまま出ていくアルよろし。」
神楽は沖田を退場させようとする。

「おっと手が滑りやしたー。」

ズバン

物凄い勢いで神楽に棒が掠める。

「テんメェ、わざとだろ、絶対わざとだろーがー!」

「すいやせん、つい手元が狂っちまった。」
沖田と神楽の殴りあいの喧嘩が始まった。

その後、妙、新八がスイカを割り、神楽はスイカと地面を割った。最後の1つは包丁で綺麗に切ってみんなで食べた。

「スイカでこんなに楽しめるなんて思わなかったです!それに、心なしか沖田さんが年相応に見えますよ。ずっとあれなら可愛らしいのに。」

「大人も子ども心忘れちゃダメだからね、俺は少年の心を無くさないようジャンプを愛読してるから。」
銀時は今ギンタマンの今後が心配と熱弁した。

「こんなんで良ければいつでもやってやるよ?血生臭いとこばかりにいたら辛気臭い大人になるぜ。」

「そうですね、本当にまたやりたいですね。」
知里はそう言って妙とスイカの後片付けをしに行った。

沖田は銀時の横に座り、
「旦那ぁ、今日は楽しかったですぜぃ。オバさんもそれなりに楽しそうでしたし。」

「そりゃ良かったな。お前、だいぶ知里を気にいってんだなー。でもそんなやり方じゃあ、振り向くものも振り向かなくなるぜ。」

「何言ってるんですかぃ。それよりも旦那ぁ、聞きたいんですが、もし昔何か大切なものを無くして、それを今もずっと探してるとしたらどうなりやすか?」

「うーん…。それはお前が1番よくわかってんじゃねーの?将来をだけ見て生きろとも過去を絶対忘れるなとも言えねぇだろ。何事もバランス、過去も今も将来も大事だ。精算しなきゃならねー過去だってあるだろうし、今稼がなきゃ明日の飯が食えなかったり、将来副長になるために計画立てたり、ぜーんぶ大事だ。誰のことか知らねーが、そいつのバランスが崩れてるんなら、誰かがその重い部分を持ってあげたらいいんじゃねーの?もしくは、軽いところを重くする?重いのかわいそうだよねー、潰れちゃうよ。そもそも‘〜だけ’って重いんだよ。ほら、‘私だけを愛して。’って言う女は大体浮気されてるだろ。」

「旦那って‘愛して’って言われたことあるんですかぃ?」

「俺は‘家賃だけ払って’って執念深いバァさんが毎日来るぜ。だから金が浮気してどっかいっちまうんだ。」

「旦那ぁ、出るとこ出たら逮捕でさぁ。」

銀時は沖田の真っ直ぐな目を見て、少し羨ましく感じた。

「それよりもオバさんはやめろよ。」

「やめませんぜ?だってオバさんって言っていいのは俺くらいなもんでさぁ。」

銀時は女心の問題だと心で呟いた。

「お邪魔しました!」
志村邸を出て、沖田と知里は自転車に乗った。

「オバさんだと時間かかるんで、後ろに乗ってくだせぇ。」
初めから後ろに乗るつもりだったが、沖田が自主的に言うのには驚いた。

「今日は楽しかったですかぃ?」
自転車を漕ぎなから、沖田は尋ねた。

「楽しかったですよ、それもこれも沖田さんが来たからですよね。一応ありがとうございます。」
沖田に感謝すると次々来そうなので牽制をした。 

「おっと、ちょっと、ここ寄りまさぁ。」
可愛らしい小物が売ってある小商店だった。

「これあげまさぁ。」
小さな茶色の袋を知里に渡した。

袋を開けるとスイカの形をした小さなガラス細工だった。
「えーっと、ありがとうございます。」
突然のプレゼントになんと反応すれば良いか悩んだ。

「これをリビングのどっかに飾りなせぇ、飾らないと不幸になりまさぁ。」

「おいー!なんつーもんプレゼントしてんだ!」

沖田は知里の部屋に今の生きた物を置いて欲しくなったのだ。明日になったら今日も過去だか、新しい過去だ。
どうか、来年にはたくさんの新しい過去で、いっぱいになってもらえるようにと祈って。
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