2008〜2012.09.25
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『くっついた後の聖夜の話』
「どうして今年は私がサンタで一言様がトナカイなんでしょうか……」
「毎年サンタばかりやっていたら飽きるでしょう?」
「確かに私もクロの驚いた顔や何より一言様のトナカイ姿も見れて良かったのですけど」
「それにね」
「はい?」
「君は夜はどちらかと言うと乗る方がおお
「一言さまっ!?」
…………
『薔薇の名前』
三輪家に一輪の薔薇が届いた。
贈り主は不明、色はむらさき。
毎年律儀に秋に贈られる大輪の美しい花は、何者から贈られたのか言わずともわかる。
「これは、私がいけるよ」
深爪気味の整えられた爪と、その先にすらりと伸びた美しい指が返答も待たずに薔薇を奪う。緑色の棘が女の頼りない指をちくりと掠めた。
…………
『こころかくし』
見慣れた微笑みで、胸が高鳴るようになったのは最近の事だ。
隠すようにぎこちなく笑みを返せば、一言の黒々とした瞳が更に細まる。
未来を知りながらいつか伝えたい想いを知らぬふりをしているのか、或いは本当に気付いていないのか。
どちらでも構わない。
どんな形で終わろうと、本当の恋はきっとこれだけ。
…………
『聞きにくい素朴な疑問の話』
「一言様、一つ聞いてもいいですか」
「いいけれど何だい?」
二人きりの晩酌で、エイヒレをつつきながら前から気になっていた事を聞いてみる。
盃を傾ける一言にそのまま言葉を続けた。
「あの時って一言さま履いていないのですか?」
「んっ」
告げられた疑問に、一言は飲んでいた酒を詰まらせて静かにむせた。
…………
『about me』
「私の顔に何か付いていますか?」
「いや?ただ雰囲気がいつもと違うなと思ってね」
「口紅の色を変えたからでしょうか」
「ああ、だからか」
「お嫌でしたか」
「まさか、よく似合っているよ」
「よかった」
「でも、困ったな」
「何がですか?」
「キスをしたら落ちてしまうだろう?」
「一言様になら落とされてもいいんです」
…………
あなたは中原中也作「(辛いこつた、辛いこつた!)」より「花は造花ほど口がきけない。」で三輪一言夢小説の妄想をしてください
shindanmaker.com/507315
彼女の唇がいつもよりも色づき華やいで見えたので、一言は女の口元に指を添えた。
さて、三輪一言という男はけして木石ではないが、あまり女性の細やかな変化に鋭いとも言えなかった。
「いつも以上に綺麗だ」
だから、言葉少なに目を細めてみれば、それだけで女は一言が予想していた以上に嬉しげにはにかんでみせた。
「新しい口紅をつけてみたんです」
自分のわずかな言葉でこんなにも喜んでくれるのならいくらだって投げかけたいのに、こんな時に限って相応しい言葉が浮かび上がらない。
造花で飾り立てるよりも、今この時美しく咲く花を一輪だけ、彼女の髪に差してやれたなら。
生憎と花の手持ちが無い一言は、女の耳元で口付けを乞うた。
…………
あなたは島崎藤村作「おきく」より「をとこのかたることのはを まこととおもふことなかれ」で三輪一言夢の妄想をしてください
shindanmaker.com/507315
「愛しています一言様」
「私もだよ」
いつもと同じ秘めやかな睦言。
一言は依子の言葉を肯定するが、「愛」を語ろうとはしない。
「大好きだよ」と言われたのは遠い昔、親と子にも似た親愛の言葉。
一言の言葉には優しさがあるが、その言葉が依子を傷つけない訳ではない。
語らぬ愛は依子の心に硝子を突き刺した。
………………
三輪一言夢小説へのお題は『君の涙の味』です。
shindanmaker.com/392860
甘露というのはこういう物を言うのだろうか。
一言は女を組み敷いて独りごちる。
女の潤んだ目から、ぽろぽろと惜しげなく溢れる雫が頰を流れてしまう前に一言はその目尻にそっと口付ける。
どうして彼女が泣くのか一言には分からない。
分からなくていいと笑っていた筈の彼女は、何も言わずに涙を流すだけで、一言にその理由がわかることは終ぞなかった。
………………
以下3点はこちらのお題から
三輪一言夢小説へのお題:やさしさの檻のなか/(だいすき。)/こわれないようにこわさないように
shindanmaker.com/122300
『やさしさの檻のなか』
知っての通り三輪一言という男は、優しい。
時折ふわりと柔らかく笑って、依子の伸びた髪を愛でるその指先にさえ壊さぬように慈しむような優しさが滲み出る。
一言がふわふわとしたもので依子を息が苦しくなる程包むのは、一言自身から依子を守っているようにも思えて、それを取り払えたらと惑わせるように手を伸ばした。
…………
『(だいすき。)』
狗朗は気持ちが顔に出ますね。
それが可愛いのだと弟弟子について微笑ましげに語る彼女も、なかなかどうして人の事は言えないだろうか。
彼女が自分を見つめる眼差しや、二人きりでいる時に遠慮がちに触れる指先から、溢れ出すようなたったひとことの想いが伝わるというのに。
一言は女の秘めやかな想いに応えるように伸ばされた手にそっと指を重ねた。
…………
『壊れないように壊さないように』
無色の王というのは、他王のように石盤によって身体強化がされないから一言様が持っている異能は、予言の力だけのはず。
なのに私に触れる時いつも何かに対するよりも一層優しいものになる。
一度壊れてしまった私はそう簡単にもう一度壊れはしないのに?
