パロディ時空色々
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依子が大広間の扉を開けるとそこには大惨事が広がっていた。
畳には所々焦げ跡が広がり、空中にはふよふよと危うげに恒星が浮かぶ。
廊下で見かけた女装姿のかつての先輩も十分に衝撃だったが、この光景には叶わないだろう。
触らぬ神になんとやらだ、見えない火花を飛ばしながら何やら楽しそうに飲み比べをしている周防と宗像や、黄金の王の暴走に助けを求めて端末を握る弟弟子の新たな主君の横を音を立てずにすり抜ける。
転がっている瓶や盃を踏まないように避けながら、依子は目的の人物の元へとたどり着いた。
「一言様」
「やあ、依子」
酒精が随分と回っているのか、普段よりも血色のいい顔で機嫌良くこちらを向いて笑う一言の傍には、空の酒瓶と共に神父服の男性がうつ伏せで突っ伏していた。
状況から判断せずとも何がどうしてこうなったのかは分かる、彼がこうなってしまうまで一言が酒を勧めたのだ。
一言は人に飲ませるのが上手い、素面でも話し上手で聞き上手だが酒精が入っていてもその気質は変わらない。
悪酔いもすることはなく、ひどく上機嫌に酒を飲む人だ。
しかし酒が回ると会話の間に上手いこと酒を相手に飲ませ、酔っ払いを何人も作り出すという悪癖があった。
更に悪いことに本人がザルな為、相手にしこたま飲ませつつ同じペースで呑み進めてもちっとも酔うことがないのだ。
唯一の救いは村での寄り合いでこの癖が披露されることがなく、気心の知れた相手だけが被害者になることだろう。
大して酒豪でもない依子も何度かその餌食となり、記憶が飛んだこともある。かつて成人したばかりで漸く師と酒が飲めるようになった兄弟子も、二人きりの晩酌で何度か泥酔している様を見たこともあった。
(そういえば緑の王を連れていた紫ちゃんを見たけど、なるほどこの惨状から脱出してたのね)
合点のいった依子の視界にあまり見慣れない物体が映った。
目を細め笑いながら盃を空にする一言とピクリとも動かない神父服の向こう側に、見覚えのある長い黒髪の青年が大の字で寝ている。
男性にしては端正な、兄弟弟子二人ともまた異なるタイプの美貌を惜しげもなくさらけ出しすうすうと穏やかな寝息を立てていた。
「室長さ……、羽張さんまでいらしてたんですか」
「ああ、比水くんが紫に連れられてから後にこちらに顔を出してね」
驚いた依子の言葉に悪意のない顔で一言は頷き、傍に置かれた新しい盃に酒を注ぐ。
「久しぶりに会ったから色々と積もる話があったよ。羽張くんは元々先に他の人たちと随分と飲んでいたようだから、結構早くにこうなってしまってね」
先に飲んでいた人々というのは、恐らく依子も知る彼のかつての臣下たちとのことだろう。くすくすと楽しそうに笑いながら一言は依子に酒で満たされた盃を差し出した。
「ほら、君も一献」
少し離れた場所から爆音や阿鼻叫喚が聞こえる中、一言の周りだけがひどく静かだ。
「では頂きます」
今度は記憶が飛ばないようにしないと、依子は苦笑しながら差し出された盃を受け取った。
畳には所々焦げ跡が広がり、空中にはふよふよと危うげに恒星が浮かぶ。
廊下で見かけた女装姿のかつての先輩も十分に衝撃だったが、この光景には叶わないだろう。
触らぬ神になんとやらだ、見えない火花を飛ばしながら何やら楽しそうに飲み比べをしている周防と宗像や、黄金の王の暴走に助けを求めて端末を握る弟弟子の新たな主君の横を音を立てずにすり抜ける。
転がっている瓶や盃を踏まないように避けながら、依子は目的の人物の元へとたどり着いた。
「一言様」
「やあ、依子」
酒精が随分と回っているのか、普段よりも血色のいい顔で機嫌良くこちらを向いて笑う一言の傍には、空の酒瓶と共に神父服の男性がうつ伏せで突っ伏していた。
状況から判断せずとも何がどうしてこうなったのかは分かる、彼がこうなってしまうまで一言が酒を勧めたのだ。
一言は人に飲ませるのが上手い、素面でも話し上手で聞き上手だが酒精が入っていてもその気質は変わらない。
悪酔いもすることはなく、ひどく上機嫌に酒を飲む人だ。
しかし酒が回ると会話の間に上手いこと酒を相手に飲ませ、酔っ払いを何人も作り出すという悪癖があった。
更に悪いことに本人がザルな為、相手にしこたま飲ませつつ同じペースで呑み進めてもちっとも酔うことがないのだ。
唯一の救いは村での寄り合いでこの癖が披露されることがなく、気心の知れた相手だけが被害者になることだろう。
大して酒豪でもない依子も何度かその餌食となり、記憶が飛んだこともある。かつて成人したばかりで漸く師と酒が飲めるようになった兄弟子も、二人きりの晩酌で何度か泥酔している様を見たこともあった。
(そういえば緑の王を連れていた紫ちゃんを見たけど、なるほどこの惨状から脱出してたのね)
合点のいった依子の視界にあまり見慣れない物体が映った。
目を細め笑いながら盃を空にする一言とピクリとも動かない神父服の向こう側に、見覚えのある長い黒髪の青年が大の字で寝ている。
男性にしては端正な、兄弟弟子二人ともまた異なるタイプの美貌を惜しげもなくさらけ出しすうすうと穏やかな寝息を立てていた。
「室長さ……、羽張さんまでいらしてたんですか」
「ああ、比水くんが紫に連れられてから後にこちらに顔を出してね」
驚いた依子の言葉に悪意のない顔で一言は頷き、傍に置かれた新しい盃に酒を注ぐ。
「久しぶりに会ったから色々と積もる話があったよ。羽張くんは元々先に他の人たちと随分と飲んでいたようだから、結構早くにこうなってしまってね」
先に飲んでいた人々というのは、恐らく依子も知る彼のかつての臣下たちとのことだろう。くすくすと楽しそうに笑いながら一言は依子に酒で満たされた盃を差し出した。
「ほら、君も一献」
少し離れた場所から爆音や阿鼻叫喚が聞こえる中、一言の周りだけがひどく静かだ。
「では頂きます」
今度は記憶が飛ばないようにしないと、依子は苦笑しながら差し出された盃を受け取った。