2012〜
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『正しい呼び方の話』
「それにしても『姉上』、なあ」
彼女がかつて無色の王、三輪一言のクランズマンであることは、草薙も当然であるが知っていた。そしてそれはつまり以前から聞いていた後輩の『真面目で、真っ直ぐで、少し危なっかしいけどそこが可愛い弟』というのはあの『黒狗』であるということも意味していた。
世間とは存外狭いものだと草薙は改めて思い知らされる。洗い物をしながら妙に感心する草薙を、件の後輩はグラスを傾けくすくすと笑う。
「あの子、紫ちゃんを『兄上』って言わないのに私のことはまだ『姉上』って呼ぶんですよ」
律儀ですよねえ、呆れたように呟く後輩の目は言葉とは裏腹に優しいものであった。
「せやけど、満更でもないんやろ?」
氷がグラスにぶつかる涼しげな音を楽しんでいた後輩の手がピタリと止まらせ、何故か不服そうに後輩は唇を尖らせる。
「うーん……満更ではないん、ですけどね?」
あの人との関係から言えば私、あの子の『母上』になってしまうんですよ。
告げられた単語に今度はグラスを洗う草薙の手が止まった。
………………
『主語はちゃんと言ったほうがいいという話』
「この前、うちのやつ……藤島がまた拾ってきてな」
「動物が好きな子、だっけ」
「ああ」
「それでその拾われた子はどうしたの?」
「うちで引き取ることにした」
「草薙先輩はなんて?」
「なんで草薙が」
「そういうので一番色々言って来そうな人じゃない、ちゃんと面倒見れるのかーとか」
「ああ、言ってたな」
「それでなんて言ってオッケーもらったの?」
「藤島が面倒を見ることになったらしい」
「あら、よかったわね」
「んで、クランズマンにした」
「…………ちょっと待って」
「なんだ」
「人の話だったの!?」
「ああ」
「てっきり猫か犬かと思った……」
「それにしても『姉上』、なあ」
彼女がかつて無色の王、三輪一言のクランズマンであることは、草薙も当然であるが知っていた。そしてそれはつまり以前から聞いていた後輩の『真面目で、真っ直ぐで、少し危なっかしいけどそこが可愛い弟』というのはあの『黒狗』であるということも意味していた。
世間とは存外狭いものだと草薙は改めて思い知らされる。洗い物をしながら妙に感心する草薙を、件の後輩はグラスを傾けくすくすと笑う。
「あの子、紫ちゃんを『兄上』って言わないのに私のことはまだ『姉上』って呼ぶんですよ」
律儀ですよねえ、呆れたように呟く後輩の目は言葉とは裏腹に優しいものであった。
「せやけど、満更でもないんやろ?」
氷がグラスにぶつかる涼しげな音を楽しんでいた後輩の手がピタリと止まらせ、何故か不服そうに後輩は唇を尖らせる。
「うーん……満更ではないん、ですけどね?」
あの人との関係から言えば私、あの子の『母上』になってしまうんですよ。
告げられた単語に今度はグラスを洗う草薙の手が止まった。
………………
『主語はちゃんと言ったほうがいいという話』
「この前、うちのやつ……藤島がまた拾ってきてな」
「動物が好きな子、だっけ」
「ああ」
「それでその拾われた子はどうしたの?」
「うちで引き取ることにした」
「草薙先輩はなんて?」
「なんで草薙が」
「そういうので一番色々言って来そうな人じゃない、ちゃんと面倒見れるのかーとか」
「ああ、言ってたな」
「それでなんて言ってオッケーもらったの?」
「藤島が面倒を見ることになったらしい」
「あら、よかったわね」
「んで、クランズマンにした」
「…………ちょっと待って」
「なんだ」
「人の話だったの!?」
「ああ」
「てっきり猫か犬かと思った……」