そう自嘲すると一言様は何も言わずにかぶりを振った。
………
『12/12』
感謝、誠実、幸福、信頼、希望、愛情、情熱、真実、尊敬、栄光、努力、そして永遠。
異なる意味を持つ十二本の薔薇の花束が一言の手にあるのはどうにも違和感があって、依子は自分の頬が自然と緩んでいることに少し遅れて気が付いた。
(紫ちゃんならよく似合うのだろうけど)
一言が持つのなら、野に咲いているような淡い色の花がきっと似合う。けれどもその豪勢な十二本の花が自分のためだけに彼の手の内にあると思うと少し胸がくすぐったくなるのも事実だ。
「君はどれを選ぶ?」
一言は柔らかい笑みと共に依子に問いかけ花束を差し出した。依子はほんの少し戸惑い指を迷わせて、「尊敬」を意味する薔薇に指が止まる。
「それだけかい?」
茶目っ気混じりの一言の問いに依子は苦笑した。
それだけじゃないとあなただって分かっているというのに。
「あなたって本当にずるいひと!」
差し出された花束を受け取って、依子は一言ごと抱きしめた。
………
『残像』
「昔、この先にも街があったなんて、ちょっと信じられないよね」
何気ないことのように語りながら百井が振り返れば、動きにつられて緩く編んだ三つ編みが尻尾のように揺れた。
周防と百井が眺める海の底には、かつてあった人の営みが沈んでいる。
そして周防も百井も何故この街が海に沈んだのかを、人々に隠されている真実を知っていた。知っていながら何も言わず海を眺める女の首筋は何かの拍子にぽきんと折れてしまいそうな、酷く脆いもののように見えてしまう。
それなのに、自分を見る女の眼差しからそんな気配は微塵も感じない。
淡い色の目に秘められるのは牽制か憂いか。
どちらかなんてどうでもいいし、どちらであっても彼女は自分に同じ笑みを向けるのだろう。
ただ気まぐれに眺めた海の色と風に揺れる亜麻色の三つ編みが、周防にはとても眩しいもののように見えてしまった。
………
『夢は逆夢』
その日は一言にしては珍しく寝覚めの悪い朝であった。
己の腕の中で眠っていた依子は、気配につられたのか気怠げに目を開けて一言を見上げると、物憂げに細い眉を歪めた。
「悪い夢でも見ましたか?」
彼女の口から挨拶よりも先に出た言葉に一言はそれほど顔に出ていたのかと内心苦笑する。
自分は思ったよりも、彼女と二人でいるとどうにも気が緩んでしまうらしい。いつもは緩く三つ編みにしている女の縺れた長い髪を梳いてやりながら、一言は目を伏せ首を振った。
一言のことがわからないと言いながら、彼女は存外一言の本意を見抜く。
目蓋に浮かぶのは朧気な景色。愛弟子の名が刻まれた墓に縋り、涙を流す見知らぬ少年の姿。
あれは、
「ただの夢だよ」
だから君が案じることはない。
一言がそう返すと、依子は少し不服そうにしながらも納得したように頷いた。
そう、ただの夢だ。
泡沫のように儚い夢に過ぎないが、己の持つ異能故に今し方見た夢がただの夢ではない可能性も否定しきれない。
そして一言は、未来が一つだけではない事も知っている。
未来へと進む彼らの背を眺めることしか出来ない一言は、静かに祈りを捧げた。
「どうして今年は私がサンタで一言様がトナカイなんでしょうか……」
「毎年サンタばかりやっていたら飽きるでしょう?」
「確かに私もクロの驚いた顔や何より一言様のトナカイ姿も見れて良かったのですけど」
「それにね」
「はい?」
「君は夜はどちらかと言うと乗る方がおお
「一言さまっ!?」
…………
『薔薇の名前』
三輪家に一輪の薔薇が届いた。
贈り主は不明、色はむらさき。
毎年律儀に秋に贈られる大輪の美しい花は、何者から贈られたのか言わずともわかる。
「これは、私がいけるよ」
深爪気味の整えられた爪と、その先にすらりと伸びた美しい指が返答も待たずに薔薇を奪う。緑色の棘が女の頼りない指をちくりと掠めた。
…………
『こころかくし』
見慣れた微笑みで、胸が高鳴るようになったのは最近の事だ。
隠すようにぎこちなく笑みを返せば、一言の黒々とした瞳が更に細まる。
未来を知りながらいつか伝えたい想いを知らぬふりをしているのか、或いは本当に気付いていないのか。
どちらでも構わない。
どんな形で終わろうと、本当の恋はきっとこれだけ。
