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アイスコーヒーの入ったグラスを見つめる清廉な面差しが、幼い日の記憶と寸分違わぬことに驚きを隠せず紅茶を飲むふりをしてまじまじと眺めていると、視線に気づいた羽張が目を細めて苦笑した。
「そんなに面白いか」
羽張のその声音が酷く優しげで、まるで子供に諭すようなものだったから、依子はカチャリと少し音を立ててカップを置き冗談交じりに口を尖らせた。
「あんまり子供扱いなさらないでくださいな」
「はは、すまん。俺の中では君が十一の頃で止まっているものだからつい、な」
寸断された時間に想いを馳せるように、羽張の金色の眼差しは依子の向こう側を望む。
「懐かしいな、君は俺と善条によく懐いていて、特に善条には会う度に手合わせを求めていたから、君が女の子であると塩津に言われるまで気付いてなかった」
「あの頃は、私もちょっとやんちゃでしたから」
あの頃は髪も短かったですし、そう続ける依子に羽張は薄いクッキーを摘みながら意地悪げに口を緩めた。
「ほう、度々屯所の警備を掻い潜って入り込んでは遊びに来た子供が、『ちょっとやんちゃ』か」
「それは、ちょっとではありませんでしたね……」
「だろう?」
美味いなと機嫌よく二枚目のクッキーを手にする羽張につられて依子も皿に載ったクッキーを摘む。バターのたっぷり入った生地がほろほろと口の中で溶けていった。
夏の日に焼け落ちた虫食いだらけの記憶が、羽張と話す事で鮮明に蘇っていく。それはこの空間のなせる技か、或いは羽張という存在がわずかな奇跡を齎しているのか。どちらもありそうだから、怖い。
「ところで」
快活に笑っていた羽張が、顔の前で両手を組み不意に真剣な面持ちで依子に問いかけた。
「一つ聞いても、いいだろうか」
羽張の真摯な問いかけに、依子は指をナプキンで拭い姿勢を正す。
「私に答えられる事ならば」
「では単刀直入に聞かせてもらうが、三輪さんとはどこまでいった?」