…………
『聞きにくい素朴な疑問の話』
「一言様、一つ聞いてもいいですか」
「いいけれど何だい?」
二人きりの晩酌で、エイヒレをつつきながら前から気になっていた事を聞いてみる。
盃を傾ける一言にそのまま言葉を続けた。
「あの時って一言さま履いていないのですか?」
「んっ」
告げられた疑問に、一言は飲んでいた酒を詰まらせて静かにむせた。
…………
『about me』
「私の顔に何か付いていますか?」
「いや?ただ雰囲気がいつもと違うなと思ってね」
「口紅の色を変えたからでしょうか」
「ああ、だからか」
「お嫌でしたか」
「まさか、よく似合っているよ」
「よかった」
「でも、困ったな」
「何がですか?」
「キスをしたら落ちてしまうだろう?」
「一言様になら落とされてもいいんです」
…………
あなたは中原中也作「(辛いこつた、辛いこつた!)」より「花は造花ほど口がきけない。」で三輪一言夢小説の妄想をしてください
shindanmaker.com/507315
彼女の唇がいつもよりも色づき華やいで見えたので、一言は女の口元に指を添えた。
さて、三輪一言という男はけして木石ではないが、あまり女性の細やかな変化に鋭いとも言えなかった。
「いつも以上に綺麗だ」
だから、言葉少なに目を細めてみれば、それだけで女は一言が予想していた以上に嬉しげにはにかんでみせた。
「新しい口紅をつけてみたんです」
自分のわずかな言葉でこんなにも喜んでくれるのならいくらだって投げかけたいのに、こんな時に限って相応しい言葉が浮かび上がらない。
造花で飾り立てるよりも、今この時美しく咲く花を一輪だけ、彼女の髪に差してやれたなら。
生憎と花の手持ちが無い一言は、女の耳元で口付けを乞うた。
…………
あなたは島崎藤村作「おきく」より「をとこのかたることのはを まこととおもふことなかれ」で三輪一言夢の妄想をしてください
shindanmaker.com/507315
「愛しています一言様」
「私もだよ」
いつもと同じ秘めやかな睦言。
一言は依子の言葉を肯定するが、「愛」を語ろうとはしない。
「大好きだよ」と言われたのは遠い昔、親と子にも似た親愛の言葉。
一言の言葉には優しさがあるが、その言葉が依子を傷つけない訳ではない。
語らぬ愛は依子の心に硝子を突き刺した。
………………
三輪一言夢小説へのお題は『君の涙の味』です。
shindanmaker.com/392860
甘露というのはこういう物を言うのだろうか。
一言は女を組み敷いて独りごちる。
女の潤んだ目から、ぽろぽろと惜しげなく溢れる雫が頰を流れてしまう前に一言はその目尻にそっと口付ける。
どうして彼女が泣くのか一言には分からない。
分からなくていいと笑っていた筈の彼女は、何も言わずに涙を流すだけで、一言にその理由がわかることは終ぞなかった。
………………
以下3点はこちらのお題から
三輪一言夢小説へのお題:やさしさの檻のなか/(だいすき。)/こわれないようにこわさないように
shindanmaker.com/122300
『やさしさの檻のなか』
知っての通り三輪一言という男は、優しい。
時折ふわりと柔らかく笑って、依子の伸びた髪を愛でるその指先にさえ壊さぬように慈しむような優しさが滲み出る。
一言がふわふわとしたもので依子を息が苦しくなる程包むのは、一言自身から依子を守っているようにも思えて、それを取り払えたらと惑わせるように手を伸ばした。
…………
『(だいすき。)』
狗朗は気持ちが顔に出ますね。
それが可愛いのだと弟弟子について微笑ましげに語る彼女も、なかなかどうして人の事は言えないだろうか。
彼女が自分を見つめる眼差しや、二人きりでいる時に遠慮がちに触れる指先から、溢れ出すようなたったひとことの想いが伝わるというのに。
一言は女の秘めやかな想いに応えるように伸ばされた手にそっと指を重ねた。
…………
『壊れないように壊さないように』
無色の王というのは、他王のように石盤によって身体強化がされないから一言様が持っている異能は、予言の力だけのはず。
なのに私に触れる時いつも何かに対するよりも一層優しいものになる。
一度壊れてしまった私はそう簡単にもう一度壊れはしないのに?
そう自嘲すると一言様は何も言わずにかぶりを振った。
………
『12/12』
感謝、誠実、幸福、信頼、希望、愛情、情熱、真実、尊敬、栄光、努力、そして永遠。
異なる意味を持つ十二本の薔薇の花束が一言の手にあるのはどうにも違和感があって、依子は自分の頬が自然と緩んでいることに少し遅れて気が付いた。
(紫ちゃんならよく似合うのだろうけど)
一言が持つのなら、野に咲いているような淡い色の花がきっと似合う。けれどもその豪勢な十二本の花が自分のためだけに彼の手の内にあると思うと少し胸がくすぐったくなるのも事実だ。
「君はどれを選ぶ?」
一言は柔らかい笑みと共に依子に問いかけ花束を差し出した。依子はほんの少し戸惑い指を迷わせて、「尊敬」を意味する薔薇に指が止まる。
「それだけかい?」
茶目っ気混じりの一言の問いに依子は苦笑した。
それだけじゃないとあなただって分かっているというのに。
「あなたって本当にずるいひと!」
差し出された花束を受け取って、依子は一言ごと抱きしめた。
………
『残像』
「昔、この先にも街があったなんて、ちょっと信じられないよね」
何気ないことのように語りながら百井が振り返れば、動きにつられて緩く編んだ三つ編みが尻尾のように揺れた。
周防と百井が眺める海の底には、かつてあった人の営みが沈んでいる。
そして周防も百井も何故この街が海に沈んだのかを、人々に隠されている真実を知っていた。知っていながら何も言わず海を眺める女の首筋は何かの拍子にぽきんと折れてしまいそうな、酷く脆いもののように見えてしまう。
それなのに、自分を見る女の眼差しからそんな気配は微塵も感じない。
淡い色の目に秘められるのは牽制か憂いか。
どちらかなんてどうでもいいし、どちらであっても彼女は自分に同じ笑みを向けるのだろう。
ただ気まぐれに眺めた海の色と風に揺れる亜麻色の三つ編みが、周防にはとても眩しいもののように見えてしまった。
………
『夢は逆夢』
その日は一言にしては珍しく寝覚めの悪い朝であった。
己の腕の中で眠っていた依子は、気配につられたのか気怠げに目を開けて一言を見上げると、物憂げに細い眉を歪めた。
「悪い夢でも見ましたか?」
彼女の口から挨拶よりも先に出た言葉に一言はそれほど顔に出ていたのかと内心苦笑する。
自分は思ったよりも、彼女と二人でいるとどうにも気が緩んでしまうらしい。いつもは緩く三つ編みにしている女の縺れた長い髪を梳いてやりながら、一言は目を伏せ首を振った。
一言のことがわからないと言いながら、彼女は存外一言の本意を見抜く。
目蓋に浮かぶのは朧気な景色。愛弟子の名が刻まれた墓に縋り、涙を流す見知らぬ少年の姿。
あれは、
「ただの夢だよ」
だから君が案じることはない。
一言がそう返すと、依子は少し不服そうにしながらも納得したように頷いた。
そう、ただの夢だ。
泡沫のように儚い夢に過ぎないが、己の持つ異能故に今し方見た夢がただの夢ではない可能性も否定しきれない。
そして一言は、未来が一つだけではない事も知っている。
未来へと進む彼らの背を眺めることしか出来ない一言は、静かに祈りを捧げた。